建設産業の民主化運動のさらなる前進のために 〈中間報告〉 第4 3期建設政策検討委員会 自治)を基軸としながら、これを補完する事業 1.はじめに 所レベルでの使用者と事業所従業員代表委員会 との共同決定制度(事業所自治)によって形成 建設政策検討委員会は、21世紀におけるさら されています。賃金を例にとって見ると、主と なる運動の取り組みについて常に検討と推進を して協約自治とその一般的拘束力宣言の制度に 図ることが必要であるとし、今年度の政策検討 よって未組織労働者を含めた賃金水準が決定さ 課題を!建設産業の民主化運動のさらなる前進 れています。建設業は全国適用の最低賃金協約 のために"という課題を設定し、欧米の建設産 と一般的拘束力の宣言により、全連邦レベルで 業の現状や労働法制、労働協約等の事例を研究 の最低賃金制が施行されています。労働協約の し、その教訓等を日本の建設産業の民主化にど 適用率はドイツの全労働者の84%に及ぶと推計 う適合できるのか、全建総連の建設労働の今日 されています。 的課題をいかに前進させることができるのか等 建設業での労働者数は2 002年当初で258万人 について研究・検討を進めることとしました。 (総人口 が 約8 236万 人、就 業 者 数 は 約3 877万 委員会では、今日までの研究と検討課題につい 人)で、前年に比べ6. 5%減少しています。建 て取りまとめ、さらにその具体化にむけて今後 設労働市場では、建設作業を下請等の重層的な も研究・検討をすすめるという意味で、中間報 請負によって行う例が増えていますが、それが 告として以下について取りまとめました。 多くの小規模事業によって担われています。ま た、景気や天候に大きく作用され雇用や収入が 不安定になりがちとなり、3K労働と重なって 2.欧米諸国の建設労 働と労働法制、労働 協約について(特徴 ・概要) ! 建設業への若者の入職者が減少しています。 ※元請・下請に関する法制度については無いで すが、公共工事の発注・契約のルールを定める VOB(建設工事請負契約規則)には元請・下 請関係を律する規定がいくつか設けられていま す。 ドイツ " ドイツの労働協約の当事者は労働側代表組織 フランス と経営者は二つの団体組織です。建設分野の労 フランスには労働組合のナショナルセンター 働者組織(建設農業環境労働組合)は独労働組 が五つあります。ユニオンショップ制は認めら 合連盟DGB(777万人)の傘下に在る組合、 れていません。フランスにおける労働者の権利 使用者団体はドイツ建設産業協会とドイツ建設 と雇用・労働条件は大別して法令(大部分が労 業中央協会。この団体が労働協約を結びうる団 働法典に法典化されている)と労働協約の二つ 体です。 により最低基準が設定されています。フランス ドイツの労働協約は、産業別労働協約(協約 ―1― の労働協約は全国または地域レベルで締結され る産業部門別労働協約と各企業または事業所単 位で締結される労働協約に大別されます。フラ ! ンスの労働協約は日本と異なり、使用者単位で 多くの組織された建設労働者は、AFL−C 適用され、当該労働協約を締結している使用者 IO(アメリカ労働総同盟!産別労働組合会 または使用者団体に所属する使用者に雇用され 議)の14のビルディング・建設職種部門に属す ている全ての労働者に適用されます。また産業 るユニオンのいずれかに加入しています。ただ 部門別労働協約の多くが政令により拡張適用さ し大工ユニオンは最近脱退しました。全国に約 れています。違反した場合は罰金が科せられる 8000の所属ユニオンの支部が存在しています。 ものとなっています。 近年の傾向としてユニオンの組織率(1999年建 アメリカ 労働法典において、フランスの労働者代表は 設産業の雇用者数約6 50万人、同年の組織率は ①自主的団結である労働組合、及び②従業員に 17. 8%)は地域によっては減少しています。ユ より選出される法定の従業員代表の、二元的労 ニオンに属しないノンユニオン労働者が存在し 働者代表システムが制度化されています。 ています。ユニオンは、使用者と労働協約を締 賃金額の決定は個別労使の自由ですが、全国 結し、労働者の賃金、労働条件などを決めてい 共通の法定最低賃金を下回らないこと、労働協 ます。