論文 ブログの効果測定~量的側面と質的側面

Japan Marketing Academy
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論文
ブログの効果測定
∼量的側面と質的側面∼
笊 ――― はじめに
笆 ――― ブログに関する過去の研究のレビュー
笳 ――― ブログの効果測定(1)∼量的側面
笘 ――― ブログの効果測定(2)∼質的側面
笙 ――― 結論と今後の示唆
ってきた。ここでは,過去のネットに関連す
清水 聰
る文献をレビューした後,その研究成果の一
● 明治学院大学 経済学部 教授
部を示していく。
長谷川 想
● ㈱電通関西支社 チーフ・マーケティング・プランナー
笆――― ブログに関する過去の研究の
レビュー
高山 佳子
● ㈱インテージ シニアアナリスト
インターネットの登場以降,マーケティン
グの世界でも多くの文献でネットの効果につ
笊――― はじめに
いて言及されてきた。当初はネット上のバナ
ー広告の効果や e-コマースについての研究,
ネットの動向を調査している Technorati に
ホームページの効果など,企業が発信する情
よれば,2006 年の第 4 四半期における世界の
報やそこでの売上などが主たる研究領域であ
ブログのうち,37 %を日本語が占め,言語別
ったが,最近ではネット上のコミュニティの
に見ると世界で一番ブログに登場する言語と
影響や,ブログの影響など,企業がコントロ
なった 。また,総務省の発表によれば,
ールできない情報,消費者同士での情報のや
2006 年 3 月時点で,ブログの登録者は 868 万
りとりに研究の主流が移っている。企業から
人,SNS 登録者は 716 万人に達している 。
の発信情報の消費者に対する影響を研究して
日本語を操る人が主として日本人であること
いた時代を第 1 期とするなら,消費者間のイ
を考えると,日本人の中にはネット上に多く
ンタラクションまでも考えるのが第 2 期であ
の情報を流す人が多数存在し,かつその情報
り,まさに Web2.0 時代に即した研究にシフ
を参考にしている人も多いと言えるだろう。
トしたといえるだろう。
1)
2)
このような状況の下,(社)日本マーケティ
この第 1 期の研究としては,e-コマースに
ング協会主催のマーケティング・サイエンス
よって売上が伸びる商品カテゴリーはガーデ
研究会では,一昨年,昨年と 2 年にわたって,
ニング系と消費財で,潜在顧客として有望な
ブログの効果測定を,量の面と質の面から行
のは子供のいない平均的な収入の家庭である
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論文
ことを示した Reibstein(2001)の研究 3)や,
役立つことを実証的に示した金森ら(2005)
バナー広告の効果を,購買だけではなくロイ
の研究 8),態度からより進んで実際のオンラ
ヤルティやブランド記憶などの面から測定し,
イン・ショップの購買履歴とインフルエンサ
アパレルブランドではそのブランドが訴求し
ーの関係を示し,インフルエンサーの影響の
たいメッセージが,バナー広告を出すことで
重要性を示した山本(2005)の研究 9),ネッ
しっかり伝わっていることを実証した Briggs
トコミュニティの効果を加えた方が,モデル
ら(2001)の研究 などがある。(社)日本マ
の説明力が上がることから,消費者間のネッ
ーケティング協会主催のマーケティング・サ
トワークを利用したレコメンデーションの可
イエンス研究会でも,2000 年度の研究会でイ
能性を示唆した同じく山本ら(2007)の研究 10),
ンターネットユーザーと非ユーザーでの,自
さらにはより踏み込んで,現在の消費者は単
動車購買の違いを研究しており,最終的な候
に企業から与えられたものから選ぶだけでは
補となった車種の数が,ネット利用者と非利
なく,足りなければ自ら開発し創造する能力
用者では異なること,ネットユーザーは拒否
を持ったため,消費者と企業のインタラクシ
する車種が発生しやすいこと,などを明らか
ョンによって新たな商品開発の可能性を示唆
にしている 。企業にとっては,ネットに触
した濱岡の一連の研究(2004)(2007)11)など
れることで候補の車種が増えるというプラス
がある。
4)
5)
の効果と,拒否集合に含まれてしまうという
これらの研究から,ネットコミュニティは
マイナスの効果の両方があることを示した。
確かに効果を持っており,その効果は単にネ
これらの第 1 期の研究では,ネットという
ットコミュニティの情報に触れた,触れない,
新しい情報媒体が,どのような影響を与える
という次元にとどまらず,その内容も関係し
のか,ネットに反応する層はどの人たちか,
てくること,ネットコミュニティのメンバー
など新しい媒体の効果測定に注力した研究が
とのインタラクションから,新たなビジネス
多い。
が生まれる可能性までも示唆されていること
第 2 期の研究は多岐にわたっている。一例
がわかる。売上に影響する要因と考えるので
を挙げると,そもそもネット上の他人がそれ
はなく,いわば新しいマーケティング理論の
を読む人に,どのような影響を与えるのかを
ターニングポイントとなると捉えられている
大規模調査をもとに詳しく探り,特に負の影
ことが注目点である。
響に注目してその大きさを示した繁枡(2008)
これら第 2 期の研究の中で,指針となるべ
の研究 や,オンラインの書評では肯定的な
き理論的体系をいち早く示したのが,
内容よりも否定的な内容のほうが売上に対す
AISAS (アイサス)である 12)。AISAS は,
る影響が大きくなることを,実際の Amazon
秋山らがその著書「ホリスティック・コミュ
と Barns and Nobles のデータで実証した
ニケーション」で 2004 年に提唱したもので,
Chevalier ら(2006)の研究 7),商品購入の際
消費者の意思決定プロセスを,ネットの影響
の態度決定には,信頼できるネットコミュニ
を踏まえて改善した点に特徴がある 13)。具体
ティの情報とそこでの実際に利用した情報が
的には,それまでの広告効果測定理論として
6)
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ブログの効果測定
