平成 26 年 7 月 ウィングロード/チェックランプ点灯-空燃比リーン 原因分析報告書 <車両> 車名 :ニッサン ウィングロード 型式 :TA-WFY11 年式 :平成14年11月 エンジン型式:QG15 走行距離:140,333km <症状> エンジンチェックランプが点灯した。お客様に点灯した時の状況を聞くと、高速走行後気 づいたら点灯していた。特に走行に違和感はなかったとのこと。 入庫時、チェックランプは点灯しているものの、エンジン不調を感じることはなかった。 診断機HDM3000を使用し、ダイアグコードを確認すると次の結果を検出した。 検出コード:P071 空燃比リーン 検出条件 :暖機後、混合比が非常にリーン状態で O2 センサ出力がはりついたまま 反転しないとき 図 1.ダイアグコード検出結果 P0171 というコードは、2トリップ方式で2度の暖気後も同じ状態が続いた時に点灯さ せる。フリーズフレームデータを確認すると、水温約82℃、車速0km/h、空燃比補 正比92%でフリーズデータ上では特に異常はなく、本症状の発生要因を推測することは できなかった。試運転を実施し、チェックランプが再点灯するか確認するもECU内部に すら記憶されなかった。 <原因分析> エンジンは ECU(エンジンコントロールユニット)が各部センサからの情報を集め、正 常なエンジン燃焼のために、適正な空燃比・噴射量をインジェクターに、火花の点火タイ ミングの指示を点火系統に送る。燃料と空気ともに適正量でなければエンジン不調となる。 水温センサ エアフロメーター ECU スロットルセンサ クランク角センサ O2 センサ インジェクター 点火系統 燃料ポンプ 図 2.エンジン電子制御システムの概要図 問診ではエンジン不調等の異常は感じないということだが、実際には ECU が補正をかけ 濃くしているのだから何らかの兆候が見られたのでは。 【空燃比リーン異常→チェックラン プ点灯】の要因として考えられるのは、点火系統の不具合、吸気系統のエア吸い込み、エ アフロメーターの特性ずれ、燃料ポンプの燃圧不良、O2 センサ不良、ECU 不良等が考えら れる。 前回の入庫時(H26.5)に、エアフロメーターの異常値検知、点火系統(プラグ)の消耗 具合が見受けられたためこれらの部品は交換済であり、今回の入庫では正常に機能してい ることを確認できた。 エアの吸い込みについては、パーツクリーナーを考えられる箇所に吹き付け排ガス及び エンジン回転状況の確認をしたが、特に異常は見られない。ECU も O2 センサの信号のも と補正をかけているので OK と判定できる。燃圧は実測定の結果問題なかった。 再度、試運転→データ採取・分析を繰り返した結果、O2 センサに不正なデータが見られ た。フィードバック制御の反応が鈍く(日産基準は10秒間に5回以上が正常値)、リーン にはりついていくことが確認できたのである。 正常な波形から、突如 0V(リーン)に 張り付いた状態になった。 図 3.現車採取データ(O2 センサ リーン張り付き状態) フィードバック制御の反応 (反転)が鈍い 図 4.現車 O2 センサ アイドリング時計測 回転数 2000rpm まで上昇さ せた後も反応が鈍い 図 5.現車 O2 センサ エンジン回転数約 2000rpm まで上昇させた時計測 O2 センサは、通常であれば約0~1V を上下しながら繰り返す動きになります。ECU の 制御により、濃い燃料にしているにも関わらず反転しない状態がある一定期間続き、エン ジン再始動後も同じ状態が続くとエンジンチェックランプを点灯させる。 図 3.の O2 センサのデータを見ると、ある時1V(リッチ状態)に張り付いたり、0V(リーン) に張り付いたり、またフィードバックの回数も反応が悪く、ECU が制御をかけてるにも関 わらず反転が適正に行われていない。(図 4.・図 5 参照) エラーが発生する程度には不正動作を繰り返さなかったが、お客様運転時には、このよ うな不正動作が一定時間持続してチェックランプ点灯に至った可能性は十分にあると考え られる。 O2 センサフィードバック制御-------------------- 噴射信号 ECU 残存酸素量 インジェクター 適正空燃比の燃料噴射 排気ガス O2 センサ エンジン 濃い(酸素が少ない) →ECU が燃料を薄くする 理論空燃比<基準電圧> 薄い(酸素が多い) →ECU が燃料を濃くする 排気ガス中の酸素量を約0~1V 信号に変え、ECU が燃料の増減を繰り返し、 理論空燃比に近づける。 -------------------------------- 試行的に、新品の O2 センサを取り付けて計測したデータを検証すると、1V(リッチ)・0V(リ ーン)いずれかに張り付いたままという状態は出現しなくなった。 図 6.新品 O2 センサ アイドリング時計測 図 7.新品 O2 センサ エンジン回転数約 2000rpm まで上昇させた時計測 フィードバック制御がより安定することも確認できた。アイドリング時(図 6)、エンジン 回転数を約 2000rpm まで上昇させた時(図 7)それぞれ反転回数が格段に上がり、基準値 を満たす状態になった。 以上の分析結果をもとに、今回のチェックランプ点灯の要因としては O2 センサ不良(劣化) が最も可能性が高く O2 センサの交換が必要と判断した。 (サービス部 長野 清志)
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