容量制約をもつネットワーク設計問題に対するn分割不等式

容量制約をもつネットワーク設計問題に対する n 分割
不等式
n Partition Inequalities for Capacitated Network Design
Problem
片山 直登 流通経済大学 流通情報学部
平成 27 年 2 月 13 日
1
はじめに
容量 制約 を もつネットワ ー ク 設計問題 (capacitated network design problem;CN D)
は ,ア ー ク 上 の フ ロ ー 量 が ア ー ク 容 量 以 下 で あ る と い う 容 量 制 約 を も つ 設 計 問
題 で あ る .ア ー ク 容 量 は 通 信 回 線 容 量 や 輸 送 能 力 に 相 当 し ,容 量 制 約 を も た な い
ネットワ ー ク 設 計問題 に 比 べ よ り 現実的 なモデルとな る.容量制約があ るために,
容 量 制 約 を も た な い 問 題 に 比 べ て 最 適 値 と 緩 和 問 題 の 下 界 値 と の ギャップ が 大 き
く な る 傾 向 が あ る .ま た ,デ ザ イ ン 変 数 を 固 定 し た フ ロ ー 問 題 が タ イ ト な 多 品 種
フ ロ ー 問 題 と な る た め ,実 行 可 能 解 を 求 め る こ と 自 体 に 手 間 が か か る な ど ,難 し
い問 題 と なる.
本 論 文 で は ,向 き の な い ア ー ク を 含 む 容 量 制 約 を も つ ネット ワ ー ク 設 計 問 題 を
対象 と し ,こ の問題 に 対 す る い くつかの妥当不等式を提案する.
2
問題の定式化
は じ め に ,本 研 究 で 対 象 と す る 容 量 制 約 を も つ ネット ワ ー ク 設 計 問 題 の 定 義 を
示す.
定義 2.1 (容量 制 約をも つ ネット ワーク設計問題 CN D) ノ ー ド 集 合 N ,デ ザ イ ン
費用 f ,フロ ー 費 用 c お よ び ア ーク容量 C をも つ向きのない アーク集合 A,需要 d
を も つ 品 種 集 合 K が 与 え ら れ て い る .こ の と き ,す べ て の ア ー ク 上 の フ ロ ー 量 が
ア ー ク 容 量 以 下 で あ り,フ ロ ー 費 用 と デ ザ イ ン 費 用 の 合 計 を 最 小 に す る ア ー ク 集
合 A′ (⊆ A) と各 品 種の フ ロ ー を 求めよ.
ア ー ク (i, j) 上 の 品 種 k の i か ら j 向 き の 単 位 当 た り の フ ロ ー 費 用 を ckij ,フ ロ ー 量
を 表 す フ ロ ー 変 数 を xkij と す る .ア ー ク (i, j) の デ ザ イ ン 費 用 を fij ,ア ー ク 容 量 を
Cij と す る .ア ー ク (i, j) の 0–1 の デ ザ イ ン 変 数 を yij と し ,yij = 1 で あ れ ば ア ー ク
(i, j) を 選 択 し ,yij = 0 で あ れ ば ア ー ク (i, j) を 選 択 し な い こ と を 表 す.ま た ,品 種
k の 需 要 を dk と し ,ノ ー ド n を 端 点 と す る ア ー ク の 他 方 の 端 点 の 集 合 を Nn と す
る.こ のと き ,CN D のア ー ク フ ローによる定式化を示す.