長く用いられていた AIDMA(アイドマ)が,
トなどと同列に容易に「Search」される情報
受動的な受け手を前提にし,送り手の刺激に
の循環(「AISAS のフィードバックループ」)
対して,どう反応するかのプロセスを示して
が出現しているのである 16)。
いるのに対して,AISAS は,能動的な受け
実際,AISAS の理論を実証した(社)新
手を前提としているところが特徴であり,「商
聞協会の調査によれば,AISAS の理論に従
品に注目し(Attention),興味を持ち(Inter-
ったインフルエンサーは購入者全体の 5.8 %
est),ネットなどで調べて(Search),その後
であり,そのインフルエンサーが発したネッ
購入し(Action),その商品を買った感想など
トコミュニティの情報を重視するのは,ネッ
をネットに書き込む(Share)」というモデル
ト利用が多く新聞利用の少ない,比較的年齢
になっている。消費者行動の研究分野では,
の若い層であることが示されている 17)。つま
1980 年代に,能動的な意思決定を仮定したモ
り,日本にはまだ少数だがインフルエンサー
デルは,情報処理型として存在していた。但
は確実に存在し,そのインフルエンサーの情
し,情報処理型では,目標設定→情報探索→
報を参考にする層も存在するわけである。こ
態度決定→購入,という流れであり,購入後
れは,「AISAS のフィードバックループ」の
の行動は,自分の満足には言及しているもの
存在を肯定する事実であり,今後,インフル
の,情報発信までは仮定されていなかった 。
エンサーの数が増大していくことを考え合わ
これに対して AISAS は消費者の購買だけで
せると,「AISAS のフィードバックループ」
はなく,その後の情報発信(Share)にまで
が,今日のマーケティング・コミュニケーシ
言及したことが,今までの消費者行動の研究
ョンのあり方を大いに変容させているといえ
分野にはみられない新しい点である。
る。
14)
具体的に「Share」は,購入した商品の感
笳――― ブログの効果測定
(1)
∼量的側面
想や気になる事項などを CGM(Consumer
Generated Media)に書き込むという行動を
以上の文献レビューからも明らかなように,
示す。「Search」の多くは,インターネット
の検索サービスを通じて行われているが,更
ネットコミュニティの発する情報は,消費者
新頻度の高いブログなどは検索結果の上位に
の情報探索行動に影響を与え,最終的には商
表示されることがあり,生活者がブログを参
品の購入にも影響を与える可能性のある,新
照する機会を増大させていることとの関連が
しいメディアといえる。しかし,本当にそれ
大事である。生活者が利用している情報源の
らネットコミュニティの発する情報,広く捉
うち,重視している情報源として,クチコ
えればブログは,売上に影響するのであろう
ミ・サイトが 40%となる調査結果も得られて
か。(社)日本マーケティング協会の,マーケ
おり,これは同調査で友人・家族からのクチ
ティング・サイエンス研究会では,以上のよ
コミの数値とほぼ同水準になっている 15)。つ
うな問題意識のもと,2006 年度,2007 年度の
まり,見知らぬ生活者によって「Share」さ
2 年度にわたり,ブログの効果測定を,その
れた CGM への書き込みが,企業の公式サイ
量的面と質的面から捉えてきた。まず 2006 年
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度に行った,量的側面の研究について示す。
1.ブログの数と売上の関係
2006 年度の研究では,スーパーマーケット
最初にチョコレート 8 ブランド,無糖茶の
で販売される 5 つの商品カテゴリーについて,
各ブランドの売上推移と検索数,およびブロ
8 ブランドを用いて,売上とブログ件数の関
グ件数の関係について分析を行った。分析対
連を測った。ここでは売上を調査期間内の当
象期間は 2006 年 11 月から 2007 年 1 月までの
該商品カテゴリーの平均売上数量を 1 とし,
12 週間である。
それを基準とした値を用いている。チョコレ
ートの結果を表− 1 に,無糖茶の結果を表− 2
まずブログのデータは,電通バズリサーチ
に示した。
を用いて集計した。電通バズリサーチ とはブ
まずチョコレートでは,対象とした 8 ブラ
ログや掲示板などのインターネット上の口コ
ミ(バズ)を,独自に開発した検索エンジン
■表―― 1
を使って検索・分析・表示するサービスで,
チョコレートブランドにおける売上げとブログ件数・検索数との相関
2005 年 11 月より国内初のサービスとして,
ASP(Application Service Provider)形式に
ブランドタイプ分類
ブランド
ブログ件数 検索数との
より提供が開始された。現在の検索対象サイ
トは,国内の代表的なブログ 17 サイト,2 ち
との相関
相関
新商品・季節限定型 ブランドa
0.98
0.94
ブランドb
0.91
0.92
ゃんねるなどの掲示板 3 サイトの合計 20 サイ
ブランドc
0.87
0.96
定期的キャンペーン型 ブランドd
0.89
0.88
検索数データは,Yahoo!検索の検索数を用
ブランドe
0.86
0.88
いた。Yahoo!検索は,1 か月あたり約 5093 万
ブランドf
0.76
0.87
ブランドg
0.85
0.80
ブランドh
0.28
0.68
トとなっている 18)。
人のユニークカスタマー数
19)
と,1 日 16 億ペ
その他
ージビューのアクセスのあるインターネット
の総合情報サイト「Yahoo! JAPAN」のウェ
ブ検索サービスである。今回の Yahoo!検索の
■表―― 2
検索語は,月ごとに対象商品名の単ワードで
無糖茶ブランドにおける売上げとブログ件数・検索数との相関
の表記ゆれを最小限補足し算出した。
サブカテゴリ ブランド
売上データは(株)インテージの SRI 集計
店あたり販売個数を用いた。SRI とは,GMS,
売上げとブログ 売上げと検索 ブログ件数と
件数との相関 数との相関 検索数との相関
ブランドi
0.43
0.64
0.49
ブランドj
0.28
0.19
0.70
ブランドk
-0.41
0.27
-0.03
ブランドl
0.74
