PIANC “On Course“ 要約 - 国際航路協会日本部会 PIANC

PIANC “On Course“ 要約
2013 年 1 月
PIANC 日本部会
目
On Course 146
次
2012 年 12 月
1.
概念的浸透係数の理論的手法
:1
2.
荷役サービスの最適化によるスペインの港湾システムの競争力の向上
:1
3.
岸壁の長さと停泊船舶収容量に関する商用ハブ港の計画策定のための
シミュレーション・ケーススタディ
:2
4.
AIS のデータに基づく船舶挙動の分析
: 3
5.
Seine-Scheldt プロジェクトの水門:ライフサイクルコストの概念の導入
:4
6.
水上スポーツ用施設の設計のための新しい指針
:5
7.
欧州連合の輸送システムに及ぼす気候変動の影響の研究
:6
On Course 145
2012 年 1 月
1. 閘門、堰および防潮壁におけるゲートと構造物の相互作用の諸側面
:7
2. 横向き流れを通過する内陸船舶の航路における追加幅員
:8
3. 連鎖手法による船舶交通シミレーション・モデルを使用したシュエルド海
河口における海上輸送とサービスの最適化
On Course 144
:8
2011 年 10 月
1. Gansbaai 防波堤の破損:防波堤中心部分からの細粒分の吸出し
: 12
2. 乾ドックの経済性に関するいくつかの考察
: 13
3. 立方体およびキュービポッドで被覆された捨石防波堤の上部工の安定性
: 13
On Course 143
2011 年 7 月
1. 水中の水底固定部の理論的および実験的な研究
: 14
2. バルバドスのネジ式ドックの最新事情
: 14
3. コンテナターミナル容量:必要面積算定のための新しい公式
: 14
On Course 142
2011 年 1 月
1. 2008 年クルーズ船航路政策、レクレーション航行に関するインド政府の
: 16
取組
2. 無制限水路での PIANC による船首沈下の公式の感度
: 16
3. 浚渫土排出の二層流動モデルを使用したシミュレーション
: 17
On Course 146
2012 年 12 月
1.概念的浸透係数の理論的手法
H.D. Jumelet
要
約
この記事は、ファン・デル・ミア(Van der Meer)の安定性の公式(1988)における概
念的浸透係数 P を物理的に記述するための理論的手法について述べている。これらの安定
性の公式が経験的のものからから導かれたという特性のために、この概念的浸透係数の物
理的な記述はできない。実際には、このことから係数の値の決定は曖昧である。そこで、
この係数を物理的に記述するために、体積交換(volume exchange)モデルが導入され、主
浸透性が外部波の駆け上り過程(external wave run-up process)に及ぼす影響が書き表さ
れた。この体積交換モデルは、外部過程と内部過程を組み合わせている。外部過程は波の
駆け上りモデルによって記述されている。このモデルでは、Hughes(2004)の波の駆け上
りくさび手法が、構造物の前面での波動力学に関連付けられている。内部過程は、多孔質
媒体を介した水流についての「Forchheimer」の式によって記述されている。本研究では、
概念的浸透係数 P がこの体積交換モデルに密接に関係している。この相関があるため、物
理的記述に基づいた概念的浸透係数の値を選択することが可能となる。さらに体積交換モ
デルは、ファン・デル・ミア(1988)が述べているように、この P 係数が構造パラメータ
ーに関係しているだけでなく、水力学パラメーターにも関係していることを示すものであ
る。
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2.荷役サービスの最適化によるスペインの港湾システムの競争力の向上
José Luis Almazan Garate
Pilar Parra Serano
要
約
貨物が港湾を通過する際に発生するコストは、港湾サービス、中でも荷役サービスに最
も左右される。これらのサービスを確実に効率よく提供することは、極めて曖昧さのある
この部門において非常に重要である。この文献は、管理組織である「港湾当局」に対して、
該当する免許の発行の際に、またサービス提供の期間に、客観的に意思決定できる手段を
提示するものである。その他に、サービス提供の条件を改善し、貨物が港湾を通過する際
に発生するコストを削減するであろう一連の施策を提示している。
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1
