Discours Keidanren

実際の演説と内容が異なることがあります
フランソワ・フィヨン首相
日本経済団体連合会における演説
2008 年 4 月 11 日金曜日
経団連会長、
ご臨席の皆様、
まずは、先ほど会談を行った経団連の御手洗冨士夫会長をはじめ、米倉副会長、会員の皆様に、
本日このようにお迎え頂きましたこと、厚くお礼を申し上げます。
本日ご列席頂いている皆様は、世界第二位の経済大国を築き、その富を常に支え続けている日
本の企業経営者の方々であられます。そのお立場と重要性を存じ上げているだけに、感激もひ
としおでございます。
フランスと日本は今年、外交関係樹立 150 周年を迎えます。その記念すべき年に、日本は G8
サミットの開催国となり、フランスは今年の後半、EU 議長国を務めます。
このような巡り合わせは、両国の友好関係を強化し、政治対話を深め、日仏の経済・技術協力
の新たな協力関係を促すための特別な機会であると思われます。
これらの件につきましては、本日福田首相との会談の中でも言及いたしました。洞爺湖サミッ
トに先立ち、7月にはニコラ・サルコジ大統領が日本を訪れますが、この意思を確認する機会
となるでしょう。
政治面では、日仏両国は素晴らしい関係を維持しており、それは見解の一致と価値観の共有か
らも明らかです。
フランスは、日本の国連安保理事会常任理事国への立候補を支持しています。日仏両国は、最
高レベルの会合で定期的に顔を合わせています。日仏両政府間の政治対話および戦略対話によ
り、核拡散防止(北朝鮮、イラン)、テロ対策、持続的発展、WTO など、あらゆる問題に取り
組むことができます。
日仏の重要な関係は、欧州アジア間の対話の場である ASEM(アジア欧州会合)における、ヨ
ーロッパ・アジア間の対話発展の切り札となっています。
しかし本日は、卓越した両国の政治関係のほかに、私が切望する両国の経済関係の発展につい
てお話ししたいと思います。日仏経済関係発展の潜在力はまだ十分に活用されていないと私は
考えます。
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この潜在力は非常に大きなものです。日本は世界第二の経済大国です。フランスは、5 億人の
消費者を擁する欧州単一市場という、世界で最も大きな市場の中心に位置しています。日本と
フランスはともに産業大国であり、グローバル化された世界で競争力を保つための手段を得た
いと考えています。
我々の経済発展は、今後もその大部分が両国の企業のノウハウと技術革新の上に成り立ってゆ
くことでしょう。
これは我々の関係において極めて重要な側面です。1858 年以降、日本は産業革命の基礎を築く
ため、しばしばフランスとフランスの技術者に頼ってきました。横須賀造兵廠の創設者レオン
ス・ヴェルニー、ガス灯導入の責任者アンリ・プレグランなどの名前を挙げることができます。
最近では、日本の技術・産業のモデルがフランスのエコノミスト、研究者、企業経営者たちの
関心を強く引き続けてきました。
今日でも日仏の企業は、環境により配慮した新技術・新産業の促進に取り組んでいます。そし
て原子力や自動車などの分野で協力・提携が行われています。将来は航空宇宙分野でも提携が
行われるかもしれません。
この点に関しては、在日フランス商工会議所に格別の敬意を表したいと思います。フランス商
工会議所は、アメリカ商工会議所に次いで、日本で最大の外国商工会議所で、今年 100 周年を
迎えます。そして日仏クラブの会長お二方、福原義春氏(資生堂名誉会長)とアンリ・ラック
マン氏にも、この場をお借りしてお礼を申し上げます。
ではなぜ、日仏両国の経済関係の潜在力はまだ十分に活用されていないように思えるのでしょ
うか。
まず第一に、二国間貿易での実績が極めて低いことが挙げられます。
フランスは、日本への輸出国としては 16 番目であり、フランスの日本市場におけるシェアはこ
こ 10 年ほど 2%以下で停滞しています。一方で、フランスは世界市場の 4~5%を占めています。
我々の貿易収支の不均衡はフランスにとって不利であり、50 億ユーロの貿易赤字を計上してい
ます。しかしフランスでは、世界中で認められ評価される大企業、そして活動的で競争力のあ
る中小企業が経済の全セクターで活躍しています。
つまり、両国間の貿易数値は我々の期待に対応していないのです。
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本日福田首相と、両国の輸出業者および投資家に相互アクセスを確保しつつ、日仏経済関係を
促進させる手段について会談を行いました。
現在さほど高額ではない日仏間の関税はさておき、まずは依然としてあまり適合しているとは
思えない幾つかの規制について再検討することが重要です。
