現代の住宅作品における外部空間の配置に関する研究 遠藤 徹也(指導教員 八尾 廣) 1. はじめに 表1 対象リスト 1.1 研究の目的と背景 No 高密度に低層の住居が建つ現代の東京都において 一戸建住宅を設計する場合、 外部空間をいかに配置し、 内部空間に繋げていくかは主要な課題である。現代の 建築家たちは、外部空間をいかにし、配置しているの か一端を明らかにする事が本稿の目的である。 1.2 対象作品 2001 年から 2005 年までの「新建築 住宅特集」に 連載されている住宅作品のうち、東京都の敷地面積が 150 ㎡以下の一戸建住宅 124 作品を対象とする[表 1]。 ただし、増築、改築、併用住宅、配置図、敷地境界線 が又は隣接建物が1戸ないものは対象外とした。 2. 分析方法 ①各階の内外部空間面積の棒グラフの作成 各階平面図から対象の内部空間と外部空間を抽出 し、色分けを行う。各階の内部空間の面積、外部空間 の面積の総和により棒グラフを作成する。 ②方位ごとの内外部空間面積のスターグラフの作成 平面図において、建築面積を示す図形の重心から東、 西、南、北の方位それぞれ 90°の範囲内の内部空間、 外部空間の面積をスターグラフにより示す。 2.1 各階における外部空間、 内部空間の面積の可視化 対象 124 作品について、 住戸の各階平面図において、 「床または地面があり、人が外部に出られる」外部空間 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 対象作品 世田谷の上町の家 大和町の家 西原の家 穴居人 千早の家 田中邸 旗の台の家 上荻の家 用賀Yハウス 黒の家 千石の住宅 To 代沢M邸 P・O・M ちっちゃな家 Tokyoトーキョー 箱の家-48[F邸] 箱の家-49[T邸] 旗の台の家 元麻布の家 RS1102 F1ガレージ ダスハウス Conoid M邸 ナチュラルスラット White Cube 鶏ノ木の家 M邸 階段の家 K/T N邸 ペンギンハウス 浜田山の家 小川邸 レス・プラス OGNO HOUSE 住宅K 簾庵 太陽と雨の家 ナチュラルウェッジ 経堂の家 用賀の家 鷺宮の家 代田の家 G&G House F&F House W邸 エルフの家 清水邸 RECO-house 武蔵村山の家 個個充居 お花茶屋の黒い箱 ガエ・ハウス CUE 殻の家 米山邸 今川の家 シャローハウス 碧い家 金指さんの家 各階、内部と外部面積の割合 4階 0 その面積を算出する。各階における内部空間の面積も 3階 3.31 の割合の棒グラフ、内部空間と外部空間のパーセンテ 29.81 1階 29.81 地下 29.81 0 図も作成し、個別の作品分析の補助資料とした。 3階 0% い犬走り等の地面 8.4 20 40 60 80 100% 2階 単位:㎡ 内部 77% 1階 ② 1階の地盤レベルにおいて、 計画の意図が見られな 外部 34.5 各階、内部と外部のパーセンテージ割合 4階 0% 計画された地面 9.1 屋上 0% 細に把握するために下記の種別によって色分けされた ① 1階の地盤レベルにおいて、 植栽、 舗装等が施され、 内部 2階 ージの割合の棒グラフによって視覚化する。 [図1] ※注)外部空間には、様々な状態があり、これらを詳 対象作品 所在地(区) House KI 東京都 箱の家-58 杉並区 あがり屋根の家 豊島区 引き出しの家 豊島区 ㎥邸 調布市 OPERA 練馬区 石神井台の家 練馬区 東玉川の家 世田谷区 O HOUSE 目黒区 HP 目黒区 Conoid2 北区 国立の家 国立市 クスハウス 世田谷区 小日向の住まい 文京区 巣鴨の住宅 豊島区 森に浮かぶ家 東京都 パイナップルハウス 墨田区 TAK 東京都 平町の家 目黒区 江戸川ソーラーキャット 江戸川区 本象 練馬区 セル・ブリック 杉並区 門前仲町の住宅 江東区 高田の町家 豊島区 高松町のガレージ 立川市 木の家-1 三鷹市 KK 目黒区 三軒茶屋の住宅 世田谷区 House FOR TheF,F 品川区 前原の若い櫻 小金井市 