243 SUMMER 2015 大阪国際サイエンスクラブ International Science Club of Osaka ●目 次 Contents 講演要旨 Resume 特別懇談会 「小説『下町ロケット』に学ぶ中小企業の知財戦略、経営戦略」 IP Oriented Corporate Strategy for SMEs featured by the referred case in a Japanese Famous Novel Shitamachi-Rocket さめ やま 特別寄稿 Contribution じま まさ ひろ 鮫 島 正 洋 …… がた しん 1 すけ 公益財団法人 日本応用酵素協会のご紹介 Introducion of Japan Foundation for Applied Enzymology 山 縣 伸 介 …… 6 太陽光をそのまま届ける太陽光採光システム Solar lighting system delivering sunlight directly ラフォーレエンジニアリング …… 株式会社 9 たに ぐち かず ひこ 会員のひろば Opinion 感電災害にご用心 Watch out for electric shock accidents 谷 口 和 彦 …… 12 新会員紹介 Introduction of new members 4 編集後記 Editor s note いわ 名 …… 15 た けん ぞう 岩 田 賢 造 …… 16 表紙:モンサンミッシェル 絹田 貞子 プロフィール 1945年 5月 岡山県生まれ 1970年10月 株式会社竹中工務店 入社 設計部配属 建築イラストレーション国際コンペ入賞 CG大阪デザインコンテスト、他 1990年 8月 中之島コラージュ「艶」二人展 2000年12月 ARCHITECTURAL RENDERING DREAM PALETTE 出版 2006年 2月 一期一会 絵葉書100枚展 個展 2006年 3月 株式会社竹中工務店 退職 現 在 あとりえ禎(TEI)代表 講演要旨 特別懇談会 「小説『下町ロケット』 に学ぶ中小企業の知財戦略、経営戦略」 鮫 島 正 洋 氏 鮫島さんは長年、特許庁の地域中小企業知財戦 その後、業界最大手の帝国重工の宇宙航空部 略啓蒙プロジェクトで座長として中小企業の知財 長・財前道生が訪れ、佃製作所が所有する特許を の意味、戦略の重要性について指導してこられ小 20 億円で譲ってほしいと持ちかけた。帝国重工 説『下町ロケット』 (池井戸潤著)に登場する神 は巨額の資金を投じて新型水素エンジンを開発し 谷弁護士のモデルになった方です。この小説の話 たが、エンジンバルブの特許は佃製作所が1週間 題から本日の講演が始まりました。 早く出願しており、帝国重工が当該特許を侵害し ていることを知ったのである。航平は特許譲渡や 検証 下町ロケット』 にみる佃製作所の知財戦略 使用許可ではなく、帝国重工が打ち上げるロケッ この直木賞作品の『下町ロケット』に登場した トに佃製作所の部品を供給することを提案した。 きっかけは飲み友達である池井戸氏から「特許訴 一方、帝国重工の開発総責任者の財前は一介の 訟をモチーフに小説を書いてみたい」と相談を受 中小企業の申し出に狼狽、部品供給を断るつもり けたことである。 で佃製作所を訪れたが、航平に工場を案内されて (鮫島氏が会場でこの小説を読んだ人がどのくらい いるか尋ねたところ、約 25%の人が読んでいた。 ) 見学し、その技術の高さに感銘し部品受け入れも ありうるのではないかと考えるようになる。 念のため、小説のあらすじを紹介する。 ―大田区にある年商 100 億円の精密機械の中堅 「大企業が中小企業を訴えるのはどういう場合?」 企業、佃製作所の社長佃航平は、宇宙科学開発機 という池井戸氏の質問に対し、鮫島さんは、中小企 構の元研究員であった。7年前の父親の死去にと 業は通常は売上も小さく、勝訴しても賠償金額が少 もない家業を継いだ2代目。佃製作所の技術でロ ない上に、メディアから中小企業イジメだとバッシ ケットの部品をつくり、ロケットに搭載する夢を ングを受ける心配があるが、稀に、魅力ある中小企 追いながら仕事に励んでいた。そんなある日、突 業を買収したい時に、そのままだと買収金額が高く 然、主要取引先の京浜マシナリーから取引終了の つくので、いったん特許訴訟で痛めつけてから仕掛 通知を受けた。資金繰りに困りメインバンクに けることがある、と答えたという。 3億円の融資を申し込むものの渋られる。 大企業から中小企業に対して訴状が届いただけ 追い打ちをかけるように、特許侵害訴状が届い でも「貴方の会社は他社の特許を侵害しているの た。佃製作所の技術に注目した大手企業のナカシ ですね」と金融機関は判断し、そのようなコンプ マ工業が佃製作所の買収を狙って仕掛けてきたも ライアンスのない会社には融資できないと断られ、 のであった。 資金的に打撃を受けるという構図があるからだ。 勝訴は濃厚だったが法廷戦略に長けているナカ シマ工業が相手では、裁判の長期化は免れず、資 『下町ロケット』のあらすじから佃製作所の知 金不足による倒産は避けられそうもない。万事窮 財戦略をまとめると次のことが見てとれる。 すと思われたときに知り合った特許専門の神谷弁 1.佃製作所はロケット部品において帝国重工と 護士が逆提訴を含めさまざまな方策を講じ、佃製 真っ向から競合し、結果として技術的な勝利 作所は無事、勝訴和解を収めた。 を収める。こんなことが現実として可能か。 −1− 2.佃社長が「モノづくり」にこだわり続ける知 このプロジェクトのなにがいいのか?まず、大 財戦略上の理由は? 企業のエンジニアがすごく喜ぶ。サラリーマン人 他方、「モノづくり」にこだわり続けるリス 生をかけて開発した技術が自分の会社では日の目 クは? を見ず、お蔵入りしてしまった場合、 「自分は何 3.ナカシマ工業が佃製作所を買収する目的で訴 をやってきたのだろう」と意気消沈するのは当然 訟を仕掛けた。