3.岸壁の長さと停泊船舶収容量に関する商用ハブ港の
計画策定のためのシミュレーション・ケーススタディ
M.R.A. Khalifa
要
約
商用港に提案された一群の代替案から最終的な計画を選択するために、また、航行の安
全確保を目的ちして強制的に改修実施するために、入港、出港、および主な行動手のシミ
ュレーションは重要であると考えられている。シミュレーション言語の使用によりコンピ
ューターとプログラミングの双方の分野が急速に発展したことに伴い、基本的な船舶行動
は数学的にシミュレーションすることが可能となっている。これには、待ち理論の非常に
現実的な代表例である「Earlang 分布」など、いつくかの代表的な統計的分布が使用される。
この理論は、待機問題の対象になってないコンテナ船団の場合は例外として、船舶の入港
または出港を管理するに相応しいものである。本研究では、4つのターミナルから構成さ
れた商用港の例を扱っている。そのうちの2つはコンテナの扱いを意図したものであり、
残りの2つはバラ貨物と一般貨物の荷役のためのものである。シミュレーション研究は、
数学的モデル「ハーバーシム(Harboursim)」を使用して実施され、収容された船舶の船
団を様々なタイプから予測しシミュレートしたものである。コンテナ船の船団の最適所要
待ち時間は、ゼロまたはゼロに非常に近いものでなければならない。なぜなら、それらが
待機するということは非経済的であるとされ、現実的には好ましくないからである。実際
には、コンテナ船団の操業時間に対する割合としての最大許容待ち時間は「約 10%」に等
しい。バラ貨物船団と一般貨物船団の場合、上限は操業時間の 30%に近い。
岸壁の長さの評価においては、岸壁の使用率(%)、港湾内の収容船舶の平均操業時間、
各船団の年間船舶数、および、各船団の収容船舶の最大設計長さと幅が最も重要なシミュ
レート因子である。このシミレーション・モデルを使用した算出においては、岸壁の最適
な長さを算出するために一連の試行を実行することが主な考えであり、これは許容待ち時
間を、収容された各船団の操業時間の単位(%)として適用することもできる。これに基
づき、岸壁の長さ(m)を決定することができる。
さらに、このシミレーション・モデルは、同時に特定数の船舶を収容するための停泊区
域の収容量を見積もることも可能である。これは航行の安全性確保と経済性確保の両方の
バランスを取りながら行うものである。同時に特定数の船舶を収容するためのある程度の
面積を備えた停泊区画の最適収容量を見積もるために、それぞれの場合について累積事象
発生確率(%)を算出し、利用可能なデータベースまたは該当する港湾を介して実際に適
用している。収容船舶の待ち時間を短縮し、それにより荷役作業の効率を高めるためには、
一連の実践的な結論が適用できることを本研究は提言している。このシミュレーション研
究は、研究対象の停泊区画に同時に収容可能な適切な船舶数の算出を可能にした。
2
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4.AIS のデータに基づく船舶挙動の分析
T.M. De Boer
W. Daamen
要
約
港湾および航路での混雑が激しさを増していることから、船舶の激しい混雑を扱うこと
が可能な「船舶交通モデル(Vessel Traffic Model)」が必要とされている。このモデルは、
計画と設計ならびに運営において非常に有益なツールである。この「船舶交通モデル(VTM)」
の主な課題は、航路の断面における船舶交通の統計学的分布をもたらし、接近する前と接
近中の船舶の挙動をより明瞭に予測することである。また、乗組員チームの挙動を正確に
表せることも重要である。
2004 年に行われた外洋船への自動識別システム(AIS)の導入によって、こういったモ
デルが開発される好機がもたらされた。AIS のデータ・メッセージは数秒ごとに送出され、
それにより船舶の位置と速度の非常に詳細な表示が可能である。これが統計的な分析を促
し、航路の断面における船舶交通の分布、および接近中船舶の挙動を得ることができる。
同様に、船橋乗組員チームの挙動の表示も潜在的には可能である。なぜなら、AIS のデー
タがチームの決定を表し、ひいては船舶の挙動を示しているからである。
本論文は、オランダ海事研究所(Marin: Maritime Research Institute, Netherlands)お
よびロッテルダム港の協力のもとにデルフト技術大学(Delft University of Technology)