賃金は、職種とともに見習い工、熟練工、 約の定める最低賃金を下回らないこと、物価と 職長の熟練度別の賃金が定められており、賃金 の自動スライド条項をおかない事という制限を は週給を基本とし、労働協約では!時間給"が 設けています。 明示されます。 賃金は労働法典及び労働協約において賃金額 一方、建設業者(法人企業約62万社、非法人 の決定、賃金の支払い方法、賃金明細書の交付 約127万社)は多くの団体、協会を組織してい と記載内容などに関する規制があります。賃金 ます。主なものはAGC(米国ゼネラルコンス 額の決定は個別労使の自由ですが全国共通の法 トラクター協会)、NCA(全国建設会社協会)、 定最低賃金(20 02年1月現在、1時間あたり6. 65 ABC(建設請負者協会) 、NAHB(全国住 ユーロ・日本円で約900円)で、建設産業の現 宅建設者協会)などがあります。AGCは最大 場労働者は、職務内容、自律性と自発性、専門 の組織で、労働協約交渉等を会員の建設会社を 性、教育訓練、適合性、経験を基準として四つ 代表して行います。NCAは設計・施工を行う のレベルに区分されています。労働時間は法定 大企業の協会、ABCはオープンショップ・コ 週35時間となっています。その他、年次有給休 ントラクター(通常建設ユニオンとの労働協約 暇があり、建設産業部門(及び土木工事部門の は結ばず、オープンの労働市場から雇入れま 全ての企業は有給休暇金庫に加入義務を負いま す。自社の方針と雇用・労働条件を定めてい す。使用者は期間の定めの無い労働協約により る)の協会、NAHBは住宅産業を代表する協 雇用されている労働者を同金庫に登録し、四半 会です。 期ごとに定められた率を保険料として金庫に支 労働条件を規制する法律は、デービスベーコ 払います。また悪天候休業手当もあります。 ン法(公契約法)、公正労働基準法があります ※元請・下請契約に関する法制度は、①1975年 が、デービスベーコン法は1931年に制定された の下請に関する法律、②この法律を公共工事に もので、連邦工事の工事及び連邦の補助を受け 適用するについての実施細目等を定める公共契 た工事で、労働者に支払う賃金と付加給付を定 約法典中の関係条文( !下請業者保護のための めています。この法律は2000ドル以上の請負工 根本的条件")があります。 事に適用され、労働長官の定める通常賃金より 低くてはならないとし、工事発注機関が同法実 施の第1責任者であります。違反行為は工事契 約不履行と見なされ、元請・下請業者は政府の ―2― 行政命令を受けます。また公正労働基準法は賃 業界団体は建設業界を代表するCC(建設連 金・労働時間法として1939年に制定され、この 合)など主に五つの団体があります。一方、イ 法律には最低賃金、最大労働時間、残業手当、 ギリスの建設産業で働く者を主に組織している 同一賃金及び少年労働基準が定められていま のは!建設・関連職業及び技師労働組合"(U す。1日8時間、一週40時間を超える労働時間 CATT・123, 000人)や!運輸一般労働組合" または、土曜、日曜、祝日の全労働時間には超 (T&G・858, 804人)などです。 過勤務賃金を払うのが一般的方式となっていま イギリスの労働協約は、労働協約はCCを中 す。大工職人の基本給(1998年7月現在)は、 心とする雇用者側と、ユニオン(T&G=輸送 時間当たり2 6. 50ドル、付加給付は時間当たり 及び一般労働者組合が最大組織で主要な団体は 10. 555ドルとなっています。 3団体)が代表する労働者側によって(建設産 建設労働者の保護制度は、社会保障(引退金、 業合同労使協議会は1998年発効)建設作業につ 入院手当、障害保証、遺族手当)、失業保険(連 いての!作業規則協約"が結ばれます。労使が 邦と州の法律による統合保険)、労働災害保険、 産業規模の交渉機能をもち、そこでの合意にも 職業安全・衛生法、従業員退職後収入確保法、 とづく労働協約によって基本的な賃金・労働条 メカニックス・リーン、支払いボンドなどがあ 件が規制されています。