ケイ酸を用いた無機接着剤

東京理科大学Ⅰ部化学研究部 2015 年度春輪講書
ケイ酸を用いた無機接着剤
火曜班
Shoji, Y. (2OK) Arai, S.(2OK) Abe, Y.(2K) Takemura, R.(2K) Matsui, T.(2K)
1.背景
私たちは日々生活している中で,接着剤を使う機会が多くある.しかし,その接着剤が
まわりに及ぼす影響について考えることは少ない.そこで,接着剤について調べてみたと
ころ接着剤は大きく分けて 2 つのグループに分類できることが分かった.まず,一般的に
使われているボンドや瞬間接着剤のように有機化合物を主成分とした有機接着剤.次に,
あまり一般的ではないが金属やセラミックスの接着に用いられる無機化合物を主成分とし
た無機接着剤.有機接着剤は簡単に接着することができるなど様々な長所を持つが,有機
物の溶媒を用いるため工事現場などで感じる独特な臭いや,シックハウス症候群の原因物
質を放出してしまうという短所を合わせ持つ.それに比べ,無機接着剤は,接着方法が高
温で加熱しなければならないという点と有機接着剤よりも接着強度が低いという短所を持
つが,耐熱性に優れ,特有の臭いもなく,溶媒に水を用いるため環境や人体に対する影響
も少ないという長所がある.さらに,無機接着剤の分野はあまり多くの研究が行われてお
らず発展の余地が残っているのではないかと感じた.
2.目的
無機接着剤は耐熱性などの長所がある反面,強度と耐水性が低いという短所がある.こ
の 2 つの短所は接着剤として用いるためには重大な問題となる.そこで,本実験ではケイ
酸を主成分とした無機接着剤に何種類かの金属化合物などの添加物を加えることにより接
着強度と耐水性の改善を目的とする.
3.原理
3.1 無機接着剤
無機質の接着材料としては,一般にガラス系,金属系の材料が使用されているが,これ
らの材料は気密性は優れているが,接着時にそれぞれの融点や軟化点以上に加熱すること
が必要であり,また接着部分の耐熱性は接着時の温度を上まわることはないという欠点を
有している.これに対していわゆる無機接着剤は気密性には劣るが,低温での接着が可能
であり,優れた耐熱性を有するという特徴を持っている.無機接着剤は,1)無機結合剤,
2)硬化剤,3)充填剤を主成分として構成される.
1
市販されている接着剤の多くは,使用の便を考えて一液性である.そのポットライフ(可
使期間)は 3 か月から 1 年必要とされるので,室温で作用する硬化剤は使用できない.
1)結合剤
結合剤自体の硬化剤が強い強度と接着力を持つ必要があり,現在しようされている無機
結合剤のほとんどは,アルカリ金属ケイ酸塩系,リン酸塩系,シリカゾル系のいずれかで
あり,本実験でしようするのはアルカリ金属ケイ酸塩系結合剤である.
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は粘性のある液体であり,分子式 M2O・nSiO2 で表わさ
れ,M の種類(Li,Na,K など)および n の大小によって数多くの種類が生ずる.またア
ンモニウムケイ酸塩やグアニジンケイ酸もある.一般には安価なケイ酸ナトリウム(水ガ
ラス)がよく使用される.
アルカリ金属ケイ酸塩は水溶液中において,種々の量のシリケートイオンモノマー,ポ
リシリケートイオン,およびコロイド状シリカイオンミセルからなっている.これらの形
態や分布は n 値や,濃度に依存し,n が大きくなるにつれてポリシリケートイオンミセル
が増加する.ケイ酸ナトリウムは n が4を越えると水の溶解度は極端に小さくなり,n が
3 付近で接着力は最大となる.ケイ酸カリウムはケイ酸ナトリウムと同じような挙動を示
すが,ケイ酸リチウムは n が非常に大きくケイ酸分の多い水溶液が得られることが特徴で
あり,シリカゾルに近い物性を示す.したがって,アルカリ金属ケイ酸塩系結合剤につい
て,一般的には耐水性は Li>K>Na,接着力はこの逆の順に良いといわれている.
