第5号 2001年10 月 株式会社旭出版 http://www.asahi-pub.co.jp/ ●鹿山会は現在、藩校創立から200周 年、県立移管100周年といった大きな プロジェクトを終え、組織や運営方 法の改善に取り組んでいる。歴史あ る学校であればこそ、その伝統を継 承していくため、時代に対応してい かなければならない。 「運営や財政の 面でも私たちなりの構造改革を進め ていくつもりです」 と語る谷田部さん の表情からは、その意気込みが伝 わってくる。「これからは、ホーム ページを使った会報の発信やEメー ルを通じて、若い世代からも広く意 見を取り入れていかないとね (笑) 」 形 は変わっても伝統は受け継がれ、鹿 山会は既に新たな一歩を踏み出し始 めている。 ●また、鹿山会は学校への協力にも たいへん積極的である。谷田部さん も 「会員の親睦や伝統の継承と共に、 今まで以上に生徒の育英に力を入れ FACE2001 笑顔の形 会員の親睦や伝統の継承と共に、 今まで以上に生徒の育英に 力を入れていきたい。 千葉県立佐倉高等学校同窓会鹿山会会長 谷田部 満さん ●伝統の重みだろうか。校内に足を踏み入れると、そ こには多くの時を刻んできたことが自然と伝わってく ていきたい」 と、生徒たちへの思いは熱い。蘭学を取 り入れた藩校時代の精神を受け継ぐオランダへの留 学事業に対しても支援を惜しまない。学校と同窓会が 一体となってこそ伝統も守られていくのだろう。 ●尚、この佐倉高校の卒業生として忘れてはならな いのが、読売ジャイアンツ(巨人)の長嶋監督だろ う。いわずと知れた “ミスター・プロ野球” だ。校内 にある地域交流施設 (カルチュレル・セントラム) に るような雰囲気が漂っている。夏の強い日差しに照ら された木々の緑も鮮やかというより、落ち着いた彩り は藩校時代の蘭書や漢書と共に長嶋監督の野球用品 で訪れる人たちに優しく語りかけてくれるようだ。そ も、その心を熱く揺さぶられる。 の緑の中を少し歩くと、整然とした洋風の木造校舎が ●谷田部さんも長嶋監督に劣らず多才な人だ。テニ 姿を現す。これは現在の千葉県下の高校で唯一現存す スなどのスポーツをはじめ、社交ダンス、そしてウ クレレの演奏までをもこなす。7月には 「佐倉ハワイ る明治期に建てられた校舎である。内部は一部改造さ が数多く展示されており、プロ野球ファンならずと れたものの、外観は建築当時の姿をほぼそのまま残し ている。佐倉高校の伝統の象徴であり、今なお生徒た アンコンサート」 を主催し、司会も務めた。張りのあ ちを温かく見守り続ける。 い。このバイタリティーがあれば谷田部さんたちが ●1792年創立の佐倉藩藩校を前身とし、県立としても 進める改革も必ず実現するだろう。そして谷田部さ 100年以上の歴史を有する佐倉高校。その同窓会組織 んたちが築く土台の上に、 「伝統」 の二文字は着実に 積み重ねられていく。 である鹿山会 (ろくざんかい) の舵取りを務めるのが谷 田部さん (写真) だ。旧制中学時代の最後の卒業生で、 終戦を挟んだ激動の時代に多感な学生時代を過ごされ る声と稟 (りん) とした姿勢からは年齢を感じさせな (取材/村田 貴幸 [旭出版東京支店長] ) ている。当時は時代の状況もあってか先生も生徒と一 谷田部 満さん 略歴 緒に登校したり、生徒同士が指導し合うといった一体 昭和5年佐倉市生まれ、71歳。 感があったと回顧する。谷田部さんは自衛隊の幹部ク 千葉県立佐倉高等学校同窓会鹿山会会長 佐倉市佐倉地区民生・児童委員協議会会長 ラスとして各地での勤務に励まれ、定年後は民間会社 発行元:株式会社旭出版 に務められた経験を持つ。その経験を活かし、現在で は同窓会の他にも、地元の民生委員や社会福祉事業の URL:http://www.asahi-pub.co.jp/ 指導的な立場にあり、地域のために尽力されている。 佐倉市社会福祉協議会佐倉西部支会長 ● 「祭りと同窓会 藤崎宮秋季例大祭 (熊本市) 」 同窓会活動の活性化を目指す 特集 祭りと同窓会 『藤崎宮秋季例大祭 (熊本市) 』 九州熊本では毎年9月中旬となると、初秋の風 物詩である藤崎八旛宮秋季例大祭が開催され る。威勢のいい 「馬追い」 は迫力満点で、ハッピ 姿の勢子たちが、ラッパや太鼓を打ち鳴らしな がら馬を追って街中を駆け抜ける威勢の良い祭 りだ。そしてもう一つの特徴で、この祭りには 同窓会が沢山参加している。こんなにも同窓会 が参加してくる祭りも独特である。