こういう戦略は実際にあるの であろう。しかし、地場の中小企業がその技術の か? ライセンスを受けて、事業化してくれたら。そう 4.結局ハイテク中小企業の成功モデルとは? いうエンジニアは定年退職後に、その中小企業の 技術顧問になって、充実したセカンドライフを過 こういった視点から知財戦略に関する理論を述 ごせるし、なによりも大企業からすれば、アジア べたい。 企業に就職されて技術が流出するというパターン 1について。 を食い止めることができる。川崎市のやり方は技 市民講座などで話すと、この小説はフィクショ 術流出を防ぐためのうまい方法だと思う。 ンにすぎない、つまり、現実の企業社会では大企 業と中小企業が技術で競合するなどないのであろ 2「佃社長がモノづくりにこだわり続ける知財戦 略上の理由」について。 うと皆様は思っているのだが、決してそうではな い。 現実に、 大企業が長年かけても開発できなかっ 「こんな技術を開発したが、おカネに換えるに た技術を中小企業で発した事例は後を絶たない。 はどうしたらいいでしょうか」という類の相談が 大企業の技術は先輩社員らが営々と積み重ね、 多い。技術をおカネに換えるには二通りのパター 改良を加えてきた優等生的な技術である。これに ンしかない。一つはその技術でモノをつくり、販 対して中小企業の技術は、社長が「よーし、これ 売して利益を得るモノづくり。二つ目はその技術 を開発するぞ」と命令するところから始まり、 「社 をライセンスしてロイヤルティを得るライセンス 長、とてもできませんよ」と腰が引ける従業員を ビジネス。モノづくりをするには最低でも開発体 叱咤激励しながら完成する、荒削りだが野性的か 制、製造設備、販売ネットワークの三つが揃って つイノベーティブな技術が多い。つまり、両技術 いないと難しい。モノづくりには①設備投資しな は補完関係にあるのであって、イノベーションを ければならない②人件費がかかる③材料を仕入れ 起こせない大企業が存在するとしたら、中小企業 なければならないというリスクがある。しかし、 の技術を取り込んで、そのイノベーションを事業 モノの売上に対する利益率は 10 ∼ 20%が当たり 化するくらいのことをやってもいいのではないか 前である。ロイヤルティ収入は高くても売上の4 と思っている。 ∼ 5%であり、ものづくりに比べて低いリターン 国家戦略レベルでも、ベンチャー企業の技術を しか得られない代わりに上記①ないし③のリスク 大企業が取り込むことが推進されはじめようとし はない。つまり、ライセンスビジネスは、ローリ ている。 スク・ローリターンで、モノづくりはハイリスク・ これとは逆のこと、つまり、大企業の技術を中 ハイリターンである。 小企業にライセンスして中小企業が事業化するプ もう一つ、知財戦略上の違いがある。モノづく ロジェクトをやっているのが川崎市である。富士 りにこだわるかぎり、お客さまのご要望と対峙し 通や東芝の事業化しなかった技術のライセンスを 続けることになるから、これは、常に技術的課題 中小企業が受けて事業化する。大企業では、 最低、 と向き合うことができ、ゆえに新たな技術開発に 数百億円の市場規模がないと事業化は難しいが、 つながる。ライセンスビジネスではそれができな 中小企業なら数十億円規模の市場で十分であると い。佃社長がライセンス契約では嫌だと言って、 −2− モノづくりにこだわり続けたのは、自分たちがモ ノづくりの現場で最先端の技術開発を追い続けた かったからであろう。 3「大企業が買収目的で訴訟を仕掛けることはあ るか」について。 2004 年から 10 年間、地域中小企業知財戦略啓 蒙プロジェクトの座長をしながら私がやってきた ( 個別企業への適用 ) ことは、知財で頑張る中小企業の経営者に、 「あ なたの会社にとって知財は経営戦略上、どういう 目的で運用されているかどうかである。 「知財活 意味があるのか?」と問い続け、その答えを特許 動に対応する事業戦略上の目的があり、それに基 庁の施策に反映させることであった。 づいて知財活動がなされ、 成果が出ている」のが、 中小企業が知財に踏み切れないのは、コストが 知財経営としては、最も好ましい状態だと定義づ かかる割にその経営的な効果がよくわからないか けている。 らだ。しかも成果が 5 年後に出るのか、10 年後 このような理想的な知財活動は、大企業でも意 に出るのかもわからない。開発した技術を知財で 外とできていない。ある会社で「当社は今年 700 プロテクトすると、金融機関からの融資がスムー 件特許を出す」というので、 「その理由は?」と スにいくようにできれば、知財活動を行う中短期 聞くと、 「同業他社が 500 件出ているから」 という。 的メリットがでてくる。この考え方が知財金融で それはそれでいいとしても、あなたの会社の経営 あり、今年の施策の目玉となる。 戦略上、どういう問題があるから年間 700 件も 今まで、金融庁は、知財のようなわけのわから 特許を出すのかという問いに対する答えにはなっ ないモノを判断材料として融資することは、金融 ていない。 機関にとってリスクにしかならないという判断を いままで知財部の役割は、技術開発の現場から していたが、アベノミクスの規制緩和で考えが変 技術を発掘して特許を量産する工場のようなもの わりはじめた。 であった。これからはもう少し事業の上流に絡ん で、事業戦略に基づいた知財活動を行わないと、 4「ハイテク中小企業の成功モデル」について。 知財部の存在価値はなくなってしまうかもしれな 知財戦略という言葉は普及しているが、何です い。 か?と聞くと答えられる人は意外と少ない。 特許庁のプロジェクトでは知財戦略、知財経営 ※以降、講演では知財活動によって売上を 4 倍増す とはどういうことかという概念定義から始めてい る手法について解説したが、特定企業のケースな る。定義しないとどちらを向いてプロジェクトを ので、講演録からは割愛する。 進めていいかわからないからである。 