万代島美術館鑑賞学習 記録

H28 年 2 月
万代島美術館鑑賞学習 記録
豊栄高校では、今年度からの新しい取り組みとして、美術館との連携に電子会議を取り入れた鑑賞学習を行い
ました。
にながわ み
か
美術部の生徒は万代島美術館で開催されている蜷川実花展の鑑賞前に、事前学習として電子会議で学芸員の方
から指導を受け、後日実際に美術館を訪れ解説をいただいた後に作品を鑑賞します。
にながわ み
か
事前学習では、蜷川実花展企画の主旨・見どころ・美術館鑑賞時のマナーについてお聞きしました。
普段なかなかない貴重な機会。ここでしか聞くことの出来ない興味深い内容に自ずと生徒の聞く姿勢も真剣に
なります。
また、疑問点について質問することもでき、作品に対する作者の意図等について説明を受けてから作品を鑑賞す
るので、より一層の理解の深まりが期待できます。
今回の展覧会は特別に第1室のみ写真撮影が許可されています。
生徒はお互いをモデルに第1室でポートレート写真を撮り、他の部屋を鑑賞後、構図や色調など作品鑑賞で気
づいた点を考慮しながら再度第1室でポートレート写真を撮影、鑑賞前の写真と比較します。
*生徒撮影のポートレートは個人情報保護の観点から掲載を控えます。
事前学習のおかげで、生徒は様々な気付きがあったようです。
以下の感想をご覧ください。
感想
1 年(女子)
にながわ み
か
蜷川実花写真展について事前にインターネットで通じた電子会議で、蜷川実花さんは色彩に富んだ写真を撮るこ
とに凝っていて、デジタルプリントではなく、昔の技法で写真の色を出していたことを知りました。他にもお花
を本物ではなく造花を使って写真を撮ったりするというこだわりがあったりする事が私の中では印象的でした。
また、プリントなどを通して有名人の方の写真も多数写真に収めているということも教えていただきました。
実際に蜷川実花さんの写真を見たとき、奇抜な写真が多いなと思いました。きらびやかなもの、少しグロテスク
な写真など、普段見ているものでも撮り方によってかなり変わっていて、異彩な雰囲気を醸し出していたと思い
ます。
その中でも、ノワールという作品が一番興味深かったです。撮ったものは様々で、臨場感あふれるものや、少し
グロテスクな感じが出てるもの・集合体なども多く見られました。この作品をどうして撮影しようとしたのか、
どういった気持ちで撮ったのか気になりました。
そして、美術館で最初に撮影したポートレートと最後に撮影した写真を比べてみて、最初に撮った方の写真はさ
っと見るだけでも、ぱっと簡単に撮れればいいな。というような、ただ何も考えずに記念に撮っておこうという
感じでしたが、最後に撮影した写真の方は構図を考えて撮ったり、どう撮れば楽しい感じが伝わるかなどを最初
より考えて撮っていたと思います。
写真というのは、ただ撮ってあの時ああいう事があった、などという事を思い出したりする事が出来ればいいと
軽い気持ちで考えていましたが、写真展を見に行って、ただ撮るだけでなく、被写体をどう映したいか、どうい
う風に受け取って貰いたいかなどを考えるようになりました。
これから先も写真を撮るという機会は沢山あると思いますが、ささっと撮って終わり、ではなく、少し撮り方を
考えて撮るようにしたいと思いました。
1 年(女子)
私は蜷川実花展を見に行って、プロの写真家の構図の取り方や蜷川さんの写真の美しい色彩を見てきました。
入ってまず、大きなパネル写真が沢山ある撮影スペースで、人物を含めた写真を撮りました。とりあえず、背景
の写真と人物がどちらも綺麗に見えるように撮りました。それから展示を見ていき、特に印象的だったのが「花
火」の写真で、全体を写さずに火花に注目していたところが変わった表現で、良く見えました。全部見終え、最
後にもう一度写真を撮りましたが、最初と違い、人物に注目して少しカメラを斜めにしました。蜷川さんの写真
を見てきて、自分なりに工夫した撮影ができたと思います。
今回は写真展に行く前に電子会議を行なっていたので、蜷川実花さんの写真の特徴や展示しているものが何かを
知った上で見ることができ、前回よりも充実したものになりました。
1 年(女子)
一つ一つの写真を見るごとにまるで別の世界にいるような感覚を覚えました。
特に花と女性が一緒に撮られているものはすごく惹かれました。
そのほかに私がおもしろいなと思ったものが一つありました。
それは大きく印刷された手のひらです。その作品の前に立ってみると、自分が小さくなったかのように感じられ
ました。掴まれるかもしれない、という恐怖から来るどきどき感がたまらなく楽しかったです。