-0.07
0.12
ブランドm
0.72
0.82
0.70
スである。集計店あたり販売個数とは,調査
ブランドn
0.21
0.32
-0.09
対象店における一店舗あたり平均販売個数で
ブランドo
0.11
-0.51
-0.25
ブランドp
0.00
0.04
0.54
緑茶
スーパー,コンビニ,薬局・薬店,ホームセ
ンターなどの主要小売業態,全国 5,051 店舗
を調査対象に販売動向を POS データで収集し,
健康系・
ブレンド茶
分析提供しているシンジケートデータサービ
ある。
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ブログの効果測定
■図―― 1
売上増分とブログ件数・販売状況の関係 (ブログ件数の多い上位 15 ブランドのデータ利用)
※チョコレート,無糖茶,ビール・発泡酒,アイス,ダイエット食品,シャンプー,化粧水,胃腸薬,
風邪薬の9カテゴリ計68ブランドのなかで,ブログ件数が多かった15ブランドについての分析
0.875
Yahoo! 検索
検索数
ブログ件数
0.27
売上増分
0.83
販売状況
GFI
0.981
AGFI
0.943
平均売価
販売店率
*データソース
ブログ件数:電通バズリサーチ
Yahoo!検索 検索数: Yahoo!検索 検索数
売上増分,平均売価,販売店率: インテージSRI
■表―― 3
べた感想などが多く見られるのに対して,無
Yahoo! 検索 検索数とブログ内容との相関
糖茶ではテレビ CM に登場するタレントの話
題が多く,このことから,直接的なプロモー
※チョコレート,無糖茶,ビール・発泡酒,アイス,
ダイエット食品,シャンプー,化粧水,胃腸薬,
風邪薬の9カテゴリ計68ブランドのなかで,
ブログ
件数が多かった15ブランドについての分析
経験
イベント・キャンペーン
CM
ションや実際に利用した感想などは売上と関
連があるが,テレビ CM の評価などは売上と
0.596
0.472
0.342
は関係しないのではないか,従って単にブロ
グの数だけを見るのでは不足しているのでは
ないか,という仮説が導かれた。
ンドのうち,7 ブランドで売上とブログの数
2.総合的な関係
には高い相関がみられた。特に新製品や季節
限定品では,その値は 0.9 程度になり,ブロ
以上のように,ブログの数と売上個数の関
グの数が売上と高い相関があることが示され
係は,チョコレート菓子の一部には見られた
た。
が,無糖茶飲料では関係は希薄であり,一般
これに対して無糖茶飲料では 2 つのブラン
的な言及は難しかった。関係が見られなかっ
ドで売上とブログの数の間に相関が見られた
た原因には,そもそもブログの効果がないこ
が,残りの 6 ブランドでは全く相関がなかっ
とも考えられるが,スーパーマーケットやド
た。その反面,検索数とブログの数との相関
ラッグストアなどで扱われる商品の場合,店
は,8 ブランド中 4 ブランドでみられた。無
頭プロモーションが販売数量に対して大きな
糖茶飲料の場合,ブログは販売数量よりも商
影響力を持つため,ブログだけでは説明がつ
品の検索数に影響するようである。
かないことが十分考えられる。また,ブログ
ブログの中身を詳しく見ると,チョコレー
はこれらのプロモーションとは違い,数が多
トでは,それに関するイベントや新製品を食
いからといって,即購買に結びつくというも
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のでもないだろう。さらには,ある程度市場
こからは示唆される。
シェアのあるブランドでは,ロイヤルユーザ
笘――― ブログの効果測定(2)∼質的
側面
ーがいるため,ブログの数などでは全体の売
上はそれ程変動しないことも予想される。
そこで,ブログの件数が多い 15 ブランドを
取り上げ,それらの売上の増分を,店頭での
2007 年度のマーケティング・サイエンス研
販売状況,ブログの数,検索の数で説明する
究会では,前年度の量的分析を受けて,ブロ
共分散構造分析を行った。取上げたブランド
グの質的効果,すなわち,ブログがブランド
は,ビール類 6 ブランド,チョコレート 4 ブ
態度形成に与える影響に関する分析を行った。
ランド,シャンプー 5 ブランドであり,分析
研究方法は,ブログの与え得る最大限の影
結果を示したのが図− 1 である。
響をクリアにとりだし,かつ,閲覧したブロ
ここから,平均売価と販売店率からなる販
グの内容も同時に把握するため,実験調査で
売状況と,検索数が売上増分に影響し,検索
行った。ここでの実験調査では,ブランドに
数にはブログの数が強く影響していることが
対するイメージや購入意向等を質問した上で,
明らかになった。標準化されたパラメータを
対象者にブログを閲覧してもらい,閲覧後に
比較すると,販売状況のほうが検索数よりも
同じ設問を聴取し,その変化をとらえた。ブ
約 3 倍売上増分に対して効果はあるが,検索
ログの閲覧については,対象者に検索閲覧し
数もそれなりに効果はある。つまり,ブログ
てもらったが,ある程度質的に統一されたブ
の数は販売状況よりは効果がないものの,検
ログを閲覧させるため,検索条件を細かく指
索数を通じて売上の増分に影響することが明
定し,閲覧したブログの URL を取得した。
らかにされた。
調査の実施カテゴリーは,自動車と化粧品
次にブログ内容をテキストマイニングに供
の 2 カテゴリーである。この 2 カテゴリーを
し,分類した結果と,検索数の相関を計算し
選択した理由は,図− 2 にあるとおり,「商品
た(表− 3)。ここから,ブログ内容が CM の
選択に当たって口コミサイト・ブログが役立
場合,検索数との相関は 0.342 であるのに対
つ」と評価されているカテゴリーとなってい
して,その内容がイベントやキャンペーンだ
るためである。なお,対象ブランドは,ブロ
と 0.472,使用経験だと 0.596 にまで上昇した。
グ閲覧の効果をなるべくクリアに抽出するた
これは,ブログは数が多ければいいのではな
め,自動車では 07 年に発売された新ブランド
く,その中身も大事であり,実際の経験に基
を,化粧品ではマス広告を行っていないブラ
づくものが,もっとも消費者の興味を引き,
ンドを対象とした。サンプル数は,それぞれ
検索に向かわせることを示す。この結果は,
