床衝撃音感知装置の開発 (マナーセンサー・マナーモニターシステムの

安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005
床衝撃音感知装置の開発
マナーセンサー・マナーモニターシステムの開発
木田
寛治*
宮川
忠明*
野本
利英*
八ツ繁
公一**
岩本
吉隆***
Development of Detection and Alarm System on Floor-Impact Sound Pressure Level
Development of detection through the Manner-sensor and Manner-monitor system
by Kanji KIDA, Tadaaki MIYAGAWA, Toshihide NOMOTO, Koichi YATSUSHIGE and Yoshitaka IWAMOTO
Abstract
A sound detector with advisory function was developed to sense floor vibration triggered by floor impact
sounds, to estimate the quantity of noise generated by residents living on the floor below, and furthermore, to
send a signal and sound to the residents generating noise. In other words, it was the proposal for a solution to
the floor noise problem in the apartment-house using software. The Manner sensor workshop consists of four
parties. These four, Ando corporation, SYSTEC corporation, the SHIBAURA institute of technology and the
Urban Renaissance Agency Urban & Housing Technology Research Institute were established and confidential
results were then obtained.
要
旨
床衝撃音感知・アドバイスシステムは,共同住宅の床衝撃音によって生ずる躯体スラブの振動を
センサー装置で感知し,階下の居住者に不快感を与える騒音の大きさを予測し,騒音発生源の居住
者に信号音や音声等を発してアドバイスするもので,ソフト面から共同住宅における床騒音問題の
一つの解決策を提案するものである。床振動の解析・制御技術(安藤建設),検知装置の設計・製造
技術(システック),波動情報理論(芝浦工大),共同住宅の維持管理におけるハード,ソフト両面
のノウハウ(都市機構都市住宅技術研究所)を融合させ,四者共研のマナーセンサー研究会で行っ
た性能検証実験により,精度,信頼性において一応の成果を得た。
キーワード:床衝撃音/片持ち櫛形センサー/躯体スラブ振動
1.はじめに
新築物件では,床遮音性能目標値(L-50 程度)
共同住宅において,特に改善が望まれるのが上下
に沿った躯体スラブ厚を採用する建物も多くなって
きたが,昭和 50 年代までに建設されたストック住
間の床衝撃音による騒音問題である。
新築建物においては,躯体スラブを構造的要求以
宅では,躯体スラブ厚が 15cm 以下の薄いスラブが
上に厚くする,或いは特殊床組を採用する等,遮音
多く,リニューアルによる遮音性能の向上にも限界
性能の向上策はいくつか考えられるが,いずれも建
がある。
設費の大幅なアップが避けられない。
床仕上面で発生する衝撃音が,固体伝搬振動とな
しかも,音のうるささに対する感覚には個人差が
って躯体スラブを振動させ,それが下階居室天井面
あり,建築的な対応で全てが解決する訳ではない。
から騒音となって降ってくる。上階床での発生振動
騒音発生側居住者の自己防衛手段として,階下へ
を,躯体スラブ上面に設置したセンサー装置で受信
