専門部会 産婦人科 構成 員 「月経期間中のスポーツ活動に関する指針

専門部会
産婦 人科
部 会 長 目崎 登
聡 ,落 合和彦 ,佐 々木純 一 ,中 井章 人 ,浅 井光興 ,友 田昭 二
構 成 員 松 田貴雄 ,難 波
「月経期間中のスポーツ活動 に関す る指針」の検討
は じめにl
【
月経期間中のスポーツ活動 の是非に関 して は贅否両論があ り,教 育現場 において も多 く
の混乱を来 してい る として,1989年 に 日本産科婦人科学会小児 。思春期問題委員会 にス
ポーツと性機能に関す る小 委員会を設置 し,月 経期間中のスポーツ活動 に関す るア ンケー
ト調査を実施 し, これ らを基 に
「月経期 間中 のスポーツ活動 に関す る指針」を作成 し,委 員
1).し
い
か しなが ら,指 針 の作成 よ り20年 を経 て, この
会報告 として学会 に答 申 して る
20年 間で女性 を取 り巻 く社会 ,ス ポーツ環境 は大 きく変化 してい る。
アスリー トにお いては,ア テネ五輪では選手団の女性が占める割合 が男性 を上回 り,メ
2)ほ
ダル数 も女性 め獲得 した数が男性 を上回る
ど,か つ て以上 に女性が スポー ツで活躍
する場面は増えて きてい る
また,ラ イフス タイルの変化 も見逃せず,結 婚年齢 も上昇の一途 を辿 り,平 均初産年齢
.
は,第 1子 出産時の母の平均年齢は1975年 に25歳 であったのに対 して,2007年 には294歳
と30年 余 りの間に4.4歳 も上昇 して い る3).結 婚 までの時間が延びた こ とは競技生 活を続
ける ことにも一助 となってお り,月 経期間中 にスポー ツをす る機会は間違 いな く増加 して
い ると考えられる
.
1989年 の指針 で は,本 邦 にお けるスポ ー ツの隆盛 ,国 民 の健康管理 の根 本 は学校体育 に
ある と思われる との コ メ ン トがある.現 在 も学校 スポー ツが及 ぼす影響 は少 な くない もの
の,近 年 はスポ ー ツの クラブ化 も著 しく,女 性 が スポー ツに接す る機会 は多様1生 を増 し
,
専 門的知識 を持 って 月経 に対応 して い るケース も多 い と思 われ る
そ こで,1989年 の指針 を基 に,20年 間 の こ うした変化 を考慮 した上 で文 献 的に考察 を加
え,思 春期女性 のスポ ー ツ活動 につ い ての新 たな指針 を作成す るこ ととす る
前回指針 までの背景 】
【
月経期間中の運動 に関す る考 え方についての変遷 をた どると,戦 前 は月経 と関係 な く
女性が積極的に運動 を行 うこと自体が奨励 されてお らず,禁 止するのが一般的であ った
,
.
1960年 代 には月経期 間中で も運動が可能であ るとい う意見 がな られたが,水 泳に関 しては
4).そ の
禁止する意見が み られて い る
後,禁 止的な内容 はな くな り,1989年 には指針 の
「
中で 画一 的な強制 には問題 があるが,月 経期 間中 とい うだけで絶対 に運動 を行わないこ
とに も問題があ り,健 康管理 の面か らもむ しろ行 う方 が望 ま しい」と基 本 的指針 を示 し
た
5,
前回指針からの変更 を加 えるべ き内容】
【
前回指針 の項 目に沿 って内容 を検討 してみた
.
1.基 本的事項
a.「 生理用品」について
1989年 の指針では,「 思春期少女 の場合 には,内 性器 の発育状態.清 潔 に取 り扱 うこと
の困難 さなどか ら,中 学生以下 では内装具 (タ ンポ ン)の 使用 は避 け るべ きであ り, と くに
小学生では禁止するべ きであるJと している
.
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No l,2010
これに対 して,科 学的な根拠 に基づ く,文 献的 な記載は得 られなかった.タ ンポ ンにつ
いては,近 年改良が加 え られ,低 年齢 で も使用可 能 であることが生理用品会社へ の聞 き取
5)さ
り調査 で分 かっている と記載
れてい るが, 具体的 に踏 み込んだ議論がなされて い な
い以上,今 回 コメン トは避けたい。
b.基 本的考 え方
1989年 の指針 において,月 経期 間中の運動 につ いては,「 基本的には,本 人の 自由意志
が大切であ り, と くに禁止する必要はない」としてい る.ス ポーツに関す る認識か ら
「月経
期間中であるとい う理 由 のみで絶対行わない」とい うことに も問題があ り,健 康管理 の面
(月 経痛対策な ど)か らも,あ る程 度 のスポー ツ活動 を月経期間中であって も,む しろ行 う
ことが望 ましい と考 え られると日本体育協会で も提言 されてい る6).
