J. ASEV Jpn., Vol. 17, No.3 輸送・貯蔵時の温度条件とワインの品質変化 ○小池 若奈1、市村 真寸美2、小泉 武夫3、戸塚 昭4 (1ディアジオ モエ ヘネシー㈱オフプレミス事業部, 2東京農業大学大学院 農学研究科 醸造学専攻, 3東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科, 4感性科学研究所) Effect of temperature on wine quality during storage and transportation ○ Wakana KOIKE1, Masumi ICHIMURA2, Takeo KOIZUMI3, Akira TOTSUKA4. 1 MHD Diageo Moët Hennessy K.K., 2Graduate School of Fermentation Science, Tokyo University of Agriculture, 3Tokyo University of Agriculture, 4Research Institute of KANSEI-Science We analyzed changes in quality of wine stored at different temperatures with the Multichannel Taste Sensor (MCTS), and determined whether changes in taste recognized by humans could be detected objectively by the MCTS. Then, we evaluated objectively with the value of CPA about the advantages of the reefer container over the dry container. It is known that the quality deterioration of red wine transported in the dry container is easily determined by tasting compared with that of white wine. When Chilean red wine and Chilean and Makedonija white wines, which were imported to Japan in reefer containers, were stored at 15, 25, 30, and 40℃, no difference in quality was recognized in Makedonija wine as a result of the sensory evaluation, although the change in quality of Chilean wines was recognized by the sensory evaluation. For both red and white wines, the values of CPA obtained with the MCTS indicated changes in the quality of wines stored at temperatures above 25℃. When the same lot of French wine imported to Japan in the reefer container and the dry container was analyzed with MCTS, the difference in quality of wine was detected objectively with the value of CPA. 【目 的】 現在、国内市場に出回っている外国産ワインは、そのほとんどが海上輸送により輸入さ れている。ワインの海上輸送は輸送中に温度制御を行わず外気温の影響を受け易いドライコンテナに よる常温輸送によるか、あるいは 15~17℃に設定したリーファーコンテナを用いた定温輸送により行 われている。我々は異なる温度条件で貯蔵したワインの品質変化を味センサ (MCTS) により解析し、 人間が認識する味の変化を客観的に把握できるか否かを検討し、合わせてドライコンテナに対するリ ーファーコンテナの優位性に関して客観的な評価を行った。 【材料及び方法】 1.赤ワイン:1)リーファーコンテナ(15℃)を用いて輸入されたチリ産ワイン Isla de Maipo, Cabernet Sauvignon 2000 (Agric. Lo Guerra 社製) 2)リーファーコンテナ(15℃)およびドライコン テナを用いて輸入されたフランス・ブルゴーニュ産 Pinot noir 2003 (Jean-Claude Boisset 社製) 2.白ワイ ン:リーファーコンテナ(15℃)を用いて輸入されたチリ産ワイン Isla de Maipo, Chardonnay 2003 (Agric. Lo Guerra 社製) およびマケドニア産ワイン Chardonnay 2001 (AD Vinarska Vizba Povavardarie 社製) 3. 貯蔵条件:空間を窒素置換した 250 mL 容ガラス容器17本に試料を分注後、15、25、30、40℃の 4 段 階の温度設定で 0、10、20、30 日間貯蔵した。4.味センサ (MCTS) による解析:7 種の味センサから - 149 - J. ASEV Jpn., Vol. 17, No.3 構成される㈱アンリツ製 SA-401 を用い、恒温水槽中で 20℃に保持した試料について測定を行った。 相対値は呈味物質の刺激の強弱を表わし、CPA 値 (Change of Membrane Potential caused by Adsorption) はセンサに装填される脂質膜への呈味物質の吸・脱着性の難易度を表すことから《後味》に相当する。 【結果および考察】 貯蔵温度を変動させても比重、アルコール分、pH、酸度、直糖、全フェノール量 に関しては、初発時 (0 日目) の数値と比較して大きな変化は見られなかったが、Color hue は貯蔵温度 の高いものほど経時的に数値が増大し褐変が進行したことを示した。色彩・色差値をみると 15℃貯蔵 では経時的な変化はみられなかったが、25℃、30℃、40℃では 30 日目において色彩値が著しく低下し、 赤ワインの場合は明度が下がり鮮やかな色彩が失われ、視覚的に品質劣化していることが裏付けられ た。貯蔵温度を異にしたときの白ワインの酒質の変化をみると、チリ産では官能的に酒質の変化が認 識されたがマケドニア産においては差が認められなかった。しかし、CPA 値による解析結果は貯蔵温 度を異にしたときの白ワインの酒質変化を MCTS により把握することが可能であることを示した。さ らに、実際にリーファーコンテナとドライコンテナにより輸入された同一ロットの赤ワインについて 酒質の差異を検討したところ、ドライコンテナにより輸入されたワインにおいては、高温によって生 じた苦味をリーファーコンテナによるものに比べて官能的に強く感知し、さらに CPA 値においても 2 種のコンテナ間に差を認めた。以上の結果、貯蔵・輸送条件の差異に基づく味の差は MCTS を導入す ることで客観的に把握出来ることを示した。 8 6 :Wine using Reefer Container 4 :Wine using Dry Container CPA Value (mV) 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 -12 1 2 3 4 Sensor No. 5 6 7 Fig. 1 CPA Value of Wines Transported by Different Conditions. - 150 -
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