経営コンサルティング概論 唐沢 昌敬 授業の目的 本講座のねらいのひとつは、受講者に公認会計士のコンサルティングと一般のコンサルティングの違いを理解してもらう ことである。それは、公認会計士はつねに公共性の立場から自律性を維持し、正当な注意義務を払い、哲学・方法論をよ りどころに知の論理にもとづき活動していかなければならないという点である。まさに、原則論で物事を判断していかなけ ればならないのである。公認会計士は、社会・経済の活性化の実現を目指して、つねに原則論で判断し、その知識・能力 を出し切らなければならないということである。本講座では、いくつかの方法論を教え、受講者が原則論で現象を判断でき るようにする。 授業の概要 公認会計士の経営コンサルティングは、一般の経営コンサルティングと著しく異なる。原則論で物事が判断できるよう に、公認会計士は高度な専門知識を身につけているだけではなく、知識を体系化、総合化するよりどころとなる哲学・方 法論を修得していなければならない。哲学・方法論をよりどころに深い考察のもとに、仮説を見つけるとともに、見つけた 仮説の妥当性を検証している。哲学・方法論によって体系化された知識抜きに現象の本質に迫ることはできない。原則論 で企業経営上の本質的問題の真の原因を明らかにし、対応策を立てていくには哲学・方法論のもとに体系化された知識 が不可欠なのである。 本講座では、最初に現在までもっとも有力な方法論である社会学的機能主義について解説する。そしてその具体的適 用方法をケース・スタディで確認する。次に未来の方法論である複雑性の科学の原理について解説する。事例としては、 製造業・病院などを取り上げ、原則論にもとづく経営コンサルティングがどのように展開するかを明らかにする。 グーグルなどの最先端企業を取り上げ、複雑性の科学の原理を応用した創発型経営を考察する。 成績評価の基準・方法(配点割合) 次の3つの要素を基礎に成績を決定する。(配点割合は概ね次の通り) ①期末試験の成績(70%) ②出席(10%) ③小テスト(20%) 使用教材・教科書・参考文献・予習事項・宿題ないし課題 (1)教科書 唐沢 昌敬著 『複雑性の科学の原理』 慶應義塾大学出版会株式会社 2013 年度授業計画 回 テーマ 公認会計士の経営コンサルテ 1 2 内容 公認会計士の経営コンサルティングと一般の経営コンサルティングの異同を解説する。 ィング 公認会計士の経営コンサルテ コンサルテーション、アドバイザリー・サービス、インプリメンテーション・サービス、トランズア ィング業務の内容 クション・サービス、スタッフ・サービス、受託業務などといった公認会計士の経営コンサルテ ィングの業務の内容について解説する。 正しい判断 3 経営コンサルタントの正しい行為、正しい判断は、どのような要素に支えられているかを明 らかにする。 社会科学 4 社会科学とは何かを解説した上で、現代の社会科学の有力な発想方法である実証主義の 本質と限界を解説する。また、あわせて公認会計士のコンサルティングでもっともよく用いら れている分析的アプローチについて解説する。 帰納法と演繹法 帰納法・演繹法の基礎理論を解説する。 事例研究(1) 経営学の基礎理論を用いて、現実の企業の課題を整理する。 事例研究(2) 経営学の基礎理論を用いて現実の企業の課題に対する改善策を立案する。 社会学的機能主義(1) 現代のもっとも代表的な社会科学の方法論である社会学的機能主義について解説する。 社会学的機能主義(2) 目標達成、適応、統合、潜在性といった4つの機能的命題の実現を通して、社会現象、経営 5 6 7 8 9 現象を分析する構造機能分析について解説する。 社会学的機能主義(3) 社会学的機能主義の視点から現代の社会、経営における問題を解説する。 個別理論と方法論 方法論を用いることにより、経営の個別の理論がどのように体系化、総合化されるかを明ら 10 11 かにする。 事例研究(1) 社会学的機能主義の視点から具体的組織を分析し、問題を整理し、改善策を立案する。 事例研究(2) 社会学的機能主義の視点から具体的組織を分析し、問題を整理し、改善策を立案する。 事例研究(3) 社会学的機能主義の視点から具体的組織を分析し、問題を整理し、改善策を立案する。 複雑性の科学の原理 グーグル、アップルなどの最先端の企業の分析に不可欠な基礎理論である複雑性の科学 12 13 14 15 の原理について解説する。
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