与える騒音被害を防止することも重要であるが,現
して階下の騒音を予測し,モニター装置で警報を出
状では,効果的な抑制手段がない。
すシステムを開発したので,その概要を報告する。
*
技術研究所環境グループ
*** 建築本部3C技術推進プロジェクト
** 技術研究所所長
13
安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005
2.システム概要
した室内騒音レベルと櫛形センサーの振動データを
今回新たに開発した片持櫛形センサー(マナーセ
収集解析し,上階スラブの床振動と階下居室騒音レ
ンサー)は,図 1 に示す様に,床衝撃音で特に問題
ベルの相関関係グラフから近似式を求め,床タイプ
となる 63Hz,125Hz,250Hz の3つのオクターブ帯
毎の補正係数を算出し,モニター装置の演算回路に
域の躯体スラブ振動にのみ共振する。
組み込んだ。システム概要を図 3 に示す。
床衝撃音として影響の少ない中高音域の音(音源
室における話し声,テレビの音,外部の道路交通騒
音,緊急車両のサイレン等,警報を出す必要のない
ノイズ)には反応しない。従って,プライバシー保
振動検知
センサー
電気信号
増幅部
騒音換算部
騒音換算条件
設定部
距離換算
テーブル
反応しない。また,スプーンや箸を落とした程度の
入力部
単発音にも反応しないセンサーとした。
示す。
表示部
( モニタ ー)
図3
90
90
80
80
警告部
センサー部
護機能として重要な,隣接住戸からの話し声等にも
床衝撃音レベルに影響を及ぼす主な要因を図 2 に
制御部
直下部振動
騒音換算
テーブル
システム概要図
重量(L55)
重量(L51)
軽量(L56)
70
軽量(L49)
床衝撃音レベル[dB]
床衝撃音レベル[dB]
70
L-65
60
L-60
L-55
50
L-50
L-45
40
L-65
60
L-60
L-55
50
L-50
L-45
40
L-40
L-40
30
30
20
20
63
125 250 500
1k
2k
オクターブ帯域中心周波数[Hz]
63
4k
125 250 500
1k
2k
オクターブ帯域中心周波数[Hz]
[例1]K住宅(LD 17.5㎡)
[例2]S住宅(LD 15.3㎡)
ハーフPCスラブ180㎜+上部コン90㎜+乾式置床
ボイドスラブ270㎜+乾式置床
図1
4k
図4
センサー部概要図
集合住宅における床衝撃音レベル測定結果例
騒音換算条件設定部
スラブ仕様
床組仕様
(受音室)天井仕様
スラブ厚
直床
直天井
スラブ面積
二重床
二重天井
センサー取付位置
下階吸音力
対象となる居室とセンサーの距離
スラブ構造
写真 1:圧電ピックアップとの比較測定
RCスラブ
ボイドスラブ
PSスラブ
図2
床衝撃音レベル影響要因
3.実測による性能検証
写真 1,写真 2 に示すように,技術研究所音響実
験棟床遮音実験スラブにおける,躯体スラブ及び乾
式二重床でのセンサー感度予備実験を経て,構造形
式の異なる 8 物件,25 室,130 スラブで,同時測定
14
写真 2:乾式二重床での予備実験
床衝撃音感知装置の開発
4.室内騒音レベルの算定式
回帰式から求めた,マナーセンサー出力とモニター
拡散音場を想定した室内音圧レベル(SPL)基本式は,
デシベル表示値の関係式を以下に記す。
下式(1)で求められる。[1]
①マナーセンサー出力(V)から加速度(a)の算出
SPL=VAL-20log(f)+10log(K)+10log(S/A)+36 [dB]
(1)
VAL:スラブの振動加速度レベル(dB)
f:振動数(Hz)
K:放射係数(1以下)
S:放射面積(㎡)
a=センサー出力(V)×15 [gal]
②マナーモニター基本表示値(X)の算出
X=20×log(a×1000) [dB]
③周波数毎の補正係数を加えたモニター表示値(Y)
Y=X-20×log(f)-10×log(α) +36-b
A:室内の吸音力(㎡)
[dB]
f=63Hz,125Hz,250Hz
α:吸音率(63Hz=0.1,125Hz=0.02,250Hz=0.02
・・・センサー床下設置時)
表1
測定結果一覧(センサー位置,音源室中央)
スラブ素面 居住性能館
音響実験棟
K住宅南面
K住宅北面
A住宅
直貼り床
居住性能館
Se住宅202
