ロシアの食品スーパー 業界に変化の兆し

特
集
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
■ Research Report
ロシア・NISの消費市場と小売業
■ Research Report ■
ロシアの食品スーパー
業界に変化の兆し
ロシアNIS経済研究所 部長
坂口 泉
はじめに
1990年代半ばにロシアに出現したスーパー
チェーンは順調に市場でのプレゼンスを強化
と食品スーパー業界の現状を紹介する他、自動
販売機に代表される食品の新しい小売販売形
態の発展の可能性などについても言及したい。
してきたが、競争の激化に伴い各チェーンの利
益率は年々低下する傾向にある。また、販売高
1.商品小売市場の現状
に目を転じれば、全体的には伸びているものの、
既存店ベースでみるとマイナスという会社が
少なくない。このため業界内では一種の閉塞感
が漂いはじめている。
そのような状況の中、行政主導での「追い風」
(1)販売動向
非食品も含めた商品小売販売高の推移は表
1の通りとなっている。同表に示されている販
売高の数字は名目価格ベースのものなので、市
が吹き始めている。キオスクに代表される簡易
場規模の拡大テンポを正確に読み取ることは
店舗や小規模店舗でのアルコール飲料の販売
できないが、インフレ率等を考慮した実質価格
が2012年夏から禁止されたが、2013年からはビ
ベースの数字を見ても石油生産量の増加と油
ールとタバコの販売も禁止される見込みとな
価の上昇という追い風が吹き始めた2000~
っており、キオスクや小規模な個人商店の客が
2008年までは市場は順調に拡大しており、各年
スーパーチェーンに大量に流入する可能性が
の前年比の伸び率は9~16%に達していた。ま
高くなっているのである。また、キオスク淘汰
た、この間、非食品小売市場の伸び率がほぼ毎
の動きは、これまでロシアでは地味な存在であ
年、食品小売市場の伸び率を上回っていた。そ
った自動販売機のプレゼンスの急激な高まり
の結果、2000年~2008年秋までは、商品小売販
につながる可能性も秘めている。これまで、日
売高に占める食品の割合が減少し、非食品の割
本企業とロシアの食品スーパー業界もしくは
合が増える傾向が一貫して見られてていた。こ
食品小売業界との接点はそれほど強いもので
れは、可処分所得が増加し生活に余裕ができた
はなかったが、「追い風」を契機にそれらの業
関係で、自動車や家電に代表される高価な耐久
界における日本企業のビジネスチャンスが広
消費財を購入する人々が増加したためだと推
がる可能性も考えられる。
測される。
本稿では「追い風」と日本企業のビジネスチ
ャンスを意識しながら、ロシアの商品小売市場
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ところが、2008年秋のリーマンショック以降、
状況が大きく変化する。油価の低迷などの影響
1
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
表1 商品小売販売高の推移(名目価格ベース)
(単位 10億ルーブル)
2000
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
小売販売高
2,352
3,765
4,530
5,642
7,042
8,712
10,870
13,944
14,599
16,499
19,083
うち食品(%)
46.5
46.6
46.3
45.7
45.7
45.3
45.0
46.6
48.6
48.7
47.7
非食品(%)
53.5
53.4
(出所)ロシア連邦国家統計局。
53.7
54.3
54.3
54.7
55.0
53.4
51.4
51.3
52.3
で景気が停滞したことを受けロシアの消費者
堅企業傘下の店舗、③中小企業傘下の店舗、④
の心理が大きく変化し、耐久消費財を中心に商
市場(いちば)以外の個人店舗、⑤市場(いち
品の購入を控える傾向が顕著になりはじめた
ば)で活動する個人店舗の5つに分類し、それ
のである。その結果、実質価格ベースで見た
ぞれの市場シェアを発表しているが、最もシェ
2009年の商品小売市場の規模は前年比で4.9%
アが大きいのは①で、2012年1~9月期の数字
減少した。特に非食品の販売高は前年比8%減
は36.9%。以下、③が25.0%、④が24.1%、⑤
と大きく落ち込み、2007年には55%に達してい
が10.7%、②が3.3%となっている。
た小売販売高に占める非食品の割合が51.4%
にまで落ち込んだ。
ここ3~4年の店舗タイプ別の市場シェア
の変化を見ると、①のタイプに属する大手資本
2010年は景気が回復基調に転じたため実質
傘下のスーパーマーケットやハイパーマーケ
価格ベースの商品小売市場の規模は前年比で
ット等のプレゼンスが強まる傾向が顕著で、
4.4%増加したものの、消費者の高価な耐久消
2008年:30.9%、2009年:31.3%、2010年:32.6%、
費財の買い控え傾向は続き、小売販売高に占め
2011年:34.6%、2012年1~9月期:36.9%と
る非食品の割合は前年をさらに下回る51.3%
毎年確実に数字を伸ばしている。一方、衰退傾
にとどまった。しかし、2011年は自動車をはじ
向が顕著なのは⑤のタイプで、多くの都市で
めとする高価な耐久消費財の売れ行きが回復
次々と市場が姿を消しており、2008年には
する傾向が顕著になり、小売販売高に占める非
13.2%であったシェアが、2012年1~9月期に
食品の割合は52.3%まで回復した。この傾向は
は10.7%にまで落ち込んだ。ただ、これはあく
2012年に入ってからも続いており、1~9月期
まで全国の平均値であり、一部の地域では今で
の小売販売高に占める割合は2008年とほぼ同
も⑤のタイプの店舗のプレゼンスが高くなっ
じ水準の53.5%に達した。ただ、このような非
ている。その他、今後は、50㎡未満の小型店舗
食品の販売の伸びは、今後予測される不況に備
や簡易店舗での酒・タバコの販売禁止の影響を
え貯金を取り崩して自動車のような資産価値
受け、④のタイプの店舗のプレゼンスも急激に
のある耐久消費財を購入する人々に支えられ
低下する可能性があるとみられている。
たものであり、今後も長期的に続く保証はない
との見方も一部に存在する。
(3)地域別状況
2011年の地域別の小売販売高を見ると、最も
(2)店舗形態別販売動向
数字が大きい連邦構成主体はモスクワ市で、そ
ロシア連邦国家統計局は、所有形態の違いに
の小売販売高はロシア全体の17.4%に相当す
より小売店舗を、①大手資本傘下の店舗、②中
る3兆3,220億ルーブルであった。以下、モス
2
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
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クワ州:1兆1,861億ルーブル、サンクトペテ
る。たとえば、農業部門が非常に発達している
ルブルグ市:7,654億ルーブル、スヴェルドロ
南連邦管区の小売販売高に占める食品の割合
フスク州:7,846億ルーブル、クラスノダル地
は46.6%と、全国の平均値を大きく下回ってい
方:7,314億ルーブル、バシコルトスタン共和
る。
国:5,780億ルーブル、チュメニ州:5,507億ル
ーブル、ロストフ州:5,425億ルーブル、タタ
2.スーパーマーケットの種類
ルスタン共和国:5,349億ルーブル、サマラ州:
4,619億ルーブル、ニジェゴロド州:4,215億ル
(1)主要な店舗形態
ーブル、チェリャビンスク州:4,214億ルーブ
ロシアの調査会社「Step by Step」はスーパ
ルとなっている。一方、極東連邦管区の各構成
ーマーケットをその販売形態やコンセプトに
主体では数字が全般的に低く、同連邦管区全体
より、①ディスカウントショップ、②中規模ス
でも7,365億ルーブルにすぎなかった(これは
ーパーマーケット、③ハイパーマーケット、④
モスクワ市の4分の1以下の数字である)。
キャッシュ&キャリー、⑤住宅型店舗の5つに
住民1人当たりの小売販売高については
大別し、それぞれを以下のように定義している。
2010年のデータしか入手できなかったが、最も
ディスカウントショップとは安価な商品を
数字が大きいのはやはりモスクワ市で、25万
取り扱うセルフサービスの店舗で、売り場面積
425ルーブルとなっている。以下、サハリン州:
は300~800㎡、品目数は800~2,500となってい
18万1,275ルーブル、スヴェルドロフスク州:
る。このタイプの店舗は、町の中心から離れた
15万322ルーブル、チュメニ州:14万9,451ルー
住宅地や郊外に所在するのが普通となってい
ブル、モスクワ州:14万3,579ルーブル、サン
る。ディスカウントショップは、さらに、ハー
クトペテルブルグ市:14万1,272ルーブル、コ
ドとソフトに分類されることがある。ハードデ
ミ共和国:13万4,030ルーブル、サマラ州:13
ィスカウントとは、人件費や内装費等を極力抑
万1,640ルーブル、ムルマンスク州:12万8,865
えパレットや段ボールで商品の展示を行うよ
ルーブル、バシコルトスタン共和国:12万5,821
うな店舗のことで、ロシアのチェーンでいえば
ルーブル、クラスノダル地方:12万3,824ルー
マグニトの店舗の多くがこのタイプに相当す
ブル、タタルスタン共和国:12万36ルーブルと
る。ソフトディスカウントとは、品揃えや装飾
続いている。
の水準が通常のスーパーマーケットに近い店
地域別の食品と非食品の比率に関しては、特
舗のことで、ロシアではX5 Retail Group(以下、
に明確な法則性は見いだせなかった。購買力の
X5)傘下のピャチョーラチカがこのタイプに