水溶液は強いアルカリ性を示し,加熱によってシラノール間で脱水縮合反応を起こし,
分子間にシロキサン結合を生じる.固形物は,融点(軟化点)までずっと非晶質である.
2)硬化剤
結合剤は低温で乾燥しただけでは,耐水性が不十分であり,耐水性の向上のために硬化
剤が添加される.硬化剤は耐水性には寄与するが,接着力を低下させる場合もあるため,
使用目的によっては添加しないこともある.一液性の接着剤ではポットライフの要求から,
室温で作用するものは,あらかじめ添加できないので,高温になってはじめて結合剤と反
応するものが選ばれる.硬化剤については非常に多くの物質が特許等に提案されている.
アルカリ金属ケイ酸塩用の硬化剤には,Zn,Mg,Ca 等の酸化物・水酸化物,Na,K,
Ca 等のケイ化物・ケイフッ化物,Al や Zn 等のリン酸塩,Ca,Ba,Mg 等のホウ酸塩等が
用いられる.
酸化亜鉛による反応機構を L.S.D.Glasser らは次のように示している.
反応初期には ZnO 粒子の表面で
ZnO + 𝐻2 𝑂 + 𝑂𝐻 − → 𝑍𝑛(𝑂𝐻)2−
4
の反応がおこり,Zn は液中に溶解し,OH-が消費されるので pH が下がり,ケイ酸ゲルが
2
粒子表面に析出する.以後はこのケイ酸ゲル層を通して OH-が粒子表面へ拡散し,ZnO と
反応して Zn(OH)2 として固定されるため,さらにケイ酸ゲルの析出が行われ,酸化亜鉛表
面へ無定形シリカが沈積する.
3)充填剤
充填剤としては,結合剤との反応性の小さい耐火物粉末が使用される.結合剤は加熱脱
水により大きな体積収縮を生じ,ひび割れが発生するのでこれを防ぐため充填剤を添加し
て固体分率を高くする.また粒子間の空隙は,水分蒸発の逃げ道となり発泡を防ぐ.接着
剤の熱膨張を被着材へ合致させることも重要な役割である.
さらに一液性の接着剤では,リン酸塩系におけるアルミナ粒のように,室温では反応し
ないが温度を上げていくと結合剤と反応し硬化作用をして,耐水性を付与することもある.
その他,耐火性,接着強度,熱伝導性,電気特性,耐薬品性,耐摩耗性の向上に重要な
働きがある.充填剤の種類に加え,粒径,粒径分布,表面活性等に調整することが必要で
数種の充填剤を混合することが多い.
4)核剤
核剤は力学特性,成形性,成形時の生産性の改良などを目的として種々の結晶性高分子
で利用されている.特にポリプロピレンにおいては核剤を添加することにより剛性や耐火
性(熱変形温度)
,あるいは透明性など諸問題が大幅に改良され,高機能化による用途拡大
や成形品の薄肉化・軽量化が可能となり,さらには短時間で結晶化が完了することから成
形時の生産性も大幅に短縮され,コスト削減はもとより省資源・省エネを影から支えてい
る.
核剤には工業的な側面から,主に力学特性を改善する「核剤」と特に透明性を改良する
効果が高い「透明化剤」とよばれるものがある.核剤も透明化剤も,高分子の結晶化過程
における基本的な作用機構は同じであり,その本質はエピタキシーにある.つまり高分子
融体が結晶化する過程で,高分子鎖が結晶化しやすいように「場」
(核剤の表面)を提供す
るものである.核剤はまた「造核剤」とよばれることもあるが,核剤,透明化剤とも物理
化学的には高分子に対し同じ作用をしているといえる.溶媒中に溶解している溶質が種晶
の添加により,析出が促進される現象を想像されたい.まさに核剤は高分子融体中に添加
され,これが核となって高分子の結晶化が促進されるのである.
