施設ケアマネジャーをして思うこと 事の達成感を感じる瞬間です。 今から十数年前に、私は特養で介護 職として働きながら大学で社会福祉学 利用者によっては、思うように状態 を学んでいました。その現場実習で担 が改善されない方、施設のほうが在宅 当させていただいた利用者は、時に涙 生活よりも経済的負担が軽くなる方、 を流しながら「家に帰りたい」と言わ 在宅で生活するには給付額が十分でな れ生活されていました。実習生の立場 い方、在宅生活を送ることに家族や地 域住民の賛同を得られない方、自宅で では、話を聞くことと、少しでも気を すこやか生野(大阪府) 紛らわせていただくよう足浴を行うこ としかできませんでした。何もできな い ざ き ま ゆ み 井嵜真由美 ケアマネ い歯がゆさとともに、 「家に帰りたい」という利用 は転倒するかもしれないと不安を抱く 方等、一筋縄ではいかないことも多く、 これらを乗り越えて在宅復帰を果たされます。 者の希望をかなえるマネジメントができるポジショ そのためには、家族や施設の協力体制、地域の ンに、いずれは就きたいとの思いを持ちました。 温かい目が不可欠です。しかし、最終的にそれを そして今、私は施設の専任ケアマネジャーとなり 実現できたのは、利用者の「家に帰りたい」とい それができる立場にいます。利用者が当施設で生 う思いでした。私はこれからもその思いに添える 活された後、希望どおり在宅復帰されたときが仕 ケアマネジャーでありたいと思います。 平成11年、系列病院から異動してきた当初は けてくれたあのときに、すぐにおひげを剃って差 「介護施設で私に何ができるのだろう?」と悩み し上げればよかった」と、泣く泣く救急隊にバト ました。しかし今ではこの仕事が楽しくてたまり ンタッチした出来事が思い出されます。利用者の ません。利用者の“今”に寄り添い、日々、笑顔 一日を大切にするということは、自分自身の一日 を共有できる喜び。この「生活をともにする」感 をも大切にすることであると痛感しています。 覚は、病院勤務では味わえないものでした。加え 私は「老健施設はサービス業である」と考えて て、看護のプロとしての専門性も追求 います。数ある施設のなかから当施設 でき、大いにやりがいを感じています。 をお選びくださった方々に対して、 利用者は高齢であり、少なからず 「払うべきものに見合うサービス」を 疾患を抱えています。今日が元気だと 提供する使命があります。そのために しても、明日はどうなるかわかりませ は、 「私たち職員自身が買いたいと思 ん。利用者から「ひげを剃ってほしい」 うサービスを提供する施設」でなくて はなりません。そんな施設をめざし、 と頼まれれば、即座に対応します。今 このときに応えなければ、いつ急変さ いづみケアセンター(埼玉県) れるかわらないからです。 「お声をか 看護 い し か わ こ 石川ゆき子 私はここを現場として立ち続けたいと 思います。 利用者と生活をともにする喜びを大切に 54 ●老健 2011.4
© Copyright 2024 Paperzz