高い連邦構成主体ほど食品の比率が小さくな
分類される。ディスカウントショップの人気は、
るのではないかと考えていたが、モスクワ市の
2008年秋の経済危機以降急激に高まっていた
小 売 販 売 高 に 占 め る 食 品 の 割 合 は 50.4 % と
が、最近になり、品数の少なさやサービスレベ
2010年の全国平均値の48.7%を上回っている。
ルの低さ、貧相な内装等を嫌う客が増加してお
一方、購買力が低くとも、イングーシ共和国の
り、2012年1~9月期にこのタイプの店舗を訪
ように食品の比率が30%と非常に低い例もあ
れた客の数は前年同期比で2%減少した(『コ
る。購買力がそれ程高くなくとも、農業部門が
メルサント』紙、2012.10.30)。この傾向は特に
発達し自給自足の傾向が強くなっている地域
都市部で顕著となっており、都市部に多くの店
は全般的に食品の比率が低いとの印象を受け
舗を抱えるピャチョーラチカなどは、客を呼び
ロシアNIS調査月報2013年2月号
3
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
戻すために、①生鮮食品の割合を増やす、②照
住宅型店舗とは、共同住宅の1階部分、もし
明システムの改善、③冷蔵設備の改善といった
くは、共同住宅に隣接するエリアで営業してい
措置を講じ始めている。
る中・小型店舗のことを指す。中小企業や個人
中規模スーパーマーケットとは中もしくは
事業主が運営しているケースが多いというの
それ以上の価格帯の食品や生活用品を中心に
が、このタイプの店舗の特徴だが、中規模スー
取り扱う店舗で、売り場面積は500~3,000㎡、
パーマーケットやディスカウントショップと
品目数は2,500~3,500以上となっている。X5傘
の区別は必ずしも明確ではなく、統計上は中規
下のペレクリョーストクなどが、このタイプの
模スーパーマーケットやディスカウントショ
店舗を積極的に展開している。商品の価格は全
ップの範疇に含まれることが多くなっている。
般的にやや高めであるが、それなりの高級感が
あるので、都市部では最近になり来客数が全般
(2)その他の店舗形態
的に増加する傾向がみられている(増加分の大
上記の5つの形態に分類しきれないスーパ
半が、これまで主としてディスカウントショッ
ーチェーン傘下の店舗としては、以下を挙げる
プを利用していた客により占められていると
ことができる。
いわれている)。
ハイパーマーケットとは売り場面積3,000~
ロシア版コンビニ 理由は定かではないが、ロ
4,000㎡を超える店舗で、食品の他に多様な生
シアの流通業界では、食事ができるスペース
活用品を取り扱っており、品目数は2万5,000
(イートインコーナー)を設置した小型スーパ
~5万に達する。商品の価格帯は運営する会社
ーのことをコンビニと称することが多くなっ
により異なってくるが、ロシアでは、低価格を
ている。恐らく、ロシアの業界関係者が視察し
武器にする店舗が成功をおさめるケースが多
た外国のコンビニにイートインコーナーがあ
い。チェーンによっては、大量買い付けと商品
ったので、そのような定義が定着したのではな
の回転率のよさを武器に、ディスカウントショ
いかと推測される。
ップよりも低い価格で、しかも良質な商品の提
ロシアでは複数の企業がこのタイプの店舗
供に成功している。ロシアでこのタイプの店舗
を展開しているが、最も日本人が抱くコンビニ
を積極的に展開している会社としては、アシャ
のイメージに近いのは「食糧品市場」という会
ン、X5傘下のカルセーリ、オーケイ等を挙げ
社がサンクトペテルブルグ市の中心街で運営
ることができる。このタイプの店舗を利用する
している「EDA!」だといわれている。この店
客の場合、1週間分の食料をまとめ買いするケ
舗は日本のコンビニをお手本にしてつくられ
ースが多く、客単価は全般的に高めである。
たといわれており、店のサイズや品揃えはわれ
キャッシュ&キャリーとは、中小の小売業者
われが知るコンビニとほぼ同じである。ただ、
やレストラン等を対象とする卸売販売に主眼
店舗が中心街のテナント料の高い場所に位置
を置いた店舗であるが、許可証を保有する一般
していることもあり、商品の価格は普通のスー
消費者への小売りも行っている。売り場面積は
パーよりも高めに設定されているようである。
7,000㎡以上、品目数は約1万となっている。
また、店内を紹介する写真を見る限りでは、調
卸売りがメインなので、商品の価格は全般的に
理した商品を売るカウンターはあるものの、イ
安くなっている。メトロ、リニヤ等がこのタイ
ートインコーナーは設置されていないようだ。
プの店舗を展開している。
4
その他、X5、メトロ、リドマルケト等が現
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
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在ロシアでコンビニを展開している。X5はペ
ウントショップやハイパーマーケットでは、夜
レクリョーストク・エクスプレスという名称の
の10時もしくは11時までの営業が普通となっ
店舗を、都市部を中心にフランチャイズ方式で
ている。
展開するというプロジェクトに取り組んでい
ただ、モスクワ以外の地域では24時間営業を
る。メトロはファソリという店舗の展開を計画
行っているハイパーマーケットも珍しくなく、
しており、2012年6月に最初の2店舗(直営店)
たとえば北西連邦管区で営業しているレンタ
をサンクトペテルブルグにオープンさせてい
というハイパーマーケット・チェーンは年中無
る。さらに、9月にはロストフナドヌーで5店
休、24時間営業を原則にしている。
舗(いずれもフランチャイズ店)をオープンさ
せている。リドマルケトは、 2012年8月にモ
ドラッグストア
日本でドラッグストアといえ
スクワとペンザにアリョクマというコンビニ
ば、一般用医薬品(市販薬)を中心に、化粧品、
をオープンさせたが、現在、ノヴォシビルスク
衛生用品、生活化学品、生鮮食品以外の食品を
への進出を検討している。
販売するセルフサービスの店舗のことである
列挙したプロジェクトはいずれもまだ試験
が、ロシアでは、本来の意味から外れ、安価な
段階にあり、ロシアにおけるコンビニの将来性
化粧品と生活化学品を中心とした日用品を取
に言及するのは早計かもしれない。物流インフ
り扱う売り場面積100~300㎡の店舗を指すこ
ラが未整備なロシアでコンビニが広範に普及
とが多い。ロシアでは2005年ごろからドラッグ
する可能性は低い、との見方が業界内では優勢
ストアが定着し始めており、現時点での業界最
となっている(実際、上記のプロジェクトはい
大手は、クラスノダル地方を拠点とするサン
ずれも苦戦を強いられている)。
ギ・スチリという会社で、ロシア南部を中心に
なお、2012年2月にセブンイレブンがロシア
16地域で700店舗以上を展開している。その他、
に進出するのではないかという情報をロシア
大手チェーンとしては、ルーブリ・ブーム、ユ
の一部のマスコミが流したが、これは同社がセ
ジヌィ・ドヴォル、ウルィブカ・ラドゥギ、オ
ブインイレブンという商標をロシアで登録し
ルグド、ポドルジカ等を挙げることができる。
たことを根拠とする単なる憶測である可能性
最近になり、ロシアの大手スーパーチェーン
が高く、筆者の知る限りでは、セブンイレブン
のマグニトがこの店舗形態に関心を示し始め
がロシア進出を具体的に検討していることを
ており、2010年末に「マグニト・コスメチカ」
裏付ける確かな情報は今のところ存在しない。
というドラッグストア第1号店をノヴォロシ
ースクにオープンさせている。その後、店舗数
24時間営業の店
日本で24時間営業の店と
は急激に増加しており、2012年9月時点では
いえば、真っ先にコンビニのことを思い浮かべ
440に達していた(同年末までに約600に達する
るが、ロシアでは若干状況が異なっており、中
見込みである)。
規模スーパーマーケットで24時間営業が導入
されているケースが目立つ。たとえば、中規模
(3)商品の価格帯による分類
スーパーマーケットを中心に展開しているア
ロシアのスーパーマーケットは、取り扱う商
ズブカ・フクーサやセジモイ・コンチネントで
品の価格帯により低価格帯の店舗、中価格帯の
は、24時間営業の店の割合が非常に大きくなっ
店舗、高級店の3つのタイプに大別することが
ている。一方、少なくともモスクワのディスカ
可能で、各タイプ間の商品価格差や地域間格差
ロシアNIS調査月報2013年2月号
5
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
が大きくなっている。
れば、最も価格水準が低かったのはアシャンの
『直接投資』という雑誌が一定の食糧バスケ
エカテリンブルグ店で、食糧バスケットの総額
ット(マーガリン200g、ひまわり油1ℓ、乳脂
は1,181ルーブルであった。その他、当該の数
肪分3.2%の牛乳1ℓ、ソーセージ1㎏、牛肉1
字が1,300ルーブルを切ったスーパーマーケッ
㎏、じゃがいも1㎏、ウォッカ0.5ℓ、ビール0.5
トとしては、カザンのエデリヴェイス、クルス
ℓ、インスタントコーヒー100g、サラミ1㎏、
クのリニヤ、クラスノダルのマグニト、ヴォル
オレンジジュース1ℓ、ミネラルウォーター1ℓ、
ゴグラードのピャチョーラチカ、サラトフおよ
ビスケット126~130g、レモン1㎏)を対象と
びヴォルゴグラードのRealを挙げることがで
して、2012年7月に行った価格比較調査によれ
きる。一方、調査対象となった地方のスーパー
ば、モスクワのスーパーマーケットの中で列挙
マーケットの中で価格水準が最も高かったの
した食品の価格の合計値が最も低かったのは
はハバロフスクのトリー・トルスチャカで
ハイパーマーケットを中心に展開するアシャ
2,386ルーブルであった。その他、当該の数字