非関税障壁のなかには、とくに消費者保護の観点から明らかに正当性が認められるものがあり
ます。しかしそれ以外については、日本の消費者さらには日本経済全体に本当に恩恵を与えて
いるのか、あるいは反生産的な間接的効果がないか、我々は自問すべきです。
この問題は、特に農産物加工、健康あるいは公共調達などの将来有望な市場に向けて提起され
ます。
特に食品添加物については、日本が WHO の国際基準を認めないため、日本の消費者の選択肢
は狭められています。
世界に向けて輸出されているフランスの農産物加工製品のうち、半分以上が日本で認可されて
いません。
医薬品の認可にも、日本では欧米諸国に比べて 4 倍の時間が掛かります。外国メーカーは臨床
試験をゼロからやり直さなければならないからです。
公共調達については、EU は今日世界で最も開かれた経済圏です。
公共市場は、欧州で年間 1 兆 5,000 億ユーロの実績を挙げています。このような市場開放はヨ
ーロッパの切り札となっていますが、欧州企業はその引き換えに圏外の公共調達への参入を望
んでいます。
日仏両国は、長期にわたる経済発展は世界貿易への統合に伴うものであり、世界貿易は相互性
と公正・公平な競争性の原則の最大限の尊重を前提としていることを十分認識しています。
公共調達に関する相互性は、欧州委員会が WTO に対し、あるいは二国間交渉に対して熱心に
取り組んでいる問題の一つです。
ヨーロッパの熱意と比較して結果が期待はずれであったもう一つの事例は、エアバスです。ボ
ーイング社と肩を並べるエアバス社は、世界市場の 50%を占めています。
エアバス社は、最近競合国アメリカの所轄地域にも参入し、アメリカ国防総省と 179 機の契約
を結びました。
しかし、より多くの乗客をより遠くへ、しかもより少ない燃料で運ぶことのできる A380 とい
う旅客機を提案する企業であるにもかかわらず、エアバス社の日本市場におけるシェアは 5%
に過ぎません。A380 の導入は、日本の消費者そして日本経済全体の利益となるのではないでし
ょうか。
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直接投資もまた、経済交流であります。
この分野では、フランスの日本での業績は良好です。フランスは全体の 11%を占め、日本への
投資はアメリカに次いで第二位です。
ルノー・日産の提携については、皆様全員がご存知のことと思います。また金融部門では、私
もこの後訪問するアクサ・ジャパンが、優秀な業務を展開しています。また建築資材の分野で
は、ラファージュと麻生セメントとの提携を挙げることができます。
さらに、1907 年に日本へ進出し、大阪酸素工業との提携により共同子会社ジャパン・エア・ガ
シズを設立したエア・リキード社があります。
フランスは、アメリカとイギリスに次いで世界第 3 位の海外投資受入れ国です。
これは非常に喜ばしいことです。なぜなら海外投資は国にとって富であり、雇用にとって切り
札であり、また国のインフラ、研究者、教育機関の質を証明するものであるからです。このよ
うな理由から、今後 2010 年までに日本における海外投資量を倍増するという日本政府の意欲に
敬意を表します。
また我々は、単に短期的な金融ビジョンしか持ち合わせず、産業論理に対応しない新たな投資
家の出現を懸念しています。
なかには非の打ち所のない働きをするソヴリン・ウェルス・ファンドもあり、それらは我々の
企業にとっては貴重な投資となっています。我々が、日本同様懸念するのは、政治的な目的を
第一に追及する投資家です。彼らを前にして、我々は反応しないでいるわけにはいきません。
G7 財務相会議は、IMF、OECD、世界銀行に対し、これらファンドの透明性とガバナンスとい
う意味におけるグッドプラクティスを定義するよう依頼しました。
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我々が日本の発展によせる期待は大きいものです。ではその一方、フランスは何を提供できる
のでしょうか。
まず我が国は、先ほど強調した通り、海外投資にすでにオープンな国であります。
またユーロ圏内では日本の一番の投資先でもあります。日本企業はフランス国内に 600 あり、5
万 7,000 人が雇用されております。
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1997 年にはトヨタのヴァランシェンヌへの巨大投資がありました。また、コーヨーセイコー,
三菱電機、SONY、キヤノンの投資、さらに 2007 年には自動車部品メーカーのマルヤス及びレ
ネザスの開発研究センターという投資がありました。
また我が国は近年多くの変化を遂げており、提供できることも多くなりました。これは 2007 年
5 月のサルコジ大統領の選出以来特に顕著です。
