歯、歯茎、口 17章

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歯、歯茎、口
17章
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歯と歯茎の手入れ
歯と歯茎をよく手入れすることは大切である。なぜなら、
○
食物をかんでよく消化するためには、丈夫で健康な歯が必要である。
○
痛む空洞(虫歯のために歯にあいた穴)や歯茎のただれは、充分な手入れによって予防できる。
○
清潔でなかったためにできた虫歯、つまり腐った歯は、体の他の部分を冒す重い感染につながる可能性が
ある。
歯と歯茎を健康に保つには:
この子供には<甘い歯>が
あるが(甘党だが)、すぐに
(歯そのものがなくなるから)
そうではなくなるだろう。
1.甘いものをさける。甘いもの(サトウキビ、キャンデー、ペーストリー、
砂糖入りの紅茶やコーヒー、コーラのようなソフトドリンク、炭酸飲料)は、
すぐに歯を虫歯にする。
子供たちによい歯でいてもらいたいなら、甘いものやソフトドリンクを習慣
づけない。
2.歯を毎日よくブラシする。また、なにか甘いものを食べた後はいつでもただちにブラシする。子供の歯のブラ
ッシングは、歯が生え始めたときから始める。その後子供たちが歯を自分でブラシするよう教え、正しくしてい
るかどうかよく見ている。
歯を横向きだけでなく、上から下へこのようにブラシする。
すべての歯の前、後、先、根元をブラシする。
3.水や食物に天然のフッ素が充分にない地域では、飲料水にフッ素を入れたり、直接歯にぬったりして虫歯を防
ぐ。子供たちの歯に、1 年に 1−2 回フッ素をぬる健康計画もある。ほとんどの海産食品は、多量のフッ素を含ん
でいる。
注意:フッ素は有毒だから少量しか飲み込むことはできない。注意して用い、子供の手の届かないところに保管
する。飲料水にフッ素を加える前に、どのくらいのフッ素が必要か、水を検査してもらうこと。
4.年長の乳児には、哺乳瓶給食をしない。哺乳瓶を吸い続ければ、乳児の歯は甘い液体に浸かり、早く虫歯にな
る。(哺乳瓶給食は、まったく行わないのが一番よい。p.271 を参照。)
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歯ブラシは必要でない
図のように、木の枝を利用することができる。
歯の間を掃除するために、こちらの端をとがらせる。
こちらの端をかみつぶして、繊維をブラシの代わりに使う。
あるいはざらざらしたタオルの切れ端を棒の端にくくりつけるか、指に巻きつけるかして、歯ブラシとして使
う。
タオルの切れ端
練り歯磨きは必要でない
よくこするなら、水だけで充分である。歯と歯茎をなにか柔らかくて、少しざらざらしたものでこするという
ことが、きれいにするということである。粉にした木炭や食塩でこする人もいる。食塩と重炭酸ソーダ(膨らし
粉)を等量混ぜて、歯磨き粉を作ることもできる。くっつきやすくするためには、粉に入れる前に歯ブラシを湿
らせる。
(日本の歯科医による注)
市販の歯みがき剤が購入可能な地域の人たちは、これを使用するのがよい。現状で
は先進国のほとんどの歯みがき剤にはむし歯予防のために一定濃度のフッ化物が添加されてる(日本の市販歯磨
き剤では 80%強の製品に添加されている)。フッ素は低濃度高頻度使用でむし歯予防効果がより発揮される。その
意味でもっとも公衆衛生的意義が高く安全で確実な予防効果を上げているのが飲料水フッ化物濃度調整システム、
別名水道水フッ素化といわれているものである。
歯にすでに空洞(腐ってできた穴)ができている場合
ひどく痛んだり、膿瘍ができたりしないように、甘いものは避け、毎食後によくブラシする。
できれば、ただちに歯科にかかる。十分に早く行くなら、きれいにして詰め物をしてくれる
から、歯は何年ももつだろう。
虫歯の歯があるときは、ひどく痛むまで放っておかない。
ただちに歯科にかかって、詰めてもらう。
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歯痛と膿瘍
痛みのしずめ方:
◇
歯の壁にあいた穴をきれいにし、食物のかけらを取り除く。
次に、温かい食塩水で口をすすぐ。
◇
◇