H邸 板橋区 白鷺の家 中野区 ウェハウス 品川区 燈翳 文京区 千駄木の家 文京区 亀戸の住宅 江東区 阿佐谷南の家 杉並区 西荻の家 杉並区 代々木上原の家 渋谷区 House MTK 新宿区 B HOUSE 世田谷区 9坪の家 練馬区 空の光の家 目黒区 対角線の家 国分寺市 House in NISHIOGI-KITA 杉並区 亀有の家 葛飾区 H邸 渋谷区 柿の木坂の住宅 目黒区 House FNH 世田谷区 野沢の家 世田谷区 上野毛の家 世田谷区 府中の家 府中市 田園調布の小さな家 大田区 Nハウス 東京都 ホルニストの家 世田谷区 池上の住宅 大田区 砧の家 世田谷区 アコ・ハウス 世田谷区 VIEW CUBE 町田市 クタイ 東京都 w1104月見台の家 足立区 住宅#201 東京都 屋上 0 を(以下、本論では<外部空間>と示す。 )を抽出し、 算出する。これらの数値を内部空間と外部空間の面積 所在地(区) No 世田谷区 63 中野区 64 渋谷区 65 東京都 66 豊島区 67 調布市 68 品川区 69 杉並区 70 世田谷区 71 大田区 72 文京区 73 立川区 74 世田谷区 75 渋谷区 76 港区 77 世田谷区 78 杉並区 79 文京区 80 品川区 81 港区 82 文京区 83 三鷹市 84 三鷹市 85 目黒区 86 世田谷区 87 武蔵野市 88 東京都 89 大田区 90 東京都 91 渋谷区 92 世田谷区 93 目黒区 94 板橋区 95 杉並区 96 狛江市 97 世田谷区 98 豊島区 99 杉並区 100 世田谷区 101 国分寺 102 杉並区 103 世田谷区 104 世田谷区 105 中野区 106 世田谷区 107 東京都 108 東京都 109 大田区 110 世田谷区 111 文京区 112 東京都 113 調布市 114 三鷹市 115 葛飾区 116 世田谷区 117 東京都 118 杉並区 119 世田谷区 120 杉並区 121 新宿区 122 板橋区 123 小金井市 124 23% 46% 地下 78% 0% 20% 外部 54% 40% 22% 60% 図1 棒グラフによる視覚化 80% 100% ③ 床があり人が外部に出られるテラス 2階以上の各階ごとの外部空間の合計面積 単位:㎡ 30 風、採光上囲われた特殊な外部空間 4階 3階 25 ④ 壁またはルーバーで囲われており、 室内から見て痛 20 2階 15 10 5 0 世田 大和 旗の 用賀 千石 西原 穴居 千早 田中 上荻 黒の 谷の 町の 台の Yハ の住 上町 の家 人 の家 邸 の家 家 家 家 ウス 宅 の家 ⑤ ガラス開口部を青いラインにより強調し、 外部のつ ながりが明確にわかるようにした 2階 10.8 4.6 7.7 6 3.9 12.2 8.4 0 0 0 0 0 0 6.2 6.4 0 2.1 0 0 0 0 9.3 8.1 0 0 0 5 9.3 0 7.6 0 9.5 1.5 0 0 1.9 9.1 0 0 0 4.7 0 0 4階 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12.2 0 0 0 26.9 18.3 9.1 4.7 2.9 17.1 2階以上の各階ごとの外部空間の合計面積 単位:㎡ 重心を中心とし各方位に分けた 90°の角度内に含ま ナ Toky 箱の 箱の ちっ 元麻 F1ガ ダス チュ oトー 代沢 P・ O RS11 Cono 家- 家M邸 ラル ちゃ 布の レー ハウ 02 id キョ M邸 ・ M 48[F 49[T ス な家 家 ジ ス ー 邸] 邸] ラッ ト 3階 8.8 2.2 各階における方位ごとの外部、 内部面積の可視化 対象作品 124 作品について、建築面積を示す図形の To 30 3階 25 20 2階 15 4階 10 れる<外部空間>、内部空間の面積を各と算出し、ス 5 0 ターグラフによって可視化する。 3. 