で実施された科学修士研究(MSc-study)に基づくものである。本研究は、改良型 VTM の
開発に関する大規模なプロジェクトの準備として行われた。そのねらいは、航路の形状、
船舶のタイプ、船舶の大きさ、外的条件などの関数として、船舶の挙動の一般化された分
布を導出するために、AIS のデータが使用可能であることを検証することである。
本研究では、北海と、Amazonehaven(オランダのロッテルダム港内の船溜まり)との
間のコンテナ船の航跡を調査した。典型的な航路断面における船舶の位置分布が、AIS の
データに正規分布を適用することで標準化されている。この適用の品質は、分布の統計学
的特性を確認することと、R2 の値を算出することによって検証されている。
全ての船舶航跡をサイズによっていくつかの階級に分けることで、船舶サイズが及ぼす
船舶挙動への影響が調査された。これらのサイズ間での比較は、断面における船舶位置と
船舶速度に対し船舶サイズが大きな影響を及ぼし、全般的に大きな船舶ほどより多く水路
の中央を、より小さな速度で航行することを示している。
3
典型的な断面において船舶の分布を調査した場合でも、同様により局所的に多様化した
挙動が認識されている。多くのケースで、この挙動には現実的な説明を与えることが可能
である。断面の一つでは、Amazonehaven 船溜まり自体への船舶の前進進入か後退進入か
によって、船舶がこの船溜まりへの進入路で異なった経路を選択することが観察されてい
る。理論的な研究結果と実践と他の関連性も見出されている。水先案内人が船舶を離れる
位置がその一例であるが、これは AIS のデータにおける速度の一時的低下として見ること
ができる。
三つの外的条件、風、潮流および視程の影響が調査されている。統計上で有意な影響を
見出すことは困難である。なぜなら、これらの影響の大部分は、保護された港湾領域内で、
特に船舶が曳航船で導かれている際には影響が小さいからである。保護された港湾領域の
外では、強い横風と横流に向かっている船舶に対して影響を与えることが明らかである。
主要進入水路を通じて港湾内に進入する間に、船舶は所定のコースから外れないように自
身の船首方位を修正しているのである。
北海と Amazonehaven 間の航路の形状が図式化されている。この後、導出された船舶の
速度と位置の正規分布に、その場所に固有の航路特性、つまり航路の幅とタイプが組み合
わされる。航路全般についてこの分布が見出され、それらは異なった形状を持つ他の港湾
領域に対しても適用可能である。それらは、これから開発される船舶交通モデルのための
情報としても使用できる。
本研究は、AIS のデータが船舶の挙動の一般化された分布を導くために使用しうること
を示している。ここではコンテナ船のみに注目したが、さらに様々な船舶タイプの影響を
調査することが計画されている。同様に、ここでは網羅されていないものの、接近中の船
舶の挙動と船舶間の相互作用は重要な側面であり、VTM の開発においては不可欠なもので
ある。
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5.Seine-Scheldt プロジェクトの水門:ライフサイクルコストの概念の導入
Ellen Maes
要
約
Seine-Scheldt プロジェクトの狙いは、ECMT-Vb(4,500 トン)までの船舶のために、
パリ地方のセーヌ(Seine)川流域をアントワープ/ロッテルダム地方のスケルト(Scheldt)
川流域に接続することにある。これを 2016 年までに達成するために、ベルギーのフランダ
ース地方で、現在 2,000 トンまでの船舶を許容しているリース川の航行許容度の拡充を準
4
備している。
挑戦すべき課題の一つは、Harelbeke 郡において、現在の不十分な水門に替って新しい
水門を建設することである。したがって水門とこれに相互接続された堰の再建および同時
に海岸地区と二基の橋を持つ都市区域の再評価が、この Seine-Scheldt プロジェクトの重要
な目標となっている。
都市環境が原因で、本プロジェクトの実施地は多くの矛盾した目標を抱えている。本論
文ではそれら全てを検討し、プロジェクト全体の複雑さについて優れた見識を読者に提示
している。主要な目標(航行)に他の課題が加えられ、経済的な側面(水上交通への貨物
の積み替え、洪水に対する防護、娯楽)から生態学的な側面(生態学に基づく河川堤防、
魚類に対する代替措置、長期エネルギー消費)を網羅しつつ、景観改善(都市計画、考古
学的な製粉所跡地の統合、建築学上の関心)に及んでいる。
