活動量計を用いた行動解析の可能性について 佐藤英雄1),飯野雄治1),古田洋1),○太田真琴1) 藤澤加悦1),小松愛実1),今順一 2),山本誠 2) (1)(公財)横浜市緑の協会横浜市立よこはま動物園 2) (株)日本動物高度医療センター) 活動量計は、3 軸加速度センサーにより身体活動において発生する加速度を測定するデバイスで、 定量的かつ客観的に行動・活動が評価できるため実験研究やフィールド研究において広く利用され ている。 今回、 我々は飼育下インドゾウの活動量を把握し健康管理の一助とすることを目的として、 活動量計を用いた行動調査を行った。2015 年 8 月 3 日から 17 日まで、よこはま動物園で飼育され ているインドゾウ 3 個体に犬猫など伴侶動物用に開発した活動量計を夜間装着するアンクレットに 装入し、ビデオ解析とともに活動量の計測を実施した。また、期間後半には♀1 個体の寝室を夜間 サブパドックと開放にし、活動量の変化の有無を調べた。 ビデオ解析と活動量データを比較した結果、横臥睡眠は明確な活動量の低下として検出でき、起 立睡眠と起立行動の差についても区別できた。採食行動とその他の歩行行動については特徴的な活 動量の変化は認められなかったものの、常同行動については顕著な活動量の増加として検出できる ことが明らかとなった。また、♂個体のマストによる行動増加が活動量の極端な増加として表れ、 夜間の休息がほとんど見られなかったことも活動量計で明確に検出できた。一方、♀個体の寝室を 夜間開放した結果、ビデオ解析では頻繁に寝室を出入りしていることが認められ、開放前後におい て常同行動の減少が見てとれたが、活動量計では総活動量の変化は特に認められなかった。しかし ながら、 活動量をグラフ化することにより、 それら常同行動の減少を視覚的に捉えることができた。 本結果から、活動量計を用いることで行動をある程度判別できることが明らかとなり、特に多頭 飼育の現場における行動解析の労力削減が期待できる。また、活動量の測定により行動を定量化す ることで、 健康管理やエンリッチメントの効果測定をより効率的に実施できる可能性が示唆された。
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