未来をはぐくむ

未来をはぐくむ
地域と歩む子育て
【番外編】取材を終えて…記者の思い
第 24 回
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初版発行:2 0 1 1 年 8 月 1 2 日
NHK番組で子育て討論
「母親を孤立させるな!」
2011年 日掲載
月
た」「どうすれば楽しく育児ができるのか分からない…」
「気が付けば子どもといつも2人きり。お互いにイライラして
ばかり」「毎日のように朝から実家の母に泣きながら電話してい
したNHKディレクター、本紙記者の思いを紹介する。
育て事情について討論方式で考えた。番組の概要と、現場を取材
社会から孤立した「子育てママ」の〝悲鳴〟を踏まえ、県内の子
大分合同新聞社とNHK大分放送局による共同企画番組「しし
まるTV2月号~どうする?大分の子育て」(4日夜放映)。地域
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会からの疎外感を味わいなが
ら、育児ストレスと不安を一
人で抱え込んでいた。
番組では子どもがいる男性
社員が働きながら、上司や同
僚に気兼ねすることなく育児
ができる職場環境を整えた企
業を紹介。まずは、母親たち
の最も身近な存在である夫が
育児に携わる環境づくりを訴
えた。
豊後高田市の地域子育て支
援拠点「花っこルーム」での
活動や、住民が有償で子育て
を支え合うファミリーサポー
ト 制 度 も 紹 介。〝 ご 近 所 付 き
合い〟を通して住民同士が手
をつなぎ、地域ぐるみの子育
てを広げていく大切さを強調
した。
「 子 育 て は 一 人 で 頑 張 ら な
く て も い い ん で す よ 」。 花 っ
こルームの小川由美施設長は
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子どもに怒っては謝る―。毎日がその繰り返し。わが子は大好
きなのに、なぜか子育てがつらい。番組に出演した母親たちは社
共同企画番組「どう
す る? 大 分 の 子 育
て 」。 大 分 県 内 の 子
育 て 事 情 に つ い て、
討論方式で考えた
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「未来をはぐくむ ~ 地域と歩む子育て ~」 【番外編】取材を終えて p.
母親たちに語り掛けた。「『お互いさま』という意識を持ち、幅広
い世代が子育てに関わっていく社会が理想的なんです」
母親の一人は「家の中に閉じこもるうちに、いつの間にか自分
の心まで閉じてしまっていた」と言った。「外の世界に目を向け
れば、温かい目で子どもを見つめ、子育てを支えてくれる人がた
くさんいる。そう思うと、心が温かくなった」
大分合同新聞社の年間企画「未来をはぐくむ」(昨年4~ 月)
の取材に当たった百崎浩嗣記者が「子育てしやすい社会は大人同
士がつながり、みんなが暮らしやすい社会になる。子育てを通し
て地域社会の在り方を考えることが大切だ」と議論を締めくくっ
た。
2011年 日掲載
月
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愛するゆえに苦しむ母親
子どものために「頼って」
「夜泣きで1日の平均睡眠時間が3時間以下。いら
立って毎日夫婦げんか」「育児の悩みを誰にも打ち明
けられない」「大声で子どもが泣くと、近所から虐待
と思われそうで怖い」。大分合同新聞社との共同企画
人以上から取
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番組の編集作業に当たるNHK
大分放送局の木村友紀(手前)、
加藤圭介両ディレクター
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番 組「 し し ま る T V 2 月 号 ~ ど う す る? 大 分 の 子 育
て」。制作に当たり、子育て中の母親
材した。
浮き彫りになったの
は、 誰 に も「 助 け て 」
と言い出せない母親た
ちの窮状だ。愛するわ
が子の育児から解放さ
れたい、などと考えて
しまう自分は母親失格
なのではないか―。罪
悪感から悩みを口にす
ることすらできず、母
親たちは出口のない苦
しみを抱えている。
その苦しみが〝臨界
点〟を超えたとき、「虐
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「未来をはぐくむ ~ 地域と歩む子育て ~」 【番外編】取材を終えて p.
