CO2 で育成した藻類をエネルギー資源に

CO2 で育成した藻類をエネルギー資源に
-第 4 回海洋バイオマス研究コンソーシアム総会・講演会開催-
統合研究院が進めるエネルギープロジェクト(AES=先進エネルギーシステム)のサブ課題の一
つである海洋バイオマスプロジェクト(リーダー・柏木孝夫教授)は 11 月 6 日(金)、東京工業大
学の大岡山キャンパス西 8 号館 10 階大会議室で第 4 回海洋バイオマス研究コンソーシアム総会と講
演会を開いた。同コンソーシアムは、臨海部の火力発電所や製鉄所など CO2 が多量に発生する工場
の隣にバイオマス生産施設を設置し、工場が排出する CO2 で藻類を育成してエネルギー資源等へ利
用する可能性を検討するために、東工大を含む 8 大学、19 企業と 1 つの財団法人が参加して 2008
年 10 月に設立した。この日の総会には 60 人以上が参加、総会後の講演会には一般からの参加者を
含めて約 100 人が集まった。
総会では、ワーキンググループ(WG)1~5 の活動状況が報告された。WG1 からは東工大小田拓
也特任准教授が全体システム評価の方法論とスケジュールを説明し、WG2 からは中部大学行本正雄
教授が大型水槽による藻類の攪拌実験について、WG3からは財団法人・九州環境管理協会の城内智
行氏が藻類の利活用技術を、WG4 からは竹中工務店の柳橋邦夫氏が海洋バイオマスのエネルギー化
について、WG5 からは三井物産戦略研究所の宇野博志氏が関連法規制等の調査について、それぞれ
報告した。各 WG からの報告の後、小田特任准教授が 9 月 1 日に統合研究院に設置された先進エネ
ルギー国際研究センター(AES センター)について説明、同コンソーシアムとの連携を推進するこ
とを明らかにした。
総会に続いて開催された講演会では、コンソーシアム会長の柏木教授が
挨拶した後、3 件の講演に移った。まず、東京農工大学の松永是副学長が
「微細藻類を用いたバイオ燃料の技術動向と今後の展望」について講演、
松永グループが保有する膨大な培養株のカルチャーコレクションから、オ
イル生産性やその燃焼特性、育成条件などの指標をもとに選抜した海洋微
細藻類の性状やコスト収支、炭素償却などの視点から見たバイオ燃料生産
松永 是 副学長
の可能性について解説した。
次いで、独立行政法人の海上技術安全研究所の宇都正太郎グループ長が
「外洋上プラットフォーム技術とその利活用について」講演した。この中
で、日本は周辺海域に世界 6 位の排他的経済水域を有し、そこでの水産・
鉱物・資源等の保全や管理、利用の重要性が増大している点を指摘、安全
性や経済性の優れた外洋上プラットフォーム技術の確立が望まれている
とした。同研究所は 2007 年度から「外洋上プラットフォームの研究開発」
を進めており、その中で選定した数種の外洋上プラットフォームのコンセ
宇都 正太郎 グループ長
プトと期待される特性について紹介した。
最後に、神戸大学の福田秀樹学長が「バイオリファイナリー技術の現状
と今後の展望」について講演した。福田学長のグループは、微生物反応の
弱点である反応速度の遅さや基質制限などを克服する細胞表層修飾技術
を開発した。この技術は、細胞表層に存在するタンパク質と種々の機能性
タンパク質やペプチドを融合させて新たな機能を有する細胞を創生する
福田 秀樹 学長
ことにより、バイオマスから種々の有価物を生産する技術(バイオリファイナリー)を構築するこ
とが可能となる。
講演後、竹中工務店技術研究所長の高橋紀行氏の司会で、総合討議と総括を行った。夕刻からの
意見交換会にも講師を含めて多数が参加し、海洋バイオマス開発の将来について自由な議論を交わ
した。
WG2: 行本正雄教授は藻類の攪拌実験を報告
講演会には、一般を含めて約 100 人が参加