表 4,表 5 のとおりである。
先に示した金森ら(2005)の研究成果とも合
1.自動車についての調査結果
致する。つまり,ブログを分析する際は,単
ブログ閲覧の影響を分析するにあたり,前
純に回数だけをみるのではなく,その中身,
年度の分析結果を踏まえ,ブログの内容から
質的な面も捉えていかねばならないことがこ
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ブログの効果測定
■図―― 2
商品選択時の口コミサイト・ブログ役立ち度
1.5
1.0
0.5
0.0
5 カ メ 宿 自 ス ヘ 1 掃 病 プデ ゲお 損
万 メ イ 泊 動 キ ア 万 除 院 レジ ーも 害
ち
ータ ム
円 ラ ク 施 車 ン ケ 円 ・
ゃ保
ヤル ソ
ア 設
ケ ア 未 洗
以
フ 険
ッ
ゲ
ーオ ト、
ア 用 満 濯
上
プ
用 品 の 用
ー ー
の
用
デ ム
品
品
家
家
品
ィ 機
電
電
オ 本
体
製
、
品
パ 健 ス 生
ソ 康 ポ 命
コ 食 ー 保
ン
品 ツ
用 険
品
教
育
関
連
分 菓 酒 ダ ブ ダ 金
イ ロ イ 融
譲 子
エ ー エ 関
住
ッ ド ッ 連
宅
ト バ ト
食 ン 食
品 ド 品
加
工
食
品
海 医 清 洋
外 薬 涼 服
ツ 品 飲
ア
料
ー
、
国
内
ツ
ア
ー
*「あなたが商品を購入・利用するにあたり、口コミサイト・ブログなどはどの程度役に立ちましたか。」という質問の回答に対し、
「非常に役立った」
(+2)、
「やや役立った」
(+1)、
「どちらともいえない」
(0)、
「あまり役に立たなかった」
(-1)、
「全く役に立たなかった」(-2)のカテゴリウェイトを与えて算出した平均値
〈ベース:各カテゴリにおいて商品選択時に参考にした口コミサイト・ブログがある人〉
*データソース: インテージ・インタラクティブ/インテージ調べ。商品購入時の情報源として、口コミサイト・ブログを利用した
10代∼60代以上の男女(3,041s、全国)に対するインターネット調査
主として使用・購入経験に関するブログと,
仮説 1 :S 系ブログは,メーカーを介さな
広告や販促など,企業の出した情報に対する
い購入者の「生」の声が書き込ま
反応ブログとに大別した。
れるため,閲覧者の購入意向に影
S 系ブログ:
購入者が開設するブログ。
響を与える。それに対し,A 系ブ
購入者の生の声が書き込まれ
ログは,特に新商品の市場導入時
ている。
における認知度向上には効果が見
購買プロセス(AISAS )の
込めるが,購買プロセスの初期の
Share に該当する情報を発信
情報源として位置づけられ,購入
している。
意向に影響を与えることはない
A 系ブログ:広告・販促の結果,生じるブ
仮説 2 :S 系ブログは,購入意向に至る直
ログ。購入意向の有無に係わ
前のブランド知識と態度変化に影
らず,ブログ開設者の一般的
響を及ぼす
な話題として取りあげられる。
実験調査においては,A 系ブログと S 系ブ
購買プロセス(AISAS )の
ログを閲覧してもらう対象者を分け, 表− 4
Attention に該当する情報を
の通りに設計を行った。
発信している。
まず,仮説 1 の検証のため,ブログ閲覧前
実験調査の結果については,以下のような
後で購入意向がどう変化したかを確認した。
図− 3 の通り,7 段階の Top2 Box 率でみると,
仮説を立てた。
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■表―― 4
自動車カテゴリにおけるブログ影響度実験調査 調査設計
■調査地域: 全国
■調査方法: インターネット調査
■標本抽出: Yahoo!リサーチモニター
■調査対象: 20−59歳男性
普通免許保有者
1年以内に、調査対象ブランドの属する車種の購入予定のある人
■サンプル割付
〈A系ブログ閲覧グループ〉
ブランドX
20-29歳 30-39歳 40-49歳 50歳以上
当該ブランドの認知あり
19
19
18
17
当該ブランドの認知なし
6
7
8
12
計
ブランドY
計
当該ブランドの認知あり
当該ブランドの認知なし
20-29歳 30-39歳 40-49歳 50歳以上
21
16
19
19
6
5
7
9
計
73
33
〈S系ブログ閲覧グループ〉
ブランドX
20-29歳 30-39歳 40-49歳 50歳以上
当該ブランドの認知あり
22
26
25
24
当該ブランドの認知なし
0
0
0
0
ブランドY
計
75
27
当該ブランドの認知あり
当該ブランドの認知なし
20-29歳 30-39歳 40-49歳 50歳以上
23
25
23
22
0
0
0
0
97
0
93
0
■図―― 3
自動車ブランド購入意向 ブログ閲覧前後比較
【A系ブログ閲覧】
〈ブランドX〉 0
ブログ閲覧前 1.9 9.4
(n=106)
ブログ閲覧後 2.8 7.5
(n=106)
20
40
60
80
【S系ブログ閲覧】
100
〈ブランドX〉 0
(%)
28.3
35.8
29.2
19.8
ブログ閲覧前 4.1 10.3
(n=97)
17.9 5.7 7.5
13.2 10.4 10.4
非常に購入したい
購入したい
ブログ閲覧後 4.1 14.4
(n=97)
20
40
60
80
100
(%)
34.0
29.9
30.9
27.8
13.4 4.1 4.1
12.4 4.1 6.2
購入したい
やや購入したい
〈ブランドY〉
ブログ閲覧前
6.9 3.9
(n=102)
どちらともいえない
31.4
9.82.9 12.7
購入したくない
全く購入したくない
ブログ閲覧後
6.9 8.8
(n=102)
やや購入したい
〈ブランドY〉
どちらともいえない
あまり購入したくない
32.4
30.4
19.6
16.7 4.9 12.7
非常に購入したい
ブログ閲覧前 3.2 9.7
(n=93)
あまり購入したくない
25.8
39.8
6.5 6.5 8.6
購入したくない
全く購入したくない
ブログ閲覧後 4.35.4
(n=93)
28.0
29.0
12.9 9.7 10.8
A 系ブログ閲覧者ではブランド X : 11.3%→
ィブか,どちらかに態度を向けさせる効果が
10.3%,ブランド Y : 10.8%→ 15.7%,S 系ブ
ありそうなことがわかる。
