Combating the greenhouse effect

COMBATING THE GREENHOUSE
EFFECT 地球温暖化問題への取組み
Marie-Christine ROGER
Head of technical quality and prevention (DGUHC) 技術品質保全局長
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フランスは比較的早い時期から持続可能な発展における 2 つの主たる問題である
温室効果と地球温暖化問題に取組んで、フランスは 1997 年以降、リオデジャネイ
ロでの地球サミットの 5 年後、初めて排ガス低減の国際的目標を設定した京都議
定書に調印した。この同意書を通じて、フランスは 2010 年までに温室効果ガスの
排出を 1990 年レベルに低減することを約束した。今日ロシアの議定書批准により、
議定書に示された取組みは全く新しい局面を迎えている。
欧州連合は 4 億人から成り、温室効果ガスの 14%を占めている。地球温暖化はヨ
ーロッパにおいて特に深刻な問題である。実際、2003 年 8 月の欧州環境報告書で
は、ヨーロッパ大陸は特に地球温暖化により 2100 年までに平均 6℃の気温上昇の
影響を受けるとしている。2003 年にヨーロッパで起きた洪水は将来の災害の前兆
であり、今世紀末までにはさらにこの種の災害は頻繁に起きると予想される。
関係専門家との 1 年に及ぶ協議の後、フランス政府は 2004 年 7 月に“気候計画”
と呼ばれる行動計画をまとめた。気候計画の数値目標は、2010 年までに年間二酸
化炭素量換算で 5400 万トン相当を達成することである。
計画の主要目的は次の通りである:
1 –意識向上のためのコミュニケーションキャンペーンを開始する
他のヨーロッパ諸国と同様、フランスの対応姿勢は、冬期の家庭における(暖
房)温度が上昇し続けていることを受けて、ここ 10 年の間に警戒態勢へと変化し
てきた。イギリスの研究によると、1℃の温度上昇が 7%のエネルギー消費量増加
を引き起こすという事実にもかかわらず、過去 30 年間で、家庭の平均室内温度は
17℃から 22℃に上昇している。もしこの状況が続いた場合には、高性能省エネ技
術開発のために注がれたすべての努力が無駄になってしまうであろう。
従って、国民の間や地球温暖化問題に取組む専門セクター間の意識を高め、より
責任ある態度で、今行動する必要がある。
これを実行していくために、フランス政府は環境エネルギー局 ADEME に対して
2004 年 5 月を始まりとし、3 年以内にメディアキャンペーン(TV、ラジオ広告な
と)を使ったプログラムの導入を求めている。一般市民を対象とした、誰もが簡
単に応用できる情報の提供を目的としている。
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消費者側では、フランス政府は大型家電製品におけるエネルギー効率ラベル(エ
ネルギー消費量に基づき、最もエネルギー消費の少ない製品の方から“A”から
“E”のスコアを付ける)を導入しており、現在自動車と暖房ボイラーを含めたプ
ログラムの模索を行っている。プログラムの拡大は検討されており、言うまでも
なく市民の意識を高めることを目的としている。
2 –省エネ促進のための建設政策を利用する
フランスにおける建築分野は二酸化炭素排出の 19%を占めている。この分野にお
けるいくつかの活動が計画されている。
新築建物を監督する規制は 1974 年に施行された。2000 年に全面的に改訂され、
規制による効果は 5 年毎に強化されており、2020 年までに全体の 40%のエネルギ
ー性能改善を目標としている。全体のエネルギー性能に関して 15%の進捗範囲を
明らかにするだけでなく、2005 年の段階における規制には、夏期・冬期両方の快
適性(方角、シャッター、横型換気、外部環境)を重視する新要素も含まれるた
め、非常に重要なものになるであろう。同時に、新築住居購入者は、エネルギー
性能改良のための提案と共に、住居の推定消費量を概説した証明書を受けること
になるであろう。これは、住宅に関するエネルギーデータシートとして効果的な
エネルギー性能を診断する材料となる。
再生可能なエネルギー(太陽熱エネルギー、太陽電池エネルギー)の融合は、現
在規制の一部になっている。今後の規制の拡大を通じて、木材を利用した暖房と
熱のネットワーク利用がより注目をあびることになるだろう。他の規定により再
生可能なエネルギーの開発と多様性を持ったエネルギー利用に政府は焦点を当て
るであろう。すなわち、建設時において代替エネルギー供給の手段導入の可能性
についての義務的調査が導入され、当初消費量の 40%にあたる再生可能な代替エ
ネルギーを使用している装置に対して税額控除が導入されるであろう。もちろん
これらの対策による住宅ストックへの影響は比較的限られているが、年間約