分析 対象 124 作品の中で、作成したグラフが、特徴ある ナ ペン RECO OGN 浜田 レス・ 旗の 太陽 チュ エル 武蔵 G&G F&F Whit 鶏ノ 階段 小川 経堂 用賀 鷺宮 代田 ギン O - e 木の M邸 K/T N邸 山の プラ 台の 簾庵 と雨 ラル 村山 Hous Hous W邸 フの HOU hous ハウ の家 邸 の家 の家 の家 の家 Cube 家 e e 家 ス 家 の家 ウェ 家 の家 SE e ス ッジ 2階 0 4.8 15 3階 4.6 10.5 0 4.8 0 4階 2 0 0 0 0 0 0 2.2 0 9.1 12.5 1.8 3.31 0 2.4 0 0 4.7 0.4 7.3 2.7 4.1 0 0 5.4 0 11.7 0 0 6.6 8.3 0 0 7.5 5.6 0 0 0 0 0 0 8.5 0 0 0 0 0 0 0 0 8.9 0 0 0 0 11.2 7.1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2階以上の各階ごとの外部空間の合計面積 単位:㎡ 30 傾向を示す作品を抽出する。抽出した作品について、 外部空間の取り方、内部と外部のつながり方に設計上 25 2階 20 15 3階 4階 10 5 どのような工夫がなされているかを分析する。 3.1 各階の<外部空間>-内部空間の面積を示す、 棒 グラフによる抽出 全 124 作品を通して見ると、2階以上の階で大きな 外部空間をもつ作品は予想以上に尐ないことがわかっ 0 W1 お花 シャ あが ガエ・ 箱の 金指 住宅 引き 石神 東玉 O 10 個個 茶屋 殻の 米山 今川 ロー 住宅 クタ り屋 碧い Hous 清水 OPER H邸 #20 出し ㎥邸 4月 ハウ CUE 家-5 さん 井台 川の HOU e KI 邸 A 根の 家 充居 の黒 家 邸 の家 ハウ K イ SE 見台 ス 8 の家 1 の家 の家 家 い箱 ス 家 の家 2階 2 4.8 0 6 3.3 7.4 6.5 0 1.5 8.6 0 0 8.5 0 2.6 5.4 8.2 0 0 9.8 3階 0 4 0 0 0 0 0 2.6 0 0 0 0 0 0 0 0 7.4 0 0 0 0 0 0 0 0 4階 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 単位:㎡ 25 3階 20 15 がわかった。また、内部空間と外部空間のパーセンテ 0 HP 江戸 パイ 高松 小日 門前 川 クス 巣鴨 森に ナッ セ 高田 町の 平町 ソー 木の 向の 仲町 Conoi 国立 本象 ル・ブ ハウ の住 浮か プル TAK の町 ガ d2 の家 住ま の住 の家 ラー 家-1 ス 宅 ぶ家 ハウ リッ ク 家 レー い 宅 キャ ス ジ ット 部空間をもつ作品は全 124 作品中 33 作品(全体の約 0 0 1.4 0 16 0 1.9 2.3 5 3 1.4 3.6 7.2 0 0 2.6 0 14 0 3階 0 2.4 0 0 0 2.3 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.9 0 0 4階 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 9.1 17.6 9.3 取り扱い分析していく。 [図2] 2階 20 3階 15 0 抽出した外部空間の配置を下記に示す。 [図 3] 1) 断面における外部空間の配置 断面における配置として3つのパターンを抽出でき た。また断面における配置として、①駐車場上部を利 0 4階 2階 9.9 0 6.8 0 0 0 3.5 5.2 7 0 8.4 0 0 6.4 3.8 3階 6.9 2.8 0 27 0 1 0 0 0 5.6 0 0 0 0 0 0 0 0.6 0 5 8.6 12.5 8.9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4階 0 18.6 3.5 7.8 18.6 3.2 10.8 22.3 図2 2階以上の各階ごとの外部空間の合計面積 ① ① 駐車場上部を利用した外部空間の配置 南方向に空地または道路の利用 ② 外部空間の配置は断面においては外部空間の配置の仕 て外部空間をもつ作品の2種類あることがわかった。 