ログ閲覧者ではブランド X : 14.4%→ 18.5%,
従って,仮説 1 は棄却され,A 系ブログで
ブランド Y : 12.9%→ 9.7%という変化であり,
も,閲覧することによって購入意向が影響を
必ずしも大きく変化しているわけではなかっ
受けるということが示された。ただし,購入
た。しかし,「どちらともいえない」の率に着
意向は必ずしもポジティブに動くわけではな
目すると,A 系ブログ閲覧者ではブランド X
く,「どちらともいえない」という態度保留が
: 29.2%→ 19.8%,ブランド Y : 31.4%→
減り,ポジティブかネガティブか,どちらか
19.6%,S 系ブログ閲覧者ではブランド X :
に態度が固まることが注目点である。先述し
29.9%→ 27.8%,ブランド Y : 39.8%→ 29.0%
た 2000 年度のマーケティング・サイエンス研
と,ブランド X の S 系ブログを除き,いずれ
究会の結果でも明らかなように,ネットには,
も大きく低下している。ポジティブかネガテ
それに触れたことで態度がはっきりする効果
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マーケティングジャーナル Vol.28 No.2(2008)
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ブログの効果測定
があるようである。
と非経験者とに分け, 表− 5 の通りの設計を
閲覧された A 系ブログの内容を見ると,
行った。
CM やイベントの紹介や感想,外観画像と商
まず,ブログ閲覧前後での購入意向の変化
品概要が主な話題となっており,メーカー施
をみると( 図− 6 ),7 段階の Top2 Box 率で
策に反応して書かれたものとなっている。す
は,使用未経験者でブランド P : 6.2%→
なわち,消費者自身の商品体験を Share する
13.3%,ブランド Q : 7.5%→ 15.1%,使用経
S 系ブログではなく,メーカーの発信情報を
験者でブランド P : 38.5%→ 51.9%,ブランド
拡大生産する A 系ブログであっても,消費者
Q : 32.2%→ 43.2%と,いずれもブログ閲覧後
の購入検討段階を進める役割を果たし得るこ
のほうが購入意向が良化している。
とがわかった。一般に,ブログは,CGM であ
また,使用未経験者では,3rd Box(やや
り,メーカーにとってはアンコントローラブ
購入したい)率が,ブランド P : 26.5%→
ルなメディアと捉えられてきたが,A 系ブロ
44.2%,ブランド Q : 20.8%→ 43.4%と,ブロ
グは,量(書き込み件数)も内容も,メーカ
グ閲覧後のほうが高く,使用経験者に比べて
ー施策の影響を受けるものであり,企業がネ
大きな変化をみせている。
ット口コミをコントロールして消費者の商品
自動車では,ブログ閲覧により購入意向が
選択に影響を与え得る可能性が示されたと言
ポジネガ双方に動いたのに対し,化粧品では
える。
購入意向良化となったのは,前述の通り,化
次いで,仮説 2 の検証のため,ブログ閲覧
粧品では使用感に関するポジティブな評価コ
前後でブランドイメージがどう変化したかを
メントの記載されたブログに絞ったためと考
確認したのが図− 4,図− 5 である。仮説に反
えられる。
して,機能イメージ,情緒イメージともに,
次いで,ブログ閲覧前後で,ブランドイメ
ブログ閲覧前後で消費者のブランド認知構造
ージがどう変化したのかを確認した( 図− 7 ,
が変化したといえるほどの大幅なアップダウ
図− 8)
。使用未経験者において,ブログ閲覧
ンはみられなかった。ブログの閲覧によって
後のほうが全体的にややイメージが高まって
購入意向が変化したにもかかわらず,機能イ
いる傾向はあったものの,ブランド認知構造
メージ・情緒イメージとも変化しなかったこ
が変化したといえるほどの大幅なアップダウ
とから,ブログは態度の変容ではなく,態度
ンはほとんどみられなかった。従って,自動
から行動にいたる意図に影響するのではない
車・化粧品ともに,ブログ閲覧により,ブラ
か,という仮説がこの結果から得られる。
ンドイメージ以上に,購入意向のほうがより
明確な変化を起こしたといえる。
2.化粧品についての調査結果
通常の消費者購入意思決定プロセスでは,
化粧品に関する実験調査では,閲覧しても
ブランドに関する知識を得ることで,ブラン
らうブログは S 系ブログ(かつ,使用感に関
ドに対する知覚(イメージ)が変化し,好意
してポジティブな評価が書かれているもの)
や購入意向などの態度変容を起こすというス
に絞り,対象者を当該ブランドの使用経験者
テップが想定される。しかし今回の実験では,
71
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★
論文
■図―― 4
自動車ブランド 機能イメージ ブログ閲覧前後比較
【A系ブログ閲覧】
〈ブランドX〉
〈ブランドY〉
スタイル・外観の良い
7.0
内装デザインの良い
5.0
お買い得な
3.0
品質や信頼性
に優れた
仕上げの良さ、
品質感がある
1.0
環境問題へ
配慮した
3.0
品質や信頼性に
優れた
走ることが楽しい
運転のしやすい
安全性が高い
スタイル・外観の良い
7.0
内装デザインの良い
5.0
お買い得な
環境問題へ
配慮した
走ることが楽しい
【S系ブログ閲覧】
燃費が良い
ブログ閲覧後(n=106)
ブログ閲覧前(n=75)
〈ブランドX〉
お買い得な
3.0
お買い得な
仕上げの良さ、
品質感がある
1.0
環境問題へ
配慮した
品質や信頼性に
優れた
走ることが楽しい
運転のしやすい
安全性が高い
スタイル・外観の良い
7.0
内装デザインの良い
5.0
3.0
仕上げの良さ、
品質感がある
1.0
環境問題へ
配慮した
走ることが楽しい
運転のしやすい
安全性が高い
燃費が良い
ブログ閲覧前(n=97)
ブログ閲覧後(n=102)
〈ブランドY〉
スタイル・外観の良い
7.0
内装デザインの良い
5.0
品質や信頼性
に優れた
運転のしやすい
安全性が高い
燃費が良い
ブログ閲覧前(n=73)
仕上げの良さ、
品質感がある
1.0
燃費が良い
ブログ閲覧後(n=97)
ブログ閲覧前(n=93)
ブログ閲覧後(n=93)
