1/3 2007 年 07 月 12 日 ミクロン精密 (6159) Hold 成長の手段を模索するニッチ・プレーヤ 株価 3,600 円 金融債務 現金等価物 ネット金融債務 176 百万円 962 -786 時価総額 企業価値(EV) 9,247 8,461 浜町 SCI 売上高 EV/売上高 EBITDA EV/EBITDA 営業利益 EV/営業利益 当期利益 PER 株主資本 PBR 5,267 1.6x 5,903 1.4x 6,401 1.3x 786 10.8x 1,132 7.5x 1,203 7.0x 602 14.1x 964 8.8x 1,035 8.2x 451 20.5x 609 15.2x 703 13.2x 5,637 1.6x 6,103 1.5x - 05/11a 06/11a 07/11e 自動車部品向け等の工作機械(研削盤)メーカ。 優れた技術と安定した経営を維持するが、一層の業績拡大と収益性向上には課題が多い。 本書は投資家のための参考情報であり、投資勧誘を意図しておりません。投資にあたっては読者自身の責任で判断して下さい。本書の内容は 作成日の筆者意見であり、万全を尽くしてはおりますが、その完全性・正確性を保証するものではなく、予告なく変更されることもあります。本書の 著作権は浜町 SCI にあり、浜町 SCI の事前の許諾なしに、複製・転送・引用を行うことを禁じます。浜町 SCI は本書で言及した株式について、な んらかのポジションを有していることがありうることをご了解下さい。 心なし研削盤と内面研 山形市に本拠を置く研削盤メーカ。1968 年創業、心なし研削盤を不二越、ベアリング・メーカ、 削盤のメーカ トヨタ自動車ほか自動車関連メーカへ納入し成長してきた。トヨタ自動車へは累計 100 台超の 納入実績があり、現在も 2 位の顧客である。 通常の研削は円筒研削と言い、加工物を軸で固定し回転させ、研削砥石でグラインドする。こ れに対し、会社が手がける心なし研削盤は、加工物をブレードの上に載せ研削砥石と調整砥 石に挟んでグラインドする。軸で押さえる必要がないため、歪みやすい加工物でもうまく削る ことができる。心なし研削盤は円筒研削盤の領域を置き換えてきたが、生産性が高いという 利点がある反面、加工への専門性も高く、汎用性に乏しいという欠点もある。会社では、顧客 が製造する部品が少量多品種化する中で、汎用化のための開発を重視している。 2000 年に内面研削盤を開発し製造販売に参入した。内面研削盤とは円筒及びリング形状の 加工物の内周面を加工するための機械。内面研削盤の利益率は心なし研削盤に比べ低く、 低コスト化のための研究開発が重要な課題である。 売上の 2 割はデンソー 売上高の 2 割を占めるデンソー向けでは、ディーゼルエンジンの燃料インジェクタ用の工作機 向け 械を納入している。これは、コモンレールシステム(燃料噴射に、電子制御の蓄圧装置と応答 性高いインジェクタを用いる方式)を用いたディーゼルエンジン向けの研削盤である。インジェ クタの主要部品部品であるノズルニードル向けに心なし研削盤、ノズルボディー向けに内面 研削盤を納入している。1 つのシステムでインジェクタ用に 9 台、ポンプ用に 5 台の需要が生じ る。デンソー北九州工場にはすでに納入しており、上海工場からも引き合いを受けている。会 社では顧客マザー工場での採用実績から、上海工場での受注は確実と見ている。 なおディーゼルエンジン部品向けは全売上高の 1/4 程度である。上記のデンソーに加えて米 系数社へ納入している。 07 年 11 月期は前年同 07 年 11 月期中間期は前年同期比減収減益となった。減収の要因で大きいのは、インド向け 2/3 期比で減収減益 心なし研削盤の大口受注で納期が下期にずれ込んだものがあったこと(会社は売上高計上 に検収基準をとっている)。一方、減益の要因は前年同期に特殊要因があったことが大きい。 前年同期には極めて利益率の高い売上があり、その反動が出たという。また、研究開発費増 による販管費の増加も営業利益の足を引っ張った。 品目別の売上高では、内面研削盤が全体の 1/4 に迫るなど、引き続き内面研削盤が売上拡 大を牽引している。ただし、内面研削盤の低い利益率は、製品ミックスの変化を通して利益率 向上の足かせとなっている。 欧州では苦戦 会社は欧州で苦戦している。かねてから注力してきたドイツのボッシュ社との商談は思うよう に進んでいない。