3
Fig.3-1 核剤の表面からの高分子結晶の成長
a)力学特性の改善
自動車や家電部品の樹脂化率は年々高まり,特に自動車においては内外装問わず,ポリ
プロピレンが多用されるようになった.当初はあまり重要でない部分への利用であったも
のの,最近ではバンパー,フェンダーライナー,フロントグリル,カウルパネル,各種リ
ザーバータンク,ドアパネル,ピラー,ダッシュボード,サンバイザー,コンソールボッ
クスなど,ありとあらゆる部分に用途開発が進んでいる.高分子材料による金属代替今後
もさらに進められると思われる.その理由としては,自動車の軽量化はもちろんのこと,
設計の自由度
(一体成形や金属ではデザインしにくい曲線,
曲面を複雑に有する部品など)
があげられる.自動車部材では機能的に高剛性が求められるものや,夏場に高温にさらさ
れる内装部品などは高耐熱性
(高い熱変形温度)が求められるものなどがほとんどであり,
このような要求性能に応えるべくポリプロピレンに核剤が添加されている.
核剤が存在する場合,高分子の結晶化が促進され,融体の冷却過程において,より高い
温度(より融解温度に近い温度)から結晶化が開始する.そのため核剤存在下での結晶化
過程では,核剤非存在下での結晶化過程に比較して,高分子鎖の運動性が高い状態で結晶
化が開始する.核剤を添加した高分子の結晶化開始温度を示差走査熱量計などで測定する
と,結晶化が高い温度から開始することも確認される.その結果,高分子結晶の欠陥は減
少し,また結晶化度も増大する.核剤存在下で結晶化させた高分子結晶は,欠陥も少なく,
またラメラ厚も厚くなり,融解温度が高くなる.そのような効果により,成形後の高分子
材料の力学特性,耐熱性が改善する.
4
Fig.3-2 核剤の添加のよるポリプロピレンの曲げ弾性率の改善効果
(○)アデカスタブ NA-11,(△)Hyperform HPN-68 L,
(□)安息香酸ナトリウム,ポリプロピレン
Fig.4-2 に核剤の添加によるポリプロピレンの曲げ弾性率の改善効果について示した.ま
ず核剤を添加することで,しかも僅か 0.1~0.3 wt%程度の添加で,曲げ弾性率が劇的に向
上していることが分かる.その中で比較すると,汎用である安息香酸ナトリウムや HPN-68
L では弾性率の改善はあるものの(おおよそ 30%の弾性率改善)
,0.1 wt%程度の添加で改
善効果は飽和する.添加物を加えることで,剛性/耐熱性を大幅に改善できることがわかる.
このような改善効果は自動車用に多用されるポリプロピレンのグレードであるインパクト
コポリマーにおいても同様である.さらに核剤の添加により結晶化が促進された結果,成
形時間も短縮でき,高性能化と相まって生産性改善によるコストダウンも可能となる.核
剤はもとのポリマーが有する特徴を損なうことなく,物性を改善できるといったメリット
があるといえる.
3.2 縮合重合反応
二つの化合物から水などの簡単な分子が脱離して新たな結合が形成される反応を縮合反
応とよぶ.カルボン酸とアルコールからエステルを得る反応は,縮合反応の一例である.
縮合反応を繰り返すことにより,ポリマーを合成することができる.これが脱水縮合反応
である.たとえば 2 個のカルボキシ基をもつ分子と 2 個のヒドロキシ基をもつ分子を反応
させると,縮合反応が連続して起こりポリマーが得られる.本実験では Fig.3-3 の反応が
起こる.
5
Fig.3-3 ケイ酸の脱水縮合反応
3.3 接着の原理
接着剤による接着効果には複数の理論が挙げられており,賛否両論あるものもある.ま
た,個々の接着現象においても,複数の接着効果が絡み合っていることが多く接着効果の
検証は困難であるとされる.ある接着系では適用できる接着効果が別の系ではまったく無
力ということも多い.以下に主な接着効果の理論をあげる.