∑
∑ ∑
fij yij
(1)
最小化
(ckij xkij + ckji xkji ) +
(i,j)∈A k∈K
条件
∑
xkin −
i∈Nn
∑
∑
(i,j)∈A
xknj = dkn
∀n ∈ N, k ∈ K
(2)
j∈Nn
(xkij + xkji ) ≤ Cij yij
k∈K
xkij + xkji ≤
xkij ≥ 0, xkji
yij ∈ {0, 1}
dk yij
≥0
∀(i, j) ∈ A
(3)
∀(i, j) ∈ A, k ∈ K
(4)
∀(i, j) ∈ A, k ∈ K
∀(i, j) ∈ A
(1) 式 は 目 的 関 数 で あ り,フ ロ ー 費 用 と デ ザ イ ン 費 用 の 総 和 を 最 小 化 す る .(2)
式 は フ ロ ー 保 存 式 で あ る .こ こ で ,dkn は ,ノ ー ド n が 品 種 k の 始 点 Ok で あ れ ば
−dk ,終点 Dk で あ れば dk ,それ 以外のノードであれば 0 である定数である.(3) 式
は ,ア ー ク (i, j) が 存 在 す る と き ,ア ー ク 上 の フ ロ ー 量 の 合 計 が ア ー ク 容 量 以 下 で
あ る こ と を 表 す 容 量 制 約 式 で あ る .ア ー ク は 向 き を も た な い の で ,ア ー ク (i, j) 上
に は i か ら j 方 向 の フ ロ ー と j か ら i 方 向 の フ ロ ー が 存 在 す る .(4) 式 は ,ア ー ク
(i, j) が 存 在 す る と き ,品 種 k の フ ロ ー が 最 大 で dk だ け 存 在 す る こ と を 表 す 強 制
制 約 式 で あ る .dk > Cij で あ る 品 種 の 需 要 が 存 在 す る 場 合 ,こ の 制 約 式 の 右 辺 は
min(dk , Cij )yij に 置 き換 え る こ と ができる.
3
妥当不等式
強 制 制 約 式 を 含 む 定 式 化 で あって も 最 適 値 と 下 界 値 と の ギャップ は 比 較 的 大 き
く,線 形 緩 和 に よって 得 ら れ る 下 界 値 は そ れ ほ ど 良 く は な い .そ の た め ,CN D に
対 し て 多 く の 妥 当 不 等 式 が 示 さ れ て お り,こ れ ら の 妥 当 不 等 式 を 制 約 と し て 加 え
る こ と に よって ,下 界 値 を 改 善 す る こ と が で き る .こ こ で は ,向 き の な い 容 量 を
もつ ア ー クを想 定 する .
容 量 制 約 を も つ ネット ワ ー ク 設 計 問 題 に 対 し て ,多 く の 妥 当 不 等 式 が 提 案 さ
れ て い る .Magnanti et al. (1993) や Katayama and Kasugai (1993) は ,カット セット
上 の フ ロ ー と 容 量 に 対 す る 切 り 上 げ を 用 い た カット セット 不 等 式 を 示 し て い る .
Magnanti et al. (1993) は,カットセット不等式に加え,3 ノードに対するカットセッ
ト不 等 式 および 剰 余容 量 不 等 式 を提案している.Chouman et al. (2003) は,最小基
数 不 等 式 ,被 覆 不 等 式 と そ れ ら の 持 ち 上 げ た 不 等 式 を 示 し ,分 離 問 題 と 生 成 方 法
を 示 し て い る .Chouman and Crainic (2011) は ,フ ロ ー 被 覆 不 等 式 ,フ ロ ー パック
不 等 式 と そ れ ら の 生 成 方 法 を 示 し て い る .Agarwal (2006) や Agarwal (2014) は ,サ
バイ バ ル ネット ワ ーク 設 計 問 題 に対する 3 および 4 分割不等式を示している.
2
S
S̄
(S, S̄)
図 1: カットセット 不等式
3.1
カットセット不等式
カット セット 上 の ア ー ク 容 量 と フ ロ ー 量 の 関 係 か ら 妥 当 不 等 式 を 導 く こ と が で
き る .ノ ー ド 集 合 N を S と S̄(= N \S) に 分 割 す る .S 内 の ノ ー ド と S̄ 内 の ノ ー ド
を 端 点 と す る ア ー ク 集 合 で あ る カット セット (S, S̄) と お く.ま た ,S に 含 ま れ る
ノ ー ド と S̄ に 含 ま れ る ノ ー ド を 始 点 と 終 点 ま た は 終 点 と 始 点 と す る 品 種 の 集 合 を
∑
K(S, S̄) とし,これ ら の品 種 の 需 要 量の和を D(S,S̄) (= k∈K(S,S̄) dk ) とおく.
こ の と き ,K(S, S̄) に 含 ま れ る 品 種 の フ ロ ー は ,カット セット (S, S̄) に 含 ま れ る
ア ー ク 上 を 少 な く と も 1 回 は 通 過 し な け れ ば な ら な い (図 1).さ ら に ,(S, S̄) 上 に
は ,カット セット 上 を 通 過 す る フ ロ ー 量 以 上 の 容 量 が 必 要 で あ る の で ,次 式 が 成
り立 つ .
