日本人殺人事件について

2012 年 9 月 7 日
ベレシュ・ダニエル JRBA
日本人殺人事件について
今回のメールマガジンのトピックは非常に悲しいトピックですが、皆気になっている事と思
いますので、情報をシェアーした方が良いと思い配信しました。ただし、新聞で報道されている
ことは既にご存じだと思いますので、JRBA としてのオフィシャルなレポートではなく、私、記
名人の感想として捉えて頂けると幸いです。この事件に関する内容を、日頃見守ってくださって
いる会員様宛に出すべきか、出すべきでないかとずっと悩んでいましたが、これからルーマニア
に行こうと思ってらっしゃる方もいるかもしれないので、ご参考になればと思い配信することに
しました。
事件が起きた時に、私はちょうどルーマニア出張中でした。湿度の高い東京から脱出が出来、
ルーマニア夏の素晴らしい気候を楽しんでいました。仕事も順調に進み、非常にいい出張だと感
じていましたが、ルーマニア滞在中に大変悲しいことが起きてしまいました。
8 月 16 日にブラショヴ市へ移動し、8 月 17 日の朝、
「アジア人の女性の遺体が見つかった」
というニュースがちらっと耳に入りました。それを聞いた瞬間、まさか日本人ではないだろうと
思いましたが、なぜかとても心配でした。そして、同じ日のニュースで、アジア人の女性が日本
人で、若干 20 歳の大学生だと分かりました。とても大きなショックでした。次の日もずっとニ
ュースを見て、オンラインで様々な新聞を読んでいましたが、中々細かい情報が手に入りません
でした。殺害された女性がどこに行こうとしていたのかも分かりませんでした。
19 日以降やっと細かい情報が出始め、すべてのルーマニアのテレビチャンネルがこのニュ
ースを集中的に報道していました。とても残念な事件で、とても悲しく思いました。被害者の女
性が可哀想で、その両親の悲しみも考えたら、二日間ほどほとんど眠れませんでした。
そして私は、8 月 25 日に、日本に帰国しました。ルーマニアで起きた日本人殺人事件につ
いてのニュースは思ったより少なく、リビアで殺害されたジャーナリストのニュースを日本のメ
ディアがメインに報道していました。自分はルーマニア関連の仕事をしているだけでなく、日本
人の知り合い、仲間や同僚が多く、ルーマニアでこんなひどい事件が起きるなんて、心痛くて仕
方がありませんでした。そして、ルーマニア人として、とても恥ずかしく思いました。今まで日
本人に「ルーマニアの治安はどうですか」と何回も聞かれたことがありました。例外なく「治安
はいいですよ。空港や大きな駅に周辺ですりさえ気を付け、最低限の注意をしていれば、安全で
すよ」と答えてました。自分で本当に治安がいいと思っていたので、そう答えました。また、今
回の出張で、ルーマニアへ移動していた際に、飛行機で隣に座っていた日本人の夫婦と仲良くな
り、来年はルーマニアに行くつもりだと彼らは言っていました。ルーマニアに関する話で盛り上
がり、やはり気になるルーマニアの治安について聞かれました。「大きな心配はいらないと思い
ますよ」と自信を持って応えていましたが、この事件が起きてしまって、残念ながら今後はこれ
までと同じ事を言えるのでしょうか。
この事件についての日本のニュースの内容に関しては、既にご存じだと思います。ルーマニ
アのメディアもほぼ日本と同じような内容を報道していますので省略します。代わりにルーマニ
アに勤務している日本人や、自分のルーマニア人の知り合いや家族などに、「この事件のことを
どう思いますか」と聞いてみました。
ルーマニアに住んでいる日本人の方々の場合、「ルーマニアに住んでいるけれど、ここまで
危険だと感じたことがない」、「被害者は可哀想だが、本人の不注意が第一の原因でしょう」が
一般的な意見のようです。また、「知らない人と車に乗るのは、日本国内で普通あり得ない」と
いう意見を持っている方も多いようです。
一方、ルーマニア人は、本人の不注意のせいだとはだれも言いませんでした。ルーマニアで
はヒッチハイクは当たり前だし、知らない人の車に乗るのもそれほど珍しくないのが一つの理由
だと思います。私も、ルーマニアで度々ドライブしますが、女性が一人でヒッチハイクすること
を何回も見たことがあります。ルーマニアではヒッチハイクが普通だということもあって、被害
者を責めるルーマニア人は殆どいませんでした。また、空港周辺には荷物運びを手伝おうとする
人たちの存在も知っていて、彼らのしつこさも良くわかっているため、何も知らない外国人であ
れば騙されやすいかもしれないと思っているようです。ルーマニア人のブログを読めば「外国で
知らない人と車には乗らないよね~」という意見を持っている人もいたのですが、それをブログ
に書いてしまうと「それは戦争地帯や治安の悪い中央アフリカの国ならわかるけど、ここは EU
の国際空港だぞ!おかしいのは、被害者じゃなくて空港のセキュリティー会社だろ」と殆どの人
に批判的なコメントが書かれます。
私のお母さんもニュースを見ながら、涙をぼろぼろ流して泣いていました。「若くてかわい
い女の子なのに、なんてひどいことだ」と泣きながら言っていました。「自分も母親だから、こ
