院外茶話 vol.16 平成 18 年 9 月 1 日 人間の誕生と進化 今一度見直してみると 老後の生活を送る上で 何かの役に立つ 何かの役に立つかもしれません 役に立つかもしれません もなく成長をして、また次の子を儲けます。 これがたった 1 回の例外もなく、何十億年も 繰り返し続い結果が今の自分であり、これはも う奇跡を越えた出来事だと思うのです。 地球の誕生は約 45 億年前 地球上に生物が誕生したのはおよそ 35 億年 前。星間雲から飛んできた氷塊に含まれていた アミノ酸から蛋白質ができ、さらに細胞ができ たという説があります。 一方、海底火山のものすごいエネルギーでア ミノ酸が合成されたという人もいて、本当のと ころはわかりません。とにかくこのアミノ酸を 含んだ蛋白質から、単純な細胞ができて、それ が生物の最初の姿です。 その後、この生き物は気の遠くなるような時 間をかけて、多方面に進化を続けて、今、地球 上には約八千万種の生物が暮らしています。単 細胞から人に進化などという話をすると、それ こそ一足飛びで、こんなにスケールの大きな一 足飛びを私は他に知りません。 もともとの生物は同じ DNA を共有していま したが、世代が変わる度に、これがほんの少し ずつ形を変え、生き残った生物の DNA だけが 後世に伝えられます。親は子を儲けて、その子 は病気を乗り越え、他の生物に食べられること では、個々の人間はどのようにして誕生する のか。ご存じの通り人間の原形は、1個ずつの 精子と卵子がくっついた受精卵で、この卵は猛 烈な勢いで分裂を繰り返します。 1 個が 2 個、2 個が 4 個、4 個が 8 個。がま の油売りの口上のように増え続けますが、これ が雪降りの姿となってパッと散ることはありま せん。そこには細胞同士を引っ付ける特別な機 構があり、細胞群は大きな塊に成長します。し かし、増えるだけではただの塊ですから、やが て神経線維の長い細胞や、皮膚の平べったい細 胞に変化をします。 最初は同じ形のものが、どうしてこんな風に 変わってしまうのか。それが DNA の仕事です。 DNA は細胞核に入っていて、分裂をする細胞に 信号を出し、その役割を決めているのです。こ うして DNA の指令のもと、順次人の身体が造 られます。 卵細胞が分裂を繰り返す過程で、早い時期に は一つ一つの細胞が将来耳になるのか、鼻にな るのかわかりませんが、ただ一つ先を約束され ている細胞があって、それが生殖細胞です。生 殖細胞とは精子や卵子などの遺伝子を残す特別 な存在であり、それ以外は一括して体細胞と呼 ばれます。 手足や胃腸、心臓と言うとずいぶん違った雰 囲気をもっていますが、これも全て体細胞なの です。くどいようですが、自分の中心はどう見 たって生殖器ではなく、脳のように思いますが、 これとて体細胞の一つに過ぎません。 生殖細胞の役割は、他の体細胞と全く違いま す。目も内臓も筋肉も、それぞれ人の身体を生 かすための役割をもっていますが、生殖細胞の 目的は生きていくこと、そのことだけなのです。 つまり遺伝子を次世代に伝え、種を保存してい くことであり、身体とは DNA が数十億年も乗 り換えながら生き続けた住処なのです。 かって長嶋選手は引退のセレモニーのなかで、 「私はやめるけれど、ジャイアンツは永遠に 不滅です」 と叫んで観客の涙をそそりました。 体細胞とはこんな長嶋選手によく似ています。 長嶋がいかに偉大な選手であろうとも、ジャイ アンツという名前はその選手を使い捨てにしな がら、永遠に生きるのです。 完成度が高かったのかもしれない。人の場合も、 知能の高い猿の子孫が生き残って、進化をした 結果なのでしょう。 当初、人類は生きていくのがやっとだった時 代に、安定した生活を求めて様々な工夫を行い ました。まず最初の課題が安全。 外敵から身を守る住処を見つけたら、次が食 糧の確保です。生き物は食われないようにして 食う。これができれば、その次は子孫を設けて、 子育てをして世代交代をする。 この DNA が人を作ります 人は何の不思議を感じることもなく、知能を 働かせて数百万年の間、この繰り返しを続けま した。この間、優秀な身体に乗った DNA だけ が、生き続けてきたのです。 さて、こうして見ると主役は人間だったのか、 それとも人の身体を操った DNA だったのか。 それでも若いうちは、身体と DNA は共存共 栄をしていましが、子孫が生まれてこれが成長 をした暁には、この良好な関係にも軋みが生じ ます。 世代交代を終えた後の身体には、特別な役割 もなく、遺伝子にとっては、どうでもよい身体 になってしまいます。むしろ、次の世代を飢え させないためには、早くいなくなってもらった 方がいいかもしれない。 人は老人と言われる頃、身体は遺伝子の庇護 を離れると、急速に弱まって病気がちになって きます。しかし、一方で心は遺伝子の呪縛から ここでしばしば誤解を生じることがあります。 解き放たれて、老後の体細胞は限られた時間で つまり、人の知能とは生きのびる目的をもって すが、自由空間を生きることになる。 発達したのではなく、たまたま知能の発達した 人類が霊魂を恐れるようになったり、正義や 人間が、代々生き続けてきたということです。 芸術を信奉したのは、一体いつの頃からなのか。 像の鼻、キリンの首が長いのも、長い方が生活 これは明らかに DNA から独立した脳の意思で をしやすいからと思って、頑張ったわけではな ありました。 く、たまたま首の長かったキリンの方が、自然 これこそ予想外の事態で、人類が DNA と併 に適合して、その子孫が増えた結果です。 行するように、何代も受け継いできた魂である 振り返って見れば、何億年も形を変えずに生 と思うのです。 き続けたゴキブリの方が、生物としてはよほど 身体とは DNA にとって、とても都合がよく できており、次の世代に命を引き継ぐまでは、 健康に生き続けるように設計をされています。 若いうちは食べ物の消化や呼吸など、生命その ものを維持していく機能は、めったなことで故 障はしないし、内分泌や免疫機構は、身体を常 に健康に保って、細菌の感染などから身を守り ます。 こうして身体を健康に保ちながら目や耳、い わゆる五感を通して絶えず周囲の情報を取り込 みます。この情報を元に、脳は様々な決定を下 し、手足を動かして活動をする。これが人間の 生活です。 このような機能は人に限らず、全ての生き物 に共通することですが、人の特徴とは言わずと 知れたその知能です。
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