肝臓病の人の食事のとり方と栄養 私は、患者 様に対して、肝臓病の人の食事のとり方と栄養ついて説明いたしました。 はじめに 肝臓は、タンパク質、糖質、脂質の代謝、ビタミン、ミネラルの代謝・貯蔵、胆汁の生成、解毒作用な ど、消化吸収から新陳代謝までコントロールする大切なはたらきをする臓器ですから、肝臓病の人の食事 は、肝細胞の回復と再生をうながすことができるように、症状に合った食事療法をきちんと続けることが 大切です。 食事のとり方の基本 1)高カロリー・高タンパクというのは迷信です 肝臓にとって栄養分は必要ですから不足しないようにとるのは大切ですが、必要以上にとることも肝臓 に負担となります。必要最低限の栄養をとるようにすることが食事療法の基本であり、 「標準体重を目安 にして、年齢や労働量、肝臓の働きに見合った食事を、三食同じ量を食べる」ということが、肝臓 病の人の食事の原則です。 2)何をどれだけ食べたらいいのでしょうか 食事療法を行うにあたっては、標準体重を計算することから始めます。 標準体重の出し方・・・・(身長‐100) 0.9 標準体重を計算して、それよりも体重が多ければエネルギー摂取量を制限しなくてはなりません。栄養摂 取量の基準は、 タンパク質・・・・・・・体重1Kg あたり 1.0g エネルギー・・・・・・・体重1Kg あたり 25∼30 キロカロリ‐ です。栄養士の栄養指導のもとに、年齢や肝臓の働きに応じて、どれくらいの栄養をとったらいいかを計 算して下さい。 六つの基礎食品 (毎日とらなければならない栄養素と食品) 血や肉や骨をつくる からだの調子を整える 牛乳・乳製品 骨 ご と 食 べ 緑黄色野菜 られる魚 タンパク質 カルシウム カロチン 脂肪、鉄、 タンパク質 ビタミンC カルシウム 鉄、ビタミ B2、鉄、 ビタミンA ンB2 カルシウム B1、B2 魚・肉 卵・大豆 その他の 野菜・果物 ビタミンC カルシウム ビタミン B1、B2 力や体温となる 米・パン めん・いも 油脂 糖質性エネル 脂 肪 性 エ ネ ギー ルギー いもにはビ タミンB1、 C 血や肉や骨をつくるタンパ質のとり方 1)良質のタンパク質食品を適量とりましょう タンパク質を多く含んでる食品としては、肉類、魚貝類、卵、大豆製品、チーズ、牛乳などがあります。 いろいろな種類をとりあわせて、適量をとるようにしましょう。 2)タンパク質はとりすぎないようにしましょう タンパク質は、余分にとりすぎたり、糖や脂質が不足すると、体のタンパク質を燃やしてエネルギ‐と して利用し、その燃えかすとしてアンモニアが生じます。アンモニアは肝臓の働きが不十分な人では肝臓 に余分な負担をかけることになり、さらに肝機能が低下している人の場合には、たくさん生じると処理し きれなくなって、血液の流れに乗ってしまい脳神経に作用して肝性脳症を起こすことがあります。 力や体温となる糖質・脂質のとり方 1)糖質食品をとりすぎると肥満になります 糖質食品は、たくさんとりすぎると、皮下脂肪として蓄えられるために太ってしまいます。太ってくれ ば栄養がたくさん必要なり、老廃物も増加しますから、それを処理するのに肝臓に負担をかけることにな ります。また、肥満は血圧の上昇にもつながります。 2)脂質食品を上手にとりましょう 脂質は主にエネルギーとして使われますが、そのほか細胞やホルモンを作る材料となります。脂質を大 別すると、動物性脂肪、植物性脂肪、魚の脂肪(青魚など)の三種類になります。これらは、かたよらな いようにバランスよくとることが必要です。肉のおかずと魚のおかずを交互にして炒め物やドレッシング などにサラダ油を使えば、この三種類がまんべんなくとれます。 からだの調子を整える野菜・果物のとり方 1)野菜や果物を十分にとってビタミンを補給しましょう 野菜は1日に少なくとも 300g くらいは必要で、そのうち3分の1は緑黄色野菜をとりましょう。緑黄 色野菜というのは色の濃い野菜(にんじん、ほうれん草、小松菜、カボチャなど)で、ビタミンAのもと になり、また、ガン予防にも役立つといわれるカロチンを豊富に含んでいます。野菜や果物にはビタミン とミネラルが豊富です。ビタミンは肝臓の働きにとても大切ですから、肝臓を保護するためには十分にと らなくてはなりません。ミネラルは体内の水分調節や、体を作るのに必要なほか、肝臓には欠かせない働 きをしている酵素の材料にもなります。 にんじん 2/3 本 トマト・・ 1/2 個 ブロッコリー 1/2 株 青梗菜 1 株 白菜(大きめの葉) 1 枚 かぶ 1 個 ごぼう 2/3 本 カリフラワー 1/4 株 もやし 1/3∼1/2 袋 キャベツ(大きめの葉)2枚 ジャガイモ 小1個 ほうれん草 冬 1/3 わ 夏 1/2 わ 2)果物の食べすぎに気をつけましょう 野菜 100gの目安 果物は糖分を含んでいますから、たくさん食べすぎると 肥満の一因になります。肥満傾向の人は食べすぎに気をつけて下さい。 緑黄色野菜 ブロッコリー ほうれん草 トマト ピーマン にんじん カボチャ 塩分について 1)塩分は取りすぎないようにしましょう 塩分には細胞に水を引き込む働きがあるので、たくさんとっているとむくみを助長します。また、食道 静脈瘤のある人は、塩分をたくさんとって血圧を上昇させると静脈瘤破裂の危険が高まります。むくみが あって利尿剤を使用している人や高血圧の人は、塩分を1日7g(茶さじ1杯が約5g)以下に制限しま しょう。 2)食塩の摂取を減らす工夫をしましょう ①うす味のおかず中心の食事にしましょう。 ②濃いみそ汁に塩辛い漬け物でご飯、という食べ方はやめましょう。 ③こぶ、椎茸、かつお節、煮干しなど、だしを上手に使うとうす味でもおいしい。 ④酸味を上手に利用しましょう。(酢、ゆず、レモン、すだち、だいだいなど) ⑤香辛料、香味野菜でうす味をカバー。(にんにく、しょうが、ねぎ、しそなど) ⑥食物繊維は塩分の吸収を妨げます。(野菜、海藻、きのこ類) ⑦加工食品はとりすぎないようにしましょう。(かまぼこ、ちくわ、ハム、缶詰) ⑧外食は控えましょう。 ⑨ラ‐メンやおそばの汁は飲まないようにしましょう。 ⑩しょうゆやソ‐スはむやみにかけないようにしましょう。 そのほか食事についての注意 ①アルコ‐ルはやめましょう。 ②腹八分目を心がけ、暴飲暴食をしないようにしましょう。 ③いろいろな食品を品数多く、量を少なくとりましょう。 ④ゆっくりよくかんで食べましょう。 ⑤食事のあとはゆっくりやすみましょう。 ⑥食事は規則正しくとりましょう。 決まった時間に 三度の食事 量を少なく 品数多く ゆっくり よくかみ 腹八分目 平成 年 月 日 説明医師 科 〒781‐8555 高知医療センター 印 高知県高知市池2125‐1 電話: 088‐837‐3000
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