たとえば「当社では 10 億円の売上なのに、特 特許庁のプロジェクトで注目した点は、知財で 許 20 件も出願した。 」とか、 「担当者も置き、社 解決できる事業戦略の目的は必ずしも売上を上げ 内ルールも適用している。すごいでしょう。 」と たいとか、シェアを上げたいか、という事業指標的 かいう会社があるとしよう。 な観点だけではないということだった。たとえば、 特許 20 件とか、担当者がいるとか、という仕 ①エンジニアのモティベーションをアップする 組みがあるのはよいことである。しかし、重要な ②自社技術力のPRになる のはこの仕組みが中小企業の事業戦略を実現する という経営課題について、多くの中小企業の経営者 −3− が知財活動の目的として意識していることがわかった。 ケティングをきちんとやって技術開発につなげ (α) 、技術開発の成果について知財取得(β)が ※以降、講演では知財活動によって①②を実現した できているというαとβをつなげることである。 中小企業の例を紹介したが、同じく、特定企業の ただ、この際の「マーケティング」の概念は世 ケースなので講演録からは割愛する。 の中で用いられる概念からデフォルメされている。 ኻᩋᏛⓗⓎ䡚D♫䛾ၥ㢟Ⅼ では特許で市場を独占できるという命題は正し D♫䛿ႆȆȸȞǛʚ᠆ȞȸDZȆǣȳǰưᎋƑƯƍƳƔƬƨᲹ いのか。 1᠆ȞȸDZȆǣȳǰ ƜƷᢿЎƸٶƘƷ˖ಅƕƢư ƴბฎLjăႆ৲ǛƠƯ NjМႩƕݲƳƍӧᏡࣱƕ᭗ƍ 私はパナソニックの PC を愛用しているが、こ ࠊݱئ ࠊٻئ のパソコンには液晶ディスプレイ(LCD)が使わ 2᠆ȞȸDZȆǣȳǰ れていて、パナソニックは LCD の特許を少なく ڤᢘƳ ȆȸȞ ଏ܍ཎᚩƳƠ とも 10 ∼ 20 件は所有していると思う。にもかか わらず、他のメーカーの PC すべてにも LCD が ଏ܍ཎᚩƋǓ 搭載されている。そして、どのメーカーも LCD ࠊݱئ ƜƷᢿЎƸᛡNjბƠƯƍƳ ƍăƦNjƦNjȞȸDZȃȈƕƳ ƍӧᏡࣱNjƋǔŵ の特許を所有している。この事実からして、特許 を取得したからといってある製品について市場独 ࠊٻئ ࠊئƷLjƴბႸƠƨ1᠆ȞȸDZ ȆǣȳǰƔǒࠊئᳲཎᚩƴბ ႸƠƨ2᠆ȞȸDZȆǣȳǰǁ (D社の問題点) 占できるわけではないことが明らかである。しか し、そうだとすると、特許を取る意味はあるのだ マーケティングとは、通常、 「将来、大きな規 ろうか ? それは、必須特許を持っていないと市場 模の市場になるかどうか」という軸が主体となる から追い出される、つまり、必須特許の取得が市 概念だが、知財経営にいう「マーケティング」と 場参入の前提条件であるという命題に集約される。 は、 「特許が多数出ているかどうか」というもう 一つの軸が加わる。つまり、 市場規模が大きくて、 ※この後、この命題について、図を用いて詳細な説明、 かつ、特許が多数出されていない領域が魅力的で 及び、青色 LED、アップル / サムソン訴訟による あるとされ、 このような二つの軸で判断するので、 ケーススタディがなされたが特定企業の事案なの 「二軸マーケティング」と呼ばれる。例えば、素 子Dは市場が大きくて魅力的だから多くの企業が で講演録からは割愛する。 開発投資した結果、 多数の特許が出願されている。 それでは、 どうしたら必須特許の取得ができるのか。 しかし、いまさら素子Dに、開発投資して特許を 必須特許を取得するという知財活動のプロセス 出願しても狭い範囲の特許しかとれない。 論(方法論)にかかる問題であるが、 それは、 マー 素子Aは、ほとんど特許出願されていない=開 発投資がなされていない=市場規模が小さいとい 䠷䝉䜸䝸䐡䠹 ▱㈈άື䠄᪉ἲㄽ䠅 う因果関係が成り立つ。しかし、ほとんど特許出 ㍈䝬䞊䜿䝔䜱䞁䜾䛸▱㈈䜢㈏䛝㏻䛩 願されていない=広い特許(必須特許)が取得で ࣏᪰ཎᚩӕࢽƕưƖǔƔƱƍƏᚇໜƔǒƷᚸ̖Ტཎᚩᛦ௹ᲣǛԃlj きる可能性が高い、ということになるから、中小 (i)ȞȸDZȆǣȳǰ ʚƭƷჵҮƕᡫƬƯƍƳƍ˖ಅƸыƠƳƍŵ 企業のように市場は小さくてもいい、ニッチトッ プを狙うという戦略であれば素子Aが開発ター KK২ᘐႆ ᲢоᡯᲣ KKKჷᝠӕࢽ Ტ̬ᜱᲣ ゲットとなる。しかし、400 億円の年商がある中 堅企業の場合、最低 100 億円規模の市場が欲し இኳႸᲴʙಅᇤʗщƷӼɥ (知財活動方法論) いということになるから、市場が大きいと思われ る素子Dを狙わざるを得ない。そこで、素子Dを −4− 詳しく見てみると、機能Fについて特許は少ない と共同開発をしないこと(契約終了後も含む)② ことがわかる。つまり、素子Dの機能Fなら既存 自社開発も不可―という条項が記載された契約で 特許が少ないから、必須特許が取れる可能性はあ あった。結局、この企業は、技術的には評価され る。これが2軸マーケティングの概念であり、こ ながらも、この契約書を見たベンチャーキャピタ れをきちんとやってαとβをつなげることによっ ルは成長性を感じることができず、以降追加出資 て飛躍的に必須特許が取得できる可能性が高ま をすることはなかった。 会社は大企業に吸収され、 り、開発や経営効率が高まることになる。 技術が大企業に取られてしまったことは言うまで もない。基本特許は出し忘れても、いい改良をし ※以降、講演ではコンサルツールとしてこの方法論 て必須特許を取得すれば何とかなる。だが、契約 (α、β、二軸マーケティング)を活用することを 書はやり直しがきかない。特許以上に専門家に見 てもらわないとまずい領域である。 説明したが割愛する。 特許管理だけでビジネスはうまく回っていくの? ※この後、事例を使ったケーススタディを説明された。 「技術法務のススメ」 技術法務のススメPR文 知財戦略をいくらうまくやっても契約書がへた これまで 10 年間、技術系の中小・ベンチャー くそだと、ビジネスはまずうまくいかないという 企業の業務支援を行って参りましたが、知財を戦 例をいくつも見てきた。