私は一人じゃない 帰宅願望のある入所者のケアについて 秋田県 ほのぼの苑 介護福祉士 鎌田 丈徳 佐々木 悟 MD 小玉 敏央 【はじめに】今春で当苑も私自身も4年目を迎えた。 業務に流されることもなくなり、余裕を持って介護に 取り組めるようになった。そのためか、「入所者は満 足しているのだろうか」と思う時がある。特に、入所 者から「家に帰りたい」「迎えに来てくれるように家 族に電話して」といった、いわゆる帰宅願望が聞かれ た時はそう思う。 【事例】 Ⅰ C.Sさん 85歳 女性 脳血管性痴呆 問題点は、深夜に「家に電話して」という事が多 い。「明日かけるから」と対応しても納得せず、眠り に就こうとしない。身内の面会も他入所者と比較する と少なく、「家族が洗濯に来ないから服がない」と入 浴拒否も続くことがある。本人との会話には夫や息子 の話題が多く聞かれる。 Ⅱ K.Sさん 77歳 女性 脳梗塞 ADLはほぼ自立していたが、入所から2週間後に 頭痛を訴え、尿失禁、立位不安定による転倒、食事拒 否など続いた。活気もなくなり「みんなに世話になっ て」「家族が来なくて」「家に帰りたい」と泣き出す 事が多くなった。 【ケア内容】 Ⅰ 上記事例より、夜間は苑内の内線電話を利用して 他棟の職員が家族になり、電話で体調や悩み、苑内の 生活について話を聞く。その時に、入浴するように説 得を試みる。 Ⅱ 周囲に関心がいくよう、他入所者とのコミュニ ケーションを多く図れるように努めた。また家族に状 況を説明し、気分転換のために外泊を勧めた。 【結果】 Ⅰ 翌朝、電話の内容を覚えていた。入浴時にも 「ちゃんと風呂に入れよって息子がいってくれた」 と、他入所者に嬉しそうに話していた。その後も、電 話の訴えは聞かれたが、入浴拒否が続くことはなく かった。 Ⅱ 外泊後、ADL状態も活気も戻り、歩行リハビリ も積極的に行い、尿失禁も軽減された。何よりも笑顔 が多く見られるようになった。 【まとめ】 家族・家庭に対する入所者の思い、家族の影響力の 強さを改めて感じた。これからは、中間施設として入 所者と家庭との距離を保っていくこと、施設にいても 家族の一員であるということを、いかに入所者に理解 してもらえるか、帰宅願望は孤独感の表れであるから それを軽減できるように介護にあたっていきたい。
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