2.指 針の大要
1989年 の指針 の大要 は,「 スポーツ選手 の活動」と
「体育 の授業」とに分けられてい る
a,ス ポーツ選手の活動
スポー ツ選手の活動 に関 しては,「 中学生以上 では とくに規 制する必要 はない で きれ
ば,経 血量 の減少 .あ るい は月経痛の軽快後 に 行 うこ とが望 ましい」とされている ま
た,体 育 の授業 にお い て も,陸 上のスポー ツ種 目に関 して も
「月経期 間中に行って も問題
は少 ない と思われ る」とされている.女 子学生 での調査 7)に お い て も 9書 1が 参加 して い
る.「 生理用品」に関 しては,「 外装具 の使用 で十 分」とされてい るが,外 装具の発達 も顕著
で,よ ほ ど経血量の多 い時期や随伴症状が強 くな い限 りは問題ない もの と思われる
b.体 育 の授業
体育 の授業にお いて,陸 上のスポー ツ種 目と水泳に分 けて指針 を出 してい る
.
1)陸 上のスポーツ種 目
陸上におけるス ポー ツ種 目にお いては,指 針 を大概準拠 されているもの と判断する.月
経期間中で も体育 の授業 に参加す ることは当た り前 とな りつつ あ り,約 9割 の参加 との調
7).そ の
査がすでになされて い た
中で体調が優 れない者がそ の状態 によって,他 の疾患
と同様に自ら見学 ・欠席 の判断を行 うとい う認識が広 くい きわたって いると思われる 7).
2)水
泳
体育 の授業 にお ける水泳に関 しては,大 きな問題があることが文献検索 よ り判明 した
月経 を迎 えた女子 児童 ・生徒が,水 泳授業へ参加する機会を減 らしているとい う問題 は
.
,
20年 前か ら状況は全 く変わってい ないこ とである
.
1989年 の指針 では,月 経時の水泳については,女 子児童 。生徒 を対象に調査 を実施 し
,
約 8∼ 9割 が見 学 ・欠席す る傾 向にある 8,こ とか ら,科 学的根拠 に基づ き,月 経期 間中
の水泳 は可 能で あ る事 を示 した 「 中学生以上で は,生 理用品を使用 しない状態での水泳
が望 ましい。すなわち,プ ール外 での経血 の流出 との 関係 もあるので,経 血量が減少 して
か ら行 う方が よい」としてい る。 しか しなが ら, この指針が示 された 2年 後 の調査で,中
学 ・高校 ・短大生 を対 象 に した報告 では,水 泳以外 の体育授業 は月経期 間中であって も
892%が 参加す るのに対 し,水 泳では18%し か参加 していなかった 9)が ,さ
らに10年 以
上経過 した2002年 に実施 した調査で も 7∼ 8割 が見学 ・欠席 していた10).
一方で,月 経時 の水泳 に関す る指導 の必要性 は感 じられなが らも20年 が経過 してなお
,
月経期 間中の水泳 に関す る教 諭 の指導内容 と知識 に問題があ る としている11)学 校現場
において 月経中の運動 へ の考え方が変化 し,水 泳以外 の授業 では月経中 も行えるとい う考
えが浸透 した一方 で,水 泳 においてはこの考えが浸透せ ず現在 に至 っている 月経期間中
の水泳 に安心 して参加で きるような教育 の推進 を図る必要性がある
児童 ・生徒 にお け る 月経 中の水泳不参加 につい ては,藤 原ほか10'が 詳細 に検討 して い
る 欠席の理由は,「 何 とな く入 らなかった」が約 半数 で,「 月経血 の流 出の懸念」が 4割 で
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これ らの理 由は,20年 前 の1987年 の 調 査 8)と ほ とん ど変化が なか った。 こ う し
た理 由につ い ての対応 に関 しては,1989年 の指 針以前 にク リアされて い る.プ ー ルサ イ ド
あ つた
での経血 の流 出のおそれに対 して以前 に も報告 されて い る.排 血 を行 った後 の 1時 間あた
りの経血量 は平均 2g前 後 とされてい る12).ま た,「 腟 内へ の水 の流入」につ い て も,婦 人
科 的障 害 ,感 染 の観点か ら気 に して い るが ,入 浴時で も腟 内 には全 く入 らな い ことか らも
誤 った 認識 で あ る とされ るl".こ れ につ い て は,産 後 の 入浴 制 限 に 関 して も外陰 部 の創
傷 の治癒後で も,約 1カ 月程度は入浴 を控 え,シ ャワー浴 にするよう指導 していることも
こ うした傾向に関与 してい るのではないか と懸 念 される
.