なぜかというと、ビジネ 略的に扱うノウハウや、契約交渉をして契約に落 スというのは契約による債権と債務の集合体だか とし込むノウハウがこれらの企業には決定的に欠 らである。 けていることが多いと感じます。 大企業であれば、 前者は知財部門、後者は法務部門の担当業務です ビジネスの諸条件は契約の集合で規定される が、中小・ベンチャー企業には存在しないこれら の機能を弊所にてアウトソース的に承っておりま 䠟♫ す(知財部法務部アウトソーシングサービス) 。 䠠Ꮫ これは従前、特許事務所と法律事務所に分かれて ඹྠ㛤Ⓨዎ⣙ いた知財と法務の機能を一つに統合するというこ ཎᩱ㉎ධ ຍᕤရ㈍ ♫ 䠝♫ ㈙ዎ⣙ とでもあり、 この考え方を「技術法務」と名付け、 䠞♫ ㈙ዎ⣙ e.g. ཎᩱ䝯䞊䜹䞊 そのノウハウを隠すことなく公開しました。これ 䝷䜲䝉䞁䝇ዎ⣙ 䛶䛾ዎ⣙䛾๓ᥦ䛸䛧䛶䠪䠠䠝 䛶䛾ዎ⣙䛾๓ᥦ䛸䛧䛶䠪䠠䠝 ⥾⤖ ⥾⤖ 䠡♫ 䠄䝷䜲䝉䞁䝃䞊䠋䝷䜲䝉䞁䝅䞊䠅 が「技術法務のススメ」という本の基本コンセプ 䛭䛾 䛭䛾 ㈤㈚ዎ⣙ ㈤㈚ዎ⣙ ປാዎ⣙ ປാዎ⣙ 䞉䞉䞉 䞉䞉䞉 トです。 4 経営戦略として知財/法務分野の知見の必要性 を感じている中小・ベンチャー企業の経営者や実 (ビジネスの諸条件は契約の集合体で規定される) 務者、中小・ベンチャー企業のコンサルティング モノを仕入れて加工して販売するという単純な に従事されている方にオススメです。 ビジネスモデルでも、 少なくとも売買契約が2件、 場合によっては、共同開発契約やライセンス契約 も締結することになる。かつて、私のベンチャー クライアントが大手の電機メーカーと共同開発す ることになって、社長は即決で契約書を交わして しまった。後で見てみると①類似のテーマで他社 −5− 内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 特別寄稿 公益財団法人 日本応用酵素協会のご紹介 山 縣 伸 介 1.はじめに アミラーゼ部会が設置されました。1965 年に第 1 日本応用酵素協会 (Japan Foundation for Applied 回アミラーゼシンポジウム、アミラーゼ講習会が Enzymology) は、1964 年 5 月 13 日 に 出 捐 会 社 開催されましたが、その後、部会行事は、当財団 である田辺製薬(現 田辺三菱製薬)からの寄付 外で結成されるアミラーゼ研究会に委譲しました。 をもとに設立されました。当初は酵素に関する研 (3) 学会・研究会等活動助成 究を中心に助成事業を行っていましたが、近年で ・アミラーゼ研究会 は、幾つかの疾患領域における 40 歳以下の研究 アミラーゼ部会の解消に伴って財団外に発足し 者を対象とした助成を通じて、将来を担う若手研 たアミラーゼ研究会(1999年に日本応用糖質 究者の育成にも力を入れています。2011 年には 科学会と合併)が開催するアミラーゼシンポジ 内閣府から公益法人移行認定を受け、同年 10 月 ウムに対して継続的に助成を行っています。同 3 日に公益財団法人に移行しました。 シンポジウムは1993年に糖質関連酵素化学シ 現在の役員等の構成は理事 11 名(理事長:土 ンポジウムと改称され、2012年からは日本応 屋裕弘) 、監事 2 名、評議員 8 名、顧問 4 名、名 用糖質科学会の応用糖質科学シンポジウムとし 誉理事 18 名、諮問委員 21 名となっており、それ て継承されています。 以外に研究助成の選考委員、審査委員等約 60 名の ・出捐会社が共催する研究会 先生方のご支援、ご協力のもとで事業を行ってい 出捐会社が共催する、40歳以下の若手研究者 ます (2015 年 6 月 15 日時点) 。詳しくは財団のホー からなる幾つかの研究会は、酵素や生理活性物 ムページ(https://www.jfae.or.jp/)をご覧ください。 質等の研究を中心に各種病態の解明について熱 心に討論され、その成果はわが国の医療の発展 2.財団活動の変遷 に大きく貢献しています。当財団の目的に合致 (1) 酵素研究助成 することから、これらの研究会に対して1999 財団設立に際し、財団の目的を「酵素資源の総 年度から活動助成を実施することとなり、 合的利用に関する研究の推進及び知識の普及を図 2011年の公益法人移行まで継続されました。 ることにより、我が国応用酵素分野の開発及び発 (4) 研究調査所 展に貢献すること」と寄付行為に定めました。設 1970 年代の後半、出捐会社の経営状態が逼迫し 立初年度から「酵素の応用研究および生命科学に たことにより、財団活動も影響を受け、1975 年か 関する酵素の研究」を対象に研究助成を開始し、 ら 3 年間は研究助成事業が休止となりました。 以来、酵素をキーワードとして医学、薬学、農学、 研究助成事業の休止について科学技術庁に承認 工学、理学といった多彩な領域の研究者を対象に を願い出た時に、財団の目的の 1 つである「酵素 研究助成を継続しています。 資源の総合利用に関する知識の普及の推進」を実 (2) アミラーゼ部会 施するための組織強化が要望されました。その要 当財団の分科会組織として、特定の酵素に関す 望に応えるために、酵素および生命科学に精通し る部会を必要に応じて結成して酵素研究者、利用 た研究員から構成される「日本応用酵素協会研究 者共通の研鑽の場とするとの理事会決定に基づき 調査所」を設置することとなりました。 −6− 現在研究調査所は、当財団の研究助成事業に関 在は各年度の研究助成に対する報告書、酵素研究 する助言、 協会誌に掲載する総説の執筆者の選出、 に関する総説および最新酵素情報を掲載し、財団 酵素に関する最新の研究動向の調査と酵素情報の 関係者、研究助成者、国公私立大学の図書館およ 寄稿、当財団が主催する各種研究会発表会の運営 び関係研究機関等に配布し、研究成果等の普及を の支援などを行っています。 図っています。 (5) 研究発表会 (7) 財政基盤 当財団の特徴として、研究発表会の開催が挙げ 財団の運営資金は、出捐会社からの寄付と基本 られます。助成者自身による研究成果の報告とと 財産運用益で賄われています。基本財産は設立当 もに、研究者相互の交流を図ることにより、さら 初 100 万円でしたが、その後 1983 年に 1 億円に なる研究の活性化の一助となることを目指してい 増額され、現在に至っています。 ます。財団発足当時から開催している酵素研究助 成の研究発表会に加えて、公益法人移行後は若手 3.公益法人への移行 研究助成の 4 つのプログラムについても毎年、研 (1) 基本方針の更新 究発表会を財団主催で実施しており、毎回活発な 2011 年 10 月の公益財団法人への移行を機に、 質疑応答が行われています。 時代の要請に応えより広く生命科学分野の発展に (6) 協会誌の刊行 貢献することを目指して、 事業の目的を更新し 「酵 1966 年 3 月創刊。当初は酵素研究助成の研究 素など生命機能の調節・維持に関わる生物物質の 発表会の抄録を掲載していましたが、1975 年か 基礎的解析から応用に至るまでの幅広い学問領域 ら 3 年間の研究助成の休止を機に、総説、酵素 における研究助成の推進を図ることにより、わが 情報などを掲載するようになりました。1988 年 国の生命科学分野における諸領域の発展に貢献す 刊行の第 22 号から ISSN、CODEN に登録。現 ること」と定款に定めました。 −7− 年表、歴代役員等の変遷、助成実績、協会誌総目 次等を整理しており、この一冊を見れば半世紀の 財団の活動内容がほぼ把握できます。今後生命科 学分野における研究助成を通じて社会貢献を継続 していくにあたり、貴重な資料となることを願っ ています。 (2) 公益法人移行後の助成事業 1999 年度以来、出捐会社が共催する研究会に 対して活動助成を実施していましたが、公益法人 移行に際して出捐会社と協議の上、これらの研究 会を財団の研究助成活動の一環としてリニューア ルし、研究会のメンバーは研究助成対象者として 財団設立 50 周年記念式典:土屋理事長挨拶 財団が主体的に公募、選考を実施することとなり ました。また、発表会を研究助成の成果報告会と 位置付けて財団が主催することとなりました。 現在は酵素研究助成に加えて 40 歳以下の若手 研究者の育成を目的とした 4 つの若手研究助成 を推進しており、それぞれ毎年研究発表会を実施 し、研究成果を日本応用酵素協会誌に掲載してい ます。また関連学会・研究会等への開催助成も継 続的に行っています。財団設立以来 2014 年度ま での助成件数は研究助成 1443 件、学会・研究会 等活動助成 80 件、 また助成金の総額は 12 億 9,720 財団設立 50 周年記念誌:50 年のあゆみ 万円となっています。 4.おわりに 公益財団法人 日本応用酵素協会 事務局長 2014 年度は財団設立 50 周年という節目を迎 え、5 月 17 日に記念式典を開催しました。また、 これまでの財団の活動を振り返り、今後の礎とす べく、記念誌「50 年のあゆみ」を編纂しました。 記念誌では、財団の沿革、記念式典におけるご 祝辞、式典を飾る記念講演の内容を掲載するとと もに、顧問、名誉理事、理事の方々に寄稿文をお 願いし、研究に対する思いを財団との関わりの中 で熱く述べていただきました。更に資料編では、 −8− 特別寄稿 太陽光をそのまま届ける太陽光採光システム Solar lighting system delivering sunlight directly ラフォーレエンジニアリング株式会社 1. はじめに 凹ミラー 太陽直射光 ここ数年、住宅密集地での新築ビルやマンショ 光ファイバー 73° ン建設に伴う近隣の日照被害を解決する手段とし て、太陽の光を集光し、光ファイバや反射ミラー を使って室内に光を運ぶ太陽光採光システム「ひ 紫外線 赤外線 図 2. カセグレンミラー集光・光ファイバ伝送方式の原理 まわり」が導入されるケースが増えている。 また、太陽エネルギーを電気や熱に変換せずに 2. 1 「ひまわり」のシステム構成 「光を光として」直接利用できるため、高効率か レンズorミラー 集光部 つ環境への負荷が少ないエコシステムとして、新 設の工場やオフィス内で 「太陽光による自然照明」 アクリルドーム 焦点 伝送部 照射部 して採用されるケースも増えてきている。 本章では従来はレンズ集光方式が中心であった 「ひまわり」商品群の中で、昨年発表した最新技 術である「カセグレンミラ−集光伝送方式」につ いて、その仕組みとその利用事例をご紹介する。 太陽追尾センサー 駆動モーター 光ファイバー 光ファイバー コントロールユニット 図3. 「ひまわり」システム構成 太陽追尾センサーを備えた集光部、光ファイバ 伝送部及び照射部の三つの部分から成り立ってい る。 (図 3) 集光部のカセグレンミラ−で集めた太陽光は、 予め焦点位置に接続した光ファイバの入力端側か ら入れ、瞬時に光ファイバ内を伝送させる仕組み である。また、太陽の直達光を正確に焦点位置に 集光させる為、集光部が太陽センサーによって常 図 1. 太陽光をそのまま届けるシステム に太陽に正対できるように、方位と高度を制御す 2.「カセグレンミラ−集光伝送方式」について る2軸(X・Y)駆動方式で自動追尾させている。 「カセグレンミラー集光伝送方式」とは、太陽 直射日光の無い雨天や曇天時は、太陽センサーに 光を集める集光技術に、天体望遠鏡に使用されて よって太陽光を捉えられないため、コンピュータ いる高精度のカセグレンミラ−を世界で初めて採 内臓の時計と予め設定された経度と緯度によって 用した製品である。図 2 にカセグレンミラ−集光・ 太陽の位置を演算して位置調整を行い、太陽軌道 光ファイバ伝送の原理を示す。凹面鏡を使って太 をトレースしている。