地域で開催 されるイベントと同窓会の関わり合いを、参加 している同窓会のうち4校に話を聞いた。 ●済々黌同窓会 平成13年度飾馬奉納実行委員長 吉田昌弘さん 写真左上:藤崎宮秋期例大祭のクライ マックス、飾馬の馬追の様子 2 窓のたより No.5 2001.10 済々黌同窓会は、高校同窓 会の参加団体の中では最古参 で一幹両枝の関係にある青年 江原会 (熊本高校) と熊商同窓 会 (熊本商業高校) とで初参加 して27年目となる。どうして参加する様になった のか?済々黌同窓会飾馬奉納実行委員長の吉田昌 弘さんにお話をお伺いした。 「当時は祭り自体に参加する団体が非常に少なく て、このままではまずいから、 『郷土の祭りの火』 を絶やさない様にしようと」 1977年頃から熊本市内の数校の同窓会組織で祭 りに参加し、郷土の祭りを盛り上げようという目 的で「高校OB連合会」 を結成。当時は市内から数 校の同窓会が参加するに留まっていたが、年ごと に参加する同窓会が増えて今では16校が参加、来 年から更にもう1校が参加する勢い。お陰で祭り 自体は大変な盛り上がりを見せている。 祭り全体として当時2・3団体だけの参加がおよそ62 団体の参加となり、多すぎるくらいにまで成長。 「今では、高校OB連合会以外にもおよそ46団体参 加される様になったので、それだけで祭りが成り 立ちますね (笑) 。一回当りの予算は、藤崎八旛宮 への奉納金や高校OB連合会の運営費等、当日の参 加者 (毎年500人) への食費等々で、動く金額は半端 ではない。しかし今年は長引く不況で寄付のお願 いも心苦しく、例年の10%以上の削減で乗り切りた い」 と、吉田さんは予算の編成にも苦労なされてい るご様子。 済々黌同窓会は他の参加団体からはうらやまし がられているという。それはどういった理由から ということを聞いてみた。 「昔から例大祭に参加しているので、実行委員会 を担当した先輩が多数いて、後輩は引継を受けよ うとするし先輩は教えようとし一生懸命運営に参 加する。つまり先輩後輩の関係がハッキリしてい る為、歳が離れていても、 『先輩は後輩を労り、 後輩は先輩を立てる』という黌風が機能してく る。これは祭りだけの関係でなく、普段の生活に 於いても良い関係がある。だから諸先輩方からの 寄付も集まる」 と、吉田さんは済々黌の同窓生と しての矜持を持って語られる。同窓会から参加す る人の動機の殆どは 「騒ぎたいから」 、しかし練習 や準備を重ねていくにつれ意識(自覚)が出来て 済々黌同窓会らしい誇りが芽生えるという。 祭りへは同窓生以外の参加もOK。最後に吉田さ んは、 「これはどこの同窓会もそうだが、法被を着 たらその日1日はその高校の人間であるという自 覚を持って参加して頂いている」 と話している。 ●東海大学第二高等学校同窓会(東海望星会) 会長 上杉 幸博さん/事務局長 田中 義洋さん 東海大学第二高等学校同窓会は今年度、母校創立 40周年・東海大学創設者松前重義先生生誕100年と いう記念すべき年でもある。 「もう既に20数回の参加にな ります。勿論、祭りの盛り上 がりの為にも参加しています が、我々同窓生の結束感をよ り強固なものにする為にも、 この行事は欠かせませんね」 同じ学舎で学んだ同窓生達 がこの一日のために集まり、 会長 上杉 幸博さん ▼−祭りと同窓会 同じ時間を共有し、一丸となって熊本の街を駆け めぐる。 「高校OB連合会」 が主催し、9月12日に開催され る 「前夜祭」 というものがある。 「同窓会によって舞台の内容は違いますが、各団 体工夫を凝らして太鼓の演奏や踊りなど盛りだく さんです」 インタビューをしている同窓会室では、慌ただ しく祭りの練習・準備が行われているが、活動さ れている同窓会役員には、若い方が多く見受けら れる。中には学生の方もおられる様だ。 「20や30、どんなに歳が離れていても先輩後輩の 関係は揺るぎないものです。しかし、先輩だから と言って先輩風を吹かせるつもりは毛頭ありませ ん。我々先輩役員は、後輩達が伸び伸びと活躍で きる雰囲気作りにがんばっていますよ」 そういえば、20歳前後の若 い役員の方々も、嬉々として 活動されている。 「逆にその繋がりが仲良しの 生涯の関係になるんです」 同窓会室の雰囲気も家庭的 で非常に良い印象を受ける。 事務局長 田中 義洋さん ●熊本県立第二高等学校同窓会 (竜胆会) 前会長 伊藤 康夫さん 1回当りの参加に必要な経費に ついてお聞きした。 