この複雑な問題に最も適応できる解決策を提供する統合プロジェクトを成功させるため
に、「設計および建設」の手順(D&B)が打ち出された。
「設計および建設」の契約には品質管理としてのメンテナンス要因が不足しているため、
ライフサイクルコストの概念が導入されている。このプロジェクトの建設コストは考慮し
なければならないが、このコストだけでなく、インフラのメンテナンス、利用のコスト、
システムの停止時間によるコストも究極的な設計の評価においては重要な役割を演じるこ
とが明らかになっている。したがって、本論文は Harelbeke 郡に対する D&B 契約の範囲
内でライフサイクルコストを最小に抑えるための様々な方法に焦点を合わせている。
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6.水上スポーツ用施設の設計のための新しい指針
Gabriele Peschken
要
約
この報告は、「内陸水路に沿った水上スポーツ用施設の設計のための指針」についての
情報を提供することを目的としたものであり、これらの指針は基本的なインフラの提供に
関連した保養および娯楽用施設のための設計指針を含むものである。これらの指針は、ド
イツ連邦運輸建設都市開発省により発行されたものである。
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5
7.欧州連合の輸送システムに及ぼす気候変動の影響の研究
Juha Schweighofer
要
約
近年、欧州委員会は、欧州連合(EU)の運輸システムに及ぼす天候および気候の変動の
影響の評価に関連した三つのプロジェクトを打ち出した。欧州連合の第 7 次研究枠組み計
画(Seventh Framework Programme)の範囲内で資金が集められたため、「WEATHER」
プロジェクトと「EWENT」プロジェクトが全ての輸送機関を考慮する一方で、
「CONET」
プロジェクトは他の二つのプロジェクトを補完しつつ、内陸水運輸送に焦点を合わせてい
る。本論文は、得られた成果から選択したいくつかの成果を含め、これらのプロジェクト
の簡単な概要を紹介している。
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6
On Course 145
2012 年 1 月
1.閘門、堰および防潮壁におけるゲートと構造物の相互作用の諸側面
Ryszard A. Daniel
要 約
閘門、堰、可動防潮壁、造船所、および、港のドックなどのゲートは、他の構造物とは
いくつかの点で比較できない形で動作している。それらの動作は、通常、一つの単独の構
造システムの持つ規則に従っているわけではない。このシステムは、特定の時点での設置
状態とゲートの位置によって変化するものである。この特性は、ゲートのタイプの選択と
その接触域の設計上の配置との双方に影響を及ぼしている。この記事では、ゲートの接触
部の動作のいくつかの典型的な側面を検討している。ゲートの接触部の動作と言えば、我々
は、土木構造物(閘門頂部、桟橋、海閾など)との相互作用、ならびに、例えばマイータ
ゲートの門扉の構成部分同士の相互作用を考える。この検討では、特に、マイターゲート
の取り付け軸のベアリングの問題に言及し、続いて、垂直上昇ゲートおよび回転ゲートの
接触部分の配置に関する最近の諸見解について触れている。加えて、いわゆる「静圧脚部」
を備えたスライドゲートの原理が提示されている。この接触部分の配置に関するオランダ
の実験は、非常に励みになるものである。
ゲートの接触部の動作およびその示唆するものについての解析結果は、詳細段階の問題
点だけではない。事実、この問題は、油圧ゲート事業の初期の段階において、既に重大な
ものとなっている。この重大性に対する設計者たちの認識を高めるためと、ゲートの接触
の解析にさらに注目することを彼らに奨励するために、上記の問題を際立たせることが、
この記事の意図するところである。本記事に述べられているようにゲートの接触の四段階
解析がその手段の一つである。これらの手段は、最近出版された著者の著書「閘門と他の
油圧閉鎖装置の接触動作」において詳細な考察がなされている。本記事は、この著書の「試
行版」と考えられよう。
7
2.横向き流れを通過する内陸船舶の航路における追加幅員
Bernhard Söhngen
Nicole Maedel
Lucia Hahne
Ismael Verdugo
Jose Iribarren
要
約
ドイツの指針「航路における放水用および取水用の構造物から横流」を考察し、国際航
