DESIGN TIPS

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INTERNATIONAL RECTIFIER・
パワーICによる大電力・高周波ドライブ時の
ノイズ問題の解決について
By Laszlo Kiraly
はじめに
の付加電力損失
−不安定な動作に起因するノイズの発生
IR2110・ハーフブリッジドライバパワーICは、
高電圧ハーフブリッジやHブリッジ回路において、適
切で費用効率のよいゲート駆動を提供するIR社製デ
バイス系列の1つです。この系列には、IR2125
(電流検出機能付きハイサイドドライバ)、IR212
1(電流検出機能付きローサイドドライバ)、IR21
30(3相ブリッジドライバ)も含まれています。グ
ランド基準の、ロジックレベルの入力信号を受けて、
MOSゲートパワートランジスタ(500Vまでオフ
セットされる一方はローサイド、もう一方はハイサイ
ドのトランジスタ)を駆動するので、IR2110を
使うとシンプルな回路設計になります。必要なのは、
IR2110を1つと、2∼3個の外付けの部品だけ
です。
ノイズは制御回路を妨げるので、スイッチング素子の
誤動作や不動作の原因となります。ハイサイドMOS
ゲートドライバの出力(Vsと記したピン5)の際、逆
電圧スパイクがおこると、ドライバICは破壊します。
1.浮遊インダクタンス
一般的なハーフブリッジ回路を図1に示します。この
回路にはMOSFETが2個、IR2110が1個使
われます。浮遊インダクタンスも図1に示します。
しかし、高スピードで大電流をスイッチするには障害
があります。そういった回路を設計する際に考慮に入
れるべきややこしい点を、このDESIGN TIP
Sで詳しく説明します。最も効果的なレイアウトにす
るには、回路の動作に最も影響する浮遊インダクタン
スを最小にしなければなりません。主電流の浮遊イン
ダクタンスは、かなりのエネルギーを貯え、スイッチ
ング素子がターンオフするとき次のような問題が起こ
ります。
−高スパイク電圧
−吸収された誘導エネルギーによるスイッチング素子
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図 1:
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回路の動作に最も影響を及ぼす重大な浮遊インダクタ
ンスは、大電流が流れるライン上にあります。
LD1とLs2は、MOSFETとデカップリングコ
ンデンサの間のワイヤのインダクタンスに左右されま
す。Ls1とLD2は、MOSFET間のワイヤのイ
ンダクタンスに左右されます。
次の例で問題の重大さがわかります。Q1(図1参照)
が20nsで10Aの負荷電流をスイッチオフすると
仮定して下さい。もしも電流ルートに10nHのイン
ダクタンスがあれば、ターンオフの間に5Vのスパイ
クが計測できます。AWG24で長さ3/4インチの
電線がまっすぐなときに約10nHのインダクタンス
があります。
図 2:
2.実験結果
テスト回路を図2に示します。この回路には、IR2
110ブリッジドライバデザイナーズキット(品番I
R2119)
を含むプリントボードの回路を使います。
電源とテスト回路間の配線の影響をなくすために、Q
1DとQ2Sの端子の間に100uF/250Vの電
解コンデンサを接続します。
図3に関連する波形を示します。Q1がターンオフ
すると、Q2のボディーダイオードがフリーホイー
ルの電流を通します。フリーホイールダイオード上
の電圧スパイクは約10Vで、ダイオードのターン
オンの遅延とパッケージ内部のインダクタンスに左
右されます。
図 3:
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IR2110のピン5での逆スパイクは50Vで、こ
れは、LD2とLS2の影響で、ピン5がフリーホ
イールダイオードから絶縁することが原因です。
4.安全領域を増やすための素子の追加
IR2110のピン5とハイサイドMOSFETの
ソースとの間に抵抗を挿入することによって、逆の過
渡期間中のピン5へ流れる電流を制限することができ
ます。この抵抗(R1A)の位置を図5に、R1Aの
値に対するスパイクの大きさとターンオフ時間を図6
に示します。図4と図6を比較すると、R1Aは、ター
ンオフ時間では効果が落ちるものの、ピン5での逆ス
パイクをR1よりも効果的に抑制していることがわか
ります。
図 4:
3.スイッチング速度制限
MOSゲートパワートランジスタを、IR2110、も
しくはそれに似たMOSゲートドライバから直接駆動さ
せると、どうしても高スイッチング速度になります。図
2の回路は、
0Ωの直列のゲート抵抗ではターンオフ時
間が4nsになり、
IR2110のピン5で90Vの逆
スパイクが生じます。
直列のゲート抵抗に対する、
逆スパイクとターンオフ時
間のグラフを図4に示します。ターンオフ時間は、直列
のゲート抵抗の一次関数ですから、
直列のゲート抵抗の
値が増えるにつれて、
逆スパイクの大きさはすばやく減
少します。
グラフの急な屈曲部(図4参照)からちょうどよい抵抗
値を選ぶと、
スパイクの大きさとターンオフ速度間のト
レードオフがよくなります。
テスト回路で27Ωのゲー
ト抵抗を選んだ結果は、スパイク電圧が18Vで、ター
ンオフ時間が48nsでした。
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図 5:
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逆スパイクを抑制するもう1つの方法は、ダイオード
をピン5からアースに配置することです。図5におい
て、これは高速・高耐圧のダイオードのD1Aですが、
R1Aはこのダイオードを通る電流を制限します。こ
のアプリケーションでダイオードを選ぶ際の最も重要
な要素は、ターンオン時間です。逆回復時間は問題に
なりませんが、もし長すぎるようであれば、R1Aは
動作周波数が高いと相当の電力を損失します。一般的
に、ダイオードの逆回復時間が短ければ、ターンオン
時間が長くなるのは事実です。
この回路で、いくつかの異なったダイオードがテスト
されました。逆スパイクの幅がたった15nsだった
ので、これらのダイオードでは、ピン5の逆スパイク
の幅にたいした違いはありませんでした。
しかし、もしも浮遊インダクタンスが高くなれば、逆
スパイクも広がり、ダイオードが効果的にクランプし
ます。
5.まとめ
浮遊インタクタンスが接続された状態で高速スイッチ
ングを行うと、高圧・高速スパイクが生じます。この
スパイクのエネルギーは、浮遊インダクタンスと電流
の2乗に比例して憎加します。IRはグランドから−
5VまでMOSゲートドライバの動作を保証します。
このことにより、ロジック側のグランドとMOSFE
Tの電力側のグランド間で適度の逆電圧スパイクのあ
る場合でも、適切な回路の動作が確約されます。
信頼性のある回路の動作を確実にするためには、次の
ようなことをしなければなりません。
−レイアウトを考慮して、主電流沿いの浮遊インダク
タンスを最小にする
−電力側に物理的に近い、適切な高周波の減結合を用
いる
−高電流ループの範囲を最小にする
−可能なかぎりツイスト線を用いる
−スイッチング素子のスイッチング速度を制限する
特に直列のゲート抵抗を一定の大きさにして、ハイサ
イドスイッチのターンオフ速度を制限する
−ピン5への電流と電圧を制限するためにR1A抵抗
とD1Aのダイオードを用いる
図 6:
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