■今回は、「環境に配慮したヨーロッパの医療施設(グリーン・ ホスピタル)と先進の手術開発センター最新動向調査」とい うことで、ヨーロッパ諸国を廻り、医療施設の見学を行った。 1.ベネチア・メストレ病院訪問(2010・6・29) ★建物外観等 ●イタリア最大の観光都市、ベネチア中央駅から約 9km 離れた メストレ駅、そのメストレ市にあるメストレ病院を訪問。こ のメストレ市は新興都市で市としての歴史は古くなく、市内 の古い建物でも築 70 年程度というものである。またメストレ 市にあるメストレの駅から 10 分程度列車に乗った隣駅がベネ チアであり、本当にベネチアの隣の市として非常に人の往来 が多いところである。因みにメストレ市の人口は約 8 万人、 ベネチア中心部の人口は約 5 万人であり、これに対して年間 2,000 万人の観光客が訪れているのが現状である。 ●さて、このメストレ病院についての説明は、イタリア最大手 の設計事務所である STUDIO ALTERI S.p.A. より設計 INDUSTRIAL AREA は、PPP(日本でいう PFI 手法)にて建てられており、発注 者はメストレ州である。 GREEN ROOF RAILWAY コンセプトから施設概要についての説明を頂いた。この施設 PARK COMMERCIAL AREA り入れた施設」として、右図のような日本においては、ほと N んどお目にかかれない施設が建設されている。このような形 状の建物が、病院と言う施設においては日本に存在しない理 由はなんのだろうか?と不思議に思う。それは日本の方がイ タリアより自然災害が多いから?あるいはこのような建物を しかも所謂 PPP で日本で建てようものなら多くの批判に晒さ SITE PLANNING -ENVIRONMENT れるから?まぁ、良く分からないが、面白い建物であること CENTRAL GARDEN には違いなかった。 ●設計事務所のデザインコンセプトというものは、建物だけで はなく、敷地内における建物を囲む環境に配慮したプランニ LANDSCAPE ングからも窺い知ることができる。 “CENTRAL GAREDEN” “LANDSCAPE” “ACOUSTIC BARRIER” “SENNSORIAL GARDEN”“THERAPEUTIC GARDEN”がそれぞれの役割 を果たし、癒しの空間を演出しているように思えた。 1 THE HOSPITAL ACOUSTIC BARRIER ●このデザインコンセプト ECO を中心に、「自然と太陽光を取 ACOUSTIC BARRIER ★エントランス ●車のアプローチするエリア(コンコース)より病院のエント ランスへは、かなり距離があるように思えた。エントランス までのサービスヤードの工夫が、その距離感を感じさせない のかもしれない。自然緑化による環境整備がそれであろう。 但し、遠目に見る分には自然緑化は良いように感じるが、実 際にそびえたつ木々のそばにいくと、木々へのメンテナンス の大変さを感じる。日々の水遣りや害虫駆除などはどうして いるのだろうかと…(笑) ●エントランスへ向かう途中の案内表示板は A~E はそれぞれ の行く先を表示しており、良く見るとピクトサインではある が、なんとも微妙なサインであった。また色の使い方につい ても、日本のそれとは異なる配色であった。 ●アトリウム空間の解放感も日本には無いものであろう。でも やたら暑かった。自然光を取り込むことは素晴らしいが、こ う暑くては…驚いたのは、2 階へエスカレータを上ってみると オープン的なスペース・エリアが何と各科の診察待合であっ た。なんとも病院とは言い難い光景である。それにしても空 間の広さと目的場所へのアプローチに距離を有するのは、や はり土地があるからであろうか? ●それもそのはずであり、延床面積が 91,500 ㎡もあればこのよ うな空間が演出できるのは当たり前なのだろうか?しかし思 うのは PPP と言えば、日本版 PFI みたいなものであるが、な んか同じ手法とは思えないような造りであり、恐らく評価の 基準と言うのが根本的に異なるのだろう。正に所変われば品 変わるであろうか。 2 ★建物内部 ●今回参加した人数による施設内見学の制限もあり、病棟部門 をゆっくり見て回ることは許されなかったが、病棟部門へ入 る前の共用エリアに、自動搬送機の往来があった。洗濯物や 食事の配送である。地階の物流サービスエリアより供給・回 収される。敷地の広さもあるのか、または余剰人員をかかえ ていないのか、日本では最近見ない光景である。 ●また、共用エリアにあった、公衆電話。これはイタリアでは スタンダードなのだろうか? ●病室に関しては、設計事務所の方より頂いた図面を見る限り、 1 病棟 56 床ほどで構成されている。2 床室 1 ユニット構成で それぞれに障害者対応用のスペースを確保したトイレが設置 されており、分散トイレ配置である。最近の日本では音や臭 いの問題もあり、必ずしも分散式トイレの配置が主流である とは言えないが。 2.アイバンクセンター訪問(2010・6・29) ●メストレ病院と同一敷地内にあるが、経営母体は異なる。角 膜移植や幹細胞に関する研究施設である。限られた数名のみ センター内の幹細胞に関する研究施設への立ち入りを許可さ れたため入室をした。そこで説明をしてくれた方が、久しぶ りの来客なのか、やたら丁寧に説明してくれるため、予定の 時間をかなり超過してしまった。 ●素人目にみても、本当にこれで大丈夫なの?と言う感じの気 密性のない(クリーン度が保てるのか?!)施設のように感 じたのは私だけだろうか。床もキズが付きやすいし…幹細胞 施設の使用に関する許可が国から下りていないのは単なる偶 然だろうか? ●角膜移植の手術に関しては、年間 3,000 件の実績があり、ド ナー提供者も 4,000 を超え、多くの信頼を得ているみたいだ。 残念ながら実稼働中の部門であるため、ドアの外までの見学 であったが、角膜移植手術までの流れがパネル展示してあっ た。 3
© Copyright 2024 Paperzz