*各イメージ項目についての当てはまる程度(7段階)の回答に対し、
「非常に当てはまる」
(+7)∼「全く当てはまらない」
(+1)のカテゴリウェイトを与えて算出した平均値〈ベース:当該ブランド認知者〉
■図―― 5
自動車ブランド 情緒イメージ ブログ閲覧前後比較
【A系ブログ閲覧】
〈ブランドX〉
〈ブランドY〉
親しみを感じる
7.0
親しみを感じる
7.0
センスがよい
家族で楽しめる
5.0
考えをしっかり
持った人が選ぶ
5.0
3.0
考えをしっかり
持った人が選ぶ
高級感がある
1.0
はっきりした個性を持った
ブログ閲覧後(n=106)
ブログ閲覧前(n=75)
親しみを感じる
7.0
センスがよい
センスがよい
家族で楽しめる
5.0
5.0
3.0
考えをしっかり
持った人が選ぶ
高級感がある
1.0
3.0
高級感がある
1.0
生活を活動的に
楽しむ人向け
生活を活動的に
楽しむ人向け
革新的な
はっきりした個性を持った
新しい提案がある
ブログ閲覧前(n=97)
ブログ閲覧後(n=102)
〈ブランドY〉
親しみを感じる
7.0
話題性がある
はっきりした個性を持った
新しい提案がある
〈ブランドX〉
考えをしっかり
持った人が選ぶ
革新的な
話題性がある
新しい提案がある
家族で楽しめる
高級感がある
生活を活動的に
楽しむ人向け
革新的な
話題性がある
【S系ブログ閲覧】
3.0
1.0
生活を活動的に
楽しむ人向け
ブログ閲覧前(n=73)
センスがよい
家族で楽しめる
革新的な
はっきりした個性を持った
話題性がある
新しい提案がある
ブログ閲覧後(n=97)
ブログ閲覧前(n=93)
ブログ閲覧後(n=93)
*各イメージ項目についての当てはまる程度(7段階)の回答に対し、
「非常に当てはまる」
(+7)∼「全く当てはまらない」
(+1)のカテゴリウェイトを与えて算出した平均値〈ベース:当該ブランド認知者〉
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ブログの効果測定
■表―― 5
化粧品カテゴリにおけるブログ影響度実験調査 調査設計
■標本抽出: Yahoo!リサーチモニター
■調査対象: 20−49歳女性
デパートで化粧品を購入する人
分析対象ブランドの認知者
■調査地域: 全国
■調査方法: インターネット調査
■サンプル割付
ブランドQ
20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳
計
当該ブランドの使用経験あり
24
24
21
20
21
17
127
当該ブランドの使用経験なし
26
22
18
18
12
17
113
ブランドP
20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳
計
当該ブランドの使用経験あり
22
19
21
18
21
17
118
当該ブランドの使用経験なし
16
19
18
20
17
16
106
■図―― 6
化粧品ブランド購入意向 ブログ閲覧前後比較
【非使用経験者】
〈ブランドQ〉 0
20
40
60
【使用経験者】
80
100
〈ブランドQ〉 0
(%)
ブログ閲覧前
(n=113)
5.3
0.9
ブログ閲覧後 2.7 10.6
(n=113)
4.4 3.5
2.7
31.9
44.2
40
60
80
100
(%)
ブログ閲覧前
(n=127) 9.4
12.4 4.4
1.8
48.7
26.5
20
非常に購入したい
購入したい
ブログ閲覧後
(n=127)
1.6
29.1
16.5
23.6
30.7
0.8
9.4 4.7
2.4
30.7
35.4
3.9
1.6
やや購入したい
〈ブランドP〉
ブログ閲覧前
7.5
(n=106) 0.0
どちらともいえない
43.4
ブログ閲覧後
3.8 11.3
(n=106)
5.7
18.9
3.8
43.4
25.5
購入したくない
全く購入したくない
5.7 5.7
4.7
購入したい
やや購入したい
〈ブランドP〉
どちらともいえない
あまり購入したくない
20.8
非常に購入したい
ブログ閲覧前
(n=118) 6.8
ブログ閲覧後
(n=118)
14.4
1.7
40.7
25.4
28.8
22.0
37.3
あまり購入したくない
0.8 購入したくない
2.5
全く購入したくない
0.8
13.6 1.7
3.4
そのような変化は見られず,単に購入意向の
笙――― 結論と今後の示唆
みが変化した。つまり,ブログは態度の変化
による購入意向の変化をもたらすのではなく,
態度と購買の間にある購入意図を強化させる
インターネットが世の中に普及してから 10
効果があると推察される。ブログは閲覧者の
年あまり経つが,その間に,単に情報収集メ
背中を押す(あるいは引き止める)効果が大
ディアから,人々のネットワークメディアへ
きく,迷っていた人を Go / No Go のどちら
と変貌し,それにあわせてマーケティング理
かにさせる力があり,最後の決め手となる情
論も発展することを余儀なくされている。こ
報源だと,この実験結果からは言及できる。
の状況のもと,(社)日本マーケティング協会
の,マーケティング・サイエンス研究会では,
ネット上のブログに注目し,その量的・質的
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論文
■図―― 7
化粧品ブランド 機能イメージ ブログ閲覧前後比較
【使用経験なし者】
〈ブランドP〉
〈ブランドQ〉
皮膚科学に基づいている
7.0
カウンセリング
が充実
5.0
皮膚科学に基づいている
7.0
カウンセリング
が充実
こだわりのある
人が使う
5.0
3.0
1.0
1.0
肌にやさしい
効果がある
【使用経験者】
肌にやさしい
品質がよい
信頼できる
ブログ閲覧前(n=113)
効果がある
ブログ閲覧後(n=113)
ブログ閲覧前(n=106)
5.0
皮膚科学に基づいている
7.0
カウンセリング
が充実
こだわりのある
人が使う
3.0
5.0
こだわりのある
人が使う
3.0
1.0
1.0
肌にやさしい
効果がある
肌にやさしい
効果がある
品質がよい
信頼できる
品質がよい
信頼できる
ブログ閲覧後(n=106)
〈ブランドQ〉
皮膚科学に基づいている
7.0
ブログ閲覧前(n=127)