ンで1,145.6ルーブルだったとされている。次に
が1,800ルーブルを超えた地方スーパーとして
値が低かったのは、やはりハイパーマーケット
は、ロストフナドヌーのペレクリョーストク
のカルセーリとオーケイで、順に1,301.7ルーブ
(2,321ルーブル)
、エカテリンブルグのズヴョ
ルと1,390.9ルーブルとなっている。その他、価
ズドヌィ(2,079ルーブル)
、ハバロフスクのサ
格水準の低いスーパーとしては、ディクシー:
ムベリ(1,941ルーブル)、サンクトペテルブル
1,406.3ルーブル、セジモイ・コンチネント:
グのペレクリョーストク(1,930ルーブル)、ロ
1,416.7ルーブル、ペレクリョーストク:1,423.2
ストフナドヌーのTikhij Dom(1,912ルーブル)
ルーブル、クヴァルタル:1,435.5ルーブル、マ
を挙げることができる。
グニト:1,439.9ルーブル、メトロ:1,465.3ルー
ブル等を挙げることができる。
3.食品スーパー業界の状況
逆に当該の数値が最も高かったのはグロブ
ス・グルメで、アシャンの3倍強の3,711.5ルー
(1)業界の小史
ブルとなっている。その他、価格水準の高い高
ソ連時代には、われわれ日本人がイメージす
級スーパーとしては、アズブカ・フクーサ:
るようなスーパーマーケットは存在しなかっ
2,376.3ルーブル、アルィエ・パルサ:1,942.2
た。ウニヴェルサムというソ連型スーパーマー
ルーブル等の名を挙げることができる。ただ、
ケットは存在したが、西側のスーパーマーケッ
列挙した3社とも最近になり、以前は取り扱わ
トとの共通店はセルフサービス1)という点だ
なかった比較的価格の安い商品も取り扱うよ
けで、陳列台にはほとんど商品がないのが常で
うになっており、調査対象となった食品の価格
あった。外貨専門店の中には、西側のスーパー
の合計値は1年前よりも約10%少なくなって
マーケットに近い形態の店舗もあったが、一般
いる。その他、中間の価格水準(1,500~1,700
のロシア人が自由に買い物をすることは不可
ルーブル)のスーパーとしては、スパー、Billa、
能であった。
アヴォシカ、オストロフ、クレストフスキー等
の名を挙げることができる。
外貨を保有していなくとも出入りできる近
代的で品数豊富な(中規模)スーパーマーケッ
『直接投資』誌は地方のスーパーマーケット
トがロシアに登場したのは、1990年半ばのこと
に関しても同様の調査を行っており、それによ
である。当時のスーパーマーケットは中層階級
6
ロシアNIS調査月報2013年2月号
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ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
以上を対象とする高級店ばかりであったが、物
本のマグニトで、2011年には3,357億ルーブル
珍しさもあってどの店も大繁盛していた。当時、
の売上高を記録した。売上高こそX5の後塵を
特に人気の高かったスーパーチェーンは、セジ
拝しているが、2011年末時点での店舗数5,309、
モイ・コンチネントやペレクリョーストク(い
売り場総面積197万㎡という数字はいずれもロ
ずれもロシア資本)等である。
シア第1位となっている。同社の場合、地方を
その後、チェーンを展開する会社の数が増え
中心に店舗展開しているため出店コストは安
競争が激化し、スーパーマーケットの大衆化プ
いものの、売り場面積1㎡当たりの売上高は大
ロセスが始まる。その流れの中、1990年代の末
手の中では最も低い部類に属するといわれて
にコペイカやピャチョーラチカといったディ
いる。
スカウントショップが登場し、人気を博すよう
第3位はハイパーマーケット「アシャン」、
になった。また、ほぼ同じころに価格の安さと
ラドゥガ等の店舗を展開するフランスのアシ
品数の豊富さで勝負するハイパーマーケット
ャン・グループで、2011年には2,051億ルーブ
もロシアに登場した。さらに、2001年にはドイ
ルの売上を記録した。ちなみに、同社は、売り
ツのメトロが本格的なキャッシュ&キャリ
場面積1㎡当たりの売上高がロシアで活動す
ー・タイプの店舗の1号店をロシアにオープン
るハイパーマーケットの中で最も大きいとい
させた(1990年代に、地方にキャッシュ&キャ
われている。
リーと称するロシア資本の店舗が出現してい
4位以下の顔ぶれを紹介すると、4位:ドイ
たが、その実態はハイパーマーケットに近いも
ツのメトロ・グループ傘下のメトロ・キャッシ
のであった)
。
ュ&キャリー(2011年の売上高は1,400億ルー
その後、近代的なスーパーマーケット、ハイ
ブル)、5位:社名と同じディスカウント店と
パーマーケット、ディスカウントショップ等の
メガマートというハイパーマーケットを展開
数は都市部を中心に急増しており、調査会社
するディクシー・グループ(1,020億ルーブル)
、
「ニールセン」のデータによれば、都市部にお
6位:サンクトペテルブルグを中心に社名と同
ける当該の店舗の総数は2011年時点で2万
じハイパーマーケットと中規模スーパーマー
5,000~2万6,000にまで増加し、食品の小売販
ケットを展開するオーケイグループ(931億ル
売高に占めるそれらの店舗のシェアは約60%
ーブル)、7位:社名と同じハイパーマーケッ
に達しているという(
『エクスペルト・ウラル』
トを展開するレンタ社(911億ルーブル)、8
誌、2012.5.28)。
位:社名と同じ中規模スーパーマーケットとナ
ーシというハイパーマーケットを展開するセ
(2)現在の勢力地図
ジモイ・コンチネント社(530億ルーブル)
、9
ロシア最大の売上規模を誇るスーパーチェ
位:マネトカ、マネトカ・スペル、ライトとい
ーンは、ピャチョーラチカ、ペレクリョースト
うディスカントショップおよびスーパーマー
ク、カルセーリ等の名称の店舗を展開するロシ
ケットを展開するエレメント・トレード社(319
ア資本のX5で、2011年には4,525億ルーブルの
億ルーブル)、10位:シベリアを中心にスーパ
売上高を記録した(付加価値税を含まない数
ーマーケットを展開する「ホリデイ・クラシッ
字)。
ク」(310億ルーブル)
、11位:やはりシベリア
第2位は、社名と同じ名前のディスカウント
を中心に店舗を展開するマリヤ・ラ(309億ル
店やハイパーマーケットを展開するロシア資
ーブル)、12位:ドイツのメトロ・グループ傘
ロシアNIS調査月報2013年2月号
7
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
下のハイパーマーケット「Real」
(295億ルーブ
ル、ペレクリョーストク・エクスプレスおよび
ル)、13位:グロブスというスーパーを展開す
コペイカ)の総数は3,472で、そのうちの約700
るドイツ資本のギペルグロブス(269億ルーブ
店舗がフランチャイズ店となっていた(フラン
ル)、14位:リニヤというハイパーマーケット
チャイズ店の9割以上がピャチョーラチカと
を展開するグリン(256億ルーブル)
、15位:ア
なっている)。ブランド別の店舗数は、ピャチ
シャン・グループ傘下のスーパーマーケット
ョーラチカ(ディスカンウトショップ)
:2,936、
「Atak」(217億ルーブル)となっている。
ペレクリョーストク(スーパーマーケット):
350、カルセーリ(ハイパーマーケット):76、
(3)ロシアの主要なスーパーチェーン
ペレクリョーストク・エクスプレスおよびコペ
イカ(コンビニ):110となっている。
X5 2006年にアルファ・グループ傘下のス
既述の通り、同社はロシアで最大の売上規模
ーパーマーケット・チェーン「ペレクリョース
を誇る流通グループだが、2~3年前から数字
トク」と、アンドレイ・ロガチョフをはじめと
が伸び悩む傾向が顕著となっている。様々な措
する複数の株主が保有するディスカウントチ
置が講じられてはいるものの状況改善の兆し
ェーンのピャチョーラチカが合併し誕生した
は見受けられず、2012年1~9月期の売上高の
ロシア最大の流通グループ。主要株主はアルフ
伸び幅もインフレ率を若干上回るだけの前年
ァ・グループで、株式の47.86%を保有してい
同期比8.2%の水準にとどまった。しかも、既
る。2012年秋時点では、ロガチョフをはじめと
存店(開店から1年以上経過している店舗)の
するピャチョーラチカの創業者たちが株式の
売上高は前年同期比1.9%減となった。特に調
19.85%、X5の経営陣が0.13%をそれぞれ保有
子が悪かったのはカルセーリというブランド
していた。32%強の株式が現在、証券市場で流
で展開しているハイパーマーケットで、2012
通している。
年1~9月期の売上高は前年同期比9%減の
同社は企業買収に積極的なことで有名で、
443億ルーブルにとどまった。カルセーリでは
2008年にはハイパーマーケット・チェーン「カ
来客数も客単価も減少傾向にあり、2012年1~
ルセル」とスーパーマーケット・チェーン「パ
9月期の数字は前年同期比で順に7.9%減と
テルソン」を買収している。さらに、2010年末
4.2%減となっている。X5は年初にグループ全
にはコペイカを17億ドルで買収。コペイカはモ
体の売上高を前年比で15~20%伸ばすことを
スクワを中心にディスカウントショップを展
目標として掲げていたが、実際の数値は7~
開していた会社で、買収された時点で約600店
9%にとどまる公算が高い。
舗(うち、84店舗はフランチャイズ店)を傘下
におさめていた。
X5では社長のグセフが業績不振の責任をと
って任期途中で辞任したり、ハイパーマーケッ
その他、シベリアへの進出を目指すX5は、
ト部門の最高責任者が引責辞任するなど内部
株式を交換するという形で、シベリアを拠点と