「相当なもので、勿論参加さ れる方々には参加費を頂いて いるが、それ以外に卒業生か らの寄付も頂いている。その 中でも一番費用が掛かるの は、やはり当日の飲食費と馬の借用費用。うちの 団体だけで何百人も参加するからその金額は尋常 じゃないですよ」 それでも最近は、参加者は若干減少傾向である という。 「特に、20代の参加が少なくなってきている。しか し、普段の生活では殆ど話をする機会のない様な、 歳の離れた卒業生と会う機会が増え、それも楽しみ」 そして、遠方から参加される卒業生もいらっ しゃるということ。東京・大阪・福岡、海外から は遥々香港から祭りに帰郷を兼ねて参加する。 最後に、祭りに参加する同窓会としての、ねら いをお聞きした。すると1冊のパンフレットを差 3 窓のたより No.5 2001.10 し出された。このパンフレットは参加者全員に配 られるしおり的なものだ。このトビラにはこう書 かれている。 「自分の周りにいる人を一人でも楽しませることが 出来、更に祭を見に来ている人が一人でも多く感 動することが出来る様にと考えて祭に参加してい ます。この祭りが永遠に伝っていく事を願って」 ●熊本県立熊本西高等学校同窓会 (西峰会) 會長 園田 直さん 西高校同窓会は、平成6年の 初奉納以来、今回で奉納8回目 となる16校の中では若い参加 となる同窓会である。この祭 りのために特設された事務所 の奥には、荘厳な神棚が祀ら れており身が引き締まる。 「今回はおよそ250名ほどで参加します」 園田さんに一番苦労する事をお伺いすると、や はり人集めと資金集めが大変だという。しかし、 「このために本州など遠方からはるばる帰って来 て、参加する同窓生もいるとなるとやはり、懐か しい旧友と再会するため、祭りの準備にも力が入 る」 と、仲間への思いも ひとしお。 祭りに参加するキッカ ◎藤崎八旙宮秋季例大祭 ケをお聞きしてみた。 この祭りは、 「随兵祭り」 「馬追い祭り」 とも言われ、藤崎八 旛宮の放生会 (ほうじょうえ) の例祭と言われている。放生会 「我々は、同窓会組織を は、八旛宮の秋祭りに、生き物を放つ儀式で、また随兵祭り 母体として、同窓会活 と呼ばれるのは、加藤清正が朝鮮出兵で苦戦した折り、八旛 動の一環として参加し の加護により無事凱旋したので、兵を従えて祭りに参加した ています。これによっ のが始まりと伝えられる。 て同窓生の結びつきが 毎年9月11日から15日まで開催されており、メインの15日 より一層親密になって は、早朝の御神幸から始まる。御輿3基はそれぞれ牛車にひか れ、鎧をつけた随兵50人、陣笠に槍を持った長柄50人が続 いけばと考えていま き、その後に牡丹の山車を子供たちが引く獅子組、子供御輿 す。そして、各種福祉 などの神幸は延々と続き、最後に威勢のいい各団体(企業・町 施設への慰問活動も 内・有志・同窓会・その他任意団体等)からの 「馬追い」 が続き 行っています。現場へ 一大豪華絵巻が展開される。数十頭の奉納飾り馬と1万数千人 出向き飾り馬と勢子達 のハッピ姿の勢子が、向こうはち巻きで鉦 (かね) やラッパ、 のかけ声を肌で感じて 太鼓を打ち鳴らし、終日街中を練り 歩く。 「絵巻」 の折り返し地点では能 もらってます。中には の奉納があり、御旅所では仮宮御祭 昔、祭りに参加されて 儀、それに引き続き金春・喜多両流 いた方もおられたりす による能楽数番が行われる。 るので、当時を懐かし 熊本地方では、この祭りを境に朝 んで頂いている様です」 夕がめっきり涼しくなり、これを 「随 兵寒合 (ずいびょうがんや) 」 といい、 長かった夏に終わりを告げ、秋の訪 れを感じている。 旭出版通信 『電子メディアの潮流』 第5号 編集・発行 2001 年 10 月発行 株式会社旭出版 窓のたより編集部 〒 861-2236 熊本県上益城郡益城町広崎497-2 http://www.asahi-pub.co.jp/ Tel.096-289-1300 ライター 村田 幸貴 田邉 志門 河野 智子 デザイナー 本誌に対するご意見、ご要望等がございまし たら、編集部までお寄せください。 メールアドレス:[email protected] Fax:096-289-1311 4 窓のたより No.5 2001.10 どんなメディアも、永久に不変であるといえな いが、 『本は不滅である』 といえる。出版の原点を 考えてみれば、問われているのは、 『本は電子メ ディアを超えられるか』 ではなく 『電子メディアは 本を超えられるか』 というメッセージだと思える。 