この追尾システムにより、 陽光を集光する主鏡と、ユニット前面に配置され 「ひまわり」は太陽高度・方位に依存することなく、 た副鏡の 2 つのミラーを使い、その合成焦点で集 常に高い集光効率を維持できる。(図 4) 光する方式である。 −9− ているため、室内での長時間の日光浴も可能である。 また、 「ひまわり光」は、太陽光線の可視光線 と同等の波長域が伝送されるので、正午をはさむ 昼間は白色に近く、夕方になるにつれて、黄、オ レンジ、赤色と光線の色も変化していく「表情の 図4. 「ひまわり」の自動追尾システム ある太陽光」 を室内でも同様に得ることが出来る。 2.2 「ひまわり」の性能 また、太陽光を採光している「ひまわり光」を 写真 1 にカセグレンミラ−が 6 眼備わった プリズムに入射させると、蛍光灯や白熱球といっ 「Himawari- CA S」 (総受光面積約 0.1㎡)を示す。 た人工光源では再現できない 7 色の虹に分光する 各ミラ−で集光した光を、各ミラーに接続した単 ことも可能である。 芯の光ファイバに入力し、3 芯分をまとめてバン ドルケーブル化し、1本の光ファイバケーブルと している。本製品では 2 本の光ファイバケーブル (標準 15 m)が付属し、その採光能力は太陽直達 照度 10 万ルクス時に、伝送効率は約 50%、伝送 光量は約 4,000 ルーメンとなる。この光量は 30 W直管形蛍光灯換算で約 2 灯分となる。光ファイ バ先端からの出射角度は入射角と同じ 78 度とな り、出射端から 1.5 m離れた位置で直径約 2.4 m 図 5. 「ひまわり」スペクトル光特性 の円形(約 4.6㎡)に広がり、平均 450 ルクスの 照度となる。集光機 1 台を設置することにより、 3. 「ひまわり」のニーズと利用事例について 一般家庭の居室で6∼8畳程度の広さが明るくなる。 「ひまわり」は室内での採光を目的とした個人 住宅へ導入されるケースが多いが、オフィスやエ コステーション、地下公共施設といった大規模施 設などへの導入も含めると、国内外で 6,000 台以 上の設置実績がある。 下記に「ひまわり」の主なニ−ズと利用事例 ( 写 真 2) を示す。 ●建築上のニーズ 近年、都市の過密化や建築物の高層化などによっ て、太陽光の届かない空間が増加し、太陽光に対 するニーズが大きくなり、太陽光採光システムが 採用されることが多くなってきている。具体的に 写真 1 カセグレンミラ−方式「Himawari-CA S」 は、①周辺建物に囲まれた日照障害のある既存住 2.3 「ひまわり」の光特性 宅への採光、②高層建物が建つことで、日陰とな 「ひまわり光」は、紫外線をカットした可視光中 る北側の建物への太陽光の代替提案としての採光、 心の光で、赤外線も半分程度カットされた優しく自 ③太陽光が直接入らないオフィスや公共施設のエ 然な色合いである。 「ひまわり」は、人工光源とは ントランスや通路等への導入が挙げられる。 異なり、太陽光と同じスペクトル光特性(図 5) を ●心理的なニーズ 持つ自然光である。人間や植物に有益な光を抽出し 年々高まっている健康志向の中で、居室空間で − 10 − 一般個人住宅での導入∼日当たりの改善 高齢者施設での導入∼. 健康的な質の高い生活環境の実現 エコステーション∼自然エネルギーの有効活用 商業施設での導入∼省エネ実現 写真 .2 ひまわりの利用事例 の日光浴だけでなく、地下の監視室や事務所内で 球温暖化対策等の環境保護の観点から、企業、施 の長時間労働のストレス緩和のためにも利用され 設の省エネルギー化への取り組みのために、公共 ている。 また、 「心の癒し」 効果がある室内でのガー 施設、工場やオフィスでの太陽光照明への注目が デニング (緑化) 、 アクアリウムの珊瑚や海草、ペッ 高まっている。 ト飼育関連にも利用されている。最近では太陽光 また、本システムは、建築物の環境性能を総合 の心理的かつ生理的な効果が見直されて、太陽光 的に評価・格付けする「CASBEE」や「LEED」 を室内に採光することによる 「生体リズムの調整」 の加点項目として、 また「エコスク−ルモデル事業」 や「ゆらぎによる癒し」を目的とした空間が再認 の環境補助金制度の対象製品として認められたた 識されてきており、設計提案、提供され始めてい め、今後も導入を検討する企業や施設が増えるも る。今後も、自然採光である「ひまわり」の利用 のと考えられる。 方法もさらに広がると予想される。 今後は官公庁やオフィス事業所、工場事業所が ●省エネルギー化と地球環境保護のニーズ 進めている節電・エコ環境配慮型施設づくりや安 従来の建物に見られる、人工照明だけで一定に 全・防災面から防災施設や病院等への導入も期待 コントロールされた室内の光環境の改善および地 される。 ■ 問い合わせ ラフォーレエンジニアリング株式会社(森ビルグループ)営業部 TEL:03-6406-6720 FAX:03-6406-6723 http://www.himawari-net.co.jp − 11 − 会員のひろば 感電災害にご用心 谷 口 和 彦 8 月は電気使用安全月間であるため、代表的な しかし、 ここ数年は横ばい状態が続いており、 さ 電気災害の一つの感電災害を取り上げました。図 らなる努力が求められています。図 2 に感電災害 1 に各種法令等の制定と感電死者数の関係を示 防止に寄与している漏電遮断器の動作概要を示し します。感電災害は、1960 年代には死亡者数が ます。 漏電遮断器を確実に動作させて、 感電を防止 300 人以上でしたが、2000 年代では十数人と大 するためにはアース工事を施す必要があります。 幅に減少し、昨年の 2014 年は 15 人でした。こ 図 1(a) に示すアース工事無しの場合は、機器 れは、1969 年に旧労働安全衛生規則(安衛則) の絶縁が低下して箱体に 100V が充電された状態 や電気設備技術基準により電気機器の絶縁が低下 では漏電遮断器が動作せず、人が触れて感電が発 し、充電された状態になり災害や感電の危険が発 生したときに動作することになり、漏電遮断器の 生したときに、電気を遮断する漏電遮断器の一部 動作時間と人体に流れる電流の大きさによっては 設置の義務づけ等(例えば安衛則 333 条)が施 危険な状態になります。 