300,000 件の住宅が建設されており、これは住宅ストック全体の約 1%にあたる。
このようにして政府は初めて欧州指令の枠組みのなかで、建築におけるエネルギ
ー効率の促進を目指し、既存建築に対する法案を成立させている。
1,000 平方メートル以上の建築で、建物の価値(“建築”価値のことであり、土地
価格は含めない)の 25%以上にあたる工事については、プロジェクト管理者は工
事終了後に全体のエネルギー性能の改善結果(建物の推定エネルギー消費量改善
に関して)あるいは、建築設備または外壁の性能改善結果を示さなければならな
い。この対策では、立法者は専門の建設プロジェクト管理者の関与を目論んでい
る。
小規模の建物についてはまだ定義されていないが、たとえば、すべての窓や暖房
装置を取替えなければならないような規定が課されるであろう。
既存の建物についても売買や賃借時には、エネルギー性能診断の対象となるであ
ろう。
今なお建設分野においては主要な研究開発プログラムである PREBAT が、新技術
の建築分野への融合とそれらの利用促進のための開発のために開始される。
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実際 2050 年までに求められる温室ガス効果排出の大幅な低減には、建築技術の全
面的な見直しと既存建物の補修、保守のための工事が要求される。設計ならびに
建築と改修に関与する専門家の組織化に関して、体系的なアプローチが今まで以
上に重要となるであろう。PREBAT の主な研究プログラムは、これまでの実務手
法(の限界)を打ち破り、建設のすべての段階に関与するような先導的取り組み
の一環である。
“持続可能な発展の建築”のための設計及び工事
主な原材料の使用と組立て
制度的プロジェクト管理の組織化
居住者の行動とどうしたらそれを変えられるかについての理解
3 –産業分野において
最も革新的な対策は、間違いなく炭素排出権取引システムの導入であり、その排
出権を売ることによって、産業人に省 CO2 を促すものである。政府は実際に、
2005 年 1 月 1 日からヨーロッパ排出権取引を実施する準備を進めている。
また政府は、エネルギーガイドライン法の文案の中に省エネ証明システムの導入
を織り込んでいる。これら証明は、省エネを実施している者に対してあたえられ
るものである。特定のエネルギー供給者(電気、ガス、石油など)は、最低量の
省エネを実施しなければならない。これら証明を取得するためには、エネルギー
供給者は省エネに貢献するか、顧客がそうすることを確実に保証するかのどちら
かを行わなくてはならない。
最後に、産業省は建設省と協力し、現在議会で審議中のエネルギーガイドライン
法で骨格が述べられている政策の具体化を図っている。これは炭素排出の少ない
エネルギーの“bouquet ブーゲ”の開発をベースとしたものである。この目的のため
に、フランスでは原子力エネルギーの利用を視野に入れており、2020 年からの原
子力エネルギー施設の所要の更新を準備している。これと並行してフランスはす
でに議論したように、特に税対策を通じて再生可能なエネルギーへの援助を継続
して行っている。フランスは再生可能なエネルギーによる電力の開発において、
再生可能なエネルギー源を 21%に上げることによって、欧州指令で確定した目
標を達成することができるであろう。
4 –空調の制御
すでに説明した建設セクターを対象にしたアクションプランとは別に、政府は冷
房に関する最近のフランス人の関心の高さに対して対処法を模索している。これ
は冷房による高いエネルギー消費と冷媒剤による温室効果ガスに対して排出の膨
大な量に着目したものである。政府は気候計画のチャプター全部を空調装置の有
益かつ合理的利用のために当てている。
5 –農業における建設産業との協力
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フランスではまだほんのわずかではあるが、建築における木材の利用割合を増や
す奨励策も行われている。建築に応用するために、政府は各建築への最低木材使
用量を導入し、政府プロジェクトへの資源利用も約束している。
結論
結論として、フランスは気候変動に対処していくには、専門的協議と多角的行動
が必要であると完全に認識している。フランスで導入されているこれらの行動は
この分野において完全に欧州連合の政策と密着したものであり、広い意味でリ
オ・デジャネイロサミットと京都議定書で採択された気候変動国連枠組条約に規
定した多国間枠組の一部と言える。この枠組において、フランスは特に発展途上
国に対して実施する外交的アクションプランを明確にしている。行動を起こすた
めに議定書の施行を待つわけではないが、フランスはロシアが議定書を批准した
ことで、議定書の正式発行が可能になったことを歓迎している。
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