品質がよい
信頼できる
〈ブランドP〉
カウンセリング
が充実
こだわりのある
人が使う
3.0
ブログ閲覧後(n=127)
ブログ閲覧前(n=118)
ブログ閲覧後(n=118)
*各イメージ項目についての当てはまる程度(7段階)の回答に対し、
「非常に当てはまる」
(+7)∼「全く当てはまらない」
(+1)のカテゴリウェイトを与えて算出した平均値〈ベース:当該ブランド認知者〉
■図―― 8
化粧品ブランド 情緒イメージ ブログ閲覧前後比較
【使用経験なし者】
〈ブランドP〉
〈ブランドQ〉
親しみやすい
7.0
親しみやすい
7.0
高級な感じ
華やかな感じ
5.0
5.0
3.0
独自性がある
憧れを感じる
独自性がある
1.0
洗練された感じ
知的な感じ
新しい提案がある
ブログ閲覧前(n=106)
ブログ閲覧後(n=106)
〈ブランドQ〉
親しみやすい
7.0
親しみやすい
7.0
高級な感じ
高級な感じ
華やかな感じ
5.0
5.0
3.0
憧れを感じる
独自性がある
1.0
3.0
憧れを感じる
1.0
洗練された感じ
先進的な感じ
知的な感じ
新しい提案がある
洗練された感じ
先進的な感じ
知的な感じ
新しい提案がある
話題性がある
ブログ閲覧前(n=127)
知的な感じ
話題性がある
ブログ閲覧後(n=113)
華やかな感じ
洗練された感じ
新しい提案がある
〈ブランドP〉
独自性がある
憧れを感じる
先進的な感じ
話題性がある
【使用経験者】
3.0
1.0
先進的な感じ
ブログ閲覧前(n=113)
高級な感じ
華やかな感じ
話題性がある
ブログ閲覧後(n=127)
ブログ閲覧前(n=118)
ブログ閲覧後(n=118)
*各イメージ項目についての当てはまる程度(7段階)の回答に対し、
「非常に当てはまる」
(+7)∼「全く当てはまらない」
(+1)のカテゴリウェイトを与えて算出した平均値〈ベース:当該ブランド認知者〉
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ブログの効果測定
効果について,実際の購買データなどと結び
ポジティブな評価コメントを読むと購入意向
つけて研究してきた。
が高まることから,実際に利用し,好意的な
その結果,量的な側面からは,絶対的な売
評価コメントを書いてくれるインフルエンサ
上とブログの量に関係の見られる商品カテゴ
ーは,企業にとって有効な媒体となるだろう。
リー(チョコレート)と,見られない商品カ
分析について言及すると,ブログの効果を
テゴリー(無糖茶飲料)が存在することが明
測定する場合は,量と質,両面で捉えること
らかになり,ブログの数の増加,即売上増加,
が有効であることが,この一連の研究から示
という法則は見つけられなかった。但し,ブ
された。これまでブログを用いた研究は数多
ログの数が多い 15 ブランドについて,売上の
く存在するが,その両面で捉えた研究は少な
増分を説明変数とする共分散構造分析を行っ
い。両面で捉えることで,新たなブランドの
たところ,売上の増分には店頭プロモーショ
評価が出来るのではないかと期待される。
ンのみならず,当該商品の検索数も影響し,
理論的な側面では,先に示した「AISAS
その検索数にブログの数が影響することが明
のフィードバックループ」は確かに存在し,
らかにされた。このことから,ブログの数は
影響を与えることが,質的な分析から確かめ
プロモーションのように,数が多ければ売上
られた。今回の質的調査では,なるべく被験
に結びつくというものではなく,ブログの数
者が自主的にブログを選んで読むような状況
が増えると話題性が上がり,その結果検索数
にコントロールしたため,そのコントロール
が増え,売上に影響するという関係が見出さ
の影響が,現実の行動ではどのように反映さ
れた。また,その内容も,実際に自分が経験
れるのかは未知だが,少なくとも,ブログを
した内容だと検索数と関連があるが,CM の
読むという「Search」によって,購買意図は
評価などは検索数に影響しないことが明らか
変化するわけで,新たな消費者行動の体系的
にされた。
モデルの必要性を説いたと言えるだろう。
次に質的な側面からは,ブログを読むこと
最初にあげた調査結果をみるまでもなく,
によって商品の購入が促進されるわけではな
日本語のブログの数は非常に多く,これから
いことが示された。むしろ,曖昧な気持ちが,
もますます増えると予想される。今回の報告
いい・悪いの,どちらかに収斂していくこと
で示したように,数が多ければいいというも
が確かめられた。ブログを読むことで,対象
のではないが,中身までも考慮すると,消費
商品に対する機能イメージ・情緒イメージと
者の購買に対して少なからず影響を及ぼして
も,それほど変化しないことと合わせて考察
いることは確かなようだ。今回の調査では他
すると,ブログは消費者の態度を構成するそ
のメディアとの関連などは深く言及していな
れらのイメージには影響を与えない代わりに,
いが,それらとの関連を探ることで,メディ
その形成された態度から行動に移る際に,自
アの役割の違い,消費者の意思決定プロセス
分の中の曖昧な気持ちを整理させ,背中を押
との関連,がより明らかになるはずだ。今後,
す,あるいは思いとどまらせる効果があると
そのような研究に展開されることが期待され
考えられる。化粧品の例からわかるように,
る。
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論文
注
1)Technorati の創業者で,同社 CEO の David Sifry
のレポートより。詳しくは http://www.sifry.com/
alerts/archives/000493.html を参照のこと。
2)総務省,2006 年 4 月 13 日の報道資料による。
3)Reibstein,David J.,(2001),‘Internet Buyer’
,
Wind, Jerry & Mahajan, Vijay ed. ’Digital Marketing’
, John Wiley & Sons,Inc., pp201-225
4)Briggs,Rex and Hollis, Nigel(2001),‘Advertising on the Web: Is There Response before ClickThrough?’