さらに,流 血があることで,エ イズ に関す る懸念 を訴 えることもあろ うか と推察 され
る。 日本水泳連盟は
「エ イズ患者 と一緒 に泳 ぐことや タオルを共用す ることで感染せ ず」
また「傷 日か らのわずかな血液 を介 してのエ イズ ウイルス の感染 は極 めて低 く,水 泳中に
エ イズに感 染す ることはない」とコー チ教 本14)に 記載 して い る
身体 へ の影響 に 関 して
も,寒 冷訓練 にて血 管収縮 とその後 の拡張が 自律神経 の働 きを高める15)ゃ ,月 経痛 の緩
和 に運動療法が有効だとの指導 もある1°
この ように対応 に関 しては考慮 されてお り,1989年 の指針が十分に情報 として伝 わって
い ない可能性が高 い と考えられる。 まず.学 校 での保健活動 を行 う学校医 の1989年 の
指針
,
に対す る認知度の低 さも指摘 されてい る 5).こ れによる と,学 校 医 の1989年 の指針 の認
知度 は9.9%に とどまっている.学 校医 は,産 婦 人科医がその任 にあたっていることもあ
るが,多 くは内科医で,そ の 8割 強が男性であ る 産婦人科学会での指針 は,他 科 の医師
に伝 わってい ない可能1生 が高い。
さらに,月 経期間中の水泳に実際に関与する学校教諭へ の指導 も必要 とされる
「見学 しなさい」とい う指導の割合が減 り,「 参加 しなさい」,「 自己判断 しなさい」とい っ
た指導が多 くなってい ることが 明 らか となった10).漠 然 と
「何 とな く休 んだ」とい う欠席
の理由か らす ると,児 童 ・生徒が出欠 の 自己判 断を下すためには,科 学的知識の教授 を要
すると考え られる
タンポ ンを使用 しな くとも水泳が行 えるこ とを認識 して い る教諭 は 3割 以下である10)
.
.
ことか らも,児 童 ・生徒 の実態に変化がみ られ ない一 因は,教 諭が指導 を実施 してい ない
点にあ り,そ れは教諭 の知識不足 にあると考え られる。小中高等学校 の教科書 に月経中の
水泳 につい ての記載 は無 いこ と も分かってい る10).実 際,月 経期 間中の水泳 に関す る指
導 の実態 について調査 されているが,指 導 が約半数 しか行 われてい なかった10).
1989年 の指針では,「 経血量がある一定以上ある状態で水泳 を行 う場合 には,内 装具 (タ
ンポ ン)の 使用が必要 となるが,こ の場合には高校生以上 を原則 として,水 泳時に限って
の使用 に制限する.な お,女 子 の場合,プ ールサイ ドに一色 (濃 紺 ,赤 など)の バ ス タオル
を常 に持 ち込む こ とを習慣 とした方が よい と思 われる」としている しか しなが ら, こ う
した対応 を行 っている学校施設は少な く,プ ールサイ ドにバ ス タオル を置ける状況 にはな
い.こ れは,ひ とえに学校体育施設の充実がはか られてい ないこ とが要因 と想像 される
体育教員 の意識 も変化 してお らず,漠 然 とした理 由によ り欠席 してい るため,再 度対処法
について も触れるべ きであろう
.
.
経期間中の水泳を実施するための対処法】
月経期間中の水泳を実施するための対処法を提示する
1 環境面では,月 経期間中の水泳 はプールサイ ドヘの タオル持 ち込みや,ト イレ,更
衣室 などの整備が必要 と考えられる17)
2.タ ンポ ンの使用 については,近 年 は,早 熟化 とタンポ ンの改良が進み,そ れ に伴
い,使 用年齢が これまでよ り低年齢化 していることが推察 される タ ンポ ンの誤 った使用
I月
.