での混乱が生じており、業績改善に向けた明確
する流通会社「ホリデイ・クラシック」(134
な戦略は今のところ打ち出せていない。
店舗を展開)を買収する計画を2009年4月に発
表したが、結局、取引は成立しなかった。
マグニト
クラスノダル地方を拠点とするチ
2012年秋時点でX5が運営している店舗(ペ
ェーン。創業者のガリツキー、および、その他
レクリョーストク、ピャチョーラチカ、カルセ
の2人の幹部が合計で5割強の株式を保有し
8
ロシアNIS調査月報2013年2月号
■ Research Report
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
ている。残りの株式は証券市場で流通している。 材管理が比較的よくできている、②売上高に占
同社は、南連邦管区、北カフカス連邦管区、中
めるPB(プライベートブランド)の割合がロ
央連邦管区、沿ヴォルガ連邦管区、北西連邦管
シアのスーパーチェーンの中で最も高い、③ロ
区、ウラル連邦管区、シベリア連邦管区(2012
ジスティック部門も比較的充実しており、保有
年夏時点ではオムスクにしか店舗が存在しな
する商用車の台数が2011年末時点で約4,000台
かったが、同年末までにノヴォシビルスクとク
と、ロシアのスーパーチェーンの中で最も多い
ラスノヤルスクに第1号店がオープンした)で
(ちなみに、同時点でのX5の商用車の保有台
店舗を展開しており、2012年9月時点の店舗総
数は1,300であった)等を挙げることができる。
数は約6,000となっている。内訳は、住宅隣接
型のディスカウントショップが約5,400、郊外
ディクシー・グループ
ロシア有数の大富豪で
型のハイパーマーケットが105、マグニト・セ
あるケサエフという人物が率いるメルクリ
メイヌィと呼ばれている売り場面積が1,500~
イ・グループ傘下の流通会社。中央連邦管区、
2,000㎡のハイパーマーケット様式の店舗が10、
北西連邦管区、ウラル連邦管区およびカリーニ
ドラッグストアが440となっていた。
ングラード州において、ディクシーというディ
マグニトの最大の特徴は、大都市よりもライ
スカウントショップ、メガマートというハイパ
バルの少ない中小の都市への出店を優先する
ーマーケット、ミニマートというスーパーマー
ことにあり、全店舗のうち約3分の2が人口5
ケット、および、ヴィクトリヤというスーパー
万人未満の都市に存在する。一方、大都市部で
マーケットを合計で約1,200店舗展開している。
のプレゼンスは低くなっており、モスクワ市に
同社の主力はディクシーであるが(総店舗数の
はマグニトの店は約20しか存在しない(2011
95%以上がディクシーとなっている)、ライバ
年秋時点の数字)。また、サンクトペテルブル
ルであるマグニトやピャチョーラチカに押さ
グ市にも数店舗しか存在しない(ただし、レニ
れ気味で、現在、品揃えを豊富にするなどして
ングラード州とモスクワ州にはそれぞれ約100
ディスカウントショップから通常の住宅型店
店舗存在する)。また、同社の場合、小規模な
舗への変身を試みている。2011年6月に住宅型
ディスカウントショップを主として展開して
店舗を多数保有していたヴィクトリヤを吸収
いる関係で、出店のスピードが速いというのも
合併したのも、その戦略に則った動きであった
特徴のひとつである。2012年年初~10月までの
と推測される。この戦略は顕著な効果を生んで
間に972もの店舗を新規にオープンさせている。
おり、2011年には2008年から続いていた赤字か
また、その間に傘下の店舗の総売り場面積も前
ら脱却することに成功している。
年同期比で約30%拡大した。積極的な店舗展開
のおかげでマグニトの2012年1~9月期の売
オーケイ
2001年に設立されたサンクトペテ
上高の伸びは前年同期比で33%と上記のX5の
ルブルグを拠点とする会社で、北西連邦管区を
数字を大きく上回っており、2013年にはX5を
中心に社名と同じハイパーマーケットとオー
抜きマグニトが売上高の点でもロシア最大の
ケイエクスプレスという名称の中・小型スーパ
スーパーチェーンになるのは確実とみられて
ーマーケットを、2012年夏時点で合計75店舗展
いる。
開していた。ハイパーマーケットでの取扱品目
その他、マグニトの特徴としては、①他のチ
ェーンと比較して派遣社員の比率が少なく、人
ロシアNIS調査月報2013年2月号
数は3万4,000以上、オーケイエクスプレスの
それは9,000品目以上となっている。
9
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
同社は2005年頃から、北西連邦管区以外のエ
していた)を売却することを検討し始めた。そ
リア(中央連邦管区、南連邦管区、ウラル連邦
の後、紆余曲折を経て売却プロセスは2011年9
管区、シベリア連邦管区等)への進出を開始し
月にようやく完了し、現時点では、外国貿易銀
ており、ロストフナドヌー、トリヤッチ、クラ
行傘下のTPGキャピタルがレンタの株式の
スノダルに進出した後、2009年にはモスクワに
57.24%を保有している。その他、同じ外国貿
第1号店(ハイパーマーケット)をオープンさ
易銀行傘下のVTBキャピタルが7.76%、EBRD
せている。その他、一時同社はウクライナにも
が約20%を保有している(残りは少数株主が保
進出したことがあるが、売上が伸び悩み、2009
有)。TPGキャピタルもVTBカピタルも投資フ
年に撤退している。
ァンドなので、レンタ株を長期的に保有する意
同社の主要株主は、創業者であるドミトリ
向はなく、2~3年でレンタの事業規模を2倍
ー・コルジェフ、ドミトリー・トロイツキー、
にして時価総額を上昇させた後に、株式を転売
ボリス・ヴォルチェクの3名で、持ち株比率は
することを計画している(『ヴェードモスチ』
順に28%、28%、22.2%となっている。当該3
紙、2011.9.26)。
名のうちコルジェフとトロイツキーはジュー
ス工場「Multon」の創設者としても有名である
セジモイ・コンチネント
ロシアにおける近代
が(1995年に設立)、両者は2005年に同工場の
的スーパーマーケット・チェーンの先駆者的存
株式の100%をコカコーラに5億ドルで売却し
在で、1990年代半ばにモスクワに第1号店をオ
た。
ープンさせている。当初は高級スーパーだけを
展開していたが、1998年の経済危機後はより大
レンタ
同社はキャッシュ&キャリー・タイ
プのハイパーマーケットを49店舗展開してい
衆的なスーパーを中心とする会社へと変身し
た。
る。既述の通り、同社の店舗は年中無休、24
同社は現在、住宅型スーパー(セジモイ・コ
時間営業を原則としている。拠点はサンクトペ
ンチネント)、比較的価格の高い商品を中心に
テルブルグ市で、同市では15店舗が営業してい
取り扱うスーパー(セジモイ・コンチネント5
る。また、ノヴォシビルスクで5店舗、オムス
zvezd)、ハイパーマーケット(ナーシ)等を展
クで3店舗、クラスノダル、ニジニノヴゴロド、
開しているが、2012年夏時点の店舗総数は157
バルナウルで各2店舗が営業している。さらに、
(内訳は住宅型スーパーが81、スーパーが57、
ヴォルゴグラード、アストラハン、チュメニ、
ハイパーマーケットが19)となっていた。拠点
トリヤッチなどにも店舗が存在する。2012年春
はモスクワ市で、130店舗以上が同市に集中し
に同社はモスクワ市郊外に物流センターを建
ている。その他、ベルゴロド、ゼレノグラド、
設する計画を発表したが、今のところ同市への
ニジニノヴゴロド、リャザン、ヤロスラヴリ等
出店の意向は表明していない。
にも店舗が存在する。
同社は1993年にオレグ・ジェレブツォフとオ
同社は、2011年に倒産したモスマルトの5つ
ーガスト・メイヤー(米国人)の2人により設
のハイパーマーケットを買収するなどして積
立されたが、2007年ごろから経営方針をめぐる
極的に事業拡大に取り組んでいるが、借入金の
対立が激化し始めた。当該の状況に嫌気がさし
総額2)が年間の売上高に匹敵する水準にまで
た両者は2008年春ごろから、保有するレンタの
達しており、非常に厳しい経営を強いられてい
株式(2人はレンタの株式を合計で71.4%保有
る。その影響もあって、商品ならびに従業員の
10
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
■ Research Report
管理が甘くなっており、「賞味期限切れの商品
同社の親会社はレンドというノヴォシビル
を販売している」
、
「従業員の態度が悪い」、
「欠
スクの投資会社とヴェクセリベルグの
品が多い」といった苦情がロシアの食品スーパ
RENOVA傘下のRussian Retail Growth Fundとい
ーの中でも特に多くなっている。たとえば、
う投資会社で、一時、ホリデイ・クラシックを
2012年1~10月に連邦消費者保護・福利監督局
X5グループに売却することを検討していたが、
に寄せられたロシアの食品スーパーに関する
既述の通り、2012年夏に両者の交渉は最終的に
1,119件の苦情のうちの4分の1強の285件が、
決裂した。ただ、現在も売却の検討は続けられ
セジモイ・コンチネントに対するものだったと
ており、一部には、シベリアでのプレゼンスの
いわれている。これは食品スーパーの中で最多
強化を目指すマグニトがホリデイ・クラシック
の数字であった
3)
(『 RBC デ イ リ ー 』 紙 、
に関心を示しているとの情報も存在する。
2012.12.10)。
マリヤ・ラ 1993年にアレクサンドル・ラクシ
2001年に設立されたエカ
ンという実業家により設立された会社。上記の
テリンブルグを拠点とする会社で、マネトカと
ホリデイ・クラシック同様にシベリアを拠点と
いうディスカウントショップ(その大半が2012