の子の親の悲しみを考えると耐えられない」
と一日中泣いて、あまりにもショックで体調を崩し、
救急車を呼ぶところでした。二日間ほどベッドから起き上がれず、ちょっと大変でした。
以下、ルーマニア国内での人種問題に関連します。ルーマニア人を構成する問題として少数
民族のことがあります。今回の事件は、この民族に属する人が犯した犯罪でした。したがって、
国内では、この民族に対する非難が集中しています。
自分の周りのルーマニア人の殆どがこの民族を非難しているのは事実です。
自分の出身地の
人々でも、過去にコーン畑に集団で入られたことがあり、半年かけて育てたコーンが全部盗まれ
たことがあるため、この少数民族に対する非難がとても多いです。
メディアでは、犯罪者がどの民族に属するかは報道されていませんが、この民族の中での犯
罪率がとても高いことが度々問題とされます。
元の話に戻りますが、ルーマニア人の事件に関する意見は、被害者本人が悪いと思う人は殆
どおらず、
1)民族的な問題である
2)空港のセキュリティー会社の問題である
3)アイセック・ルーマニア(手配をしていた NPO 団体)が迎えを手配しなかったので、これが問
題である
という順に意見が出ていました。
少数民族の問題についてこれ以上触れませんが、
空港を担当しているセキュリティー会社と
アイセックルーマニアも非常に非難されています。
日本からのゲストがルーマニアまで来てくれているにもかかわらず、
お迎えを手配しないの
は、ルーマニアでも非常識なことです。私も日本人向けのルーマニア旅行を何回も企画したこと
がありますが、例外なく旅行会社に空港までの迎えを手配させました。20 人の旅行者の場合で
も、一人の旅行者の場合でも、お迎えを手配するのは当たり前で常識な事だと思っています。そ
れは治安が悪いからではなく、初めてルーマニアに来ている人は不安を感じていることがあるは
ずなので、それに対しての最低限の気遣いだと思っているからです。
この事件後、ルーマニアのメディアは、ブカレスト国際空港とそれを見守っているセキュリ
ティー会社を大きく批判し、その結果として、空港長が解任されました。空港長の解任は本日発
表されたばかりの最新のニュースです。また、ルーマニアの総理大臣の命令で、空港周辺のすべ
てのタクシーが厳しいチェックを受け、現在は違法タクシーがなくなっていると言われています。
最後になりましたが、JRBA 会員の方々を含めて、ルーマニアへ旅をしようと思っている方
は多くいらっしゃると思います。このレポートの結論でもありますが、ルーマニアに行かれた時
には何を注意すればよいのかについて再確認をしていただきたいと思います。悪い人、そして狂
気な人は、ルーマニアだけでなく世界中に必ずいます。ノルウェーのテロ事件、アメリカの映画
館発砲事件、日本の秋葉原の事件などでもわかることです。どこで何が起きるのかは本当に分か
りませんが、安全だと思って、気を抜いたらいけないと思います。危険があるかもしれないと注
意することで大きな事件を避けられるのではないかと思います。
まずは自分の安全は自分で守らなければいけないという意識を常に持つことが重要です。
そ
してルーマニアに行く時は、可能な限り迎えを手配することが重要です。空港からブカレスト市
内の送迎サービスは事前予約も出来ますし、その価格もそれほど高くないと思います。また、ル
ーマニア国内の治安が良くても、空港の周辺や電車の駅周辺は観光客を狙う白タクなどが集まり
やすいところです。空港で関係ない人に話しかけられても相手にしないことがお勧めです。ちゃ
んとしたタクシーの運転手は空港内に入ってこないで、
おとなしくタクシーの中で正規のタクシ
ー乗り場に並んでいますので、空港で話し掛ける人は怪しいと思った方がいいです。夜中に到着
をする場合は、必ず事前に迎えを手配するか、到着当日は空港のすぐ近くにあるホテルで泊まっ
た方がいいです。もし、迎えさえが手配されていれば、空港で大きな問題は起きないでしょう。
ルーマニアの警察はメディアに批判されていましたが、
実は被害者が日本人だと確認してか
ら、4 時間以内に犯罪者を見つけることができ、驚くほどの速さでした。たまたまルーマニアの
警察官の知り合いがいて、この事件に関しましては、全国の警察官が一気に犯罪者を探していた
ようです。確かに、8 月 17 日の夜ドライブしていたところ、通常警察官のいない小さな村で、
警察に止められ、どこから来てどこへ行くか聞かれました。その時はとても珍しいことだと思っ
ていましたが、今回の事件の犯罪者を警察官が必死に探し、その日の夜に移動していた車がほと
んどチェックされたようです。空港長も解任され、空港周辺のセキュリティーチェックも厳しく
なっています。今回の事件はとても残念な事件で、ルーマニアは本当に危険で暗い国に見えてし
まうかもしれませんが、前述の注意に気を付けていただければ、それほど治安の悪い国ではあり
ません。
ルーマニアに行く前に、何か不安がありましたらいつでも JRBA にお問い合わせください。
可能な限り情報と必要なアドバイスを提供させていただきたいと思っております。
よろしくお願いします。
ベレシュ・ダニエル