賃金は熟練度に応じて ります。そのうちメカニックス・リーンは、特 四つのランクの賃金率を設定し当てはまる職種 に建物建設または改良のために労働や材料を提 を例示し規定しています。休暇制度は使用者が 供した人を守るため法律で定めた権利で、公有 !休暇印紙"を管理運営会社から購入しカード 財産にはリーン(日本の法律用語の!先取特権" に添付、証紙の金額は労使交渉機構が決定しま に相当する)を課すことはできませんが、労働 す。労働者の訓練については、業界団体が労働 者、材料納品業者、または下請業者が元請によ 者の訓練・教育を行うための組織を作り、技能 る支払いを受けない場合、発注者にリーンの請 レベルを認定する制度を設けるなどして、労働 求を提出するか、停止請求ができるとしていま 者の能力開発を図る活動をしています。 す。州によっては、賃金、材料代金などの支払 いを受けていない当事者は、たとえ発注者から 元請に全工事費が支払ってあってもリーンを申 し立てる権利をもちます。発注者は、元請業者 が下請業者や材料納入業者に支払いをしなかっ た場合、契約工事の一部について、2回支払わ 3.日本の最近の建設 雇用の動向について ざるを得なくなります。支払いボンドは基本的 ! に工事契約の第三者を保護する働きをもち、建 1996年以降の建設投資額の減少は受注競争の 設に携わった労働者や材料納入社に対する支払 激化を促し、建設企業の収益率の低下、建設単 いを保証するものであります。 価の下落、建設業の新規求人数の低下、倒産件 建設市場の動向 数の増加を招いています。又、受注競争の激化 " は赤字受注の増加をもたらし、下請専門工事業 イギリス 者に対する指値による発注といったしわ寄せも 通産省が発表した統計によると、イギリスの 生じています。これらは、専門工事業の就業者 建設産業全就業者数は2002年では1, 557, 000人 で大きな割合を占める雇用条件の不明確な就業 で、 !被用者"968, 000人、 !自営業者"は590, 000 者に影響を及ぼしています。 人と民間の建設関係の契約会社は1 68, 123社で 24人未満の労働者を雇用する会社は164, 000人 となっています。 ―3― " が見られないなど好材料が見当たらない状況に 建設労働市場の動向 あり、本格的な回復までには至らず、同1. 8% 建設業就業者数は1997年まで増加したあと、 減と減少基調が続くと予測しています。 以降減少に転じました。建設経済研究所が予測 2004年度の名目建設投資は対前年度比3. 4% した2001年度∼2003年度の建設業就業者数は、 減の52兆708億円となる見込みとしています。 2003年度には600万人を割り込むものと見込ま 景気の本格回復が達成され、それが民間建設市 れています。 場に反映されるまでには当分時間を要すること 今後、建設投資の削減、不良債権の処理によ が見込まれ、また公共工事縮小の流れのなか り、!建設企業の過剰雇用の顕在化"が避けら で、今後5年間を見た場合、建設投資が縮小傾 れず、中長期的な雇用対策・創出が求められる 向を辿ることは不可避であり、中長期的には財 としています。 政の逼迫、高齢化・人口の減少など、当面、一 層の縮小は避けられないと見ています。政府建 # 設投資は6. 2%減、民間住宅投資は0. 7%減とし 建設労働市場の特性 ており、引き続き減少傾向が続くとしていま す。 建設労働市場の特性としては、 ①バブル期以前においては、入離職者とも高い このように建設投資の展望が明るくない中 水準であったが、ともに近年では低下していま で、建設経済研究所の!建設市場の中長期予測" す。 (2001年5月発表)よる!維持・補修の市場規 ②総じて就業者の勤続年数が短く、高い流動性 模予測"では、政府建設投資が1 0年度までが が続いています。 2%、その後の20年度までを1. 5%として政府 ③建設技能労働者は転職の可能性を高めてお 建設投資の伸び率をゼロとした場合の維持・補 り、建設業の賃金や就労形態の見直しが進行し 修市場の規模は05度では23兆5000億円、15年度 ています。 には27兆5000億円、20年度には29兆円となって おり、リフォーム、リニューアル市場が増加す 等の特徴が指摘できます。 