∑
Cij yij ≥
(i,j)∈(S,S̄)
∑
∑
(xkij + xkji ) ≥ D(S,S̄)
∀S ⊂ N
(i,j)∈(S,S̄) k∈K(S,S̄)
カットセット (S, S̄) に含 ま れ る アークのアーク容量の最大値を C(S,S̄) (= max(i,j)∈(S,S̄) Cij )
とお く.
両辺 を C(S,S̄) で 割ると ,次 の 関係が成り立つ.
∑
(i,j)∈(S,S̄)
∑
yij ≥
(i,j)∈(S,S̄)
Cij
yij ≥
C(S,S̄)
∑
∑
(i,j)∈(S,S̄) k∈K(S,S̄)
D(S,S̄)
(xkij + xkji )
≥
C(S,S̄)
C(S,S̄)
∀S ⊂ N
左 辺 は 整 数 値 を と る た め ,次 の カット セット 不 等 式 (Chouman et al. 2003) は 妥 当
不等 式 と なる.
∑
(i,j)∈(S,S̄)
⌈
yij ≥
D(S,S̄)
C(S,S̄)
3
⌉
∀S ⊂ N
1
y12
y13
3
2
y23
図 2: 3 ノードネットワーク
3.2
3 ノード不等式
3 ノ ー ド と 各 ノ ー ド を 端 点 と す る 3 ア ー ク を も ち ,各 ノ ー ド を 始 点・終 点 と す る
3 品種 か ら構 成 される 3 ノー ド の ネットワークを考える (図 2).このネットワークに
おけ る カットセット不等 式 (Magnanti et al. 1993) は,次の 3 つの式となる.
⌈
y12 + y13
⌉
d12 + d13
≥
,
max (C12 , C13 )
⌈
y12 + y23
⌉
d12 + d23
≥
,
max (C12 , C23 )
y13 + y23
⌈
d13 + d23
≥
max (C13 , C23 )
⌉
これ ら 3 式 の 和を 2 で 割 る こ と に よって,次の 3 ノード不等式を導くことができる.
⌈ (⌈
⌉ ⌈
⌉ ⌈
⌉)⌉
1
d12 + d13
d12 + d23
d13 + d23
y12 + y13 + y23 ≥
+
+
2
max (C12 , C13 )
max (C12 , C23 )
max (C13 , C23 )
⌈
⌉ ⌈
⌉
こ の 妥 当 不 等 式 は , (d12 + d13 )/ max (C12 , C13 ) + (d12 + d23 )/ max (C12 , C13 ) +
⌈ 12
⌉
(d + d23 )/ max (C12 , C13 ) が奇 数 であれば,有効な妥当不等式となる.
3.3
最小基数不等式
カットセット (S, S̄) に 対 す る 最 小 基数 m(S,S̄) を次のように定義する.
m(S,S̄) = max{h|
h
∑
Cl <
l=1
∑
dk } + 1
k∈K(S,S̄)
こ こ で ,C1 , · · · , C|(S,S̄)| は カット セット (S, S̄) 上 の ア ー ク 容 量 を 降 順 に ソ ー ト し た
∑
も の で あ り, hl=1 Cl は 容 量 の 降 順 で h 番 目 ま で の ア ー ク 容 量 の 和 を とった も の で
あ る .この た め カット セット (S, S̄) 上に は 少な く と も m(S,S̄) 本の ア ーク が 必 要で あ
り,m(S,S̄) は (S, S̄) の中 で 選 択 す べきアーク数の最小値となる (図 3).
4
S
S̄
(S, S̄)
m( S, S̄)
図 3: 最小基数
S
S̄
(S, S̄)
E
図 4: カットセット と被覆
し た がって ,次 式の最 小 基 数 不等式 (Chouman et al. 2003) は妥当不等式となる.
∑
yij ≥ m(S,S̄)
(i,j)∈(S,S̄)
3.4
被覆不等式
E を カット セット (S, S̄) の 部 分 集 合 と す る (図 4).カット セット (S, S̄) か ら E を 除
いた ア ー ク集合 (S, S̄)\E 上で ,K(S, S̄) のすべての需要を流せない,すなわち
∑
Cij < D(S,S̄)
(i,j)∈(S,S̄)\E
であ る と き,E を (S, S̄) の 被 覆 と よ ぶ.このとき,被覆に含まれるアークの少なく
とも 1 本以 上が 選 択さ れ な い と ,フ ローを流せないために実行不可能となる.