Se住宅205
Se住宅213
SB住宅604
SB住宅606
SB住宅611
乾式二重床 居住性能館
音響実験棟
乾式実験床 A住宅,緑防振
A住宅,黒防振
A住宅,Y101
A住宅,Y201
発プラ床
居住性能館
畳床(壁式) K住宅南6畳
K住宅北4.5畳
ボイドスラブ Si住宅 LD
乾式二重床
Si住宅洋室
ボイドスラブ M住宅 4-801
(躯体)
M住宅 4-903
M住宅 4-904
M住宅 3-801
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
ハンマー
スプーン
ゴルフB
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
ハンマー
スプーン
ゴルフB
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
ボール
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
バングマシン
タッピングマシン
L等級決定周波数
63[Hz]
125[Hz]
250[Hz]
推定値 実測値 推定値 実測値 推定値 実測値
69
68
60
57
47
45
66
57
66
61
61
61
58
57
59
57
44
50
83
84
67
61
60
54
69
65
71
66
71
68
70
73
62
63
54
59
76
74
74
74
71
76
49
52
43
45
50
46
57
56
60
55
62
59
86
95
69
66
68
64
79
73
74
72
71
77
82
87
68
69
64
66
86
82
67
66
68
63
75
68
73
67
71
71
81
74
68
66
68
60
86
89
65
65
67
61
86
72
74
71
71
74
73
72
62
54
51
45
57
54
55
53
45
50
63
62
60
56
49
50
74
75
62
56
57
51
56
59
57
54
55
48
78
75
57
58
56
51
65
57
50
55
44
46
75
74
63
60
54
51
60
60
55
56
46
49
78
76
53
58
52
48
62
57
51
58
44
49
70
66
49
62
49
50
82
79
54
57
54
51
65
61
52
56
45
49
69
68
51
59
51
51
79
72
53
58
53
50
62
56
51
56
41
46
68
63
49
60
50
53
72
75
62
60
50
46
55
54
57
53
45
54
62
63
57
55
44
47
84
84
71
69
61
56
57
61
54
62
50
57
69
68
58
60
48
53
70
70
60
65
57
62
48
52
49
47
51
43
57
55
50
54
46
49
75
74
54
61
54
52
62
60
54
57
54
57
75
75
53
56
52
52
63
63
52
57
53
60
74
77
51
55
50
47
62
57
54
55
50
54
75
71
51
52
52
44
63
57
52
54
50
54
69
69
65
58
51
48
57
42
59
56
49
53
63
60
63
58
46
52
86
92
74
75
71
73
70
66
52
54
48
45
85
85
74
71
68
68
86
83
72
71
71
65
73
63
56
57
53
44
85
77
65
64
66
56
75
76
71
60
66
54
72
63
68
61
70
62
72
73
74
63
66
56
70
58
74
59
66
62
74
74
54
54
51
51
68
60
68
59
68
60
73
75
60
56
51
49
67
61
68
64
68
63
74
75
53
57
50
46
64
61
61
62
64
61
75
76
62
59
55
49
82
62
74
63
71
64
注)右図グラフは、L値決定周波数帯域のみをプロットした。
