私が見つけたコミュニケーションの極意 静岡県立駿河総合高等学校 2年 加藤愛美 私が3日間の職場体験実習の中で利用者さんとコミュニケーションを取 り1番印象に残っている言葉は「家に帰らせて欲しい」と言われたことで す。 私がこの方とお話しするようになったのは、職員の方からこの方とお話 しをすることを仕事として任されたのがきっかけです。この方は80歳の 女性で重度ではありませんが認知症をわずらっていました。話しをすると とても明るく、体を動かすことや服をたたむことが好きな方だとわかりま した。初日と言うこともあり、私は好きな物、好きなこと、家族のことな どを質問してみることにしました。すると、その方は家族についてたくさ ん お 話 し を し て 下 さ い ま し た 。例 え ば 、 「私には姉がいてとても仲が良いの。 時々一緒に服を買いに行ったり、二人で普段の生活について話しをしたり していて、その時間がとても楽しいの」と話してくれました。その時のと ても嬉しそうに話をしている姿を見て、家族が大好きなのだと強く伝わっ てきました。 そこで、私は家族についての話しでコミュニケーションを深めていこう と考えました。はじめは、笑顔で話していたのが、段々身振り手振りが入 り、私の質問に答えるだけの会話が相手の方から「あなたの家族はどんな 人なの?」と質問してくれるようになり、初めて相手の方からコミュニケ ーションはこうやって深めて行くのだということを学びました。初日を 終 え次は、私のことをもっと知ってもらおうと考え、質問ではなく、私の家 族を紹介しながら、会話を広げていこうと考えました。 2日目、目標通り私の方から自分のことについて話しをしてみました。 するとその方は熱心に私の話を聞いて下さって、相手からも共感を受けた り、初日よりも確実に仲が深まっているのを感じました。そしてお互いの ことを知って行くにつれ、 「 家 に 帰 り た い 」と 言 う よ う に な り ま し た 。し き りにその方は「家に帰りたい.帰らせて欲しい.姉に連絡を取って早くこ こを出たい」と言い出しました。その時に私は、家族の話しをしているに つれ、姉に会いたいという感情が強くなってきてしまい、このような状態 になってしまったのだろうと思いました。なんだか申し訳ない気持ちにな ってしまい、私はその時どうしたら良いのかわからなくなってしまいまし た。職員の方に相談すると「こういう時は誰にでもあるから、そばにいて その人の気持ちをきちんと聞いてあげることが大切だよ」と教わり、私が その方の側に行って帰りたいという気持ちをきちんと聞いてあげることに しました。すると少し落ち着いたのか「寂しいよ。姉に会いたい。何で帰 らせてくれないの」と心の底から思っていることを言ってくれるようにな りました。そこで、職員さんが「寂しくなっちゃったよね。だけどあなた が い て く れ な い と 私 た ち 職 員 も 他 の 利 用 者 さ ん も 寂 し く な っ ち ゃ う よ 。」と 気 持 ち を 汲 ん だ 上 で の 励 ま し の 言 葉 を 掛 け て い ま し た 。す る と そ の 方 は「 そ うかねえ」と少し納得してくれました。その後は気持ちが落ち着いたよう で、また笑顔で話しを続けて下さいました。この出来事で学んだことは、 利用者さんは家族と会えない時間をものすごく寂しく思っていることです。 寂しい気持ちを和らげられるように、利用者さんの気持ちを汲むことが介 護福祉士の仕事なんだと言うことに気づきました。そして最終日は寂しい 思いをさせないように、なるべく楽しい思い出について語り合うようにし ようと考えました。 3日目は楽しい思い出について話してみると、いつものようにその方は 笑顔で話しをして下さって、昨日のように「帰りたい」と言うことはあり ませんでした。その方が施設に満足している様子が伺えたので「この施設 は 良 い と こ ろ で す ね 」と 言 う と「 う ん 。と て も 良 い と こ ろ だ よ 。」と 答 え が 返ってきて、この施設が嫌になっていなくて良かったとホッとしました。 3日間の実習を通して私が学んだことは3つあります。1つ目は相手の 話をよく聞くことです。話しをしている時に目を見たり、うなずいたりし てしっかり聞いているということを相手に見せることで、心の底で思って いることを話してくれるようになりました。2つ目は相手の思いが実現で きなくても、安心できるような声かけが必要であることです。私がお話し をした女性の「家に帰りたい」と言う思いは実現できない物ですが、その 方 を 安 心 さ せ 生 き が い を 持 て る よ う な 声 か け を し た こ と が「 家 に 帰 り た い 」 というパニックを収めることができました。3つ目は相手の言葉から話題 を広げて行くことです。家に帰りたいという思いを引き出す会話になった のは、 「 家 族 」と い う 小 さ な 会 話 か ら 生 ま れ た 話 し だ っ た の で 、相 手 が 何 気 なく言った言葉をキャッチし広げていくことで本音を知れるということが わかりました。 これから私にできることは、3つのコミュニケーションの極意を生かし て会話することです。まずは家族から試してみて、今までの続かなかった 会話を極意を使って続けてみたり、話したことがない人でもどんどん仲良 くなっていきたいです。そして、私の周りにいる人たちを笑顔にしていき たいです。そして将来は、コミュニケーションの上手な相手の気持ちがわ かる介護福祉士になりたいです。
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