編集後記 - Hi-HO

編集後記
新潟産業大学 経済学部講師 菅谷奈津恵
柏崎は、普段は海と山の美しい、静かな町です。しかしあのとき、
「海の日」の休日に
一変しました。地震発生後の町は、ヘリコプターのプロペラ音が響き渡り、騒然とした雰
囲気に包まれました。新潟産業大学でも、学期末の数週を残していた学事日程は変更され、
突然の夏休みとなりました。学生にとってはうれしいはずの長期休暇ですが、震災後の留
学生達は恐怖と疲労で沈んだ表情をしていました。その後町の復興が進むとともに、留学
生たちにも日常生活が戻り、リラックスした表情も見られるようになりました。これは、
うれしいことである反面、今回の経験が生かされることなく忘れ去られてしまうのではな
いかという危惧も抱きました。そして、留学生だけでなく私たち教職員等周囲の人間も含
めて、今後の防災のためにもこの経験を風化させず後に伝えていく必要があると感じまし
た。
こうした考えに対して、柏崎地域国際化協会や新潟産業大学の関係者から賛同いただき、
今回の作文集を刊行することができました。最終的に、国際化協会の日本語教室参加者 4
名、留学生 34 名、国際化協会と新潟産業大学の関係者 5 名の方々から寄稿をいただきま
した。
多くの方々に読んでいただけるよう、作文は日本語と寄稿者の母語の両方を掲載するこ
とにしました。入力作業は原則として執筆者本人が行っています。日本語作文の校正は編
集委員会が行いましたが、ここではできるだけ執筆者のことばを生かすという方針を取り
ました。従って、日本語母語話者から見れば多少一般的でない表現があっても、できるだ
け原文を生かし、単純な入力ミスや文法的誤り等に絞って修正を行いました。また、作文
の母語訳は、必ずしも逐語訳になっているわけではありません。日本語では表現しきれな
い思いが、自身の母語において、より自由に綴られているものも多数あります。
留学生作文の中国語、モンゴル語への翻訳・入力作業は、バイカル先生の指導のもと、
寄稿者自身か学生編集委員によって行われました。特にモンゴル語での入力作業は留学生
自身にとっても不慣れなことであり随分苦労があったようですが、学生編集委員長のウヨ
ンゴワさんを中心に、ウヨンチチグさん、サリンゴワさん(経済経営学科)
、サリンゴワさ
ん(国際コミュニケーションビジネス学科)
、スチントさん、チチグマさん、ツァイブトン
ドルジさん、フスリンさん、フスレさんが尽力してくれました。また、フスリトさんはそ
の画才を生かし、文章に合わせた挿絵を描いてくれました。大勢の協力によって出来上が
った作文集ですので、ぜひたくさんの方に読んでいただけるよう願っております。
最後に、この作文集の刊行に当たり、物心両面にわたり多くの方々にご支援、ご協力い
ただきました。ここに心から感謝の気持ちを表したいと思います。