塑像と押出仏

展示リーフレット3
NARA UNIVERSITY MUSEUM!
塑像と押出仏
塑像
そ ぞう
塑像とは、土で作った仏像のことです。中国の唐時代にさかんに行われていた技法で、日本へは7世紀
中頃に伝わり、8世紀を中心に数多くの作品が作られました。塑像は心木に荒縄などを巻きつけ、目の細
かさが違う数種類の土を盛りつけて形を作ります。失敗しても作り直すのが容易で材料も安価ですが、脱
活乾漆造のように中は空洞ではないので、重く、また壊れやすいという欠点があります。有名な作例には
とうほん
法隆寺五重塔の中に安置されている塔本塑像や新薬師寺の十二神将像などがあります。
製作工程
ここでは法隆寺五重塔の塑像を例に作り方を説明します。
1 心木を作る
5 彩色をする
粗く削った木を組み合わせて心木を作ります。
白土という白色の絵の具で下塗りをして、岩絵
心木には荒縄を巻きつけて土がつきやすいよう
の具で彩色します。岩絵の具は天�然の岩石を砕
にし、腕などの細い部分は銅線に麻紐などを巻
いて粉にしたものです。中でも青色の岩群青や
いて心にします。
赤色の水銀朱はたいへん高価でした。
2 荒土をつける
粗い土に粘土やワラをまぜたもの(荒土)を心
塑像の内部構造
木につけます。荒土は粘土分が少なく、乾燥し
てもあまり縮みません。こうした土を使うこと
仕上げ土
で完成した像のひび割れを防ぐことができます。
3 中土をつける
粘土や細かいワラ、籾殻、繊維などをまぜた土
(中土)を荒土の上につけて大まかな形を作り
ます。
心木
銅線
4 仕上げ土をつける
目の細かい土に粘土や紙の繊維などを混ぜたも
中土
ひだ
のをつけて、へらで目や口元、衣の襞などの細
荒土
かい部分を作ります。
いろいろな心木
仏像の形によって心木はさまざまです。動きのあまりない小型の像の心木は、座板に一本の角材を立て
たシ�ンプルなものですが、大型の像は何本もの木材を組み合せて作ります。骨格となる木材を組合せた後、
その周囲に薄い板をはぎあわせて、中が空洞となるよう工夫を凝らしたものもあります。また、心木で像
のおおよその形を作ったり、足の指の形までを丁寧に彫り出している例もあります。
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展示リーフレット3
NARA UNIVERSITY MUSEUM!
押出仏
おしだしぶつ
たがね
押出仏は金属の型に薄い銅板を押しつけ、鏨で叩いて仏像の形をあらわしたものです。型は初め土で作
ついちょう
り、それを金属に起こしたと考えられます。打出仏、鎚
仏ともいいます。6世紀末に大陸から伝わり、
7∼8世紀にかけて盛んに作られました。図様は如来や菩薩の像を一体あらわすもの、三尊形式のもの、
小さな如来像をいくつも並べてあらわすものなどさまざまな種類があります。個人的な礼拝の対象として
祀られたり、仏像を納める厨子や堂塔内の壁面の飾りに用いられました。
製作工程
1 原型を作る
粘土で素型(雄型)を作ります。素型
いがた
を乾燥させた後、焼しめて鋳型に起こ
し、仏像型を鋳造します。((写真①)
2 おおまかな形を打ち出す
厚さ00..33〜00..55ミリの銅板を仏像型より
一回りほど大きく切り、焼なまします。
これを原型の上に置き、布をあてて木
づちで叩いて、銅板にシ�ワができない
よう注意しながら全体の形を出してい
きます。銅板が硬くなったら、再び焼
なまして木づちて叩きます。これを何
① 押出仏の原型
② おおまかな形を出す
回か繰り返しておおよその形を銅板に
写し取ります。 ((写真②)
3 鏨で細部を打ち出す
原型のおよその形が出たら、鏨を使っ
て細部の形を写し取ります。高さのあ
る顔の横や肩の上の辺りは破れやすい
ので注意が必要です。 ((写真③)
4 仕上げ
ときん
周囲の余計な部分を切り取り、鍍金
(金メッキ)を施したり、金箔を貼っ
③ 鏨で細部を写す
④ 周囲を切り取る
て仕上げます。 ((写真④)
解説 栗田美由紀
編集・発行 奈良大学博物館 http://www.nara-u.ac.jp/museum/
〒631-8502 奈良市山陵町1500 tel. 0742-44-1251
発行日 2012年7月10日
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fax. 0742-41-0650