るとしています。 4.日本の建設産業の 展望について ! " 建設産業の展望 建設経済研究所の調査によると、建設市場の 縮小の中で許可業者当りの建設投資額(名目) 建設市場の展望 は、91年の1. 6億円から2002年には0. 99億円と (財)建設経済研究所が行った!建設経済モ 4割減、また、就業者一人当たりの建設投資額 デルによる建設投資見通し"によると、2002年 をみると91年の1360万円から2 002年の960万円 度は、建設投資全体で前年度比名目7. 1%減の と3割減となり完全な供給力過剰となっていま 5 6兆5200億円と16年ぶりに60兆円を割り込む結 す。さらに、今後も建設市場の縮小は政府部門 果となりました。政府建設投資が1 0. 2%減、民 を中心に不可避の状況の中では、倒産及び就業 間住宅投資が3. 5%減となっています。2003年 者の解雇、賃金・労働条件の切下げ等、市場の 度は、建設投資全体で対前年度比4. 7%減の53 規模に応じた調整は避けられないとしていま 兆8818億円となると見込んでいます。政府建設 す。 投資は国、地方とも減少基調が続き、8. 8%減 こうした中で、建設産業に求められる雇用対 と予測、民間住宅投資も2003年に適用期限を迎 策の充実、教育訓練に対する企業、業界の取組 える住宅ローン減税に伴う駆け込み着工の動き み強化、技術・技能の伝承を可能とするシステ ―4― ムの整備・強化などが重要であり、健全な生産 今日の建設産業の動向は、全体的に縮小傾向 システムの維持を図っていくことが必要として にある中で、大手ゼネコンや住宅企業が!生き います。 残り戦略"として建設労働者など働く者の犠牲 こうした動向と市場の特徴の中で、建設現場 のうえに企業の存続をはかるということが顕著 では、賃金・労働条件の低下、指値発注等によ となる一方、雇用形態の多様化、建設業にも労 る下請業者へのしわ寄せなどが進行しており、 働者派遣法の適用を求める日建連等の動きがあ 建設労働者、職人へ犠牲を転化してきていま ります。 す。一方、町場では住宅企業の進出が進んでき 建設労働をめぐる情勢も大きく変化してお ている中で、全建総連としての仕事対策とあわ り、これに適切に対応していくことが求められ せ、建設産業の雇用ルールの確立が重要であ てきています。 り、諸外国の建設労働運動などを参考としなが こうしたことから、欧米諸国の労働法制、労 ら、日本における!公共工事における賃金等確 働協約等から学び、全建総連として建設労働者 保法(条例)(以下!公契約法(条例)"という)" の雇用と仕事、くらしを守るために、 !建設労 をはじめ、建設労働者、職人が安心して働ける 働者保護法制"の創設などにより大手ゼネコン 環境つくりを強化することが求められていま や住宅企業の横暴に歯止めを法的にかぶせる対 す。 策を講じること、労働協約の雛型を作成し締結 運動を推進することなど、建設労働者の法的保 護や賃金、労働条件決定を定めるルールを定め 5.全建総連の#建設 産業の民主化$運動 のさらなる前進のた めに ることが必要であるとし、さらに、現在、厳し い労働環境下のなかで、その運動を通じて建設 労働者を広範に組織するという展望をもった運 動をさらに前進させることが重要であることか ら、96年、97年の!建設政策検討委員会中間報 告"を踏まえつつ一歩踏み込み、具体的対策の 全建総連は1 989年に!外国人労働者問題ヨー 検討を行うこととしました。 ロッパ調査団"を派遣しました。この調査を通 ヨーロッパ主要国の建設業では、 !労働者" じ!建設業で働く多くの労働者の賃金、労働条 は常に主役の座にありますが、日本では、元・ 件は、外国人労働者でも同じで、労働者の賃金 下請関係の陰に隠れて労働者は建設生産の表舞 を決定する仕組みは、建設関係の経営者団体と 台に登場することが少なく、そこには労働者を 労働組合の本部が協議して、基本的な賃金、労 視野の外におく大手建設企業の姿勢にあるとい 働条件を締結し、それを受けて各企業規模で、 えます。 