ボッシュの顧客フォルクスワーゲンでは燃料噴射方式を TDI からコモンレー ルに切り替えてきている。当初フォルクスワーゲンはシーメンス社との JV でインジェクタを製 造しようと考えたが取りやめ、コモンレールでのインジェクタをボッシュとシーメンスから外部調 達する方針とした。会社では、ピエゾ・インジェクタのピストン向けに 2 年、仕上げ加工向けに 半年の開発を行い、その性能データについてはボッシュから高い評価を受けている。しかし、 ボッシュは現在 2 工場閉鎖を予定するなど生産能力に余剰があるため、会社のすぐの受注に は至らなかった。ボッシュではスウェーデン UVA 社製の内面研削盤に 80 台の余剰があると いう。外形をグラインドする機械にも 20-30 台程度の余剰があると見られ、これら機械の消化 が済むまでは、ドイツ本体での需要は出てこないものと見られる。ボッシュは会社に中国向け サプライヤとしての役割を期待していると言う。 会社は業績予想を修 07 年 11 月期業績について、会社は期初の予想を変更していない。受注残高は 06 年 5 月が 正せず 40 億円に対し、07 年 5 月には 29 億円と大きく減少している。会社は、下期受注活動、新技術 の戦略化、生産効率の向上等で期初予想が達成可能としている。 アメリカでの受注取り 現在の受注減は、自動車業界での需要が年前半で調整したことによる。具体的には米国向 漏れで大幅受注減 けで受注を取れなかった案件があったという。デルファイのバルブ・リフタ向けでは内面研削 盤 9 台の引き合いがあり、最終 3 社まで残ったが、成約に至らなかった。また、GM・フォードに カムシャフトを入れている部品メーカでも受注を得るに至らなかった。 なお、会社予想での内面研削盤の構成比は 19%と、前年同期比の 15%を上回っていることか ら、売上拡大は現状利益率の低い内面研削盤によるものであるとする基調は変わっていな い。 大幅な受注減にも、会社は業績予想を下方修正するに至っていない。07 年 9 月には本社に 中小型研削盤組立工場が完成するほか、年後半には自動車関連でも需要が回復するものと 見ているようだ。なお、従来は 8-10 か月だった納期が、受注残の減少により短期化しており、 検収基準での売上計上時期も早まってきている。すでにある受注残 29 億円に部品売上を加 え、さらに上積みを図れば十分可能な目標であるという。 会社は、トヨタ系メーカへの受注活動をさらに強化するため、名古屋営業所を移転し中部サテ ライトとした。ここではデモ機を置き、顧客と技術開発で緊密な連絡を取り合うことを目的とし ているが、損益への寄与は来期以降となる様子だ。 3/3 中期計画では 10 年に 会社の中期計画では 10 年 11 月期に売上高 80 億円、営業利益 20%を目標にしている。品目 売上 80 億円、営業利 別では内面研削盤が現在の 15%から 20%へ増えると見込まれている。地域別ではすでに強い 益率 20% ポジションのある国内と米国を横ばいとし、アジア(中国、インド、東南アジア)を 12%から 22%、 苦戦する欧州を 1.5%から 10%に増やしたいとしている。 会社業績予想は未達 07 年 11 月期の会社業績予想については達成の可能性も残るものの、未達となることを予想 となるものと予想 する。自動車部品分野での設備投資の回復が確認されないことが理由。売上高予想につい ては達成される可能性も高いが、内面研削盤の利益率改善にめどが立たなければ、営業利 益面での達成は難しいと予想する。ただし、納期の長さから見て短期に大きな崩れ方をする 会社ではない。 中期計画の収益目標 また、中期計画についても同様のことが言える。売上面では欧州での足がかりが見えない。 の実現には課題が残 収益面では、営業利益率を 20%とするのに売上高増のみでの達成を見込むべきではない。や る はり売上高の牽引役である内面研削盤のコスト削減が最大の課題となろう。 株価はフェアバリュー バリュエーションは EBITDA 倍率 7 倍と安定的なキャッシュフローに対する評価といったレベル だ。中期計画の達成可能性はともかく、横ばいレベルでの業績推移は安定的に望める会社 であり、現状株価はフェアバリューと見られる。高い技術力を持ったニッチ・プレイヤとして Hold とする。
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