しており、本社はアルタイ地方のバルナウルに
年春から24時間営業に移行している)、マネト
所在する。店舗は、アルタイ地方の他に、ノヴ
カ・スペルというスーパーマーケット、および、
ォシビルスク州、ケメロヴォ州、トムスク州、
ライトというハイパーマーケットを展開して
アルタイ共和国に所在する。
エレメント・トレード
いる。2012年秋時点での店舗数は416で、内訳
同社はロシアで最も成長のテンポが速いス
はマネトカが391、マネトカ・スペルが22、ラ
ーパーチェーンのひとつとして知られており、
イトが3となっている。マネトカはスヴェルド
2011年には前年比で35%も店舗数を増やすこ
ロフスク州の他に、チェリャビンスク州、チュ
とに成功した。2012年に入ってからもその勢い
メニ州、クルガン州、ケメロヴォ州、ノヴォシ
は続いており、年初時点で371であった店舗数
ビルスク州、バシコルトスタン共和国、モスク
が12月中旬時点で487にまで達していた。
ワ市、モスクワ州、カルーガ州等に所在する。
ライトは、ニジニタギル、チュメニ、ニャガン
で営業を行っている。
アズブカ・フクーサ
1997年より店舗の展開を
開始したロシアで最も有名な高級スーパーチ
ェーンのひとつ。2012年秋時点での店舗数は約
ホリデイ・クラシック
1994年に設立されコラ
50であるが、展開エリアは今のところ、モスク
という会社と2000年に設立されたホリデイと
ワ市、モスクワ州、サンクトペテルブルグ市の
いう会社が合併し2007年に誕生した会社で、ホ
3か所に限定されている。同社は、事業発展の
リデイ・クラシック、ホリデイ、シビリアダ、
ためには展開エリアを広げることが必要との
コラ、パラタ、トゥルネ、ホリデイ・プリュス、
認識を有しており、現在、フランチャイズ方式
チェルヴォネツといった名称の店舗を展開し
での地方進出を検討しているが、基準に合致し
ている。同社の拠点はシベリアで、アルタイ地
たフランチャイジーが見つかれば、2013年中に
方、ケメロヴォ州、ノヴォシビルスク州、オム
も地方第1号店が開店する見込みとなってい
スク州、トムスク州において合計で238店舗を
る。地方第1号店の候補地としては、ペルミ、
展開している(2012年7月1日時点の数字)。
チェリャビンスク、エカテリンブルグ等の名前
ロシアNIS調査月報2013年2月号
11
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
が浮上している。
いる。同社はかつてフランチャイズ方式でウフ
トルィキン、ヴェレシャギン、コシチェエン
ァに店舗をオープンさせたことがあるが、フラ
コ、ルィトキンの4名が同チェーンの設立者で
ンチャイジーとの間に見解の相違が生じ1年
主要な株主であったが、現時点では、コシチェ
足らずで撤退した過去があるからだ。
エンコ、ルィトキン、および、エクスポバンク
なお、ロシアではレベルの高いフランチャイ
の元オーナーたちが主要な株主となっている。
ジーを見つけることが全般的に困難といわれ
トルィキンとヴェレシャギンの2名は保有し
ており、今のところ、フランチャイズ展開して
ていたアズブカ・フクーサの株式をすべて手放
いる会社はX5やヴェステル等、少数しか存在
し、現在、オリヴィエという低価格商品を取り
しない。高級スーパーの場合は、普通のスーパ
扱う食品スーパーを展開する事業に取り組ん
ーよりもさらにフランチャイジーの管理が困
でいる。
難となるので、上記のアズブカ・フクーサのフ
既述の通り、同社は最近になり安い商品も取
り扱うようになっているが、それでも他の通常
ランチャイズ方式での地方進出計画の妥当性
を疑問視する声は少なくない。
のスーパーと比較すると商品の価格ならびに
客単価が非常に高くなっている。その関係で、
レンド
1993年に設立された会社で、店舗の
売り場面積1㎡当たりの売上高の数字が、ロシ
設計・建設、店舗用設備の販売、食品の輸入を
アの主要なスーパーチェーンの中で最も大き
本業としている。1998年からサンクトペテルブ
いといわれている(rbc.ru、2011.11.29)
。ただ、
ルグ市において社名と同じ高級スーパーを展
従業員1人当たりの売上高は小さく、最も数字
開しており、現在、7店舗を運営している。2011
が大きいアシャンの3分の1以下だといわれ
年の売上高は25億ルーブルで、そのうちの10%
ている。これは、サービス重視の観点から、店
強が自家製の惣菜により、13%がフィンランド、
舗に多数の従業員を配置しているためだと推
イタリア、スペインからの直接輸入品によりそ
4)
測される 。
れぞれ占められていた。レンドの来客数は店舗
によりかなり大きく異なるが、1,000~4,000人
ロシアのレストラン王と呼
/日、平均客単価は500~1,500ルーブル(意外
ばれているノヴィコフ、X5の元社長のハシス
に数字が小さいのは、少量しか商品を購入しな
(現ウォルマート上級副社長)、ウラルシブの
い人が多いためである)、売り場面積1㎡当た
元幹部のベルンシュタムが2004年に設立した
りの売上高は1万6,000ドル/年となっている。
会社。その後、ノヴィコフはプロジェクトから
ちなみに、アズブカ・フクーサの当該の数字は
離脱し、現在はハシスとベルンシュタムが同社
2万2,000ドル/年だといわれている。
グロブス・グルメ
の株式を合計で80%保有している。その他、ヤ
レンド社は小売部門の強化を目指しており、
コヴレフ社長をはじめとする経営陣が20%を
今後5年の間にサンクトペテルブルグでの店
保有している。同社は、社名と同じ名称の高級
舗数を倍増させると同時に、モスクワ、エカテ
感あふれるスーパーをモスクワで6店舗とサ
リンブルグ、ノヴォシビルスク、ソチ、フィン
ンクトペテルブルグで1店舗運営しているが、
ランド等に進出することを計画している。
現在、地方への進出も検討しているようである。
列挙したアズブカ・フクーサ、グロブス・グ
その際、フランチャイズ方式ではなく、直営店
ルメ、レンド以外のロシアの主要な高級スーパ
方式での進出になる可能性が高いとみられて
ーとしては、ゼリョヌィ・ペレクリョーストク
12
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
■ Research Report
(モスクワで12店舗、サンクトペテルブルグと
メトロ・グループ
ドイツの流通グループ。
ロストフナドヌーで各1店舗が営業中)、アル
2000年にロシアに進出し、現在、レストランな
ィエ・パルサ、スペル・シヴァ等の名前を挙げ
どの業務店や中小事業者を対象とした会員制
ることができる。
キャッシュ&キャリーの店(店舗名はメトロ・
キャッシュ&キャリー。ただ、実際は個人での
(4)外資系スーパーチェーン
利用も可能になっている模様)を62店舗、Real
という名称のハイパーマーケットを17店舗(現
アシャン・グループ
フランスの流通グループ。
在、アシャンへの店舗の売却交渉が行われてい
2002年にロシアに進出し、郊外型のハイパーマ
る)、SaturnとMediaMarktという名称の家電量
ーケット「アシャン」を中心とするアシャン・
販店を約40店舗、モスクワ、サンクトペテルブ
ブランドの店舗を全国的に展開しており、モス
ルグ、ヤロスラヴリ、カザン、エカテリンブル
クワの他、サンクトペテルブルグ、ニジニノヴ
グ、サマラ、リャザン、チュメニ等で展開して
ゴロド、クラスノダル、エカテリンブルグ、ヴ
いる。ロシア市場におけるメトロ・グループの
ォロネジ、ノヴォシビルスク、サマラ、オムス
主力はキャッシュ&キャリー型の店舗で、ロシ
ク、ペンザ、ウファ等にも出店している。店舗
アにおける同グループの売上高の約7割を占
の総数は2012年7月時点で51であったが、アシ
めている。
ャン側は2017年までに店舗数を150にまで増や
なお、メトロは土地を買収した上で店舗展開
5)
することを原則としており、グループ傘下のロ
既述の通り、アシャンはロシアのハイパーマ
シアの店舗の約60%が土地付き店舗となって
すことを計画している 。
ーケットの中で1㎡当たりの売上高が最も大
いる(残り40%は長期契約に基づく借地)。
きいといわれており、2011年時点でその数値は
1万5,200ドル/年に達していた6)。個々の商
Reweグループ ドイツの大手流通グループ。
品の価格は全般的に低いものの大量のまとめ
2004年にロシアのマルタという会社と「Billa
買いをする客が多い関係で客単価も非常に高
Russia」という合弁企業を設立して、モスクワ
く、モスクワのアシャンの当該の数字は3,500
を中心にBillaという名称のスーパーマーケッ
~4,000ルーブル、地方のアシャンでも1,000~
トの展開を開始した。その後、一時、マルタと
2,500ルーブルに達するといわれている(『ヴェ
の関係が悪化してBillaという名称の店舗を展
ードモスチ』紙、2012.12.3)。
開できなくなり、BIOPという名称の店舗を展
アシャン・グループはアシャン・ブランドの
開していたが、2010年にマルタからシェアを買
店舗の他に、Atakという名称の中規模食品スー
い取り「Billa Russia」を100%子会社にしてか
パーをモスクワ、ウラジーミル、リャザン、ト
らBillaという名称の店舗の展開を再開してい
ゥーラ、ヤロスラヴリ等で展開しており、2012
る(その後、BIOPの店舗はすべて名称をBilla
年夏時点での店舗数は約70に達していた。その
に変更した)。2012年夏時点の店舗数は80で、
他、アシャン・グループは、ロシア国内におい
うち約8割がモスクワ市に集中している。
て、ラドゥガというディスカント・タイプのハ
7)
なお、同社は2012年春に、モスクワを中心に
イパーマーケット 、Decathlonというスポーツ
17店舗を展開していたシティストールという
用品店、Leroy MerlinというDIY店なども運営