その昔パピルスに手書きの絵や文字を残してく れた古代人も、活版印刷により本という形で、そ の意思を現代に伝えてくれた先人たちも、また、 電子メディアを駆使する現代の若者たちも、自ら の意思をその時代に生きる人々へのメッセージと して” 夢” を育んでいることに違いない。 電子メディアによる出版は、紙媒体に比べると 字数の制限が無い、加工のしやすさ、映像、音 響、インターネットなどへの展開等々、数多くの 利点を持っている。 電子メディア化の優れた特質は、 ・異業種や様々な分野の産業をはじめ、人や文 化さえも共通の土台に乗せ、コミュニティが より円滑に行われる。 ・多面的な視点で情報活用を行うことが出来る アプリケーション性。 ・インターネット等を使用しあらゆる人が自由 に利用できるオープンな環境。 電子メディアそのものは、急成長するインター ネットやマルチメディアと深く関わる技術であ り、そこに蓄積された様々なひと・文化・産業に 関わる素材をリソースとしてネット上に浮き上が らせ、いつでも・どこでも・誰でもそこにアクセ スして自由に取りだし、加工することが可能にな る。 このように様々な人や文化や産業を積極的に結 び付けるプラットフォームとしての電子メディア は、ただ情報として資源を保全するだけではな く、それ自体が革新的なコミュニティを形成しつ つ創造的で自由な相互作用を生み出す。 同窓会や学校現場に於いての活用 学校情報や記事・同窓会会報・創立記念事業ガイド・ 入学案内等:動画と音声などを付加し、紙媒体よ りさらに魅力あるものにブラッシュアップ出来 る。これまで写真と文章で構成されていた同窓会 報に音声と動画をプラス。躍動感のあるメッセー ジを同窓生に伝えることが可能。 同窓会の会員メッセージ:同窓生のメッセージや 寄稿をCD-ROM/DVD-ROMの中に収録。収録する ジャンルは、文章・写真の他に、ビデオや音声を 織り込むことも出来る。 同窓会会員ホームページ紹介:ネットワークの世界 に点在する同窓生のホームページを集約し、リンク 集を作成。回期別・地域別・当時のクラブ別とイン デックスを設け、多面的な視点で情報活用し縦や横 の関係でユニークなコミュニティを形成。 (田邉 志門 [旭出版本社営業部メディア開発課] ) ●宮崎県立宮崎南高等学校同窓会(鵬会) CD-ROM 平成13年に創立40周 年を迎えた宮崎南高校 (宮崎県宮崎市、卒業生 約18,000人・11月に記 念式典)は、創立40周 年記念事業の一環とし て同窓会会員名簿「鵬 會名簿」を発刊。その 付録となる「鵬会C D ROM」 を併せて発刊しました。 収録形態は南高の校歌を収録しているオーディ オトラック、WindowsとMacintoshの両方のコン ピュータで見ることの出来るハイブリッド収録の データトラックで構成されています。まずオー ディオデータではピアノ・吹奏楽で演奏された2 曲、データトラックでは、会員のE-mailアドレス 集を回期別・地区別で掲載、又会員のホームペー ジ紹介等を行い各ホームページへリンクする仕組 みになっています。そのほか、現在のキャンパス の写真集・平成13年度進学状況など、名簿とは別 の視点で眺めた南高が収録されています。 当社では、CD-ROMの制作を行ってきました が、まず宮崎県外の会員様にも母校や母校周辺の 宮崎を懐古して頂く為にどういう手段でコンテン ツを見せるかという課題で、専用のアプリケー ションを用いて固有のソフトを開発して提供する 方法もあったのですが、ここはあえてインター ネットのホームページを閲覧するときに使用する 一般的なブラウザソフトを使用し、それに対応し たデータを制作してゆく手法をとりました。これ によって専用ソフトの開発を行うより短期間でコ ンテンツ開発が可能になり、会員のホームページリ ンク等のインターネットとのスムーズな連携を提 供することが可能となりました。 今回のCD-ROMには付録的な意味で宮崎近郊の 関連リンク集を掲載しております。各自治体や観 光スポット等のホームページを収録しているの で、宮崎県外におられる会員様にも懐かしんでい ただける内容に仕上がっております。 卒業生間のコミュニティがより円滑に行われるこ とを目標として企画しましたので、これにより皆 様の絆がより一層強く結ばれ、同窓会の輪がさら に大きくなることを願っております。
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