行されたことや事業者や作業者の安全意識の向上 感電が人体に及ぼす影響には、人体を通る電流 等により、感電死亡災害の発生防止につながった (通過電流)I、機器の充電電圧 V、人体の抵抗 R と考えられます。 とすると式 (1) で示されます。 I= V 100V = =50mA・・・・・・式(1) R 2000Ω ここで、通常の環境条件では、人体の抵抗は 100V の充電部に触れたとき、接触抵抗は人体内 部の抵抗を含めて約 2000 Ωなので通過電流は約 50mA となります。表1は通過電流とその時の人体 への影響を示したものですが、1 秒以上継続で生命 図 1 各種法令等の制定と感電死者数の関係 (労働安全衛生研究所安全資料) に危険を及ぼす可能性があることがわかります。 (a) アース工事無し (b)漏電遮断器とアース工事 図1 漏電遮断器とアース工事による感電防止(関西電気保安協会 電気講習会資料) − 12 − 表1 人体への通過電流値と影響 1mA 5mA 10mA 50mA 100mA ピリピリ感じる程度 相当痛い 耐えられない刺激 1秒以上継続で 生 命 が 危 険 致命的な結果を招く 電流値 人体への影響 関西電気保安協会 電気講習会資料 感電災害の特徴は次のとおりです。 2)低圧での感電死亡災害は夏期(7月、8月、 1)低圧での感電死亡災害が多い。 9月)に多く発生する。 表2 電圧区分別感電死亡者数とその割合(2006年∼2010年) (単位:人) 表 3 に示しているように 2000 年から 2009 年の 低 圧 高圧 特別高圧 落 雷 計 10 年間で、低圧での感電死亡数は 134 人ですが、 2006年 15 3 1 19 そのうち 7 月、8 月、9 月の3か月間で 101 人に 2007年 9 5 14 のぼり、75%を占めています。夏期に多く発生す 2008年 10 10 21 る理由として、①暑さから絶縁用保護具の使用を 2009年 11 3 14 怠りがちになること、②軽装により皮膚を多く露 2010年 11 2 13 出すること、③作業時の注意力が散漫になること、 計 56 23 2 81 ④発汗により皮膚の電気抵抗が小さくなること等 割合 69% 28% 3% 100% 1 が要因です。 表 2 に示しているように 2005 年から 2010 年 3)感電災害は死亡率の高い災害である。 の 5 年間で、低圧、高圧、特別高圧、落雷の感電 表 4 に示しているように、休業 4 日以上の死 死亡者数は 81 人ですが、そのうち低圧での感電 傷者数に占める死亡者数の割合は、2008 年から 死亡者数は 56 人で 69%を占めています。低圧感 2013 年の 5 年間の合計で、全災害の死傷者数が 電死亡災害が多い理由として、低圧の電気を扱う 597,445 人、死亡者数が 5,655 人で、死亡者数の 人数が高圧、特別高圧を扱う人数よりも多いとい 占める割合は 0.9%です。これに対し、感電災害 うこともありますが、管理者、作業者の低圧での は死傷者数が 576 人、死亡者数が 75 人で、死亡 感電への認識が甘いことも起因しています。ここ 者数の占める割合は 13%です。このように、死 で、交流電圧区分は低圧≦ 600V <高圧≦ 7000V 亡率の高い危険な災害です。 <特別高圧となります。 このように感電災害が無くならないのは、危険 表3 低圧感電による死亡災害の月別発生状況(2000年∼2009年の合計数) (単位:人) 低 圧 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 計 2 1 1 2 6 11 41 42 18 6 3 1 134 夏期計 101 割 合 75% 100% 厚生労働省統計資料 − 13 − 表4 全産業及び建設業の休業4日以上の感電死傷者数と死亡者数 (2008年∼2013年) (単位:人) 全災害 感電災害 ましたが、今後はヒューマンエラーの対策を進め る必要があると言われています。最近ではヒュー マンエラーの代表的な要因である危険軽視や無 休業4日以上の 休業4日以上の 死亡者数 死亡者数 死傷者数 死傷者数 知・未熟練などを防止する目的で危険体験教育が 実施されています。図 2 は指先に電圧を印加して 平成20年 129,026 1,268 149 21 平成21年 114,152 1,075 102 14 平成22年 116,733 1,195 118 13 平成23年 117,958 1,024 99 12 このような体験を通じて初めて知ったこと、こ 平成24年 119,576 1,093 108 15 れまでは軽く考えて実施しなかったことが明らか 計 597,445 5,655 576 75 になって、ヒューマンエラーの防止に貢献してい 13% るとの報告が出ています。このような感電の怖さ 割合 0.9% 感電を体験できる装置です。乾いた状態、少し汗 ばんだ状態、濡れた状態の違いを体験できます。 厚生労働省統計資料 を知る取り組みを通じて感電災害がなくなること を願っています。 な刃物などのように明らかに危険と分かれば注意 最後に、表 5 に人体が充電部と接触して感電 するのですが、電気は充電部の金属が見えるだけ したとき、接触する状況に応じて許容できる接触 で電気自体は見えないことが最大の要因です。安 電圧(人体に加わる電圧)を示しています。この 全教育の充実・安全用具の進歩・作業方法の改善・ ように、水中ではスマートフォンなどの情報機 管理方法の改善などで現在の状態まで減少してき 器を充電する電圧 5V 程度において危険性があり ます。インターネット情報ですが、2015 年 2 月 にロシアのモスクワ在住の 24 歳の女性が iPhone を湯船に落として感電死していたと報道されてい ました。