は、マナーセンサーがスケールオーバーしたもの。
b:近似直線から算出した周波数ごとの補正値
5.測定結果
構造形式及び上部床組の形式が異なる8種類の建
物,25タイプの居室で,上部床組形式の変更等を含
め130パターンの測定を行った。
マナーセンサーを当該居室中央付近(一部下階天
井面を含む)に設置した状態での測定結果一覧を表
1に,同様に図6にマナーセンサーによる推定値と下
階騒音レベル実測値との比較グラフを示す。
図5に示すように,マナーセンサーを当該居室脇
に設置した状態での測定結果一覧を表2に,同様に
図7にマナーセンサーによる推定値と下階騒音レベ
ル実測値との比較グラフを示す。
表2
測定結果一覧(センサー位置,音源室脇)
L等級決定周波数
床形式
住戸名
ボイドスラブ M 3-801
乾式二重床
M 4-801
M 4-802
M 4-804
M 4-805
衝撃音
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
バング
タッピング
衝撃
63[Hz]
125[Hz]
250[Hz]
位置 推定値 実測値 推定値 実測値 推定値 実測値
P1
82
81
62
62
61
50
P1
67
62
58
56
56
57
P3
73
67
61
59
59
48
P3
63
60
59
56
56
57
P5
81
75
63
60
60
51
P5
65
60
58
57
60
61
P1
73
78
54
47
P1
66
60
60
60
P3
76
86
61
50
P3
69
63
62
60
P5
80
85
61
50
P5
73
61
63
60
P1
79
79
58
60
58
51
P1
68
60
56
55
59
63
P3
76
79
63
62
60
53
P3
72
65
56
59
60
62
P5
79
80
62
62
61
52
P5
67
64
59
59
62
62
P1
78
77
60
57
58
50
P1
64
55
59
61
59
61
P3
79
70
62
56
58
49
P3
64
60
57
60
61
61
P5
76
72
60
58
59
51
P5
66
60
63
60
68
63
P1
76
76
58
56
57
53
P1
68
57
58
59
60
61
P3
75
77
60
59
58
54
P3
63
59
57
63
57
62
P5
76
76
61
60
59
51
P5
63
59
60
62
63
64
15
安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005
スラブ上
スラブ上
スラブ上
スラブ上
図5
マナーセンサー設置位置案内図(M住宅の例)
63Hz
100
125Hz
100
スラブ素面
直貼り床
畳床(壁式)
ボイドスラブ
乾式実験床
70
60
50
40
80
30
40
ボイドスラブ
70
60SB,ボール
50
50
60
70
80
90
30
40
50
60
70
80
90
50
30
100
40
50
60
70
80
90
100
マナーセンサーによる推定値(dB)
125Hz(全データ)
250Hz(タッピングマシンのみ)
100
P1
80
70
60
50
P1
70
60
50
30
30
100
P5
80
40
50
60
70
80
90
マナーセンサーによる推定値(dB)
P3
90
40
40
100
P5
下室平均音圧レベル実測値(dB)
P3
下室平均音圧レベル実測値(dB)
P1
図7
P3
P5
90
80
70
60
50
40
30
30
40
50
60
70
80
90
マナーセンサーによる推定値(dB)
100
30
40
50
60
70
80
90
マナーセンサーによる推定値(dB)
100
マナーセンサーによる推定値と下階騒音レベル実測値との比較(センサー位置、音源室の脇)
図6,図7は,横軸にマナーセンサーによる推定値,
縦軸に下階居室での平均音圧レベルを表しているが,
センサー位置を音源室中央付近とした図6,センサ
ー位置を音源室脇としたに図7,双方とも,下階居
16
60
マナーセンサーによる推定値(dB)
63Hz(バングマシンのみ)
30
乾式実験床