1) アンカー効果
雲母を注意深くはがしたような,ごくわずかな例外を除き,すべての固体表面は数Åオ
ーダーの粗さを有する.例えば,機械で製造される金属表面の粗さは 3~6 μm であり,研
磨した場合でも 0.02~0.25 μm である.
アンカー効果とはこのような被着材の凹部に流入した接着剤が固化し,
被着部に引っかか
ることにより界面が結合するというものである.アンカー効果のような,界面との相互作
用を無視した接着効果理論を機械的結合論という.
開口部を有するクレバスへの液体の流入について,理論式が提案されている.
以下の 2 式は,液体の粘度 η,接触角θの液体が深さ Z まで浸透するまでの時間 t を表し,
(a)開口部の幅がδの平行板の場合
Z
dz 𝛿𝑦
=
𝛾 cos 𝜃
dt 𝛿𝜂
(b)開口部δ,深さ Z0 の V 型溝の場合
𝑍0 𝑙𝑛
𝑍0
𝛿𝛾 cos 𝜃
−𝑍 =
𝑡
𝑍0 − 𝑍
6𝜇
となる.式によれば開口部が大きく,ぬれがよく,粘度の低い液体ほど,また時間をかけ
たほど,深くまで侵入できるとされる.
6
Fig.3-4 アンカー効果
2)分子間相互作用
ふたつの物体の接着面で分子同士が接触するところで互いにひきつけあう力が働くこと
で接着するとするもの.代表的なものに,ファンデルワールス力結合,水素結合が存在す
る.
3)化学的結合
界面に化学結合が存在することで接着強さに寄与するとするものである.古くから提唱
されている説であるが,化学結合の存在の証明が難しく,接着系の界面に本当に化学結合
が存在するのかは十分に検証されなければならないとされる.
4)表面自由エネルギーと表面張力
物質の内部と表面では性質が異なる.内部の分子は周囲を分子に囲まれており,分子間
力で互いに引き合うため安定化される.これに対し表面の分子には周囲を囲む分子が内部
に比べて少なく,内部分子と比べて不安定=エネルギーが高いということになる.この余
分のエネルギーを表面自由エネルギーと呼ぶ.
表面積が小さいほど,表面自由エネルギーは少なくなるため,物質の表面では,表面を
小さくしようとする力が働く.この力を表面張力と呼ぶ.
5)ぬれと接着角
固体表面に液体が存在すると,それぞれの表面自由エネルギーとその間の界面自由エネ
ルギーとのバランスによって液体が広がり,固体表面が液体表面に置き換えられる.この
現象がぬれである.固体表面のぬれは,材料表面の親水性・疎水性や接着強度と直接関係
しているため,接着の分野ではきわめて重要である.固体表面に液滴を落とすと,個体の
表面張力γS と液体の表面張力γL ,固体と液体の界面張力γSL が釣り合うことによってあ
る角度θで平衡になる.このとき,固体と液体,空気の境界点 A における力の水平成分の
釣り合いから,次式の Young-Dupre の式が得られる.
𝛾𝑆 = 𝛾𝑆𝐿 + 𝛾𝐿 cos 𝜃
7
自然状態では表面張力により,液体は球状になる.この式は固体表面上での液体を広げよ
うとする力と球状を保とうとする力のつりあいの式である.
Fig.3-4 固体表面上の水滴
また,界面自由エネルギーγ12 で接着している二種類の物質を引き離し表面自由エネルギ
ーγ1,γ2 をもつ二つの物質に分けるのに必要な仕事(これを接着仕事という)Wa,とすると
𝑊𝑎 = 𝛾1 + 𝛾2 − 𝛾12
であらわされる.これを Dupre の式と呼ぶ.接着仕事とはふたつの物質を引き離すのに必
要な仕事であるから Wa の値が高いほど,接着強度が強いということになる
個体と液体との関係において,これら二式をあわせると,
𝑊𝑎 = 𝛾𝐿 (1 + cos 𝜃)
を得る.これを Young-Dupre の式という.液体の表面張力と接触角から接着材の接着強
度が分かるという式になっている.