路会議(PIANC)の INCOM WG 141「内陸水路の設計指針」に対応するために、直線水
路での構造物間の水路区間で必要な追加の航路幅員を決定するためのパラメーターの研究
が、SIPORT XXI においてリアルタイム艦橋シミュレーター(MERMAID 500) 、ならび
に、SHIPMA シミュレーション・プログラムを使用して実施された。このシミュレーショ
ンを解釈した結果は、航路における横流の速度と幅員に対して、追加幅員はほぼ線形従属
の期待値を示し、縮尺モデルによるテストから現在得ている結果を満足させるものであっ
た。しかし、横流の速度によって大きな影響を受けることは想定されていなかった。強力
で幅の広い排水構造物についての横流と縦流の混合区域における大規模な乱流などがその
原因である。横流のある領域での船舶の動きの原則に基づき、航路の設計を目的とした追
加の航路幅員の算定用シミュレーションによって、準経験則的な公式を導出および較正す
ることができた。
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3.連鎖手法による船舶交通シミュレーションモデルを使用したシュエルド海河口におけ
る海上輸送とサービスの最適化
Marc Van Vooren
Philippe Hyde
Bram Vandekerckhove
Martin Mesuere
要
約
複雑な輸送ネットワークにおける遅延を低減するための、最適化のシナリオは複数ある
と思われる。提案されたシナリオを科学的手法で比較するには、費用、安全性、環境など
に関する意思決定用の関連既定パラメーターの定量化が必要となる。関心の範囲(意思決
定用関連パラメーター、地理的な位置、サービス、輸送のタイプ、時間的枠など)に従っ
て、一つのシミュレーションモデルを使用することができる。その際、提案されたシナリ
オの効果を定量化するために、あるいは、経営と技術双方の最適化のシナリオを組み合わ
8
せ、より優れた最適化シナリオに仕上げるために、様々な状況下でのネットワーク動作を
解析しなければならない。
ここでは、そのような連鎖の手法によるシミュレーションが、フラマン語/オランダ語
共通航海管理(Flemish/Dutch Common Nautical Management:Gemeenschappelijk
Nautisch Beheer (GNB))の研究分野において実施されている。これは、研究「連鎖の手
法 1」の枠組み内で行われた。その目的は、最新の遅延時間および障害を定量化することと、
異なる将来的予測のための研究において示された様々な最適化シナリオを比較することで
ある。
・シェルド(Scheldt)川の深度増大の効果
・増加する交通量(より大型の船の)
・水先案内人と曳航船の管理の変化
したがって、船舶交通シミュレーション(VTSim)と呼ばれる分離事象シミュレーショ
ンモデルが使用された。このシミュレーションモデルは、シェルド地方の現行の船舶交通
サービス(VTS)に基づき、様々なモジュール、ノード、および、セグメントから構成さ
れている。各モジュールは、GNB の作業域内の実生活での連鎖の一部、つまり、海/川/
運河のセグメント、閘門、水先案内人、曳航船、埠頭、潮流入出口などを表している。各
モジュールを作成するために、作業原則の解析と作業者面談が実施され、各モジュールが
可能な限り現実に近づくよう確認した。全てのモジュールが完成し、物理的な連鎖ネット
ワークの全体が構築されれば、様々な船舶がモデルの境界にある「エントリー」ノードで
生成される。2008 年の VTS 発生データを解析することによって統計的発生時刻が得られ、
そのモデルを介して実施された演算処理として、これらの様々な船舶タイプが作られた。
モデルの較正の後、シナリオのモデル化が可能となった。365 日試行ごとのログファイルに
は、待ち時間、航行時間、サービスの占有期間などが含まれ、ANOVA(分散の解析)を使
っての解析および比較が可能である。
算出されたシナリオによれば、複数のサービスの間に相関関係があることがわかる。例
えば、河川の曳航許容量の増加は、河川の曳航船による待ち時間の短縮を示したが、河川
の水先案内人の待ち時間の増加も示した。曳航船または水先案内人の平均待ち時間を 0.01
時間未満に短縮するために曳航許容量または水先案内人の能力を増大するには、この目標
に到達するには経済的に不利益になってしまうものの曳航船または水先案内人の待機が必
要であることを示している。
もう一つの重要な要因は、埠頭から出航する船舶の時刻分布である。現在、これはドック
