為替市場の行方を探る

第 9 回アルフィックス経済講演会
第 9 回アルフィックス経済講演会
第1部
『為替市場の行方を探る』
【敬和学園教授】
大海 宏氏
2001/6/21 大阪 ホテルモントレにて
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第 9 回アルフィックス経済講演会
目次
第 1 章 今の為替相場は混沌としている....................................................................... 3
第 2 章 チャートは明白で100%客観的である .............................................................. 4
第 3 章 最後に........................................................................................................ 5
大海(おおがい) 宏 氏プロフィール
1931 年名古屋市生まれ。
1953 年名古屋大学経済学部卒業。同年住友銀行入行。
1986 年同行本店支配人。同年明光証券(株)取締役。
1992 年敬和学園大学教授。
主な著書:『実戦為替レート予測』(日本経済新聞社)など
今回のレポートは、相場での利益を保証するものではありません。売買のご判断はお客様自身でお願いいたします。
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第 9 回アルフィックス経済講演会
第 1 章 今の為替相場は混沌としている
混沌としている為替相場を分析・予測する方法として、テクニカル分析の重要性を強調。 相場を分析・
予測する方法は、大きく分けるとファンダメンタル分析とテクニカル分析の2種類ある。まず先生は、
ファンダメンタル分析によく利用される①経常収支、②金利、③経済成長率と為替相場との関係を示さ
れた。
①
円相場と経常収支の星取表(1977 年から 1996 年の 20 年間)…一般的に、経常収支が日本プラス、
米国マイナス、日米格差が広がる時に円高になると考えられている。
日本の経常収支がプラスの年は 12 年、内円高の年は 9 年(9 勝 3 敗)
同マイナスの年は 8 年、内円安の年は 5 年(5 勝 3 敗)
20 年間トータルで(14 勝 6 敗)
米国の経常収支がマイナスの年は 12 年、内円高の年は 8 年(8 勝 4 敗)
同プラスの年は 8 年、内円安の年は 4 年(4 勝 4 敗)
20 年間トータルで(12 勝 8 敗)
日米経常収支の格差がプラスの年は 12 年、内円高の年は 9 年(9 勝 3 敗)
同マイナスの年は 8 年、内円安の年は 5 年(5 勝 3 敗)
20 年間トータルで(14 勝 6 敗)
②
円相場と長期金利[国債利回り]の星取表(1977 年から 1996 年の 20 年間)…一般的に、日本の
長期金利上昇、米国低下、日米格差(日本―米国)上昇の時に円高になると考えられている。
日本の 10 年国債利回りが前年よりプラスの年は 6 年、内円高の年は 2 年(2 勝 4 敗)
同マイナスの年は 14 年、内円安の年は 4 年(4 勝 10 敗)
20 年間トータルで(6 勝 14 敗)
米国の 30 年国債利回りが前年よりマイナスの年は 11 年、内円高の年は 7 年(7 勝 4 敗)
同プラスの年は 9 年、内円安の年は 2 年(2 勝 7 敗)
20 年間トータルで(9 勝 11 敗)
日米の金利格差が前年よりプラスの年は 12 年、内円高の年は 2 年(2 勝 10 敗)
同マイナスの年は 8 年、内円安の年は 2 年(2 勝 6 敗)
20 年間トータルで(4 勝 16 敗)
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③
円相場と実質経済成長率との星取表(1977 年から 1996 年の 20 年間)…一般的に、日本の成長率
がプラス、米国マイナス、日米格差(日本−米国)上昇の時に円高になると考えられている。
日本の実質経済成長率が前年よりプラスの年は 12 年、内円高の年は 7 年(7 勝 5 敗)
同マイナスの年は 8 年、内円安の年は 3 年(3 勝 5 敗)
20 年間トータルで(10 勝 10 敗)
米国の実質経済成長率が前年よりマイナスの年は 11 年、内円高の年は 5 年(5 勝 6 敗)
同プラスの年は 9 年、内円安の年は 2 年(2 勝 7 敗)
20 年間トータルで(7 勝 13 敗)
日米の実質経済成長率の格差が前年よりプラスの年は 11 年、内円高の年は 5 年(5 勝 6 敗)
同マイナスの年は 9 年、うち円安の年は 2 年(2 勝 7 敗)
20 年間トータルで(7 勝 13 敗)
以上の結果を考察し、為替相場とこれらの要因には直接的な関係がないことを指摘。特に、為替と金利
の関係については、金利が高いから通貨が買われるのではなく、為替が原因で金利が変動するという因
果関係を説明している。また、過去 10 年間のデータをもとに為替と株価の関係性にも触れられ、株高
=通貨高とはならないことを示す。
第 2 章 チャートは明白で 100 %客観的である
後半は、「大量の魚(利益)をとるためには、しっかりとした手法(テクニカル分析)が必要である。」
と、為替市場におけるテクニカル分析の重要性について強調する。為替相場は需要と供給の関係を反映
していて、この関係を明白に 100%客観的に表しているのがチャートであると指摘。特に、移動平均線
を使ったチャート分析の方法は詳しく丁寧に解説。
為替相場の日々線と 21 日・90 日・200 日移動平均線との関係
①
第一法則…日々線が 21 日移動平均線を上方に(下方)に突き抜けたら、従来の短期円高 (円安)
基調の終結を意味する。日々線が 90 日移動平均線を上方に(下方)に突き抜けたら、従来の中期
円高(円安)基調の終結を意味する。ただし、90 日移動平均線に限っては、移動平均線が下降(上
昇)のあと傾斜が鈍化し、水平かほぼ水平になった時点で日々線が突き抜けることが必要である。
(上方は円安を示す)
②
第二法則…90 日移動平均線の上昇(下降)角度が衰えを示していないのに、日々線が移動平均線を
突き抜けて下落(上昇)しても、基調を変えるものではない。
③
第三法則…日々線が移動平均線の上方(下方)にあり、移動平均線に向かって下落(上昇)するが、
これを突き抜けないで反騰(反落)する場合、円安(円高)基調を再確認したことになる。(上方
は円安を示す)
④
第四法則…日々線が急落(急騰)し、下降(上昇)局面の移動平均線から異常にかい離した場合、
相場は移動平均線に向かって戻す。
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第 3 章 最後に
今後の為替相場の見通しをお話しされた。1976 年から昨年までの為替変動率(ドルに対する円)の平
均は約 20.6%で、今年の為替水準を 1 ドル=121 円とすると、24 円の為替変動が考えられる。日本の
不良債権処理の問題や米国大統領補佐官のリンゼー氏の円安容認発言から、中期的には年初につけた 1
ドル=113 円の円の高値から 24 円変動した 1 ドル=137 円を目指す円安トレンドであるが、長期的には
1ドル=100 円を目指す円高となるのではないかと結んだ。
今回の講演会を通して、日米の経常収支、金利、株価、経済成長率などのファンダメンタルな要因は
すべてチャートの上に書かれていることを再認識した。需要と供給の関係を示す為替相場には、テクニ
カル分析は不可欠である。まさに「相場のことは相場に聞け」である。
以上
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