6)接着力低下因子と表面処理
接着は清浄な面と面の接触が前提である.金属表面は清浄であれば 1000~3000 mN/m の
表面張力があるはずであるが大気中では数十 mN/m の値をしめす.これは異物が付着した
り酸化されていたりするためである.特に表面がもろい物質でおおわれていると剥離時に
もろい面での剥離が起こり,見かけ上弱い接着強度となる事がある.
このような金属表面の表面張力の低下を防ぎ,アンカー効果において適切な凹凸を金属表
面に付与し,接着強度向上を図るために洗浄と研磨を行うのが望ましい.
5.実験方法
4.1 使用する器具
100 mL ビーカー,ガラス棒,ホールピペット,安全ピペッター,ピンセット,キムワイ
プ,電気炉,2 L ペットボトル,紐,アルミ角材(10 × 30 × 30 mm)
,サンドペーパー,
はけ
8
4.2 試薬の物性
ケイ酸ナトリウム a)
ケイ酸のナトリウム塩で種類が多い.いわゆる水ガラスも多くの場合はケイ酸ナトリウム
であるが,その組成は安定していない.単一物質として得られているものだけでも,メタ
ケイ酸ナトリウム Na2SiO3,およびその種々の割合の水化物,オルトケイ酸ナトリウム
Na4SiO4,二ケイ酸ナトリウム Na2Si2O5,四ケイ酸ナトリウム Na2SiO9 などがある.オ
ルトケイ酸ナトリウム Na4SiO4=184,05.二酸化ケイ素と水酸化ナトリウムを適当な条件
で融解すると得られる.水溶液で両者を反応させたのではオルトケイ酸ナトリウムの結晶
は得られずに,メタケイ酸ナトリウムの水化物になってしまう.無色六方晶系の結晶.酸
と加熱していると二酸化ケイ素が沈殿している.
酸化マグネシウム b)(MgO)
式量 40,30
融点 2852 ℃
沸点 3600 ℃
一般にアンモニウム塩水溶液に溶けるが,エタノールに不溶.空気中で水と二酸化炭素を
吸収し炭酸水酸化マグネシウムに変化する.水と反応して水酸化マグネシウムとなる.耐
火レンガ,マグネシアセメントの製造原料,医薬品として制酸剤の原料となるほか,触媒
または吸着材,ゴム工業にも用いられる.
酸化亜鉛 c)(ZnO)
式量 81,38
密度 5,47 g/cm3
無定形の白色粉末,水にはほとんど溶解しないが,両性酸化物で,希酸や水酸化アルカリ
水溶液,アンモニア水に溶解する.空気中で湿気と二酸化炭素を吸収する.白色顔料とし
てペイント,絵の具などに用いられるほか,粒子の細かいものは医薬品,化粧品として用
いられる.
酸化カルシウム d)(CaO)
式量 56,08
融点 2572 ℃
沸点 2850 ℃
密度 3,40 g/cm3
9
酸に可溶,空気中の湿気を吸収して水酸化カルシウムとなり,また空気中の二酸化炭素を
吸収して炭酸カルシウムとなる.水と反応して水酸化カルシウムとなる.しっくい,モル
タルなどの建築材料.石膏,さらし粉,消石灰の原料.医療用に用いられる.医療用に用
いられる.酸性土壌改良にも用いられる.
炭酸カルシウム e)(CaCO3)
式量 100,09
融点 1339 ℃
二酸化炭素を含む水には炭酸水素カルシウムとして溶解する.酸には二酸化炭素を発生し
て容易に溶ける.加熱すると二酸化炭素と酸化カルシウムに解離する.