の作業員の勤務シフト体制に基づいて決定されている。船舶の出発時刻の範囲を広げるこ
9
とは、待ち時間全体の大幅な短縮をもたらし得るものである。
VTSim モデルを使用すると、様々な道筋の重要な効果が数量化可能となる。このモデルは、
各道筋が連鎖全体に及ぼす影響を解析するための科学的な手段を、意思決定者および作業
者に提供するものである。
1:GNB のためのアンティーグループ(Antea Group)によって実施された「BNG シェル
ド地域における連鎖への手法」(2011)。
10
On Course 144
2011 年 10 月
1.Gansbaai 防波堤の破損:防波堤中心部分からの細粒分の吸出し
Mike Chemaly
要
約
Gansbaai のニュー・フィッシング・ハーバー(New Fishing Harbour:新漁港)は、
波の条件が厳しい南アフリカの海岸線に沿った地域に位置し、アフリカの最南端から約 65
km の位置にある。防波堤が破損した際には、緊急の修復が必要となった。南アフリカに拠
点を置く請負業者のゲリニ海上建設(Guerrini Marine Construction)が現場に到着した
2011 年 3 月までに、総延長 60 m(測点 66 から 126)にわたって防波堤が破損していた。
破損した 60 m の防波堤の最初の 30 m(測点 66 から 96)に沿って、捨石被覆層が、防
波堤から 30 m もの距離に移動していた。これは、2010 年 5 月の激しい波の働きによるも
のである。この部分に沿った砕波は、固い岩盤上での巻き波の形になっている(破損メカ
ニズム 1)。加えて、ジオメンブレンによって保護されていない細かい材料が中心となって
構成されている防波堤の本来の中心部分は、防波堤の中心部分から波に運び去られていた
(破損メカニズム 2)。これは、結果として、長さ 30 m で深さ 0.5 から 1 m の巨大な空洞
をコンクリート舗装道の下に形成させた。続いて、コンクリート舗装道はこの空洞内に崩
落し始めた。
破損した 60 m の防波堤の次の 30 m(測点 96 から 126)に沿っては、捨石被覆層が、防
波堤の足元、斜面、そして、頂部から下方に移動していた。対応して、この移動が、その
下にあった中心部分を露出させていた。加えて、胸壁も露出し、波の直接的な衝撃を吸収
せざるを得なくなっていた。
依頼主である公共事業省(Department of Public Works)は迅速に行動し、防波堤への
進入路を遮断し、可能な限り早く請負業者を現場に到着させるために設計、入札、および、
調達の各段階を素早く追跡した。南アフリカのステレンボッシュ(Stellenbosch)に拠点を
置く WSP アフリカ海岸エンジニア(WSP Africa Coastal Engineers)社による革新的な設
計と予算上の制約とを摺り合せ、以下の解決策が提出された。
全般に:
・持続可能性という理由のために、同社は、現存の 1~3 トンの岩を全て引き揚げ、再使用
することを決定した。
破損部分の最初の 30 m に沿った部分(測点 66 から 96):
11
・現存のコンクリート舗装道を撤去する。
・現存する中心の砂部分は削り取り、ジオメンブレン、10~50 kg の岩、および、10~500
kg の岩で覆う。
・コンクリート舗装道を 800 mm の厚さで再建し、道路にプレキャスト・コンクリートの
胸壁を綴じ合わせ(stichcast)法で設置する。
・本来の 1~3 トンの 2 層被覆を再建する。
・新しい単層の 4~6 トンの被覆層を建設する。
破損部分の次の 30 m に沿った部分(測点 96 から 126):
・本来の 1~3 トンの 2 層被覆部を引き揚げ、再建する。
・新しい単層の 4~6 トンの被覆層を建設する。
請負作業は 2011 年 3 月 4 日に開始され、2011 年 9 月 5 日に完了した。入札による請負作
業の期間は 6 か月であった。請負業者はこの時間的枠内に事業を完了させるためによく頑
張った。
2.乾ドックの経済性に関するいくつかの考察
Keith Mackie
要
約
当然のこととして、多くの経験則は、乾ドックについての経済的側面を非常に信頼でき
るものとして表している。これらの経済的側面は、ドックの所有者のスタイルによって支
配されている。乾ドック施設は、そのドックを独占的に使用するつもりの船舶修理業者が
所有するか、公共部門が所有して公共使用施設として経営されるかのいずれかであるのは
ほぼ避けられないことである。これらの二つのシステムの経済的側面は、まったく異なっ