チェーンをトルコのエンカから8,000万ドルで
している。
買収したが、それらの店舗は今もシティストー
ロシアNIS調査月報2013年2月号
13
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
ルという名称で営業を継続している(ただし、
た)、③世界的大企業であることを過信し、あ
17店舗のうち5店舗は閉鎖され、現在営業して
まりにも高圧的な態度でロシアの納入業者に
いるのは12店舗となっている)。
値引き要求を行ったため反感を買い、結局、十
分な値引きを獲得できなかったこと等にあっ
グロブス
ドイツの準大手流通会社。現地法
たとされている(『コメルサント』紙、2009.11.2)。
人のギペルグロブスを通し、2006年よりロシア
国内での店舗展開を開始している。同社は、競
ウォルマート
同社は2008年にロシアに現地
争が激しく出店コストも高いモスクワ市やサ
事務所を設立し、X5との合弁企業設立の可能
ンクトペテルブルグ市を避けて、地方部にハイ
性、レンタ買収の可能性、および、コペイカ買
パーマーケットを展開するという戦略をとっ
収の可能性等を具体的に検討していたが、いず
ており、2006年にモスクワ州のシチョルコヴォ
れの案件も成立せず、2010年末にロシア事務所
市に約3,500万ユーロを投下して広さ1万1,000
を閉鎖した。これでウォルマートのロシア進出
㎡の第1号店をオープンさせた。その後、クリ
の可能性は低くなったとみられていたが、2011
モフスク市(モスクワ州)、リャザン市、ウラ
年秋になり、X5の前社長のハシスがウォルマ
ジーミル市、ヤロスラヴリ市にも店舗をオープ
ートの上級副社長に就任したことが判明した
ンさせ、2008年末時点でのロシア国内での店舗
(『エクスペルト・オンライン』
、2011.9.9)。さ
数は5に達した。その後、経済危機の影響でし
らに、2012年8月にはX5の商品仕入れの最高
ばらく店舗数は5のままであったが、2012年秋
責任者であったエカテリナ・イシェフスカヤが
になりモスクワ州のコロリョフ市に第6号店
ウォルマートの副社長に就任している(『コメ
がオープンした。
ルサント』紙、2012.8.15)。
ハシスもイシェフスカヤもウォルマート内
カルフール
同社は2009年6月にモスクワの
で新規市場開拓を担当しており、業界内では、
フィリオンというショッピングセンター内に
ウォルマートは当該の2人を仲介人としてロ
第1号店をオープンさせ、さらにその後、クラ
シアの流通会社を買収しようとしているので
スノダルに第2号店をオープンさせたが、2009
はないかとの憶測が出始めている。
年10月に早々とロシアからの撤退を決断し、
2010年春までに2店舗とも閉鎖した。カルフー
Kesko
フィンランドのKeskoは2006年に
ル側はロシア市場からの撤退の理由を、「短期
ロ シ ア 市 場 に 進 出 し 、 2012 年 夏 の 時 点 で
的に見ても、長期的に見てもカルフールがロシ
K-RautaというDIY店を16店舗、InterSportとい
アにおいて主導的地位を確立できる可能性が
うスポーツ用品店を35店舗展開していたが、同
ないため」と説明していたが、業界関係者によ
年12月にサンクトペテルブルグ市にK-Ruoka
れば、カルフールの敗因は、①出店場所の選定
というハイパーマーケットをオープンさせた。
が杜撰であったこと(たとえば、モスクワ店は
Keskoは2013年中にサンクトペテルブルグ市
幹線道路から遠く離れたところに位置してお
およびレニングラード州でK-Ruokaを4店舗、
り、クラスノダル店はアシャンと隣接する場所
K-supermarketという中規模スーパーマーケッ
に位置していた)、②開店準備作業が杜撰であ
トをモスクワ市およびサンクトペテルブルグ
ったこと(たとえば、モスクワ店はアルコール
市で新規オープンさせることを計画している。
飲料の販売ライセンスを獲得できていなかっ
14
ロシアNIS調査月報2013年2月号
■ Research Report
SOK
フィンランドのSグループ傘下の
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
(5)業界が抱える問題点
SOK社は、2008年からサンクトペテルブルグ市
ロシアのスーパー業界は様々な問題点を抱
でPrismaというスーパーマーケットおよびハ
えている。たとえば、面積が非常に大きい国な
イパーマーケットを展開しており、2012年末時
ので、物流インフラの整備には大きなコストが
点での店舗数は14となっていた(うち5店がハ
かかる。このため、ロジスティック業務の大半
イパーマーケット)。同社は今後もサンクトペ
をアウトソーシングしているスーパーチェー
テルブルグ市およびレニングラード州を中心
ンも少なくないが、質の高いサービスを期待で
に積極的な店舗展開を行い、店舗数を最終的に
きる外部企業の数は限定されており、そのよう
30にまで増やすことを計画している。
なスーパーチェーンの多くがロジスティック
面での問題に遭遇している。また、安い商品を
スパー 国際本部はオランダにあり、フラン
安定供給するためにPBの割合を増やす努力を
チャイズ方式で世界30カ国以上に店舗展開を
しているスーパーチェーンは多いが、品質のよ
行なっている。1990年代初めにスパーは、ある
い商品を安定的に供給できる生産企業が不足
フィンランド人の会社をフランチャイジーと
している関係で、スーパーチェーンの品揃えに
してサンクトペテルブルグ市に進出し3店舗
占めるPBの割合は伸び悩んでいる。ロシアの
を展開していたが、1997年にそのフィンランド
スーパー業界が抱えるその他の主要な問題点
人が死去したため、一時ロシアから撤退した。
は、以下の通りである。
その後、スパーは2000年に新たなフランチャ
イジー経由でロシアに再進出し、現在に至って
納入業者に関連する問題
ロシアの多くの
いる。現時点でのロシアにおける一次フランチ
スーパーチェーンが、信頼できる納入業者の不
ャイジーの数は14で、店舗(形態はハイパーマ
足に悩んでいる。その傾向は地方のスーパーマ
ーケット、中規模スーパーマーケット、住宅型
ーケットにおいて顕著であり、商品の半分もし
店舗、コンビニ・タイプの小規模店舗の4つ)
くはそれ以上をモスクワなどの他の地域の業
の数は2011年末時点で254となっていた。一次
者から仕入れることを余儀なくされている。
フランチャイジーの中で最も規模が大きいの
商品別に見た場合は生鮮食品において、その
は、沿ヴォルガ連邦管区を拠点として2011年末
ような傾向が特に強くなっている。たとえば、
時点で123の店舗を展開していた「スパー中央
トマトやキュウリといった野菜の場合、国内に
ヴォルガ」社で、スパーのロシアにおける総売
は安定した品質の商品を安定的に、そして安価
上高(2011年時点で9億3,500万ユーロ)の約
で供給できる業者が少ないため、X5やディク
4割を占めるといわれている。「スパー中央ヴ
シーといった大規模チェーンはトルコ、イスラ
ォルガ」社に次ぐ規模を有するフランチャイジ
エル、中国等から野菜を直接輸入している。た
ーはトゥーラを拠点とする「スパー中央地方コ
だ、輸入品の野菜は国産の野菜よりも価格が安
ンサルティング」社と、モスクワを拠点とする
いが品質にばらつきがあるので、マグニトは最
「スパー・リティル」社で、2011年末時点の店
近になり、ロシア南部に大規模な温室栽培農場
舗数は順に66店舗と40店舗、売上高は約100億
を建設し需要の6割程度を自給するという方
ルーブルと約70億ルーブルであった(『コメル
針を打ち出した。
サント』紙、2012.5.30)。
また、食肉に関しても同様の問題が生じてい
る。ロシア人の中には国産の食肉の方が輸入品
ロシアNIS調査月報2013年2月号
15
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
よりも品質がよく安全だと考える人が多く、国
いる。特に大都市部では事態は深刻なものとな
産品に対するニーズは非常に高いのだが、国内
っており、たとえば、モスクワ市の流通部門で
にはスーパーチェーンの規格に合った食肉を
は常に6万人程度の人員募集が行われている
安定的に供給できる業者が不足しているため、
といわれている(同市の流通部門の労働者の総
輸入品に頼らざるをえないという状況が生じ
数は約35万人程度といわれている:『エクスペ
ている。アシャンもこの問題で苦しんでおり、
ルト・オンライン』
、2012.7.25)。
2012年夏にフランスの複数の大手食肉業者に
2007年から禁止されていたスーパーマーケ
対しロシアで畜産事業を開始することを要請
ットやハイパーマーケット等での外国人労働
している(『コメルサント』紙、2012.7.30)。
者の正規雇用が2013年より認められる予定な
ので(最大で総従業員数の25%まで外国人労働
ペレクリョースト
者を正規雇用することが可能になる見込み:
クはセジモイ・コンチネントと並びロシアでも
『ヴェードモスチ』紙、2012.10.17)、今後、人
っとも苦情の多いスーパーマーケットだとい
手不足が緩和されると見る向きもあるが8)、そ
われているが、その親会社であるX5の社内管
のことが従業員の質の向上に直結する可能性
理担当重役のスソフは、賞味期限切れの商品が
は低い。したがって、就職口が限定されており
店頭に並んでいるという問題、値札の変更が適
質の高い人材の確保が比較的容易な地方部は
時に行われず値札とレジに記録された価格と
ともかく、少なくとも、大都市部のスーパーマ
の間に差異が生じるという問題、レジにおいて
ーケットでは今後も消費者の苦情が減ること
行列が慢性的に生じるという問題等の主因の
はないであろう。
労働者に関連する問題
ひとつはヒューマンファクター、すなわち、従