マナーセンサーによる推定値と下階騒音レベル実測値との比較(センサー位置、音源室中央)
100
90
ボイドスラブ
70
30
30
100
畳床(壁式)
80
40
マナーセンサーによる推定値(dB)
図6
乾式二重床
発プラ床
畳床(壁式)
40
30
下室平均音圧レベル実測値(dB)
90
乾式二重床
下室平均音圧レベル実測値(dB)
下室平均音圧レベル実測値(dB)
発プラ床
80
直貼り床
直貼り床
90
乾式二重床
スラブ素面
下室平均音圧レベル実測値(dB)
90
250Hz
100
スラブ素面
室平均音圧レベルとマナーセンサーによる推定値と
の誤差は,目標値の±5dB以内にほぼ収まっている。
床衝撃音感知装置の開発
6.マナーセンサーコントロール部の仕様
能表示仕様規定表を参考に,L-55を標準に,±5dB
の設定変更ができるようにした。
マナーセンサーは,一般の家電製品と同じよう
[センサー設置位置による感度補正]
な取り扱いになるので,設置場所の違いによる感度
センサー設置位置により,感度は大きく変化する
校正が簡単にできるようにしなければならない。
従って,表3に示すような感度設定ツールを作成
ので,マナーセンサーが新築物件等に組み込まれる
し、コントロール装置で設定ができるようにした。
ような場合は細かな感度補正も可能であるが,一般
基本となるのは,時計設定,初期設定(建築的設
的には単独で使用することを前提に,便宜的に以下
に示すような設定ができるようにした。
定),マナー設定(人間的要素)の3項目である。
③壁からの距離:構造壁或いは梁の際,50cm~1m
時計設定は,オーバーカウント履歴の表示と,就
以内,1m以上,この3段階で,3dBづつ補正できる
寝モードを設定するために必要な機能である。
ようにした。構造壁から1m以上離れていれば,感
6.1
度差は微少であると判断した。
初期設定
初期設定は,警報表示レベル調整機能,センサー
④音源室からの距離:マナーセンサーを音源室の際
位置による感度補正,下階居室天井有無による補正
に設置することを基本としており,音源室の中に設
の3点である。初期設定値は,L-55の値を超えると
置する場合と音源室際から1m以上離れたところに
イエローカード,L-60を超えるとレッドカード表示
設置する場合は,それぞれ±3dB補正(63Hz帯域)
となっている。
することとした。
[警報表示レベル]
①外部環境:当該建物及び居室の暗騒音レベルによ
6.2
その他の設定
って,上階からの床衝撃音レベルに対する煩わしさ
[その他の要因による感度補正]
の感覚が変化することを考慮して,静かな居室では
⑤天井の有無(下室):一般的に,直天井と比較し
(-5dB),都心部或いは幹線道路に面しているよう
て二重天井は床衝撃音が増幅されるので,ここでは,
な暗騒音レベルが大きな居室では(+5dB)といっ
二重天井の場合+3dBとした。
たように設定をする。
[人間的要素(マナー)による感度補正]
②床厚と居室の面積:床衝撃音レベルは,躯体スラ
⑥ここでは,下階居住者に対してどの程度気を遣う
ブ厚と居室面積に大きく依存しているので,住宅性
必要があるかという人間的要素に関する補正を行う。
表3
マナーセンサーコントロール部仕様
床厚と部屋の面積の関係
部屋の面積
躯体スラ
ブ厚さ
メニューツリー
18㎡ 17~ 13㎡ 12㎡ 11㎡
以上 15㎡ 以下 以下 以下
21㎝以上
①外部環境
時計設定
警報表示レベル
静か
-5dB
普通
0
初期設定
20㎝
遮音性能高い床
A
19㎝
0
普通の床
B
18㎝
+5dB
遮音性能低い床
C
17㎝
-5dB
+
①+②=(-10~+10dB) 賑やか +5dB
建築的要素
②床厚と部屋の面積(表1参照)
(-5dB): 警報表示値を5dBきつくする
16㎝
(+5dB): 警報表示値を5dB緩和する
15㎝以下
A
B
C
住宅性能表示制度資料より
③壁からの距離
センサー
設置位置による
感度補正
③+④
1m以上
50㎝~1m
+3dB
壁(柱)際
+6dB
0
+
中心周波数
④音源室か
らの距離 63Hz 125Hz 250Hz
音源室の中 -3dB -10dB -10dB
音源室の脇
0
0
0
1m以上外 +3dB +3dB +3dB
⑤天井の有無(下室)
直天井
二重天井
人間的要素
マナー