ま た ,E に含 ま れ るア ー ク 容 量 の最 小 値 の ア ーク を 加 え た とき に ,K(S, S̄) の す
5
べて の 需 要を流 せ る,す な わ ち
∑
Cij + min Cpq ≥ D(S,S̄)
(p,q)∈E
(i,j)∈(S,S̄)\E
であ る と き,E を (S, S̄) の最 小 被覆とよぶ.
(S, S̄) の す べての 被 覆 E に 対 し て,少なくとも被覆に含まれるアーク 1 本は選択
し な け れ ば な ら な い こ と か ら ,次 の 被 覆 不 等 式 (Chouman et al. 2003) は 妥 当 不 等
式と な る .
∑
yij ≥ 1
(i,j)∈E
デ ザ イ ン 変 数 の 線 形 緩 和 解 y が 与 え ら れ て い る も の と す る .次 の 分 離 問 題 を 解 く
こ と に よって ,CN D の 線 形 緩 和 解 を 満 足 し な い 可 能 性 の あ る 被 覆 を 見 つ け る こ
とが で きる .
ϕ = 最小 化
∑
yij tij
(i,j)∈(S,S̄)
条件
∑
Cij tij >
∑
Cij − D(S,S̄)
(i,j)∈(S,S̄)
(i,j)∈(S,S̄)
tij ∈ {0, 1}
∀(i, j) ∈ (S, S̄)
こ こ で ,ϕ は こ の 分 離 問 題 の 最 適 値 で あ り,tij は ア ー ク (i, j) が 被 覆 E に 含 ま れ れ
ば 1,そう で なけれ ば 0 であ る こ と を表す 0-1 変数である.もし,ϕ < 1 であれば E
は 最 も 緩 和 解 を 満 足 し な い 被 覆 と な り,ϕ ≥ 1 で あ れ ば 緩 和 解 を 満 足 し な い 被 覆
が存 在 し ない.
こ の 分 離 問 題 は 0-1 ナップ サック 問 題 で あ り,比 較 的 容 易 に 最 適 解 を 求 め る こ と
がで き る .しか し ,膨大 な 数 の カットセットに 対する分離問題を解くためには,よ
り 効 率 的 に 解 く こ と が 必 要 と な る .そ こ で ,yij を 昇 順 に 並 べ 換 え ,昇 順 に 制 約 を
満 た す ま で 貪 欲 的 に tij = 1 と す る こ と で 近 似 解 を 求 め る と ,効 率 的 に 被 覆 E を 求
める こ と ができ る .
4
4.1
n 分割不等式
3 分割不等式
3 ノ ー ド 不 等 式 は ,一 般 の ネット ワ ー ク に 拡 張 で き る .ノ ー ド 集 合 N を S1 ,S2 ,
S3 に 3 分 割 し ,3 ノ ー ド ネット ワ ー ク 上 の ア ー ク を カット セット に 対 応 さ せ る (図
5).この と き,カットセット (S1 , S̄1 ),(S2 , S̄2 ),(S3 , S̄3 ) に対するカットセット不等式
は次 式 と なる.
6
(S1 , S2 )
S1
S2
(S2 , S3 )
(S1 , S3 )
S3
図 5: 3 分割ネットワーク
∑
⌈
yij ≥
(i,j)∈(S1 ,S̄1 )
D(S1 ,S̄1 )
C(S1 ,S̄1 )
⌉
⌈
∑
,
yij ≥
(i,j)∈(S2 ,S̄2 )
D(S2 ,S̄2 )
C(S2 ,S̄2 )
⌉
,
∑
(i,j)∈(S3 ,S̄3 )
⌈
yij ≥
D(S3 ,S̄3 )
C(S3 ,S̄3 )
⌉
,
3 つ の 式 の 和 を と る と 左 辺 に は 同 じ デ ザ イ ン 変 数 が 2 つ ず つ 含 ま れ ,(S1 , S̄1 ) =
(S1 , S2 ∪ S3 ) などと な るこ と か ら ,次の 3 分割不等式を導くことができる.