待」「離婚」「精神の病」につながる。心を解きほぐし、苦しみに
耳を傾けてくれる存在が必要だった。
そこで番組では、男性の育児参加や地域社会が子どもを育む在
り方などについて議論。母親、父親、企業、地域の子育て支援者
を交え、解決策を探った。
今回の取材で強く感じたのは、育児不安を抱えるお母さんが、
決して「育児の負担から逃れたい」とは思っていないということ
だ。
「子育て中は、孤独感から毎日泣いていた」と振り返る母親は、
こう続けた。「子育ては幸せでした。成長した息子は、私の心を
いつも支えてくれる。この幸福感は悪いけど、母親だけのもので
す」
)がス
わが子を愛するがゆえに苦しむ母親たち。育児不安は深い愛情
と表裏一体で、その解決策も一筋縄にはいかないのだろう。その
中で、豊後大野市で子育て支援に取り組む土谷修さん(
タジオで語った言葉が、最大のメッセージになったと感じている。
「子育ては自分だけでするものではない。どんな手段に頼ろう
とも、それが子どものためになればいい。頼って当たり前、とい
う子育ての世界だと思ってほしい」。一人で悩まず、自分から一
歩踏み出すきっかけになれば―。育児に悩む母親が一人でも多く
苦しみから抜け出せるよう祈っている。
月
2011年 日掲載
(NHK大分放送局ディレクター・木村友紀、加藤圭介)
着実に広がる支援の輪
地域のつながり強めよう
はぐくむ」の取材を通して、育児をめぐる親の悩みの深さを知り、
NHKとの共同企画番組であらためて現実の深刻さを実感した。
一方で、親子連れが気軽に立ち寄れる子育て支援広場や、家庭
に閉じこもりがちな母親の悩みに耳を傾ける家庭訪問活動―。現
場では、子育ての重責を担う母親たちへの支援の輪が、草の根レ
ベルで少しずつ、着実に広がっていた。
「一人で抱え込んでいた悩みを、誰かに聞いてもらうだけで楽
になった」。取材で知り合った、ある母親の言葉が印象的だった。
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地域から孤立し、子育ての悩みを一人で抱え込む母親。そして
仕事と育児の両立に悩む父親…。昨年展開した年間企画「未来を
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「未来をはぐくむ ~ 地域と歩む子育て ~」 【番外編】取材を終えて p.
番 組 の 中 で も、「 頼 っ
て当たり前」と話す家
庭訪問型の子育て支援
)=豊後大野市
をしている土谷修さ
ん(
=の言葉に共感を覚え
た。
共 働 き 家 庭 が 増 え、
父親の育児意識も少し
ずつ高まっている。父
親の育児講座「おおい
たパパクラブ」の取材
では、不慣れながら家
事や育児に取り組もう
とする〝イクメン〟の
卵たちの存在を知っ
た。これから家庭を持
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つ若い世代に一つの理
想像を示していた。
熊本市植木町の地域
サロン「ばあちゃんち」、佐伯市の「つるおか子ど
もの家」では、地域のあらゆる世代の笑顔があった。
昔ながらの遊びや手料理を、お年寄りが若い世代に
伝えながら、地域の絆をしっかりと深めていた。
とはいうものの―。地域の結び付きが薄れた現代
では、支援の手が行き届いていない家庭も数多くあ
るのも現実だった。子育ての知恵を若い世代が受け
継ぐことが難しくなった結果、もともと正解のない
子育てに画一的な答えを求めようと多くの親があえ
いでいた。
少子化、核家族化が進んだ今、育児家庭を支える
にはもっと地域の力が必要だ。地域のつながりを強
くする。そうして地域がつながれば、大人も子ども
も元気になる。
「未来をはぐくむ」。それは子どもたちだけのこと
ではない。大人の、地域の未来をつくることにもつ
ながる。
(報道部・百崎浩嗣、吉良政宣)
家族みんなで過ごすひとときが、一番幸せ。住民や職場の温かいまなざしが、地域の未来
をはぐくむことにもつながる=11日午後、大分市内の大型ショッピングセンタ
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「未来をはぐくむ ~ 地域と歩む子育て ~」 【番外編】取材を終えて p.
「未来をはぐくむ ~ 地域と歩む子育て ~」 【番外編】取材を終えて p.
■オオイタデジタルブックとは
読者からの指摘・追加情報を受けながら逐次、改訂して充実発
オオイタデジタルブックは、大分合同新聞社と学校法人別府
展を図っていきたいと願っています。情報があれば、ぜひ NAN-
大学が、大分の文化振興の一助となることを願って立ち上げた
NAN 事務局にお寄せください。
インターネット活用プロジェクト「NAN-NAN(なんなん)」の一
NAN-NAN では、この「未来をはぐくむ」以外にもデジタルブッ
環です。
ク等をホームページで公開しています。インターネットに接続
NAN-NAN では、大分の文化と歴史を伝承していくうえで重要
のうえ下のボタンをクリックすると、ホームページが立ち上が
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さまざまな文書や資料をデジタル化して公開します。そして、
ります。まずは、クリック!!!
大分合同新聞社
別 府 大 学
デジタル版「未来をはぐくむ~地域と歩む子育て~」 第 24 回
●デジタル版「未来をはぐくむ」について
編集 大分合同新聞社
初出掲載媒体 大分合同新聞(2010 年 4 月 20 日~ 2011 年 2 月 12 日)
「未来をはぐくむ」は、大分合同新聞社が 2010 年4月から
翌 2011 年 2 月まで、同紙夕刊に掲載した連載記事。今回、
《デジタル版》
2011 年8月 12 日初版発行
編集 大分合同新聞社
制作 別府大学メディア教育・研究センター 地域連携部/川村研究室
発行 NAN-NAN 事務局
(〒 870-8605 大分市府内町 3-9-15 大分合同新聞社 企画調査部内)
デジタルブックとして再構成し、公開する。登場人物の年齢
をはじめ文中の記述内容は、新聞連載時のもの。
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2011 年3月4日 ⓒ 大分合同新聞社
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NAN-NAN 事務局
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