, Sheth, Jagdish N, Eshghi, Abdolreza,
Krishnan, Balaji C.,(2001) ‘ Internet Marketing’ , Harcourt Collage Publishers, pp308-328
5)清水聰著(2006)
,
「戦略的消費者行動」
,千倉書房
6)繁枡江里(2008),「消費者行動における他者の役
割と対人コミュニケーション」,宮田加久子,池田
謙一編著,「ネットが変える消費者行動−クチコミ
の影響力の実証分析」
,NTT 出版,pp47-76
7)Chevalier, Judith.A., Mayzlin, Dina.(2006),
‘The
Effect of Word of Mouth on Sales: Online Book
Reviews’
, Journal of Marketing Research, Vol.XL
Ⅲ, pp345-354
8)金森剛,西尾チヅル(2005),「ネットコミュニテ
ィのブランド態度形成効果」,日経広告研究所報
221 号,pp65-76
9)山本晶(2005),「発信する顧客は優良顧客か?−
サイトの訪問動機とオンライン・ショップの購買
履歴データの分析−」,消費者行動研究,Vol.11,
No.1,2,pp35-49
10)山本晶,阿部誠(2007),「消費者間ネットワーク
を利用したレコメンデーション・エージェント」,
井上哲浩,日本マーケティング・サイエンス学会
編著,「Web マーケティングの科学」,千倉書房,
pp165-191
11)濱岡豊(2004),「共進化マーケティング−消費者
が開発する時代におけるマーケティング−」,三田
商学研究,第 47 巻第 3 号,pp23-36,および濱岡豊
(2007),「共進化マーケティング 2.0 −コミュニテ
ィ,社会ネットワークと創造性のダイナミックな
分析に向けて−」,三田商学研究,第 50 巻第 2 号,
pp67-90
12)例えば,片平秀貴は 2006 年ごろから,主にブラン
ド構築の観点から,AIDEES(アイデス)を提唱
している。その中身は,Attention → Interest →
Desire → Experience(体験する)→ Enthusiasm
(感動・心酔する)→ Share となっている。また野
村総合研究所は,新しい顧客ファーネルモデルと
して,AISTAR(アイスター)を提唱している。
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マーケティングジャーナル Vol.28 No.2(2008)
その中身は,Attention → Interest → Search →
Trial(試行する)→ Action → Repeat(継続する)
である。両者は AISAS に対して,変化する生活
者に対してあるべき消費行動のモデルを示してい
るといえるが,文献等の引用回数などからすると,
AISAS が広く支持されていると言えよう。なお,
AISAS は,株式会社電通の登録商標である。詳
しくは,AIDEES については日経 MJ(2006 年 4 月
14 日 1 面),AISTAR については野村総合研究所消
費者マーケティング研究チーム(2007 年)『大衆化
する IT 消費』東洋経済新報社 P132-137 を参照の
こと。
13)秋山隆平,杉山恒太郎(2004)『ホリスティック・
コミュニケーション』宣伝会議。
14)清水聰(1999)
,
「新しい消費者行動」
,千倉書房
15)濱岡豊(2006)「消費者間の相互作用 クチコミを
中心に」田中洋・清水聰編『消費者・コミュニケ
ーション戦略 現在のマーケティング戦略④』有
斐閣アルマ,pp57-93
16)森岡慎司,長谷川想,山川茂孝(2006)「AISAS
モデルにみる口コミの形成過程におけるプランニ
ング作法の提案」『マーケティングジャーナル』第
101 号 P30 − 31
17)
「2006 年メディアと消費行動に関するインターネ
ット調査」
,
(社)日本新聞協会
18)電通バズリサーチ は,現在「電通バズリサーチ
Ver2.0」として,サービス提供(月額 10 万円から)
されている。利用者は,契約後発行された ID,
PW をもとにアクセスすることで,自身のパソコン
から,CGM 上の評判などを知ることが出来る,企
業名・商品名などのキーワードを適宜入力し,ほ
ぼリアルタイムで,キーワードを含んだバズの状
況を一定期間遡って知ることが出来る。なお,検
索対象サイトには 2 ちゃんねるが含まれているが,
サービス運営会社のホットリンク社が商用利用に
関する契約を締結した上で検索を実施しており,
他のブログ検索サービスにはない特徴となってい
る。分析・表示機能については,日々のバズの出
現状況を示す「口コミトレンド」,ポジティブ・ネ
ガティブ比率の推定を行う「評判分析」,バズの書
き手の男女を推定した「男女構成比」,書き込みに
含まれる単語(共起語)のランキングとなる「関
連語ランキング」などを搭載している。また簡単
な操作で,キーワードが含まれるブログ記事など
の原文を確認することが可能であり,また日時・
サイト名などの情報を備えた書き込みの抜粋文を
ダウンロードすることも可能となっている。電通
バズリサーチ は,主に口コミを期待したキャンペ
76
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ブログの効果測定
ーンの評価や,インターネット上のリスク管理な
どに多く活用されているが,通常のアンケート調
査に対して,よりコミットメントした生活者の生
声に耳をすますことが可能で,インターネット上
の動向,評判などの兆候などを,すばやいタイミ
ングで把握できることに優位性があると言える。
19)2008 年 4 月の Nielsen Online「NetView AMS JP」
における家庭からの視聴率 87.5 %,職場からの視
聴率 89.8 %というデータをもとに,家庭,または
職場からのインターネットユーザーを約 5812 万人
(Nielsen Online「インターネット基礎調査」より)
として Yahoo! JAPAN のユニークカスタマー数を
算出。
高山 佳子(たかやま よしこ)
1969 年 長野県生まれ
1992 年 新潟大学人文学部卒業
同年 株式会社社会調査研究所(現インテージ)
入社。
リサーチの企画・分析,およびリサーチ手法・分析
手法の開発などを担当。
現職 マーケティングソリューション部 シニアアナ
リスト/部長
清水 聰(しみず あきら)
明治学院大学 経済学部 教授
1963 年 東京生まれ
1986 年 慶應義塾大学商学部卒業
1988 年 同大学大学院商学研究科修士課程卒
1991 年 同大学大学院商学研究科博士課程単位取得
同年,明治学院大学経済学部商学科(現:経営学科)
専任講師に着任,助教授を経て,2000 年 同大学経
済学部経営学科教授,現在に至る。博士(商学)
。
研究分野:消費者行動論,小売業戦略,マーケティ
ング・リサーチ
主要業績:単著「新しい消費者行動」(1999 年)千
倉書房,「消費者視点の小売戦略」(2004 年)千倉書
房,「戦略的消費者行動論」
(2006)千倉書房。
長谷川 想(はせがわ そう)
1971 年 静岡県生まれ。
1994 年 一橋大学法学部卒業。
同年 日本電信電話株式会社(NTT)入社。
本社などで情報メディア商品の企画などを担当。
2000 年 電通入社。
2004 年 東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。
現職,インタラクティブ・コミュニケーション局 チ
ーフ・マーケティング・プランナー
77
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