我々はまさに歴史的な改革計画を実施しています。
その目標は、フランスの切り札の価値を高め、生産能力を自由化し、世界で最もダイナミック
な企業をより引き付ける経済制度になるようフランスを変えていくことです。また、そのよう
な企業の最たるものが日本企業であります。
我々はまず労働市場改革に着手し、より柔軟に、よりダイナミックになるようにしました。
税制機能や残業時間の減税による労働の強化を図っています。
労働をシェアすればより高い富を生むという誤った仮説から抜け出したのです。
労働契約を時代に合わせ、従来のフランス制度と比べて、企業にとってより多くの柔軟性を保
証する「フレックス・セキュリティ」モデルを構築するため、失業保険制度を改革します。
その他の改革政策路線としては、3 つの手段を用いて知的経済の創出を奨励します。
第一に、フランスの研究潜在能力の強化があります。
大学にさらなる自律性を与えるため、根本的な大学改革を行いました。これにより、プロジェ
クト開発、革新的提携が行いやすくなるでしょう。
同時に、大幅な割合で研究予算、高等教育予算を引き上げました。世界中から注目される大学
キャンパス約 10 カ所の創出を目指します。
第 2 に、研究開発(R&D)及び企業イノベーションへの支援があります。
中小企業のイノベーションに対する支援予算を倍増しました。
現在の資本投資を 3 倍にし、企業による研究への税的支援措置(研究開発支援税額控除)を強
化します。これは現在欧州連合内で最も優遇的な措置です。
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また、我々はイノベーション支援公的機関を統合しました。これはより効果的に、より企業の
ニーズに対応するためです。
競争力拠点をつくり、企業研究と公的研究の融合を継続します。
この日本の産業クラスターモデルから発想を得た手法は、大成功を収めています。フランスの
新しい競争意識の具現化です。保証された 71 の競争力拠点には、現在 5,000 以上の産業組織、
すなわちフランスの賃金労働雇用の 3%、産業雇用の 11%が集結しています。
また世界レベルの真のクラスター創出に向けて、現在我々は競争力拠点の発展の新局面を打ち
出そうとしています。
第 3 に、イノベーション企業の環境保全、改革があります。
我々はビジネス・エンジェルの発展を支援します。資金を必要としている企業へ大量の資金が
向かうよう新しい税制優遇策を策定します。全成長企業に対して一定のステイタスを用意し、
起業段階の中小企業に対する資本提供を促進することにより、イノベーションと成長へと貯蓄
資金が流れるようにします。
この知的経済への賭けは、すでに実を結んでおります。
ここでは例を一つだけ挙げさせていただきます。インターネットとブロードバンド回線です。
ブロードバンド回線に関しては、わが国はこの数年でかなりの遅れを取り戻しました。インタ
ーネットに接続している世帯の 94% が、現在ブロードバンド回線を利用しています。
フランスは現在アメリカ合衆国よりも設備が整っています。また、世界のブログの 30%がフラ
ンスのものです。
モバイルのインターネットも急成長中です。新規改革が目白おしで、巨大な新規サービスをも
たらす可能性があります。現在では光ファイバーの大型開発にも取り組んでいます。
このような産業政策の発展に加え、行政組織、制度組織の健全化及び近代化が挙げられます。
それらをフランス企業の経済ダイナミズムに役立つような組織にしたいと考えています。
また、国家の支出を抑え、効率を高め、国家財政を健全化すべく国家改革を行います。
我々は公務員の地位を改革します。
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あまりにも複雑で不利になった制度を、経済活動に向けて合理化するために、大規模な税制改
革を開始します。
そして最後に、我々は労使対話モデルの改革を実施中です。必要な進化が労働争議を引き起こ
すのではなく、当事者間に建設的な交渉をもたらし、全体の利益となるようにするためです。
お聞きいただいたように、フランスは変わります。
グローバリゼーションを恐れません。
それどころか、グローバリゼーションに完全参加するための手段を手に入れたいと考えていま
す。フランスは「投資し、事業開発に良い」国になりたいのです。フランスはすでに世界で最
も大きな自由貿易圏、すなわち 27 の加盟国と 5 億人の消費者、16 兆 6,000 億ドルの GDP を抱
える欧州連合に加盟しています。
フランスは現在、世界市場への進出を加速しようとしているのです。
経済の開放とは、つまり人間の往来でもあります。この点からみて、ビジネスマン、ビジネス
ウーマンが日仏間を容易に移動できるように、必要措置が取られたことは大変嬉しいことです。