業員の労働意識の低さにあると断じている。こ
棚卸ロスの問題
ロシアのスーパーチェー
れはロシアのすべてスーパーチェーンに共通
ンの棚卸ロスの総額は売上高の大体2%で、そ
の問題であるが、その背景には、ロシアでは流
の半分が万引き(もしくは内引き)によるもの
通部門が求職者の間で最も不人気な業種のひ
だといわれている。ロシアでは、「しかるべき
とつとなっているという事情が存在する。そこ
国家機関(警察のことだと推測される)の盗難
では、生活のために嫌々ながら働いている人が
証明書があれば、万引きロス分は利潤税の課税
多く、労働意識も全般的に低くなっているので
対象外となる」という規則は存在するものの、
ある。
現実的には盗難証明書の取得は非常に困難で
また、流通部門では人材の定着率が低く、入
社1年以内に辞める従業員の割合が80%に達
あり、万引きロスのほとんどすべてが課税対象
となっている。
するスーパーチェーンも珍しくない。このため
この状況に不満を抱くスーパーチェーン側
大手スーパーチェーンにおいてすら、勤続年数
は、監査法人が出す「原因不明の棚卸ロスであ
が5年以上の従業員は希少な存在だといわれ
ることを認定する文書」があれば、売上高の最
ている。また、遊ぶために働いているという意
大1%までを万引きロスとみなし、課税対象か
識の人が多いので、夏季休暇前に退職者が続出
ら外すべきであると主張し、政府(財務省)と
する傾向が顕著となっている。
交渉を重ねてきた。当初、財務省は万引きロス
そのような状況であるから、ほとんどのスー
と認定できるのは売上高の最大0.5%までとの
パーチェーンが慢性的な人手不足に苦しんで
見解を示していたが、2012年12月になり態度を
16
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
■ Research Report
軟化させ、最大0.75%まで認めてもよいとの見
ない旨を記した法律が発効した。その結果、キ
解を示した。スーパーチェーン側も0.75%とい
オスクでアルコール飲料を販売することがで
う数字で妥協する意向を表明しており、細部に
きなくなった。
関する合意が得られれば、近いうちに万引きロ
スが課税対象から外される見込みである。
さらに、現在、タバコとビールの販売につい
ても上記の条件を満たした店舗でしか認めな
いことを規定した法案が連邦下院で審議され
(6)業界に吹き始めた追い風
1990年代半ばにモスクワ市に登場した近代
ているが、当該の法案が採択されれば、2013
年よりキオスクや50㎡未満の常設店舗ではタ
的な食品スーパーは徐々にロシアの小売市場
バコとビールの販売も禁止されることになる。
でのプレゼンスを強化し、地方都市においても
業界の関係者によれば、「キオスクの売上高の
中心的役割を果たすようになっている。中央政
8割はアルコール飲料、ビール、および、タバ
府や地方行政府はそのことを歓迎しており、キ
コによって占められており、アルコール飲料に
オスクや市場(いちば)といった不衛生で、し
加えビールとタバコの販売まで禁止されるこ
かも犯罪の温床になる可能性や通行・駐車の妨
とになれば、現在全国で営業している7万
げになる可能性を有する施設を廃止し、近代的
8,500のキオスクのうち約3万が2013~2014年
な商業施設へと変身させる意向を明確に打ち
に閉鎖することを余儀なくされ、2万5,000が
出しはじめている。食品スーパーにとっての
取扱商品を変更することを余儀なくされるだ
「追い風」が吹き始めていると言ってよいであ
ろう」とされている。また、面積が50㎡に達し
ろう。以下では、その「追い風」について具体
ない常設の小型店舗も大きな打撃を受けると
的に説明する。
いわれており、ある業界関係者は、「そのよう
な小型店舗の売上高に占めるビールの割合は
キオスクに代表される路上
10~15%、タバコの割合は5~15%で、それら
の簡易店舗の数を削減する動きは、大都市のみ
の販売が禁止されれば、約1万2,000の小型店
ならず中小の都市でも2~3年前から顕著に
舗が閉店を余儀なくされ、2万以上が取扱商品
キオスクの淘汰
9)
なっている 。削減措置は、主として、地方行
の変更を余儀なくされるだろう」との見解を示
政府がキオスクの経営者との間に締結してい
している(『ヴェードモスチ』紙、2012.11.7)。
る土地の賃貸契約を破棄する、あるいは、契約
アルコール飲料に加え、キオスクおよび常設
期間の延長を認めないという形で実現されて
型の小型店舗でのビール、タバコの販売も禁止
いるが、ロシア政府は削減のスピードをさらに
されるようになれば、食品スーパーでそれらの
加速させるための措置を次々と講じている。た
商品を購入する人が急増すると見られており、
とえば、2012年7月1日からは、①面積50㎡以
ロシアの調査会社「Infoline」のブルミストロ
上(農村部では25㎡以上)の土台のある建物に
フ社長は、「その結果、食品スーパーの売上高
入った店舗(以下、常設店舗と称する)である
は2013年に1兆1,000億ルーブル、2014年には
こと、②教育、医療、スポーツ、空港、鉄道駅
1兆7,000億ルーブル、それぞれ増加するだろ
等と隣接していないこと、③経営する会社の資
う」との予測をたてている(上掲『ヴェードモ
本金が100万ルーブル以上で長期賃貸契約を締
スチ』紙)。
結していること等の条件を満たす店舗でしか
アルコール飲料(ビールを除く)の販売を認め
ロシアNIS調査月報2013年2月号
市場(いちば)の淘汰 ソ連解体後、ロシアで
17
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
は商品小売市場における市場(いちば)のプレ
4.新しい小売形態
ゼンスが高まり、1995年時点での小売販売高に
占める市場のシェアは26%を超えていた。しか
(1)オンラインショップ
し、行政による監理の強化や食品スーパーに代
ロシアでもオンラインショップが徐々に存
表される近代的な店舗のプレゼンスの高まり
在感を強めてきてはいるが、今のところロシア
に伴い、徐々に市場(いちば)のシェアは減少
の小売販売高に占めるオンラインショップの
しており、既述の通り、2012年1~9月期の当
割合は1.6~2%程度となっている(
『ヴェード
該の数字は10.7%となっていた。また、市場の
モスチ』紙、2012.6.26)。ロシアでのオンライ
総数も減っており、2001年時点では約4,000だ
ンショップの普及を妨げている要因としては、
ったものが、現在では3,000を割り込んでいる。
①輸送費の高さ、②信頼できる宅配業者(郵便
ただ、いまだに市場のプレゼンスが非常に強
局を含む)の不足(このため、地方になればな
いエリアも存在する。意外なことに最もその傾
るほどオンラインショップの利用者が減少す
向が顕著なのはモスクワ市で、同市の小売販売
る)、③消費者のオンラインショップに対する
高に占める市場の割合は2011年時点で19.7%
不信感、④商品を保管する倉庫の賃貸料の高さ、
に達していた。その他、スタヴロポリ地方とク
⑤カード決済の不人気(大手オンラインショッ
ラスノヤルスク地方でも市場のシェアが大き
プのozon.ruでは約8割の利用者が代引決済を
くなっており、順に18.9%と16.8%となってい
利用している)等を挙げることができる。
る。逆に市場のプレゼンスが低いのは、ロシア
ロシアのオンラインショップの総数は約2
で最も食品スーパーの普及度が高いといわれ
万5,000に達するといわれているが、取扱商品
ているサンクトペテルブルグ市とレニングラ
(チケット類を除く)の中で最も人気が高いの
ード州で、当該の数字は順に2.51%と1.88%と
は家電・電子機器で市場全体の約45%を占める
なっている。
といわれている。その他、衣類、自動車部品、
当然ながら、モスクワ市は現状に強い危機感
家具の人気も高くなっており、そのシェアは順
を抱いており、市場の数の削減ならびに市場の
に13%、10%、6%(『エクスペルト』誌、
フォーマットの変更に積極的に取り組んでい
2012.10.15)。食品の人気はそれ程高くなく、そ
る。たとえば、雑貨や食品等を販売する簡易店
のシェアは5%程度となっている。食品のオン
舗やコンテナを改造した店舗で構成される屋
ラインショップを運営している会社も多くは
外の総合市場の廃止、もしくは、それらの市場
なく、それなりの規模を有するのはモスクワを
の農産物の専門市場や近代的なショッピング
拠点とする10社程度だけだといわれている。し
センターへの模様替えという措置に積極的に
かも、その大半が、オフラインショップ(実店
取り組んでおり、2年前の時点では約80存在し
舗)を展開するスーパーチェーンのオンライン
た当該の総合市場は間もなくすべて姿を消す
部門という位置づけである。オンラインショッ
ことになっている。モスクワ市は今後さらに市
プを有するチェーンとしては、セジモイ・コン
場(いちば)対策を強化する意向を有しており、
チネント、アズブカ・フクーサ等が有名である
最終的に同市には51の市場だけが残る予定と
が、それらの会社の総売上高に占めるオンライ
10)
なっている 。ロシア最大の消費地であるモス
ンショップのシェアは微々たるもので、いずれ
クワ市におけるこの流れもまた、スーパーチェ
の会社においても1%未満となっている。
ーンにとっての「追い風」になると予測される。
18
ロシアでは、食品のオンライン販売をメイン
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
■ Research Report
事業と位置付けている会社は、Utkonosという
販売機が最も普及している日本は23人/台に
会社1社しか存在しない。同社のプロフィール
なるのに対し、ロシアは約2,200~2,400人/台
は以下の通りである。
