遠藤照明 (6932)

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2007 年 06 月 21 日
遠藤照明 (6932)
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特損のショックから立ち直り、現株価は割安
株価
金融債務
現金等価物
ネット金融債務
時価総額
企業価値(EV)
692 円
3,353 百万円
721
2,632
9,316
11,948
06/3a
07/3a
08/3e
浜町 SCI
売上高
EV/売上高
EBITDA
EV/EBITDA
営業利益
EV/営業利益
当期利益
PER
株主資本
PBR
18,346
0.7x
18,727
0.6x
19,750
0.6x
2,420
4.9x
1,928
6.2x
2,132
5.6x
2,067
5.8x
1,456
8.2x
1,660
7.2x
1,055
8.8x
352
26.5x
700
13.3x
9,491
1.0x
10,112
0.9x
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商業設備照明器具のニッチ・プレーヤー。
地味な事業内容であるが、現株価での投資には一応の妙味があると思われ「買い」を推奨する。
本書は投資家のための参考情報であり、投資勧誘を意図しておりません。投資にあたっては読者自身の責任で判断して下さい。本書の内容は
作成日の筆者意見であり、万全を尽くしてはおりますが、その完全性・正確性を保証するものではなく、予告なく変更されることもあります。本書の
著作権は浜町 SCI にあり、浜町 SCI の事前の許諾なしに、複製・転送・引用を行うことを禁じます。浜町 SCI は本書で言及した株式について、な
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商業施設照明の専業
1967 年創業の照明器具メーカ。現社長は元銀行員で、銀行を退職して 1 人で器具メーカを創
メーカ
業したという経歴。今ではタイと中国(昆山)に海外子会社を持つほか、05 年 7 月にはレンタ
ル事業子会社イーシームズを設立している。
複合商業ビル、百貨店、専門店、食品スーパー、医療施設等商業施設向け照明器具を製造
販売している。商品の品揃えは、特殊技術を要する照明「テクニカル照明」、意匠性の高い
「エモーショナル照明」、ヘビーデューティーを求められる「屋外照明」である。インテリア家具
も販売しているが、全体に占める割合は 1 割以下と低い。
照明器具業界は大手 10 社で 3700 億円と言われる国内市場を寡占している。全体における
会社のシェアは 4.8%だが、商業施設照明のセグメントでは 22.7%とトップクラスである(会社推
計)。商業施設向け市場は 700 億円規模であるが、トップの松下電工は「ベース照明」が主体
であり、一方で意匠性を求められる分野では、会社が他を引き離している。
顧客店舗の業績を支
商業施設照明は顧客店舗の業績を左右する重要な要素であり、会社はこの点に自社の付加
えるエレメントとして照
価値を訴求している。かねてから欧州では商業施設照明が重視されていたが、欧州ブランド
明を販売
の上陸によって日本でもその重要性は増している。バブル崩壊後、現在でも照明市場全体で
市場規模は 2 割ほど縮小したままだが、商業施設照明ではすでにバブル時以上にまで回復
している。店舗照明は新設での新規需要、好調な店舗での更新需要、不調な店舗での取替
え需要が見込まれるため、景気の波に比較的左右されにくい安定した需要に支えられてい
る。建設業に比べ値崩れも少なく、大型チェーン店化は営業活動を効率的にするという恩恵
をもたらしている。
このようなセグメント特化の戦略は会社の営業戦略にも表れている。業務用照明器具のマー
ケティングは主に代理店や電気工事店を攻略するのが常であるが、会社では加えて施主や
設計事務所への営業を強化してきた。照明が顧客業績に及ぼす影響を説き、東京・大阪のシ
ョールームに備えたシミュレーションルームで実際に実験して見せることで、顧客や設計士に
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アピールしようというものだ。
ただ仕様どおりに光ればよいというものではない点に自社の優位性を築いたものだろう。
技術での優位性は月
一方、メーカとしての会社の技術についてはマーケティング面ほどのものはない。会社の得意
並みなもの
とする技術分野は反射板の設計という。いかに経験が重要とはいえ、大手がその気になって
真似ようと思えばそう難しいものではないだろう。
07 年 3 月期は為替変
07 年 3 月期は増収減益となった。これは主力の照明事業で為替変動と原材料の高騰などに
動と材料費で減益に
より 22.2%の減益となったもの。さらに特別損益で、本社移転費用 1.8 億円のほか、監査法人
よりの指摘により、クレームの補修についての引当、在庫の減損を促されるなど、特別損失を
総額 5.4 億円計上した。
インテリア家具事業では小売販売を撤退してカタログ販売に切り替えたことで赤字幅は縮小
している。インテリア家具事業の成否はまだ見えないが、売上・利益面とともにマイナス影響
はかなり小さくなっている。
08 年 3 月期予想の実
08 年 3 月期は増収増益を予定しているが、営業利益予想 16 億円は 05 年 3 月期も下回る水
現性は高い
準だ。保守的な感もあるが、商業施設の建設ラッシュはすでに高原状態にあるとの見かたも
あり妥当なレベルであろうと見られる。今期からの増益については、バーツの為替ヘッジの効
果 2 億円、コストダウン努力が挙げられており、外部要因に左右されるものの現環境での実
現性は高い。
海外・レンタル事業の
国内市場が成熟していく中で、会社は欧州、中国ほかアジアの市場に期待しているが、地域
業績寄与は来期以降
セグメントの開示で海外比率はいまだ 1 割以下である。(今期の予想も 7.5 億円) また、ドイ
ツの ERCO 社を初めとして欧州メーカ 10 社程度が強い市場でもある。この事業が会社業績を
牽引するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
レンタル事業子会社のイーシームズは国内初の照明器具レンタルを営むが、業績への寄与
は早くとも 09 年 3 月期からになりそうだ。レンタルは一度立ち上がれば顧客忠実度の高い安
定的な事業となりうるが、一方でバランスシートを使う事業であることに注意したい。
割安であり、投資検討
バリュエーションは EBITDA 倍率 5.6 倍と割安圏にある。前期の特別損失の内容を見ても一過
の対象となりうる
性にとどまる可能性が高いため、現株価での取得には一応の妙味があるだろう。