事前学習で造花の方を好んで撮る場合もあると聞いた時は驚きました。自分の中の美しさの世界をひっくり返さ
れた感じでした。なぜなら私は本物の花の方が美しいと感じていたからです。今もこれからもきっとそれは変わ
らないと思いますが他の人の美しさの世界に、新しい美しさが有るところへ足を踏み入れたような気がしました
し、興味もわきました。
美術館では、最初はそれぞれ異なる花を4枚まとめて撮りました。最後は被写体の横顔を背景の花と一つの絵に
なるように意識して撮りました。
1 年(女子)
けんかわ み
か
私は今まで蜷川実花さんという人物について何も知らなかったのですが、写真展から戻った今では、蜷川実花さ
んの作品や思考に興味が湧き彼女についてもっと知りたいという気持ちが強くなりました。
部活動の際に、事前学習として蜷川実花さんについてのお話を聞ける機会がありました。そこで蜷川実花さんの
作品を見る際の注意として、ただたんに作品を見て「わぁ綺麗」と感じるのではなく「どうしてこの写真を撮っ
たのだろうか、いったいどんな意味合いが込められているのだろうかと考えてみてください」と言われたのを覚
えています。確かに、ただ作品を見るだけならば学習しに行く意味がないのかもしれません。その事に気づけた
だけでも事前学習にはたいへん価値があると思います。
美術館に行き、まず最初に友達とお互いの写真を何枚か撮り合いました。最初に撮ったその写真の特徴ですが、
友達の横顔をメインとしており、その背景に花の写真があるといったものでした。美術館で作品を見終えた後の
最後に同じ場所で撮った写真では、友達の後ろ姿を少し離れたところから斜め下の角度から撮っており、友達が
花の写真を見ているという光景を撮ったものになりました。最初に撮った写真より構図が工夫され、より自然的
なものになったと思います。
今回、私達が蜷川実花展に行ってきたことで得られたものは多くありますが、中でも私が蜷川実花さんの作品で
感銘を受けたのが、ノワールという題の作品等です。
ノワールとはフランス語で黒と言います。
そこで私が特に気になった作品が、不格好なでこぼこした緑のイチゴを撮った作品と、服を着せられたペットシ
ョップの小型犬の写真を撮った作品です。
自己解釈ですが、その2つの作品を含めノワールでは人間のエゴイズムが表現されているような、そんな気がし
ました。イチゴの作品ではあえて未熟なもので、なおかつ成熟したとしても売り物には絶対にならないようなも
のを撮り、ペットショップの作品では人為的に可愛く見せられた、可哀想な小型犬のその瞳が、私の脳裏にしば
らく焼き付いて離れませんでした。
どちらも「人間の都合」で育てられ、捨てられ、いいようにされているのではないでしょうか。「命とは」と考
えれば考えるほど、そのノワールという作品の持っている意味を追求しないわけにはいきません。
蜷川実花さんの作品から得られたものは、大いにこれから先の活動でも役立つと思います。
また、蜷川実花さんの作品のおかげで普段の私達のものの見方も変わってくるところがあるかもしれません。そ
れほどまでに、私達にとって蜷川実花さんの作品にはインパクトがあったのです。
美術部ではまた地区展等で自らの作品を発表する機会があります。そこで今回私達が学習したものを生かし、そ
れぞれの望む結果を出せるようにしていきたいと思います。
活動のまとめ
生徒の態度も真剣に事前学習の話を聞き、質問もするなど良好でした。素晴らしい作品や効果的な展示に加え、
事前学習によって更に鑑賞体験が深まっており、地理的な負担を軽減しコストや時間の効率化を図ることのでき
る電子会議を用いた事前学習の可能性を感じた活動となりました。今後撮影した写真の比較検討・講評を行い更
に良い教育活動となるよう工夫を重ねていきます。今回はマイクロソフト社のソフトを使いましたが、現在様々
な電子会議ソフトが流通しており、通信環境、機能によって学習の進め方や運用が違ってくることから、継続的
な研究・研修の必要性も実感しました。
事前学習・当日の解説や訪問記事(*)の掲載等、対応いただいた万代島美術館学芸員の方々、訪問当日にお世話に
なった美術館職員の皆様、ならびに関係各位のご協力に深く感謝いたします。
にながわ み
か
蜷川実花展(http://banbi.pref.niigata.lg.jp/exhibition/ninagawa/)
*訪問記事(http://banbi.pref.niigata.lg.jp/topics/県立豊栄高等学校の皆さんが来てくださいました/)