OP6 部門費の配賦計算 1. 2ステップの配賦計算 部門費の配賦計算は大きく2つのステップに分かれます。 ① 一般会計システムから受領した製造費用の内、部門共通費や補助部門の費用を適当な配賦 基準を使って、製造部門へ配賦します。 ② 製造部門に集約された費用を使って製品/製造オーダーへの実際配賦率を計算し、製品/ 製造オーダーへ社内加工費を配賦します。必要に応じて、製造部門の費用を部門内の工程 へ按分し、工程から製造される製品へ配賦計算を行います。 予定配賦率を適用する場合は、第1ステップは行われず、第2ステップの配賦率の計算も行われず、 製品/製造オーダーへの配賦計算のみになります。 部門費の配賦計算処理は「原価一番」の開始メニューから「部門費処理」のボタンを押してメニュ ーを開きます。 第 1 ステップ 2. 第2ステップ 補助部門費の配賦計算 ① 「原価一番」での補助部門の定義 原価計算基準では、必要に応じて補助部門を補助経営部門(動力、工具製作、検査等)と工場管 理部門(購買、生産計画、工場総務等)に分けて配賦計算を行うように記述されています。 「原価一番」では、補助経営部門を補助部門と呼び、工場管理部門を管理部門と略して呼んでい ます。 配賦計算は管理部門の製造部門と補助部門への配賦計算を先に実行してから補助部門の製造部 門への配賦計算を実行します。 ② 補助部門/管理部門と共通部門 これ以外に、部門共通費を集計する部門を共通部門と定義しています。共通部門は組織上存在し ない場合もあります。これは、ある管理部門が工場の管理業務を行うとともに部門共通費の計上も 行っている場合、共通費の配賦計算と補助部門/管理部門費の配賦計算は配賦額の転記方法が異な っているので、組織上ダミーの部門を設定し、そこに部門共通費を計上しなければならないからで す。 補助部門/管理部門と共通部門の配賦計算の違いは以下のとおりです。 (1) 補助部門/管理部門からの配賦額は、その部門からの被配賦額であることを示す勘定科目を 勘定科目テーブルに追加登録し、配賦額の合計を、その勘定科目に転記します。 (2) 共通部門からの配賦額は、配賦先となる部門の同じ勘定科目(給与は給与へ、消耗品費は消 耗品費へ)へ加算します。 製造1部 給与 1,200,000 消耗品費 520,000 旅費交通費 630,000 通信費 184,865 総務部費 391,667 人員数 15 製造2部 1,800,000 640,000 350,000 277,297 339,444 13 製造3部 700,000 250,000 150,000 107,838 208,889 8 製造共通 0 0 0 570,000 - 総務部 540,000 200,000 120,000 80,000 (940,000) 上記の例では、総務部で通信費 650,000 円を支払っていますが、この内、570,000 円が製造 1 部から 3 部に対する共通費で、総務部の部門個別費としての通信費は 80,000 円でした。 共通費については、給与の比率で 570,000 円を製造 1 部から 3 部の通信費の勘定科目へ配賦 しています。 一方、管理部門としての総務部の費用合計は 940,000 円でしたので、これは人員数の比で製 造 1 部から 3 部へ配賦していますが、対応する勘定科目に加算せずに、合計額を総務部費とい う配賦計算用に新設した勘定科目へ加算しています。これによって製品/製造オーダーに配賦し たときに、原価の構成要素として総務部の費用がどれだけ影響しているかを知ることができます。 部門が補助部門、管理部門、共通部門のいずれにあたるかは「組織」のメンテナンスで指定で きます。指定は、それぞれの部門の呼称で決めるよりも、どちらの配賦方法が適切であるかで部 門の種類を決めた方がよいでしょう。 ③ 部門費の計上 「部門費予算実績登録」のボタンを押して、部門を指定して開いた画面で勘定科目ごとの製造費 用を計上します。 ④ 配賦基準名の登録 「配賦基準名登録」のボタンで、適用する配賦基準を登録します。 