8.4 田園 Hous 代々 柿の 亀戸 阿佐 空の 対角 e in 上野 ホル 池上 アコ・ 調布 Hous B 西荻 木上 9坪 亀有 府中 Nハ 砧の VIEW 木坂 Hous 野沢 H邸 e HOUS の小 の住 谷南 光の 線の NISHI 毛の ニスト の住 ハウ CUBE の住 e FNH の家 の家 原の の家 の家 の家 ウス 家 MTK E さな 宅 の家 家 家 OGI家 の家 宅 ス 家 宅 KITA 家 つ作品と2階以上に 20%以上外部空間をもつ作品の カ所に大きく外部空間をもつ作品、また2カ所に分け 0 5 3.1 で抽出した、2階以上に 10 ㎡以上外部空間をも ターンが抽出できた。また外部空間の配置として、1 1.7 25 3.1.2 外部空間の配置の分析 方に3つのパターンがあり、平面においては5つのパ 0 30 つ作品と 20%以上外部空間をもつ作品は合計で 36 作 品(全体の約 29%)あり、外部空間を広くもつ作品を 0 21.4 6.5 14.9 2階以上の各階ごとの外部空間の合計面積 10 26%)ということがわかった。10 ㎡以上外部空間を持 三軒 Hous ウェ 千駄 e 前原 白鷺 茶屋 FOR の若 ハウ 燈翳 木の の住 の家 TheF, い櫻 ス 家 宅 F KK 2階 単位:㎡ ージ割合の棒グラフから2階以上の階で 20%以上外 2階 4階 5 階以上の階において 10 ㎡以上の外部空間をもつ作品 は全 124 作品中 26 作品(全体の約 20%)であること 13.3 12.6 2階以上の各階ごとの外部空間の合計面積 10 た。内部空間、外部空間の面積割合の棒グラフから2 3.5 12.5 7.7 断 面 に お け る 外 部 空 間 の 配 置 ② 下階上部を利用した外部空間の配置 ③ 建物から突き出した外部空間の配置 平 面 に お け る 外 部 空 間 の 配 置 方位による採光の確保 ③ 景色の利用 ④ 隣接住宅の隙間の利用 ⑤ 住宅の形状操作の利用 図3 断面、平面における外部空間の配置 0 0 0 15.7 0 0 用した外部空間の配置、③建物から突き出している外 表2 断面における下階と同階のつながり 部空間の配置には、同じ階のレベルの内部空間と下階 ①駐車場上部の利用 のレベルの外部空間と内部空間にも関わっていること 対象作品 がわかる(②下階上部を利用した外部空間の配置には 同階のレベルの内部空間とのつながりのみ)。 3.1.3 下階と同階のつながり 田中邸 箱の家-49[T邸] ナチュラルスラット 石神井台の家 B HOUSE VIEW CUBE 元麻布の家 田園調布の小さな家 下階 内部 子供部屋 玄関 玄関 なし 玄関、寝室 なし 玄関 玄関 外部 駐車場 駐車場 駐車場 駐車場 駐車場 駐車場 駐車場 駐車場 同階 内部 リビング 書斎 リビング・ダイニング リビング リビング・ダイニング なし 寝室 リビング 外部 なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし 同階 内部 リビング 書斎 寝室 個室 リビング 個室 リビング 個室 個室 リビング アトリエ 寝室 洗面所 寝室 和室 洗面所 リビング 寝室 リビング・ダイニング ①の駐車場上部を利用した外部空間の配置の1階レベ ルの外部空間は「駐車場」 、内部空間のつながりとして 「玄関」が多いことがわかる。③建物から突き出して いる外部空間の配置の1階レベルの外部空間は「植栽 等が施されている外部空間」で内部空間のつながりと して多くは「寝室」につながっていたことがわかる。 また、建物から突き出している外部空間の配置は、床 の種類が異なり、スノコ状のもの、グレーチング、コ ンクリート、デッキなどがあることがわかった。また ①と②の同階のレベルの内部空間のつながりとして 「リビング」が多いことがわかる。 [表2] 2) 平面における外部空間の配置 平面における配置として、5つのパターンを抽出で き、敷地状況で外部空間の配置は大きく左右されるこ とがわかる。①南方向に対して空地または道路がある 場合:採光を多く確保できる南方向にスペースがある ので、広く外部空間を配置している。②方位による採 ②下階の利用 対象作品 世田谷の上町の家 Conoid 鶏ノ木の家 K/T N邸 経堂の家 OPERA 巣鴨の住宅 ウェハウス 千駄木の家 代々木上原の家 H邸 砧の家 穴居人 千早の家 黒の家 OGNO HOUSE アコ・ハウス 箱の家-48[F邸] 下階 内部 なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし なし ③建物から突き出している外部空間 下階 同階 対象作品 内部 外部 内部 F&F House 玄関 植栽等施された外部空間 ダイニング パイナップルハウス 寝室・ピアノ室 植栽等施された外部空間 リビング・ダイニング・主寝室 前原の若い櫻 寝室 植栽等施された外部空間・テラス リビング・ダイニング H邸 寝室・洗面所・浴室 植栽等施された外部空間 玄関・リビング・ダイニング 亀戸の家 主寝室・書斎・玄関 植栽等施された外部空間 リビング・ダイニング・台所 西荻の家 寝室 植栽等施された外部空間 リビング 亀有の家 寝室・浴室 植栽等施された外部空間 ダイニング 代沢M邸 寝室 植栽等施された外部空間 浴室・瀬免除 浜田山の家 寝室 ドライエリア リビング・ダイニング 光の確保:南方向に建物があり南からの採光を確保し にくく東、 西方向に対し広く外部空間を配置している。 表3 断面、平面における外部空間の配置 2階以上に10㎡外部空間を取っている作品 ③背景の利用:方位に関わりなく広く、外部空間を景 色に対して配置している。④隣接住宅の隙間の利用: 採光をどの方位からも確保しにくく、外部空間の配置 の工夫として隣接建物の隙間を利用し広く外部空間を 配置している。⑤住宅の形状操作の利用:建物の形状 を操作することで外部空間を生み出し、 配置している。 3.1.4 棒グラフの分析結果 断面における外部空間の配置で一番多い配置は、下 対象作品 世田谷の上町の家 田中邸 箱の家-48[F邸] 箱の家-49[T邸] Conoid ナチュラルスラット 鶏ノ木の家 K/T N邸 経堂の家 F&F House OPERA 石神井台の家 巣鴨の住宅 パイナップルハウス 前原の若い櫻 H邸 ウェハウス 千駄木の家 西荻の家 代々木上原の家 B HOUSE 亀有の家 H邸 砧の家 VIEW CUBE いことがわかった。これは狭い敷地の中で効率よく採 光を確保できる事から多く使用されている事が言える。 また、平面における外部空間の配置で多いのは南方向 に空地または道路がある場合と方位による採光の確保 の2種類が多い事が分かる。隣接建物が多く悪条件の 敷地の場合、隣接住宅の隙間を利用して外部空間を工 夫し広く取っている住宅もあることがわかった。 [表 3] 平面的な外部空間 2階以上に20%外部空間を取っている作品 対象作品 階上部を利用して外部空間を広く取っている作品が多 断面的な外部空間 車庫上部を利用している外部 下階屋上を利用している外部 建物から突き出している外部 南向きが空地又は道路 方位による採光の確保 景色の利用 隣接住宅の隙間からの採光確保 住宅の形状操作 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 世田谷の上町の家 穴居人 千早の家 田中邸 黒の家 代沢M邸 箱の家-48[F邸] 箱の家-49[T邸] 元麻布の家 Conoid ナチュラルスラット 鴨ノ木の家 K/T N邸 浜田山の家 OGNO HOUSE 経堂の家 H邸 巣鴨の住宅 パイナップルハウス 前原の若い櫻 ウェハウス 千駄木の家 亀戸の家 西荻の家 代々木上原の家 B hOUSE 亀有の家 H邸 田園調布の小さな家 砧の家 アコ・ハウス VIEW CUBE 断面的な外部空間 平面的な外部空間 車庫上部を利用している外部 