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や,最 も危惧 される取 り出 しを忘れるとい うこと を防 ぐためにも,学 校 での保健指導が徹
底 して行 われなければならないが,月 経期 間中の水泳 を安心 して行 える有効な対処法にな
ると考 えられる
3.さ らに,排 血法の実践の指導 を行 う必要が あ る.腹 式呼吸を行ない,あ る程度経血
を排 出することがで きるが,こ の方法 を水泳授業で も適用できるようになれば,短 い小 。中
.
917).
学校 での水泳授業 はタンポ ンを使用 しな くとも可 能 ではないか と考 えられる
まとめ】
【
月経期間中の水泳 について科学的事実 か ら,泳 いで も問題は無 いこ とが い われて きた
18)で
は,「 月経 は女子 の生理的な現象であ り不安 を
文部科学省発行 の『水泳指導 の手引 き』
抱 く必要 は無 いこ と」,「 月経 に伴 う症状 には個人 によって違 いがあ り,中 には月経困難症
など水泳 の実施を個別に考慮 しなければな らない場合 もあるが,月 経中の水泳指導 につい
ては全 面的な禁上 ではな く,心 理的要素等 も含 めて諸症状 によって個 々に適否 を判断する
ことが必要である」と記 して い る.す なわち,「 月経 =欠 席 ・見学」ではな く,4固 々が月経
痛や経血量 などの症状 によ り出欠 の適否 を判断す る必要がある。そのためには判断で きる
だ けの知識 を身につ けてい る必要がある.今 後,小 学校 の保健 の教科書,中 学高等学校 の
保健体育 の教科書 に「月経中の水泳」についての科学的根拠 を含む事実が記載 され, これが
体育教員 に正 しく指導 され,学 校施設 が充実 し,陸 上の競技 と同様 の 出席率 にな り,月 経
が水泳授業 の阻害要因 とな らぬ よ う,児 童・生徒 が 自己判断で きる材料提示がなされる必
要があ る
文
献
1)玉 田太郎 ほか :小 児思春期 問題 委 員会報告 (月 経期 間中 のスポー ツ活動 に関す る指 針 ).日 本
産科婦人科学 会雑誌 41:633-634,1989
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4)東 京都教育委員会 :純 潔教育 へ の道 (初 版 ).杉 田屋 印刷株式 会社 ,東 京 ,18-25,1961
5)藤 原有子 ほか :月 経期 間中 の水 泳 に 関す る学 校 医 の考 え.日 本臨床 スポ ー ツ医学 会誌
14:
32-39, 2006
6)囲
日本体育協 会編 :女 子 ス ポ ー ツ・ハ ン ドブ ック (初 版 )ぎ ようせ い。東 京 ,96-97,104-
105, 1986
7)篠 崎俊子 ほか :女 子学生 の保健 学 的研 究 (第 4報 )月 経 随伴症状が体育実技 にお よぼす影響
福 岡女子大学家政学部紀要 20:537Q1989
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11)藤 原有子 ほか
:月 経 時 の水泳 に 関す る保健体 育教科書 の記載 と大学新入生 の理 解 .川 崎医療
止:許
ネ
冨力
言
志 15 : 445-453, 2006
`ヽ ほか :月 経 時 にお
け る水 泳 につ い て ∼ その対応 の仕方 と経血量 を中心 と して∼
幸
・
育学研 究紀 要 中国 四国教 育学 会 ,30:536-542,1985.
13)武 藤芳照 :健 康 ス イ ミングの仕 方 と効果 第 二版 築地書房 ,東 京 ,107-109.1989
12)安 藤
14)(助 日本 水 泳 連 盟 編 :競 技 力 向 上 指 導 者 用 水 泳 コー チ 教 本
初版
大 修 館 書 店 ,東 京
教
,
65-67, 1993
15)安 藤
幸 ほか :月 経 時 にお け る水 泳 につい て ∼水 に対す る生徒 ・学生 の意識 とその対応 ∼
教育学研 究紀要 中国 ・四国教 育学 会 ,31:487-490,1985.