∑
∑
∑
yij +
yij +
yij ≥
(i,j)∈(S1 ,S2 )
(i,j)∈(S1 ,S3 )
(i,j)∈(S2 ,S3 )
⌈ (⌈
⌉ ⌈
⌉ ⌈
⌉)⌉
D(S1 ,S̄1 )
D(S2 ,S̄2 )
D(S3 ,S̄3 )
1
+
+
2
C(S1 ,S̄1 )
C(S2 ,S̄2 )
C(S3 ,S̄3 )
⌉
⌉ ⌈
⌉ ⌈
⌈
この 妥 当 不等式 は , D(S1 ,S̄1 ) /C(S1 ,S̄1 ) + D(S2 ,S̄2 ) /C(S2 ,S̄2 ) + D(S3 ,S̄3 ) /C(S3 ,S̄3 ) が奇
数で あ れ ば,有効な 妥 当 不 等 式 と なる.
4.2
4 分割不等式と n 分割不等式
3 分 割 不 等 式 は ,4 分 割 不 等 式 に 拡 張 で き る .ノ ー ド 集 合 N を S1 か ら S4 に 4 分
割 す る (図 6).こ の と き ,カット セット (Sp , S̄p ) に 対 す る カット セット 不 等 式 は 次 式
とな る .
∑
(i,j)∈(Sp ,S̄p )
⌈
yij ≥
D(Sp ,S̄p )
C(Sp ,S̄p )
⌉
,
∀p = 1, 2, 3, 4
し た がって,次の 4 分割 不 等 式 は妥当不等式となる.
⌈ ∑
⌉⌉
3
4
4 ⌈
∑
∑
∑
D(Sp ,S̄p )
1
yij ≥
2
C(Sp ,S̄p )
p=1 q=p+1 (i,j)∈(Sp ,Sq )
p=1
7
(S1 , S2 )
S1
S2
(S1 , S3 ) (S2 , S3 )
(S1 , S4 )
(S2 , S4 )
S4
S3
(S3 , S4 )
図 6: 4 分 割ネット ワーク
ノ ー ド集 合 N を S1 から Sn に n 個に分割する.このとき,次の n 分割不等式は妥
当不 等 式 となる .
n−1
∑
n
∑
∑
p=1 q=p+1 (i,j)∈(Sp ,Sq )
n 分割不等式は,
なる .
5
⌈ ∑
⌉⌉
n ⌈
D(Sp ,S̄p )
1
yij ≥
2
C(Sp ,S̄p )
p=1
⌉
∑n ⌈
p=1 D(Sp ,S̄p ) /C(Sp ,S̄p ) が 奇 数 で あ れ ば ,有 効 な 妥 当 不 等 式 と
3 分割最小基数不等式と n 分割最小基数不等式
n 分 割 不 等 式 と 同 様 に ,最 小 基 数 不 等 式 を 3 分 割 不 等 式 に 拡 張 す る こ と が で き
る.ノ ー ド集 合 N を S1 ,S2 ,S3 に 3 分 割する .また,カット セット (S, S̄) 上の最小
基 数 を m(S,S̄) と す る .こ の と き ,カット セット (S1 , S̄1 ),(S2 , S̄2 ),(S3 , S̄3 ) に 対 す る
最小 基 数 不等式 は 次式 と な る .
∑
∑
∑
yij ≥ m(S1 ,S̄1 ) ,
yij ≥ m(S2 ,S̄2 ) ,
yij ≥ m(S3 ,S̄3 )
(i,j)∈(S1 ,S̄1 )
(i,j)∈(S2 ,S̄2 )
(i,j)∈(S3 ,S̄3 )
これ ら の 式から ,次 の 3 分 割 最 小基数不等式は妥当不等式となる.
⌈
⌉
∑
∑
∑
)
1(
m
+ m(S2 ,S̄2 ) + m(S3 ,S̄3 )
yij +
yij +
yij ≥
2 (S1 ,S̄1 )
(i,j)∈(S1 ,S2 )
(i,j)∈(S1 ,S3 )
(i,j)∈(S2 ,S3 )
同 様 に ,次 の n 分 割 最 小 基 数 不等式は妥当不等式となる.
n−1
∑
n
∑
∑
yij ≥
⌉
⌈ ∑
n
1
m(Sp ,S̄p )
2
p=1
p=1 q=p+1 (i,j)∈(Sp ,Sq )
8
E(s1 ,s2 )
S2
S1
E(s2 ,s3 )
E(s1 ,s3 )
S3
図 7: 3 分割被覆
∑
n 分 最 小 基 数 割 不 等 式 は , np=1 m(Sp ,S̄p ) が 奇 数 で あ れ ば ,有 効 な 妥 当 不 等 式 と
なる .