二酸化ケイ素 f)(SiO2)
式量 60,09
低温ではフッ素,フッ素酸水素酸だけが反応する.高温では他のハロゲン元素とも反応す
る.水酸化アルカリ,炭酸アルカリと融解すると水溶性のアルカリケイ素酸塩となる.
4.3 実験操作
4.3.1 被接着面の均一化
1)10×30×30 mm のアルミ角材の表面をサンドペーパーで汚れがなくなるまで削る.
2)削った表面をアセトンで洗浄する.
3)洗浄が終わったアルミ角材の重量を測り記録する.
4.3.2 ケイ酸ナトリウムのみの接着剤の作製
1)100 mL ビーカーにケイ酸ナトリウム 5,0 g を加え粘り気が残るぐらいまでイオン交換
水を加え,ガラス棒で撹拌する.
2)アルミ角材の 10×30 mm の面にはけを用いてケイ酸ナトリウム溶液を均一になるよう
に塗り,アルミ角材を重ね合わせる.
3)150℃にセットした電気炉に接着面がずれないように慎重に置き 1 時間焼成する.
4.3.3 添加物を加えた接着剤の作製
1)100 mL ビーカーにケイ酸ナトリウム 5,0 g,添加物(酸化マグネシウウム,酸化亜鉛,
酸化カルシウム,炭酸カルシウム,二酸化ケイ素)を 0,10 g から 0,10 g ずつ 2,0 g まで加
え粘り気が残るぐらいまでイオン交換水を加え,ガラス棒で撹拌する.
2)アルミ角材の 10×30 mm の面にはけを用いてケイ酸ナトリウム溶液を均一になるよう
に塗り,アルミ角材を重ね合わせる.
3)150 ℃にセットした電気炉に接着面がずれないように慎重に置き 1 時間焼成する.
10
5.評価方法
5.1 接着強度の評価
1)4.3.2,4.3.3 で接着したアルミ板にひもとペットボトルを用いて Fig.5-1 のように設置す
る.
Crash
アルミ角材
PET
Fig.5-1 接着面の破壊
2)ペットボトルに少しずつ水を加え,接着面が完全に離れた時点を破壊終了点とする.
3)破壊終了点でのペットボトルに入っている水の重量を計測する.
5.2 耐水性の評価
1)接着したアルミ角材に水をかけ,接着面の変化を観察する.
6.予想
添加物を加えることで接着強度の増加が期待される.しかし,大量に添加物を加えてし
まうとケイ酸の割合が小さくなり接着強度は減少してしまうと考えられ,添加物の量と接
着強度の関係性をグラフ化するとある値までは増加し,その値を超えると減少していくグ
ラフが得られると考える.そこから最も接着強度が高まる添加物の量を測定する.
また,添加物が硬化剤の役割をし,耐水性の改善も予想される.
参考文献
1)日本接着学会,
『接着剤データブック第 2 版』,日刊工業新聞社,1990,P228~229
2) 三刀基郷,『トコトンやさしい接着の本』
,日刊工業新聞社,2003,P56~67
3) セメダイン(株)
,
『よくわかる接着技術』日本実業出版社,2008,P34~37
11
4) ユージン G.ロコー,
『ケイ素とシリコーン』
,シュプリンガー・フェアラーク東京株式
会社,1990 P85~113
5) 大木道則,大沢利昭,田中元治,千原秀昭『化学大辞典』東京化学同人/1989
b)P884 c)P865 d)P867 e)P1368 f)P1669
6)下井 守,村田
磁『大学生のための基礎シリーズ 3 化学入門』東京化学同人/2005,
P229
7) 吉村壽次『化学辞典第 2 版』森北出版/2009,a)P425
8)大勝 靖一『高分子添加剤の基礎化学と材料設計』株式会社 CMC 出版/2008,P219~235
9)http://www.facekyowa.co.jp/science/theory/what_contact_angle/img01.jpg
2015.4.16 取得
12