16)寺 田恭子 :女 子大学 生 の 月経痛 へ の対応 .学 校保健研 究 32:389-395,1990
17)内 堀信子・ 永 田登喜 雄 :思 春 期 にお ける月経 に関す る研 究 (第 3報 )現 在 の 中学生 の 月経処理
日本 臨床 スポ ー ツ医学会誌 i Vol.18 No l,2010,
151
に関す る研 究
思春期学 6:160-164,1988
18)文 部科学省 :学 校 体 育 実技 指導 資料 (第
4集 )水
大 阪書籍 ,大 阪 ,99
泳指 導 の手 引 き
2004.
専門部会
リハ ビ リテ ー シ ョン科
構 成 員
大久保衛 ,高 田正三 ,田 島文博 ,飛 松好子 ,中 村 太郎・ 李
陶 山哲夫
部 会 長
俊哉
1,身 体活動量計 を用 い た大腿 骨頚部骨折術 後 の運動量評価 (ll)
井手
睦 (雪 の聖母会聖 マ リア病 院 リハ ビ リテー シ ョンセ ン ター)
目的】
循環器疾患の併存が珍 しくない大腿骨頚部骨折患者の理学療法は運動負荷量を念
【
頭において実施されるべ きであるが,治 療現場 において運動強度を評価す るのは容易では
ない.平 成20年 4月 の特定健診導入に向けて開発された身体活動量計を使用して治療中の
運動量測定を試みたのでこれを報告する
大腿骨頚部骨折に対 して当院で手術 を受けた高齢者32名
I対 象】
.
(男
性 4名 ,女 性28名
,
平均 年齢 81.1± 9.2歳 )
方 法lリ ハ 室 で の理 学 療 法 に際 して 3軸 加 速 度 セ ンサ使 用 高 精 度 身体 活 動 量 計
【
(EW4800-K松 下電工)を 腰部に装着 して測定 .訓 練時 1分 毎 の運動強度 を METsで 算 出
した.移 動方法に よ り分 けた 3群 間の比較 に は Kruskal― Wal s検 定 を用 い た また,素
デー タを Excelに 落 として トレン ドの検討を行 った。
結果】
①手術 か ら評価 までの期間は平均11.3± 38日 ,リ ハ室で の浪1定 時間は平均411
【
±10.2分 であ った 測定時 の移動方法 は,杖 歩行 9名 ・歩行器歩行 13名 ・平行棒内歩行 8
名 ・車 いす 2名 で あった.② リハ 中 の運動 強度 につ い ては,測 定時 間内 の平均 1.37±
0.12METs・ ピー ク値 は平均2.25± 0 34METsで あ った。いずれ の項 目について も測定
時 の移動方法の違 い によ り有意な差 は認 められなかった。③対象者全体 での トレン ドを見
る と,理 学療法中に2METs以 上の運動量を要 した時間は6.1%に す ぎず,297%の 時間
はlMETsの 運動量 に留 まっていた
.
考察】身体活動量計 を用 いて理学療法中の運動量 を推測する ことは可能 と思われるが
【
正常歩行 でない者へ の導入 について妥当性の検証 は必要 であ る.運 動器 の術後 には移動能
力 の改善 と同時 に,い わゆる耐久性 の向上を 目的 とした理学療法 を立案すべ きであ るが
,
,
現状 のプ ログラムでは後者 の目的に対 しては運動量が不十分 であ る事 が示唆 された
2,「 肢体不 自由者の競技 スポーツにおける競 技力向上 に関するニーズ調査」
飛松好子,樋 口幸治,岩 淵典仁,梅 崎多美 ,高 橋春 一 (国 立障害 者 リハ ビリテー シ ョ
ンセ ン タ ー )
緒言 。目的】
障害者 スポー ツはオリンピックに引 き続 いて開かれるパ ラリ ンピックにお
【
ける障害者 の活躍 に関心が高 まり,近 年競技 としての認識が高ま りつつ あ る 競技力 も高
ま り,出 場す るためのハー ドルは高 ま りつつ ある.そ の一方.競 技力 を高めるための ト
レーニ ング法,デ バ イス,現 状分析等の方法 に確 立 された ものはな く,そ れぞれが経験 に
基づ き,あ るいは手探 りで行っているのが実情である
そ こで,実 際の競技団体が選手強化 を行 ううえで どの ような問題点 を抱 え,そ のような
ニーズがあるかを調査 し,競 技力強化 のためのシステムには どの ようなものが必要かを考
.
察す ることとした
.
国内の競技団体,障 害者スポーツ関係者にアンケートを送付し,選 手強化の実態
I方 法】
152
日本 臨床 スポーツ医学会誌
:Vd 18 No l,2010