アスピリン Aspirin のような鎮痛薬を飲む。
歯の感染がひどい(腫れ、膿、リンパ節が大きくなり押さえ
ると痛い)場合は、抗生物質を用いる。ペニシリン Penicillin
(p.351)またはスルフォンアミド Sulfonamide(p.358)
の錠剤、または、テトラサイクリン Tetracycline のカプセ
ル(大人のみ、p.356 を参照)
。
痛みと腫れが引かない、あるいはぶり返す場合は、その歯はおそ
らく抜かなければならないだろう。
感染が体の他の部分に広がる前に、膿瘍は速やかに手当てする。
歯痛は空洞が感染しているときに起こる。
膿瘍は、感染が歯根の先端に達し、膿の
ポケットを作っているときにできる。
歯茎の感染(膿漏)
出血しやすく、ただれて痛い(赤く腫れた)歯茎は次のことが原因
である。
1. 歯と歯茎の掃除をしていない、あるいは不十分である。
2. 栄養のある食物を充分に食べていない。
予防と手当て:
◇
毎食後に歯をよくブラシして、歯の間についた食物を取り除く。また、できれば、歯と歯茎の境目にでき
た暗黄色のあか(歯石)をかきとる。歯の間に丈夫で細い糸(デンタルフロス)を通して、歯茎の根元を
いつもきれいにしておくことが有効である。はじめは出血が多いかもしれないが、すぐに歯は健康になり、
出血も減る。
◇
ビタミンに富む保護食品、ことに卵、肉、豆類、濃緑野菜、オレンジやレモンやトマトのようなくだもの
を食べる(第 11 章を参照)。甘い食品、くっつく食品、筋の多い食品は、歯の間に挟まるので避ける。
留意点:フェニトイン Phenytoin(ジランチン Dilantin)のような発作(てんかん)用の薬が、歯茎の腫れと不
健康な成長を起こすことがある(p.390 を参照)。このような場合は、ヘルスワーカーに相談して、別の薬を使う
ことを考える。
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口角のただれまたはひびわれ
子供の口の両端にできる幅の狭いただれは、多くは栄養失調
のサインである。このただれのできている子供は、ビタミンと
たんぱく質に富む食物を食べなければならない。ミルク、肉、
魚、ナッツ、卵、くだもの、緑の野菜などである。
口の中の白い斑紋または斑点
舌が白い<舌苔>におおわれている。病気になると、舌と口蓋が白色または
黄色っぽいもので覆われる。これは熱があるときに普通である。危険なもので
はないが、一日に数回、食塩と重炭酸ソーダを加えたぬるま湯で口をすすぐの
が有効である。
熱のある子供の口の中にできる塩粒のような微小な白い点は、はしかの初期
のサインかもしれない(p.311)。
鵞口瘡:口の中と舌にできる小さな白い斑紋で、生肉の上の凝乳のように見え
る。モニリア症と呼ばれる菌類または酵母の感染によっておこる(p.242 を参照)。
鵞口瘡は、新生児、AIDSウイルスを持っている人、ある種の抗生物質、こと
にテトラサイクリン Tetracycline やアムピシリン Ampicillin を使っている人に一
般的である。
抗生物質を使い続けることが非常に重要な場合以外は、その使用をやめる。口
の中にゲンチアナ紫をぬる。ニンニクをかんだり、ヨーグルトを食べたりしても
効果がある。ひどい場合はニスタチン Nystatin を用いる(p.373)。
アフタ性口内炎:唇または口の内側にできる小さな、白い、痛みのある斑点であ
る。発熱またはストレス(心配事)の後に現れる。1−3 週間で消える。口を食塩水
ですすぐ。あるいは少量の過酸化水素またはコーチコステロイド Cortico-steroid の
軟膏をぬる(p.371)。抗生物質は効かない。
顔面ヘルペスと発熱性水疱
唇(または生殖器)にできる小さくて痛い水疱で、破れてかさぶたができる。発熱またはストレスのあとに出
る。ヘルペスウイルスが原因である。1−2 週間後に治る。ただれに氷を数分間あてる。一日に数回行うと治りが
早くなる。明礬、樟脳、植物の苦い汁(p.13 のカードンの項を参照)をつけるとよい。投薬はよくない。生殖器
のヘルペスについては、p.402 を参照。
歯と歯茎についてより詳しくは、歯医者のいないところでを参照。Hesperian Foundation で手に入れることが
できる。