iPhone に接続されていたモバイルバッ テリーが感電の原因だった模様です。スマート フォンを風呂で楽しむ人も多いと思いますが、実 は使い方によっては死亡事故が起こる可能性があ るのでご用心ください。 図 2 感電・人体電気抵抗体験器(株式会社エヌエスティー製) 株式会社きんでん 京都研究所 第二研究開発部長 表5 許容接触電圧(日本電気協会JEAG8101) 種別 接触状態 許容接触電圧 (V) 第1種 人体の大部分が水中にある状態 2.5以下 第2種 人体が著しく濡れている状態、金属製の電気機械器 具や構造物に人体の一部が常時触れている状態 25以下 第3種 第1種、第2種以外の場合で、通常の人体の状態 において接触電圧が加わると、危険性が高い状態 50以下 第4種 第1種、第2種以外の場合で、通常の人体の状態 において接触電圧が加わっても危険性が低い状態、 接触電圧が加わる恐れが無い。 − 14 − 制限なし 新会員紹介 新しく入会された会員をご紹介します。 〔五十音順・敬称略〕 (1)年齢 (2)出身地 (3)所属・役職 (4)趣味・読書(最近読んだ本)・旅行(印象に残った土地) (5)新年・入会に際しての抱負など 梅本 武彦(1)58 歳(2)大阪府 (3)NTN 株式会社 取締役 自動車事業本部 副本部長 兼 EV モジュール事業本部 本部長 兼 品質管理部門担当 (4)読書(最近読んだもの):心に刺さる耳の痛い話(日経 BP) 旅行(印象に残った土地、理由等):休みの日はリラックスも兼ねて愛車でふらふ らと出かけます。ドライブでは無かったけれど浅草の浅草寺に参拝。日本の古い寺 社には魅力がある。 その他:ドライブ (5)24 年振りに大阪に戻ってきましたが変化に驚いています。現在、新事業に取り組 んでいますが、皆様との交流により、最先端の技術を盛り込みながら成長させたい と考えています。 古林 卓嗣(1)53 歳(2)山口県 (3)NTN 株式会社 先端技術研究所 所長 (4)読書:随筆や軍事史関係を比較的好みます。 その他:週 1 回程度のジム通いで、少し体をほぐします。 (5)科学技術のみならず様々な分野での多くの方々の卓見に触れ、新しい視点を持てる ようにしたいと思います。 よろしくお願い申し上げます。 萬成 隆(1)55 歳(2)兵庫県西宮市 (3)三菱商事株式会社 関西支社 副支社長 (4)ゴルフ・テニス 旅行:イタリア トスカーナ地方 12世紀頃からの中世の都市がそれぞれ個性を持ち残っています。 ワインも素晴らしいです。 (5)関西での勤務は 3 度目となります。直近はスペイン マドリッドにおり、発電、船、 港湾、鉄道車両、LNG、食品他様々な分野で仕事をさせて頂きました。 当会でスペインを視察される際にはお役に立てると思います。 どうぞ宜敷くお願いいたします。 三宅 義和(1)66 歳(2)徳島県 美馬市 (3)関西大学 環境都市工学部 教授 (4)旅行:中学、高校そして大学の同級生や教え子らの各グループで年 1 回くらい行 く温泉旅行や近場の海外旅行でリフレッシュしています。美味い地酒が有れば、 なお最高です。 (5)大学での仕事は専門バカになるので、貴クラブで幅広い科学・技術について先端 のご講演が伺えることを期待しております。もう仕事に役に立つ事はないでしょ うが、日本の科学技術の素晴らしさを実感する機会になればと思っています。 − 15 − 会 員 の 皆 様 へ 「私のとっておき」コーナーへご投稿のお願い 「会報」は、ご承知のとおり季刊として発行しております。現在、会員外からご投稿頂く特別寄稿をはじめ、 講演要旨、海外リポート、会員のひろば、新会員紹介などを掲載し、毎号の会報編集については、広報委員 会で検討しております。会員の皆様により一層のご愛読頂くため会員参加型のコーナーとして昨年より「私 のとっておき」を連載しております。 つきましては、下記の内容等で自由にご投稿頂き楽しいコーナーとして皆様の多数のご参加お待ちしており ます。 ①テーマ : 問いません ex. お店・健康法・スポーツ・旅行・本・音楽・映画・芝居 等々 ②文字数 : 問いません(写真・図有可) ③締 切 : 随時掲載 ※実名・匿名いずれでも結構です。 原稿は下記までメール送信して頂きますようお願い申し上げます。 紙面の都合によりご投稿多数の際は、抽選させて頂く場合がございます。 <本件窓口> 大阪国際サイエンスクラブ 事務局 TEL(06)6441-0458 FAX(06)6441-0459 ([email protected]) 編集後記 最近円高による原材料の高騰や後継者不在から、倒産や廃業する中小企業があります。 一方、大手企業の工場海外移転に伴い、海外に出ていかざるを得ない下請け中小企業や海外進出が 難しい小規模企業が、得意技術を持ち寄って下請け仕事から脱し、独自商品を開発して新しい市場に 進出している事例も見聞します。 今号に掲載された、鮫島弁護士の 「小説 下町ロケット に学ぶ中小企業の知財戦略、経営戦略」 は、 中小企業が自社技術を磨いてロケット燃料バブルを開発し、特許取得することで、大企業との特許裁判や 特許買取り要求を退けて、性能仕様が厳しいロケット燃料バルブの納入に成功する快挙を成し遂げた お話でした。 このように自社技術を活かして、 高度な製品を完成できる中小企業は少なく、 多くの中小企業は、 得意技術や市場を持ち寄って、 協業することで事業の発展拡大を図ることに経営者が目を向けて いただきたいと思います。 広報委員 岩田 賢造 2015 年 7 月(H27)発行 大阪国際サイエンスクラブ 広報委員会 大阪市西区靭本町1丁目8番4号 TEL(06)6441-0458 ホームページ :http://www.isco.gr.jp/ E-mail アドレス:[email protected] − 16 −
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