これは経団連が強く望んでいたことでした。
フランスでは近々新たな措置が取られ、外国の企業経営者、およびその雇用者や家族の受け入
れが改善されます。
日仏間では、2005 年 2 月 25 日付の日仏社会保障協定、および 2007 年 1 月 11 日の日仏税制協定
改正によっても、賃金労働者の移動が容易になりました。
同様に、企業の国際ボランティアとして日本で働くフランス人青年の数を増やすべく、日本政
府と取り組みを続けてゆきます。
両国間の経済関係強化の動きを促進すべく、今朝、福田首相と日仏経済宣言を採択しました。
この文書には、両国共通の優先課題(全世界での模造品対策の強化)、相互約束(両国間貿易
の非関税障壁の引き下げ)、日仏産業クラスターの協力強化の基軸)が詳しく記されています。
また、あらゆる企業パートナーとの協力により 2008 年にフランスと日本で開催される 100 以上
の経済・技術・産業分野の交流プログラムである「イニシアチブ・フランス=ジャポン」がス
タートしました。
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さらに、原子力に関する共同宣言を採択しました。原子力は、日仏両国が世界のリーダーとし
て 35 年以上にわたり第一線で提携を続けている分野です。私は明日、アレヴァ社との提携によ
り建設された六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場を訪問します。
***
最後に、地球温暖化、エネルギー安全保障、経済・金融不安、開発援助、平和と安全の強化な
ど、現代の世界的重要課題に直面している日仏両国の協力関係の、今後の展望についてお話し
たいと思います。
フランスと日本は共通の価値観を分かち合い、似通った問題に直面しています。従って、我々
は手に手を取って前進するメリットがあります。
我々は、G8 の日本開催とフランスの EU 議長国との間にシナジーを見出さなければなりません。
多国間制度の改革に向け共に努力しましょう。フランスは、日本、ドイツ、ブラジル、インド
が国連安全保障理事会の常任理事国になれるよう、アフリカ諸国の公正な代表団とともに取り
組みを継続していきます。この件は、福田首相にも今朝申し上げました。
フランスはまた、G8 が世界の新たな現実を反映し、新興諸国を徐々に受け入れてゆくことに専
念しています。そして我々がそれら新興諸国に期待するのは、現在の世界において彼らのとこ
ろに戻ってくる責任を受け入れることです。
このような世界統治の改革のほか、我々が避けて通れない 3 つの課題に共に対処しなければな
りません。
第一に、地球温暖化です。
開催国の日本は、この問題を G8 サミットの最優先課題にするよう希望しました。我々は北海
道洞爺湖サミットにより、国連の枠組における気候関連の交渉が進展することを期待していま
す。先進国には、二酸化炭素の放出を抑える方法を示し、新興諸国に対し地球温暖化対策への
実際的な参加を促すという重要な役割があります。
第二には、G8 のもう一つの重要テーマである開発援助が挙げられます。
この分野については、我々は日本と緊密な協議を持ちます。北海道洞爺湖サミットと次回のア
フリカ開発会議(TICAD)は、日仏の協力体制を強化する機会となるでしょう。我々は日本と
開発援助のアプローチを共有しています。それは良い統治の基準遵守に基づき、アフリカのた
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めの 3 つの優先課題、すなわち民間セクター開発、インフラ開発、ビジネス環境の改善を伴う
ものです。
そして最後に、我々の経済にとって極めて重要でありながら、獲得にはまだ程遠い、市場の安
定性です。
我々は市場の透明性を強化し、金融市場の主体者の最も大きな責任を確保しなければなりませ
ん。我々は格付機関の役割や、銀行の流動性に関する国際規則の発展、IMF の防止策の役割、
規制当局の最大の協力体制などについてよく考えなければなりません。
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つまり、我々には共に行うべき作業がたくさんあるのです。
以上が、日仏外交関係樹立 150 周年に際し、皆様にお話したかった事柄です。
2008 年は、日本で G8 が開催され、フランスが EU 議長国を務めるという特別な年です。そし
て日仏経済関係が強化される年になることを期待しています。
これは、現在激しいグローバリゼーションの時期を迎え、日本の方をますます論理的に見つめ
ているフランスの、かけがえのない望みです。
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