に な る と い わ れ て い る (『 ロ シ ア 新 聞 』、
Utkonosは約10年前に設立された会社で、ロ
2012.9.4)。販売高も微々たるもので、モスクワ
シアの鉄鋼王と呼ばれることもあるセヴェル
に設置された自動販売機の総販売高は、同市の
スタリのモルダショフが個人的に出資してい
小売販売高の1%未満の30億~40億ルーブル
ることで知られている。これまで同社は、モス
/年程度だといわれている。これまでロシアで
クワ市とモスクワ州で実店舗の展開も行って
自動販売機が普及してこなかった理由として
11)
きたが 、採算の維持が困難との理由から次々
は、①気候が厳しく自動販売機を屋外に設置す
と閉鎖されており、2012年末までにUtkonosは
ることが難しい13)、②設置料が全般的に高い、
実店舗を全くもたない完全なオンラインショ
③自動販売機に関する法律が未整備、④データ
ップになる見込みである。
が不足しており市場分析ができない等が考え
配送センターや500台に達するといわれてい
られる(『エクスペルト・ウラル』誌、2012.10.29)
。
る自前の配達用の車の維持のためのコストが
取扱商品により自動販売機を分類すると、最
嵩むこともあり、創業以来同社は一度も黒字を
も多いのはコーヒーを取り扱う自動販売機で、
出したことがない。2010年も過去最高の89億
全体の約60%を占めるといわれている。これは、
4,000万ルーブルの売上高を記録したものの、
コーヒー販売の利益率が非常に高いからで、一
黒字化には成功せず25億ルーブルの赤字を計
説によれば、原価が1杯6~7ルーブルである
上した。2011年の業績は公表されていないが、
のに対し、販売価格の平均値は15~20ルーブル
業界の専門家たちの評価によれば前年よりも
に達するといわれている(2009年時点の数字:
売上高が減少したとされており、黒字化を達成
kiosk.ru、2009.3.24)
。次に多いのは、スニッカ
することはできなかったものと推測される。に
ーズ類で全体の約30%を占めるといわれてい
もかかわらず、同社が営業とインフラの整備を
る(ただし、スニッカーズ類の場合、多くの種
継続できているのは、モルダショフからの財政
類を揃える必要があり商品管理が難しい他、利
的支援があるためだと推測される。
幅もコーヒーより低いといわれている)。この
ちなみに、客単価が全般的に低いことや商品
ように、ロシアでは自動販売機の取扱商品の約
管理が難しいこともあって食品中心のオンラ
9割がコーヒーとスニッカーズ類により占め
インショップの経営は一般的に難しいといわ
られており、商品のバリエーションの点でも後
れており、この分野の先駆者で1998年に活動を
進性が顕著だといえる。
開始していたスルージバ77という会社は経営
が成り立たず、2005年に消滅している。
以上の記述からもわかる通り、今のところロ
シアでは自動販売機は非常に地味な存在であ
るが、今後、そのプレゼンスが急激に強まる可
(2)自動販売機
能性があるとみられている。いくつかの地方行
12)
はあま
政府が、撤去したキオスク等の簡易店舗の跡地
り普及しておらず、その総数は6万~8万台程
に自動販売機を設置することを計画している
度ではないかといわれている(そのうちの約
からである。たとえば、モスクワ市行政府は、
40%がモスクワに設置されている)。また、人
この2年間に撤去した2,000以上の簡易店舗の
口を自動販売機の設置数で割り算すると、自動
跡地を中心に、2015年までに最大9万台の自動
ロシアでは今のところ自動販売機
ロシアNIS調査月報2013年2月号
19
特集◆ロシア・NISの消費市場と小売業
販売機を設置すること(上掲『ロシア新聞』)、
ティックや商品管理のノウハウと技術の伝達
また、エカテリンブルグ市行政府は2013年中に
といった可能性であろうか。「追い風」が吹い
約1,000の簡易店舗を撤去し、その跡地に自動
ている今が、日本のコンビニのロシア進出の好
販売機を設置することを、それぞれ計画してい
機と言えるかもしれない。その他、食品スーパ
る(上掲『エクスペルト・ウラル』誌)
。
ー業界とは直接的な関係はないが、ロシアにお
ける自動販売機の広範な普及の可能性の高ま
おわりに
冒頭でも述べた通り、このレポートを書くに
あたっての筆者の主な問題意識は、「追い風」
と「日本企業のビジネスチャンス」の2つであ
った。それらに関する見解を述べ、まとめにか
えさせていただく。
キオスクや小型店舗でのアルコール飲料、ビ
ール、タバコの販売禁止という措置は、ロシア
のスーパーチェーンにとっての強い「追い風」
となることは間違いないが、その「追い風」を
捉えることができない会社もあるだろう。たと
えば、業界の現状を見てみると、ロジスティッ
ク部門の強化、社員教育の徹底といった地味で
はあるが流通企業にとって極めて重要な措置
を軽視し、専ら規模の拡大だけを志向してきた
会社の苦戦が目立つ。それらの会社は「追い風」
を充分に捉えることができないであろう。その
結果、食品スーパー業界では勝ち組と負け組の
二極化がさらに進むことになる。どの会社が勝
ち組となり、どの会社が負け組となるかを現時
点で予測することは難しいが、社員教育の不徹
底やロジスティック部門の弱さが主因と思わ
れる苦情が非常に多いセジモイ・コンチネント
やX5(ペレクリョーストク)などは要注意で
あろう。また、市場に漂う閉塞感から判断して、
勝ち組として生き残れる会社の数もそう多く
はないかもしれない。
日本企業のビジネスチャンスに関しては、筆
者の勉強不足もあり、明確な答えに辿りつくこ
とはできなかった。敢えて言えば、アズブカ・
フクーサのような高級スーパーへの商品の納
入、日本式社員教育のノウハウの伝達、ロジス
20
りという流れの中にも、日本企業にとってのビ
ジネスチャンスが存在するのではなかろうか。
【注】
1)ここでいうセルフサービスとは自分で商品を手
にとって選べるという意味。ソ連時代は普通の
店で買い物をする場合、①行列に並んだ後にカ
ウンターで販売員に欲しい商品を言う、②その
商品の名前を書いた紙を販売員から受け取る、
③行列に並んだ後にレジで商品の代金を支払
ってレシートを受け取る、④レシートをカウン
ターで提示して商品を受け取る、という忍耐力
のいるプロセスを経なければならなかった。販
売員やレジ係は常にいら立っており、買い物の
際に不愉快な思いをするのは普通のことであ
ったから、1990年代半ばに登場した近代的スー
パーは、当時のロシアの人々にとっては画期的
な存在であった。
2)セジモイ・コンチネントが法人として借り入れ
ている金額と、オーナーのザナドヴォロフがセ
ジモイ・コンチネントの株式を担保に個人で借
り入れた金額を合計した数字。
3)ペレクリョーストクへの苦情も多く、259件に
達した。以下、アシャン:131件、ディクシー:
102件、Billa:73件、ピャチョーラチカ:51件、
マグノリヤ:27件、アズブカ・フクーサ:26件、
その他:165件となっている。
4)筆者は2年ほど前にモスクワ市にあるアズブ
カ・フクーサを訪れたことがある。夜の8時頃
にも関わらず、何人もの掃除婦が客の後を追い
かけるように床掃除をしており、何もそこまで
しなくともとの印象を抱いた。また、販売担当
の店員の数も非常に多く、うちの1人が、足が
悪く杖をついている私の買い物の手伝ってく
れた。ロシアでそのようなサービスを受けるこ
となど想像していなかった私は非常に感動し
たが、同時にこれだけ従業員が多いと人件費が
大変であろうとも思った。
5)同社は現在ドイツのメトロとの間で、ルーマニ
ア、ポーランド、ウクライナ、ロシアの約90の
Realの買収に関する交渉を行っているが、この
交渉が成立すれば、ロシアにおけるアシャンの
ロシアNIS調査月報2013年2月号
■ Research Report
店舗数は2013年中にも一挙に16増加する可能
性がある(『ヴェードモスチ』紙、2012.12.3)。
6)他の主要ハイパーマーケットの当該数字を紹介
すると、オーケイ:1万800ドル、マグニト:
7,700ドル、Real:7,400ドル、カルセーリ:6,500
ドルとなる。
7)無人レジを装備したハイパーマーケット型店舗。
2009年にペンザとカルーガに1店舗ずつがオ
ープンしたが、その後、店舗数は増えていない。
8)ただし、一部には、「多くのスーパーが外国人
労働者を派遣社員の形で受け入れてきた事実
を勘案すると、状況が劇的に改善されるとは考
えがたい」という見方も存在する。
9)削減の対象となっているのは主として食品を取
り扱うキオスクや露店だが、地方都市では印刷
物を取り扱うキオスクも削減の対象になって
おり、出版業界からクレームが出ている。モス
クワ市、サンクトペテルブルグ市、エカテリン
ブルグ市はこの点を配慮しており、印刷物を取
り扱うキオスクは原則削減の対象から除外し
ロシアNIS調査月報2013年2月号
ロシアの食品スーパー業界に変化の兆し
ている。
10)内訳は、屋内(土台のある建物の中で営業)総
合市場が5、特定の商品を取り扱う屋内市場が
2、農産物を専門に取り扱う市場が44となって
いる。
11)最も多い時期には実店舗が約200存在した。実
店舗では商品が購入できる他、商品のオーダー
やインターネットで注文した商品の受け取り
等ができるようになっていた。
12)ロシアの主要な自動販売機運営会社としては、
ユヴェンコ、アソルティ、プレマクサ、SIBA
ベンディング、コカコーラHBCエヴラジヤ、ネ
スレ・ロシア、ペプシコ・ホールディング等を
挙げることができる。また、ロシアでプレゼン
スの強い自動販売機メーカーには、LG、サム
スン、Bianichi、Necta、Azkoyen、Saeco等があ
る。
13)ロシアでは、公官庁、学校、企業のオフィス、
ショッピングセンター、銀行、駅、空港、ホテ
ル等が主要な設置場所となっている。
21