6
3 分割被覆不等式と n 分割被覆不等式
ノ ー ド 集 合 N を S1 ,S2 ,S3 に 3 分 割 す る .カット セット (Sp , Sq ) の 部 分 集 合 を
E(Sp ,Sq ) と する (図 7).ただ し ,E(Sp ,Sq ) ∪ E(Sp ,Sr ) がカットセット (Sp , Sq ∪ Sr ) の被覆
であ る も のとす る .
この と き ,被覆不 等 式 は 次 の よ うになる.
∑
∑
yij ≥ 1,
(i,j)∈E(S1 ,S2 ) ∪E(S1 ,S3 )
∑
yij ≥ 1,
(i,j)∈E(S1 ,S2 ) ∪E(S2 ,S3 )
yij ≥ 1
(i,j)∈E(S1 ,S3 ) ∪E(S2 ,S3 )
E(Sp ,Sq ) ∪ E(Sp ,Sr ) = E(Sp ,S̄p ) より,次の 3 分割被覆不等式を導くことができる.
∑
yij +
(i,j)∈E(S
∑
yij +
(i,j)∈E(S
1 ,S̄1 )
2 ,S̄2 )
∑
yij ≥ 2
(i,j)∈E(S
3 ,S̄3 )
ノ ー ド 集 合 N を S1 か ら Sn に n 個 に 分 割 す る .カット セット (Sp , Sq ) の 部 分 集 合
E(Sp ,Sq ) におい て ,∪np=1,p̸=q E(Sp ,Sq ) がカットセット (Sp , S̄p ) の被覆であるものとする.
3 分 割被 覆 不等式 と 同様 に ,次 の n 分割被覆不等式は妥当不等式 となる.
n
∑
⌈ ⌉
n
yij ≥
2
∑
p=1 (i,j)∈E(S
p ,S̄p )
n 分割 被 覆不等 式 は,n が 奇 数 で あれば,有効な妥当不等式となる.
9
7
おわりに
本 論 文 で は ,向 き の な い ア ー ク を 含 む 容 量 制 約 を も つ ネット ワ ー ク 設 計 問 題 に
対 す る 3・4 お よ び n 分 割 不 等 式 ,3 お よ び n 最 小 基 数 不 等 式 ,な ら び に 3 お よ び n
被 覆 不 等 式 を 提 案 し た .本 研 究 で は ,向 き の な い ア ー ク を も つ 問 題 を 対 象 と し ,
妥 当 不 等 式 を 示 し た に と ど まって い る .今 後 ,向 き の あ る ア ー ク を も つ 問 題 が よ
り一 般 的 である た め,向き の あ るアークをもつ問題への拡張が必要である.また,
提 案 し た 妥 当 不 等 式 を 問 題 へ 追 加 し た 場 合 の 有 効 性 や 分 枝 カット 法 へ の 組 み 込 み
が必 要 で ある.
本研 究 は 科学 研 究費 基 盤 研 究 C(課題 番号 25350454) による成果の一部である.
参考文献
Agarwal, Y. 2006. k-partition-based facets of the network design problem. Networks 47 123–139.
Agarwal, Y. 2014. Design of survivable networks using three- and four-partition facets. Operations
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Chouman, M., T. G. Crainic. 2011. Commodity representations and cutset-based inequalities for
multicommodity capacitated fixed-charge network design. Tech. Rep. CIRRELT-2011-56,
Centre de recherche sur les transports,Université de Montréal.
Chouman, M., T. G. Crainic, B. Gendron. 2003. A cutting-plane algorithm based on cutset inequalities for multicommodity capacitated fixed charge network design. Tech. Rep.
CIRRELT-2003-16, Centre de recherche sur les transports,Université de Montréal.
Katayama, N., H. Kasugai. 1993. A capacitated multi-commodity network design problem a solution method for finding a lower bound using valid inequalities. Journal of Japan
Industrial Management Association 44 164–175.
Magnanti, T. L., P. Mirchandani, R. Vachani. 1993. The convex hull of two core capacitated
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10