新緑号・GMの破産から学ぶもの

GMの破産から学ぶもの
時代は新たな考えや価値観の変革を求めている
今年はまさに世界的経済波乱の年である。昨年後半に米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危
機による世界的経済不況の波は、新型インフルエンザの世界的蔓延、そして、米ビッグスリーのGM、クライス
ラーの経営破綻など、「100年に1度の経済危機」はドミノ倒し状態で襲来する。米国の時代の終焉かとも危惧
されているが、しかし、この事態は我々にとって「100年に1度の未曾有の体験」であるとともに「好機」でもあ
る。なぜなら、時代は新たな考えや価値観の変革を必要としているからである。
20世紀の大量生産、大量消費の良き経済繁栄の時代から、21世紀の地球環境の保護、環境技術の革新に
よる低炭素社会への転換、つまり21世紀型産業構造の転換を余儀なくされている。
先進国では”もの“離れが始まっており21世紀社会は主として”もの“から食・医療そしてITの頭脳・教育に産
業の構造転換が必要とされよう。
「経営に甘えと驕り」が命取りに
さて、米ゼネラル・モーターズ(GM)が米連邦破産法11条を申請し破綻した。GMが事実上国営化された。世
界一の巨大艦、GMの破綻はまさしく100年に1度、自動車という文明の”もの“の価値観の変革を問われた証
左である。
経営陣は永久にGMの繁栄が続くとの思いこみがあった。改善や改革を考えず、90年代には米国の好景気
を背景に、フルサイズのピックアップトラックやSUVで巨額の利益を上げたことが改革の必要性を失わせた。さ
らに、経営不振の一因となった多額の年金・医療費負担が重荷になった。こうした経営陣の驕りと怠慢が高い
ツケを払わせることになったようだ。
問題はその影響と、今後の業界の構図がどうなるかである。これは余りにも大きな問題であり、GMの経営者
となった米政府さえ行く末が不明だろう。一刻も早く再生し上場の機会を伺うが、ハイブリッド技術、小型車の
開発・生産技術で大きな遅れを取っているだけに大変な努力が必要だ。さらに忘れてならないのは消費者の
支援が得られるかだろう。
再建のカギは消費者の心の中にあるのである。
丸井今井の経営破綻、百貨店の業態変革に期待
◇道内に目を向けよう。このたび、創業130年を超す老舗百貨店、丸井今井が民事再生法の適用を申請し三
越伊勢丹ホールディングスが営業支援することになった。また、旭川店閉店や札幌西武デパートの閉店決定
など地域経済の悪化が目につく。
丸井今井はGMと同じく老舗の上に胡座をかいた経営者や社員の甘えと驕りが主因とされる。スペース貸し
業と揶揄される百貨店の経営姿勢とお客さまのニーズにマッチしない商品構成や売り場づくり、店員の接客態
度などが問題点として指摘されている。
今は百貨店という業態そのものが魅力を失っているのであり、価値観の変革を求められていることを理解す
べきである。消費者の購買行動はインターネットやコンビニなど、選択の幅が広がっている。
スピーディに丸井今井が変革し、新しい”丸井さん“に生まれ変わることを期待したい。
自動車販売、「販売の原点」に戻って経営改革を
◇自動車販売はどうあるべきか。ディーラーは、売れない時代に「販売の原点」に立ち返る重要さと経営の改
革を促進することが求められる。
自動車販売はお客さま相手のサービス、接客業である。クルマは日本経済繁栄のエースとして貢献してきた
のであるが、訪問販売が主体であったためか会社(又は店)と営業スタッフの販売スキル共有に乏しい面が見
られた。そこで、会社(又は店)と営業スタッフのコミニュケーションを充分にし、情報を共有することで社内の風
通しを良くすることが不可欠だ。接客業で一番大切なことは、商品知識以上に店員の接客の仕方と明るさ、店
内の雰囲気だろう。
あるディーラー首脳は社員にお客さまという覆面になっていくつかのディーラーショールームを回らせたそう
だ。その結果、入っても挨拶がない、社員はお客さまに無関心などの店が多かったという。これは接客術では
なく接客習慣と教育の問題であり人材活性化の問題でもある。
ディーラーも生き残りの時代だが、勝敗如何は「販売の基本に徹することの奥義を極める」という身近なとこ
ろにあるといえよう。