経営協議会を開催して、具体的な賃金、労働条 今日の重層下請構造の実態は、建設産業の近 件を決めることとなっており、全国レベルの協 代化を遅らすばかりでなく、建設労働者の低賃 約をもとに職別の賃金等が協議されることにな 金、労働条件の悪化を助長するものであり、建 っていること"などが明らかになったことで 設産業の民主化は避けて通れない、建設労働組 す。 合の大きな課題といえます。 また、1996年には全建総連建設政策検討委員 会において、!建設産業の民主化と労働協約の 意義"(中間報告)、1997年には!建設産業の民 主化・近代化と労働協約"(中間報告)を発表 し、建設産業の民主化の推進と労働協約を展望 した運動の推進を提起してきたところです。 ―5― ! 検討すべき課題 ①!建設労働者保護法制"の創設、公 契約法(条例)の制定の課題 ア)日本経済の再構築は、規制緩和による市 本とした労働者の結集を図ることが重要で 場原理・競争強化によってという流れはす す。そのため、公共工事入札、契約適正化 でに雇用・労働の分野までに及び、有期雇 法の国会審議での内容(二次下請以下の代 用や派遣労働の対象拡大、さらに企画業務 金の透明性の確保について違法性があれば 型裁量労働制の導入によって、雇用安定を 公開という答弁)や附帯決議(建設労働者 破壊し労働者の権利を侵害する深刻な事態 の賃金・労働条件が適切行われるよう努め をもたらしています。同時に企業の競争力 ること)を生かすことなど、現在すすめて 強化、事業構造の転換などを理由とする解 いる公契約法の制定運動の強化・実現とあ 雇や雇用・就労形態の多様化などに伴う解 わせ、今日の建設産業の状況に対応できる 雇や雇用、労働時間など労働条件をめぐる 労働協約の内容を明確にし、その機能の強 トラブルが増加しています。その要因は、 化と労働者の保護を盛り込んだ!建設労働 労働契約に関するルールがこれらの変化に 者保護法制"を創設することが必要である 対応できるよう整備されていないからで と考えます。現行の法律に!建設労働者の す。 雇用の改善などに関する法律"(建設雇用 改善法)がありますが、この法律の目的で イ)建設産業においては、建設投資の減少に は!建設労働者の雇用の改善、能力の開発 より急激な市場規模の縮小となり、建設産 及び向上、福祉の増進を図る"とし、建設 業全体に大きな影響を与えています。平成 雇用改善計画の策定を定められ、事業主の 8年度から12年度にかけて、大手ゼネコン 義務が定められていますが、実際は遵守さ 等50社の受注高は20. 8兆円から15. 0兆円へ れていないばかりか、 !建設労働者の福祉 と減少しています。一方で、営業利益(営 等に関する事業"(第九条)においては事 業利益、営業利益率、販売管理費、従業員 業への助成金を行うことが主であり、建設 数は51社ベース)は0. 48兆円から0. 49兆円 労働者の賃金、労働条件、労働者保護策が と横ばいであり、営業利益率は、2. 3%か すっぽりと抜け落ちており、今日の建設労 ら3. 0%と上昇しています。受注高の大幅 働の諸環境や状況の中で機能を果たせない な減少にもかかわらず利益が減少していな 法律ではないかと思われます。こうしたこ いのは、厳しいリストラにより経費を削減 とから現行の建設雇用改善法の改正・見直 し、利益を捻出しているからであり、実際 し、または建設労働法の創設による新たな に各社の販売管理費は1. 3兆円から1. 0兆円 !建設労働者保護法制"を制定させること に、また、従業員数も18. 2万人から14. 4万 が必要であろうといえます。 人に減少しています。こうした市場規模の 急激な縮小は、今後すべての建設企業に対 エ)全建総連が労働協約の主体となるために して大きな影響を与えることとなります。 は、①組織内の事業者と労働者の十分な話 企業間の競争は激化し、生き残りをかけて し合いによって使用者としての責任を明確 経営基盤の強化に取り組まざるをえないこ に果たしていくこと、②地域から労働協約 ととなり、これに失敗した企業は市場にお を展望するため、その地域の事業者、事業 いて淘汰を迫られることとなります。建設 者団体をパートナーとして労働者の賃金・ 産業の再編が始まろうとしているといえま 労働条件を真摯に話し合うこと、③野丁場 す。 