ている。これらの基本的事項の理解を怠ると、乾ドック施設についての提案を無にしてし
まうことも起こり得る。
12
3.立方体およびキュービポッドで被覆された捨石防波堤の上部工の安定性
Jorge Molines
要
約
捨て石防波堤は、通常、越波を減らすためにコンクリート上部工を備えている。港湾活
動に関与する様々な業務を展開するためには、上部工に安定性が必要であり、滑り破壊が
破損の主要な形態となっている。この論文は、上部工に対する波力を予測するための現行
の公式、例えば、Jensen(1984)、Pedersen(1996)、Martin 他(1999)、Berenguer と Baonza
(2006)などを使用して、滑り破壊に焦点を合わせたものである。
立方体ブロックとキュービポッド(Cubipod)という 2 種の異なった被覆層ユニットを使
用して、模型による試験が行われた。このモデルには、規則波と不規則波を作用させ、波
の衝撃の圧力値が測定された。解析された各公式は、水平力と揚圧力を同時に正確には示
していない。そのため、新しい方法が提案されている。これは、最も強い水平力を発生さ
せた波に伴う最大水平力と最大揚圧力を予測するものである。
この現象に影響を及ぼす変数を定義した後、水平力と揚圧力を算出するための新しい公
式を得るために pruned neural network と statistical t-student analysis を使用して試験デ
ータが処理された。試験では、70%を超える試験例でこれらの力が最も重要であることが
観察された。この方法の主要な長所は、単純さと、外部の影響を受けにくいことである。
なぜなら、各公式が線形回帰を適用して得られたものだからである。
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13
On Course 143
2011 年 7 月
1.水中の水底固定部の理論的および実験的な研究
Maurizio Lenzi
Leonello Sciacca
Fausto Valmori
Cesare Melegari
Fabio Maletti
Paola Campana
Vincenzo Padovani
要
約
この論文は、水中固定部(UWA)に関した理論的解析と実験による試験との結果を示し
たものである。この固定部は、陸上用の革新的な技術を使用して建設されており、この技
術では実施される全ての工程が遠隔制御で行われる。この技術は、特に港湾の護岸を修復
する際に使用できるものである。建設の工程が示され、また、非線形モデルにより得られ
た固定部の伸びの理論値と、実験に基づく負荷試験の結果との比較も示されている。
2.バルバドスのネジ式ドックの最新事情
Keith Mackie
要
約
この論文は、乾ドック内の船舶の持ち上げ方法の起源に関する基本的参考文献を記録し
たものである。最も初期のシステムは、1827 年、ジェシー・ハード船長(Captain Jesse Hurd)
がニューヨークに建設したネジ式ドック(screwdock)である。この他に本式のネジ式ドッ
クは 3 基のみ建設されたようであるが、このシステムを種々改良したものが、現代のスチ
ール・ワイヤ・ロープ式の吊上げをもたらしたと思われる。
3.コンテナターミナル容量:必要面積算定のための新しい公式
Maria Alejandra Gómez Paz
要
約
物流は、貿易と地域開発の駆動力である。港湾地域計画をダイナミックに行うことが、
これらの地域の開発を支え、さらに様々な状況を予測するのを助け、ひいては市場を失う
リスクを最小限に抑えることを可能にする。
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ターミナルの開発に利用できるスペースが不足しているという問題に影響を受けること
から、都市部での各港湾ターミナル事業は、ターミナル周辺の状況に従い様々な代替の拡
張用地を考慮に入れつつ地域の計画を策定することを強いられている。
簡易な手法とモデルを開発することによって、力強い計画の実現が可能になり、意思決定
の過程、また、その結果として需要の変化と想定外の状況に対し迅速に対応しやすくなる。
本論文では、ヤード内の動きと設備に関連し、またコンテナターミナルの操業の特性を
反映した経験的な手法を展開している。この手法は他の手法と似通っているものの、新し
い要素を含んでいる。
ここで用いられている概念と展開されている手法は、コンテナターミナルの計画策定の
ために強力な方法を提供し、ダイナミックなモデルの作成を可能にする。また、コンテナ