配賦基準として以下の 4 種類は「原価一番」でコード値を決めていますので、ユーザーがこれ を別の配賦基準用に使うことはできません。自由に設定できるのは、コード値=5以上になります。 コード値=1・・・・生産数量 コード値=2・・・・生産重量 コード値=3・・・・作業者の作業時間 コード値=4・・・・機械設備の稼働時間 それぞれの配賦基準に対して、値の種類を設定しなければなりません。種類は以下のようになっ ています。 値種類=1・・・固定値 配賦基準値登録の画面から値をインプットしなければなりません。 値種類=2・・・科目値 「部門費予算実績登録」で計上した勘定科目別の経費実績を「原価一番」で集計し、 これを当該配賦基準値の当月フィールドへ転記します。 値種類=3・・・生産値 「データ一括計上」メニューの「入出庫計上」で計上した完成数量(または重量)と 「作業時間計上」で計上した作業時間のデータを「原価一番」で配賦先の部門別に集 計して転記した値を使います。 値種類=2の科目値の場合、配賦基準のコードと勘定科目のコードとを結びつける必要がありま す。これは勘定科目テーブルのメンテナンス処理で行います。 この例で、科目コード 4992「直接労務費」と 4993「間接経費」の金額を配賦基準コード値=6 と7として使用しています。科目コード 4992「直接労務費」と 4993「間接経費」はダミーのコー ドで、この科目には経費は計上されません。その科目の金額は、「集計科目コード」の欄で 4992 または 4993 と指定された勘定科目の金額が集計されて転記されます。その転記された金額が科目 4992 の場合は、配賦基準コード=6、4993 の場合は配賦基準コード=7(「補助配賦基準」の欄) の値として配賦基準値のテーブルへ転記されます。 ⑤ 配賦基準値の登録 配賦基準の値種類で”1”の固定値を指定した基準は、その値をこの画面から登録しなければなり ません。 「配賦基準値登録」のボタンを押し、次の画面で配賦基準のコードを指定し、その次の画 面で配賦先の部門ごとの値を登録します。 ⑥ 配賦先の登録 共通部門費と補助部門/管理部門費の配賦先を登録します。 「部門費処理」メニューの「配賦先生 成」の青ボタンをダブル・クリックすると、以下の組み合わせで配賦先のテーブルを自動生成します。 ・ 全部門共通費 ⇒ すべての製造部門、補助部門、管理部門を配賦先として生成 ・ 製造部門共通費 ⇒ 製造部門のみを配賦先として生成 ・ 補助部門共通費 ⇒ 補助部門のみを配賦先として生成 ・ 管理部門共通費 ⇒ 管理部門のみを配賦先として生成 ・ 管理部門 ⇒ 製造部門と補助部門を配賦先として生成 ・ 補助部門 ⇒ 製造部門のみを配賦先として生成 自動生成処理が終了したら同じ「部門費処理」メニューにある「配賦先修正」のボタンを押して画 面を開きます。 ⑦ 配賦基準の選択 配賦元となる共通部門、補助部門、管理部門ごとに、適用する配賦基準を指定します。指定は 2 段階で行います。 (1) 配賦基準を部門別に指定します。(「配賦基準指定:部門別」のボタン) 部門別に配賦基準を指定した後で、この画面の「更新」ボタンを押します。最終的に「原価 一番」は部門別勘定科目別に配賦基準が指定されているとして配賦計算を行います。ここで「更 新」ボタンを押すと、その部門のすべての勘定科目に指定された配賦基準を設定します。 (2) 部門別の画面を開いて配賦基準を勘定科目別に指定します。 (「配賦基準指定:勘定科目別」 のボタン) 例えば全部門共通費の配賦基準は基本的には人時間を適用するが、賃借料のみは床面積を適 用したい場合に、この画面で賃借料の指定のみを変更します。 ⑧ 補助部門からの被配賦額を受ける勘定科目の指定 配賦元が共通部門の場合は何もする必要はないのですが、補助部門/管理部門の場合は、どの勘 定科目が配賦額を受けるかを指定しなければなりません。これは勘定科目テーブルのメンテナンス で行います。 開始メニューに戻って、テーブルメンテナンスメニューから「勘定科目」を選択します。 この例で、品質管理課費、設備保全課費、工場総務課費の3つの勘定科目が、それぞれ品質管理 課、設備保全課、工場総務課費からの配賦額を受ける勘定科目です。