ハロー健康クラブ 24 「健康ニュース」(平成 14 年 10 月号) (監修:順天堂大学医学部附属順天堂医院 今月のテーマ 総合診療科 小林 暁子、発行者:全国商工共済振興事業団) 『サプリメントの過剰摂取に気をつけよう』 最近、コンビニでも気軽に手に入るようになったサプリメント。 サプリメントは上手に使えば、健康の維持や、増進に便利なものです。ところが、手軽に手に入るだけに心配なの が過剰摂取です。摂りすぎると健康を損ねることもあります。複数のサプリメントを使用する場合、過剰に摂り過 ぎていないか注意が必要です。 ビタミン A を強化させた栄養補助食品や、ビタミン A 製剤を過剰に摂取した妊婦から生まれた子供に奇形の発生率 が高いことが報告されています。このビタミン A はそのほかにも脱毛・食欲不振・吐き気・頭痛などの過剰症状を 引き起こすこともあります。 厚生労働省は、平成 13 年に過剰摂取による健康被害を防ぐために、健康にかかわる表示を行なう食品について表示 基準を定めた保健機能食品制度を創設しました。 《ビタミン過剰症》 ビタミンとは、体内での栄養素の働きをスムーズにしたり、カラダの調子を整えたりする微量の物質です。ビタ ミンは人間が生きていくために必要な成分ですが、ほとんどのビタミンは体内では合成できません。そのため、食 事やサプリメントから適切な量を摂取し、それを維持しなくてはいけません。 水溶性ビタミンは過剰摂取しても尿中に排泄させるために過剰症は比較的少ないのですが、体内の脂肪組織への沈 着性の高い脂溶性ビタミン A,D,K は過剰症が出現しやすくなっています。 つまり、水溶性ビタミンはまとめて摂っても無駄になる分が多くなり、必要な分だけ毎日摂取しなければ欠乏し やすく、脂溶性ビタミンは貯蔵性を持っているため、まとめて摂ってもある程度有効に使われますが、繰り返して 多量に摂取すると蓄積され過剰症になりやすいのです。 《ミネラル過剰症》 ミネラルも、人間の健康を維持する上で大変重要な役割を果たしています。 一般の食事からミネラル過剰となるのは、食塩によるナトリウムの過剰以外、通常はほとんどありません。しかし ミネラルは、適当な摂取量のゾーンの幅が狭く、ミネラル間のバランスが壊れやすいといわれています。このバラ ンスが崩れると身体にいろんな不調が出てきます。1つのミネラルを過剰に摂ることにより、このバランスが崩れ てしまうことのないように摂取量に気をつける必要があります。 ビタミン・ミネラルの一日の所要量目安(成人男性)と過剰症状 栄養素名 一日の所要量目安 過剰に摂取した場合に起こる可能性のある症状 急性症状 吐き気、頭痛、下痢、眩暈 ビタミンA 600μgRE 慢性症状 妊婦の妊娠初期の過剰摂取で奇形 食欲不振、低体重、脱毛、口角亀裂、肝肥大 カロチンの過剰摂取による肝皮症 ビタミンB1 1.1mg − ビタミンB2 1.2mg − ビタミンB6 1.6mg 手足の運動失調、知覚神経障害 ビタミンB12 2.4μg − ビタミンC 100mg 人により下痢、胸焼け、頻尿、発疹の可能性 全身倦怠感、吐き気、食欲不振 ビタミンD 2.5μg ビタミンE 10mg ナイアシン 16mgα-TE 葉酸 200μg ビオチン 30μg − パントテン酸 5mg − 腎臓でのカルシウム沈着 目の痛み、皮膚のかゆみ、下痢、多飲、多尿 カルシウム 鉄 リン 600mg (18∼29歳700mg) 下痢、腹痛、血栓塞栓症 血管が拡張することによりおこる皮膚発赤 興奮、不眠、てんかんを悪化させる 幻覚、脱力、食欲不振、腎・尿路結石 10mg ヘモクロマトーシス 700mg カルシウムの吸収を妨げる、副甲状腺亢進 18∼29歳 310mg マグネシウム 30∼49歳 320mg 50∼69歳 300mg 傾眠、低血圧 70歳以上 280mg カリウム 2000mg 銅 1.8mg(70歳∼1.6mg) ヨウ素 150mg マンガン 4.0mg(70歳∼3.5mg) 腎機能障害、不整脈 溶血性黄疸 甲状腺腫 鉄欠乏性貧血、傾眠、低血圧 18∼29歳 60μg セレン 30∼49歳 55μg 50∼69歳 50μg 皮膚障害、脱毛、貧血、呼吸障害、肝硬変 70歳以上 45μg 18∼29歳 11mg 亜鉛 30∼49歳 12mg 50∼69歳 11mg 貧血、発熱、胃部不快感 70歳以上 10mg 18∼29歳 35μg クロム 30∼49歳 35μg 50∼69歳 30μg 肝臓障害、腎臓障害、肺がん 70歳以上 25μg モリブデン 30μg(70歳∼25μg) 成長中止、貧血 以上のような過剰症状がおこる可能性があるので、サプリメントの過剰摂取には気をつけましょう。 食事の大半を加工食品・外食で摂る人にとって、サプリメントはとても有用ですが、サプリメントに頼りすぎず、 日常の食事ではどうしても不足しがちな栄養素を補う補助食品として使うようにしましょう。 サプリメントは薬の作用を弱めたりするものもありますし、病状によっては避けたほうがよい場合もありますの で、病気で治療中・服薬中の方は医師に相談してから摂るようになさってください。また、妊娠中・授乳中の方は 摂取基準量が変わってきますので、摂取量をご確認ください。 参考文献:第2版 栄養食事療法必携、医薬出版株式会社 国民衛星の動向(2002年)、厚生統計協会 食事療法、医学書院、最新ミネラル読本、新潮社
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