ターミナルの保管能力に関する従来の手法に反するものではなく、逆にそれらを補完する
新しい手法である。加えて、いくつかの変数の変化がターミナルの生産性にいかに影響を
及ぼすかを示すこともできる。
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On Course 142
2011 年 1 月
1.2008 年クルーズ船航路政策、レクレーション航行に関するインド政府の取組
Rakesh Srivastava
要
約
客船で各地に寄港するクルージングは、現在、最も活力に溢れ、急成長している産業で
あり、インドにとって開発の余地が大きい分野とされている。インド政府は 7,500 km に及
ぶ海岸線において、「クルージング船航路促進政策(Policy for promoting Cruise Shipping)」
を推進している。これにはマリーナや係留施設の整備と道路や鉄道の接続などのインフラ
が必要であるが、官民連携(Public Private Partnership)プロジェクトを介して着手されてい
る。この政策を実施するため、クルージングに関連した環境問題も明らかにされている。
国内外からの旅行客を呼び込むために、インド政府管理下の主要港であるコチン(Cochin)
港、チェンナイ(Chennai)港、ムンバイ(Mumbai)港、モルムガオ(Mormugao)港、ニ
ューマンガロア(New Mangalore)港、およびポートブレア(Port Blair)でクルージング用
の施設が開発中である。
2.無制限水路での PIANC による船首沈下の公式の感度
Michael J. Briggs
要
約
国際航路会議(PIANC)による船首沈下の経験的予測に対し、入力パラメータ―の影響
について感度解析が行われた。最も「一般的な」PIANC 公式の中の5種類、Barrass、Eryuziu、
Huuska/Guliev、Römisch、および吉村による公式について、無制限水路や開水路に関する
調査が行われた。入力パラメータ―は船舶速度 Vk、ブロック係数 CB、および、船舶の喫水
に対する水路の深さ h/T であった。貨物を満載した超パナマックス級のコンテナ船スーザ
ン・マエルスク(Susan Maersk)号がサンプルとして使用された。水路のパラメータ―は、
ジョージア州ポート・オブ・サバンナ(Port of Savannah)の入港水路でよく見られる妥
当な範囲に基づき選択された。この感度解析では、合計 27 例が解析された。5 種類の公式
全てが妥当な予測をもたらしているが、利用者は入力変数の不確定性の影響を認識しなけ
ればならない。常に他の公式より優れた推定値を与える公式はないようである。多くの国
と研究者のそれぞれが、自分自身がより快適に使える「お気に入り」を持っている。船首
沈下の最大予測値と、水路または船舶のタイプがもたらす制約を知ったうえで、全 5 種類
の平均値を使用することが望ましいと著者は考えている。
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3.浚渫土排出の二層流動モデルを使用したシミュレーション
Sylvain Guillou
Julien Chauchat
Damien Pham Van Bang
Duc Hau Nguyen
Kim Dan Nguyen
要
約
港湾の構造物は、水位がかなり低い領域、特に河口に作られていることが多い。したが
って、船舶が入港できるように浚渫が必要となる。浚渫された堆積物は、既定の処分地区
に排出されている。この排出の際に出現する堆積物による濁りの密度は開始時には 350 g/l
を超えており、環境に影響を与えている。水の化学成分に直接影響を及ぼすのである。
排出後、堆積物は非常に高濃度な濁りの下方に沈殿する。沈殿に続いて、混濁流の形成
が海底に影響を及ぼす。本研究の目的はこの現象を研究することであり、堆積物搬送の二
層モデルを使用した数値シミュレーションを通じて行われる(Bardry 他、2000;Chauchat
他、2008;Nguyen 他、2009)。本研究は各層(水と粒子)についての運動量保存の方程式
を解くことに基づき行われ、その後、粒子と水の相互作用を積分する。Villaret 他(1997、
1998)による流れのない実験配置の比較では、現象のさまざまな段階は乱流モデルを用い
ずに十分に再現されることが示されている。
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