それを示すために以下のフィ ールドに値を入れます。 (1) (2) 補助部門費集計科目・・・・・この欄にチェックを入れます 対象補助部門コード・・・・・配賦元となる補助部門/管理部門のコードを入れます。 なお、補助部門費の配賦とは直接関係がありませんが、この科目に集計された補助部門費の配賦 額が製品原価の構成要素として表示されるように、原価分類コードで設定した補助部門費を示す 206 のコード値が設定されています。 以上の①から⑧までの処理は、組織変更や配賦基準の変更がない限りは、一回指定すればよいも のです。毎年、期の初めに組織変更が行われる場合は、配賦先の設定変更に注意してください。 ⑨ 配賦計算 「部門費配賦」のボタンを押して開始画面を開き、「配賦開始」のボタンを押すと配賦計算が実行 されます。「結果確認」のボタンを押すと、勘定科目別の配賦結果をマトリックス形式で表示した画 面が表示されます。「結果確認:部門別」は配賦元の部門別に配賦結果を表示したものです。 ただし、この処理を単独で実行することはあまりありません。月次原価計算処理の「全自動」の中 に組み込まれています。 3. 製造部門費の配賦計算 通常は以下の処理を単独で実行することはあまりありません。月次原価計算処理の「全自動」の 中に組み込まれています。 ① 原価分類コード別集計 補助部門費の配賦計算を受けて製造部門へ集計された製造費用を製品/製造オーダーへ配賦する には、勘定科目別の金額を原価分類コード別に再集計する必要があります。 ② 製造部門費の実際配賦率の計算 製造部門費の実際配賦率を計算するには、原価分類コード別に配賦基準として選択した操業度 のデータをインプットしなければなりません。この操業度のデータは「データ一括計上」の「入 出庫計上」か「作業時間計上」で原価元帳番号別にインプットされた完成数量か作業時間のデー タを「原価一番」で集計してテーブルに転記します。 製造部門費を実際配賦率で配賦するには、組織テーブルのメンテナンス処理で、 「製品/オーダ ーへの配賦方式」を「品目の登録部門別に一括配賦」に指定する必要があります。そのときに「加 工費配賦率」のほうは「予定配賦率」のままでよく、 「実際配賦率」に設定する必要はありません。 ③ 製造部門費の予定配賦率の登録 予定配賦率を登録して加工費の計算を行う場合は、 「製造部門費配賦率の登録」ボタンを押して 「予定 or 実際」を予定に指定して登録用の画面を開きます。 予定配賦率で配賦を行うには組織テーブルのメンテナンスで、 「製品/オーダーへの配賦方式」 を「作業時間明細別に配賦」に指定し、さらに「加工費配賦率」を「予定配賦率」に指定してお く必要があります。 加工費率の欄 に予定配賦率 をインプット ④ 品目の等価係数の設定 総合原価計算の場合に限られますが、配賦基準値としての「生産数量、生産重量、人の作業時 間、機械の稼働時間」に対して品目ごとに設定した等価係数を乗じた値を配賦基準値として使用 することができます。 等価係数は 7 種類設定できますが、7 番目は必ず”1”に設定しておかなければならないので、ユ ーザーが自由に設定できるのは 6 種類です。 ⑤ 製造部門への配賦基準と等価係数の指定 各製造部門について原価分類コード別に適用する配賦基準と等価係数を指定します。 ⑥ 配賦基準値の確認 製造部門別に原価元帳へ配賦基準値がどのように設定されたかを画面に表示し、配賦計算が適 正に行われる状態かどうかを確認する画面です。 ⑦ 製品/製造オーダーへの配賦計算 製造部門費を製品/製造オーダーへ配賦する処理は、通常は月次の原価計算処理の「全自動」 の中で行われますが、データの設定が正しいかをテストするために、配賦計算だけ実行したいと いう場合に以下のボタンを使います。 ⑧ 計算結果の確認 製造部門費の原価元帳への配賦計算が正しく行われたかどうかを確認する画面です。確認した い製造部門コードを指定して画面を開きます。 以上
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