下階屋上を利用している外部 建物から突き出している外部 南向きが空地又は道路 方位による採光の確保 景色の利用 隣接住宅の隙間からの採光確保 住宅の形状操作 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 3.2 方位ごとの<外部空間>-内部空間の面積を示す 外部空間 スターグラフによる抽出 東 全 124 作品を通して見てみると、隣接建物3北方向 南 南 外部空間 10 8 6 4 2 0 20 15 屋上 10 屋上 5 3階 西 東 2階 2階 西 0 1階 1階 に空地または道路がある場合のスターグラフに3種類 方位における各階面積のグラフ 方位における各階面積のグラフ 単位:㎡ の特徴的な傾向があることがわかった。下記に特徴的 単位:㎡ 北 外部空間 な傾向が見られた3種類を示す。 [図4] 1)南向きに伸びている傾向 東 南 南 外部空間 30 25 20 15 10 5 0 10 8 6 4 2 0 3階 2階 西 2)各階に対して東、西、南に複数伸びている傾向 3) 北向きのみに対して伸びている傾向 北 東 3階 2階 西 1階 1階 方位における各階面積のグラフ 単位:㎡ 3種類の傾向として、隣接住宅が多く、採光が取り 方位における各階面積のグラフ 単位:㎡ 北 北 図4 北方向に空地又は道路がある敷地の方位スターグラフ にくい悪条件の敷地は、 窓のみの採光の確保の場合や、 外部空間 採光を確保するために外部空間の配置を工夫している ことがスターグラフでわかる。 東 4. 個々の分析 南 10 8 6 4 2 0 3階 2階 西 1階 個々の分析として、No.97 千駄木の家(設計:手嶋 方位における各階面積のグラフ 単位:㎡ 保建築事務所) を取り上げます。 隣接住宅は5件あり、 密集された場所に位置し変形した敷地。採光は北方向 図5 配置図 北 図6 千駄木の家のスターグラフ 北 北 ・1階 南西向きの外部空間 北 この作品の外部空間の配置は5つある。 [図7] 東 東 東 のみ取れることがわかる。 [図5] [図6] 南 形状操作によって敷地の鋭角な場所を活かし南向きに 南 南 内部との繋がりは「書斎、リビング、寝室」住宅の 1階平面 2階平面 西 西 住宅の隙間から採光を取ることができ、外部空間の配 西 スペースをあけることによって外部空間を配置し隣接 3階平面 置の工夫が見られる。 ・1階 東向きの外部空間 図7 千駄木の家、各階平面図 内部との繋がりは「トイレ・読書室」で配置図から 東面には隣接住宅があり、採光は確保しにくい外部空 ・3階 東向きの外部空間 間の配置になっているが、繋がりはトイレ・読書室で 内部との繋がりは「寝室・トイレ」で1階と同じ要素 それほど多くの採光を確保する必要はなく、採光を柔 であり、また1階よりも3階のほうが採光は確保しや らかく確保する外部空間の配置の工夫が見られる。 すく内部との繋がりは強いことがわかる。 ・2階 北向きの外部空間 4.1 個々の分析結果 内部との繋がりは「リビング・ダイニング」東・西・ 千駄木の家の外部空間の配置として、南向きにスペ 南方向には住宅が密集していて採光を大きく取れない。 ースをあける工夫、隣接住宅の隙間の利用、景色の利 北向きに路地的空間があり自然が存在している事から 用、 下階上部の利用の4点の工夫があることがわかる。 景色の利用で外部空間を北向きに広く配置している事 5. 分析結果 が考えられる。また外部空間を長細く取ることによっ 住宅が高密度に密集している東京都の外部空間の て、西方向からの採光を取る工夫が見られる。 [図 6] 配置は、南方向に対して外部空間をいかに広く取れ ・3階北向きの外部空間 るかが重要で、隣接住宅の戸数と方位により外部空 内部との繋がりは「寝室・トイレ」で2階の外部空間 と同じ要素があるが2階よりも採光は多く確保できる。 間の配置は事なり、敷地が小さく悪条件の場合、外 部空間の配置は工夫されることが多いといえる。
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