設 定
0
+3dB
⑥下階入居者に対して
普通
0
少し気を遣う
+3dB
⑦就寝モード
+
OFF
0
ON
+5dB
大変気を遣う +6dB
17
安藤建設技術研究所報 Vol.11 2005
下階居住者の中に,寝たきりの人がいる,子どもや
8.まとめ
ペットがいない静かな家である,或いは受験生がい
外部環境(暗騒音),センサー設置位置による感
る,或いは極端に神経質である,といったことに対
度補正,下階入居者への配慮等を加味した演算処理
して,少し気を遣う必要がある場合は+3dB,大変
機能を持つマナーセンサーが完成し,下階居室での
気を遣う必要があると感じた時は+6dBに警報レベ
騒音レベルを,当該居室でモニター表示できるよう
ル感度設定を変更できるようにした。
になった。(下階居室平均音圧レベルとの誤差は
⑦就寝モード:下階入居者への気配りとして,就寝
±5dB以内をクリア)
時間帯と思われる時刻を設定し,その時間帯は警報
レベルを+5dB(1ランクアップ)とする。
商品化に向けて,一般の使用者を想定したモニタ
ー部の取り扱い方法,警報発生方法について,都市
機構研究所等での被験者実験等を重ね,より扱い易
7.被験者実験結果
いもの,市場性のある製品に改良中である。
都市機構都市住宅技術研究所居住性能館3階のユ
将来的には,マナーセンサーによるデータから下
ニバーサルデザイン実験室に,マナーセンサーシス
階居室での騒音計による測定をせずに床遮音性能を
テムが常設展示されている。そこで,平成17年6月
推定することも可能としたい。
15日公開実験を兼ねて被験者モニター実験を行った。
尚,マナーセンサーを使ったモニターシステムは,
参加者は,専門家,評価機関,エンドユーザー,管
安藤建設と都市機構の共同名義で特許出願済である。
理会社等,15団体に報道機関を加えて37名であった。
(特願2004-206052「騒音検知システム」)
上階から,5種類の生活音とバングマシン及びJIS
ボールによる床衝撃音を発生し,それに対してどう
感じたかを,その場で6段階評価してもらい,その
結果をマナーセンサー表示値と比較した。
謝辞
今回の報告書は,平成16年度における安藤建設技
術研究所と独立行政法人都市再生機構都市住宅技術
表4に示すように,人の耳による評価とマナーセ
研究所住まい技術研究チームの共同研究をベースに,
ンサーによる表示値は概ね一致しており,マナーセ
センサー及びモニタリング装置を開発した㈱システ
ンサーシステムの性能が一応評価された。
ック,芝浦工業大学工学部通信工学科柴山研究室,
表4
以上四者によって組織されたマナーセンサー研究会
モニタリング実験評価結果一覧
評価者数:37名
感覚評価
音源No.
生
活
実
態
音
源
TV
off
JIS
標
準
音
源
における成果をまとめたものである。
被験者によるモニタリング予備実験に関しては,
①スプーン落下音 28
6
2
0
1
0
②掃除機の音
14
17
4
1
1
0
都立大学(現,首都大学東京)工学部建築学科深尾
③強めの歩行音
0
0
2
14
15
6
研究室の方々にご協力いただいた。
④イスを引きずる音 0
0
0
10
18
9
⑤ドアが閉まる音
1
6
13
16
0
1
⑥バングマシン 0
0
0
2
13
22
⑦JISボール H:10cm
1
6
7
20
3
0
⑧JISボール H:10cm
1
5
8
20
3
0
TV
on
0:全く気に 1:あまり気 2:気になる 3:少し気に
5:すごくう
4:うるさい
ならない
にならない 場合もある
なる
るさい
また,公開実験に際しては,芝浦工業大学工学部
建築学科藤上教授,文化女子大学造形学部住環境学
科久木講師,ベターリビング,NPO日住協,団地再
生研究会,他多数の参加者から貴重なご意見をいた
だくことができた。ここに,合わせて感謝の意を表
す。
マナーモニター
参考文献
[1]日本建築学会:建築物の遮音性能基準と設計指
針[第二版]1997.12
[2]柴山秀雄:振動によって発生した音響情報を用
マナーセンサー
いた発生箇所の診断,2004.11
[3]上明戸昇・小林真人他:集合住宅の騒音対策部
位特定に関わる寄与解析事例,騒音制御工学会研
写真3
18
ユニバーサルデザイン実験室
究発表会講演論文集,pp.269-272,2003.9