の未組織労働者への働きかけを強めること 等、課題は多くありますが、法制定とあわ ウ)こうした変革期にある建設産業に対し て、全建総連は、建設労働者の組織化を基 ―6― せ現場労働者の組織化を両輪としてすすめ ていくことであろうといえます。 ③ オ)全建総連として、!公契約法(条例)"の 町場の再構築の課題 制定運動の強化とともに!建設労働者保護 町場の賃金・労働条件の向上を図る運動は、 法制"の創設・制定に向けて、法律家等を !協定賃金"から!協約賃金"という展望をも 含めた専門委員会を作り検討を進めること った課題として、またこの賃金運動は町場の伝 が必要といえます。あわせて、労働協約締 統的な住宅生産とは切り離して存在しません。 結にむけた運動を強化・推進するために、 いわゆる受注の中心に大工・工務店があり、各 !労働協約条項の雛形"を策定し、その実 職との分業関係をもって共存しているという図 効を企業交渉などを通じてその実現と拡充 式であり、この再生こそが大手住宅企業の介入 を進めることが有効であるといえます。 や横暴を許さず、健全な町場における!労使" 関係を構築させることであり、賃金・労働条件 ② の向上にむけた第一歩となりうる可能性を秘め 野丁場における組織化の課題 ており、労働組合がそれを主導できる立場が存 全建総連は71万人を組織(25. 59%)してい 在するといえます。それは公共工事にも同じで ますが、建設現場労働者の本格的な組織化はい あり、地域の公共工事は地域の中小零細建設業 くつかの試みがなされてきましたが、依然とし 者が担っていくという視点を重視していくこと て大きな成果を見ることはできず、圧倒的な現 も求められてきます。 場労働者の組織化は遅れています。 そこに中小零細企業の組織化による民間・公 全建総連は、この建設現場労働者の組織化を 共工事、住宅生産等を担いうる!企業集団"が 図る課題として、①企業交渉の強化・推進。② 要求され、そのもとに職人、労働者を結集し、 !公共工事における入札及び契約の適正化の促 仕事を分配(供給)できる基盤も構築できるも 進に関する法律"の付帯決議等において、 !公 のと思われます。 共工事の透明性の確保からして、二次下請以下 の代金を情報公開法にのっとり公表させるこ ! 検討課題の具体化に向けた 措置 と"!中小、中堅建設業者の受注機会の確保、 建設労働者の賃金・労働条件が適切に行われる こと"などを根拠に運動を強化すること。③建 ① 労働協約の雛型の作成と!建設労 働者保護法制"の創設に向けた検討 退共の貼付・適用推進や安全確認書の獲得など の運動を強化すること。④公契約法の制定運動 を強化すること、とくに地方自治体での請願・ 労働協約は、労働者保護に果たす役割は大き 制定運動を中心にその展開・打開を図ること。 いことであります。労使が互いの利益の上に立 ⑤!建設労働者保護法制"の創設・制定と、建 脚し、締結していることにあります。全建総連 設現場労働者の賃金・労働条件等の労働契約締 は企業交渉などで安全確認書の締結など一定の 結運動を推進すること。そのために労働協約条 前進をみせているものの、 !労働協約"の雛型、 項の雛型を作成し、労働協約締結を実情に応じ いわゆる全建総連が全国的規模の企業交渉での 企業に要求していくこと。⑥全建総連がその主 模範的な労働協約条項が定まっているわけでは 体となれるよう未組織労働者への働きかけを強 ありません。今後、全建総連が全国規模の労働 化し、労働協約締結を展望すること。⑦労働者 協約を展望していくならば、労働組合としての 供給事業などを当面推進しながら野丁場の組織 組織体制や対策が重要なことは認識しつつも、 化を推進することが必要といえます。 当面、ドイツやフランスなどの労働協約を参考 にしつつ、全国の企業交渉で企業に提示する全 建総連としての労働協約条項を整理、作成し、 ―7― !労働協約の締結"を求め、全国各地で統一的 に運動することは建設業界におおきな反響を起 あわせて、①で示した!建設労働者保護法制" の創設も合わせて取り組む必要があります。 こすことになります。そのためにも労働協約の また、すでに取り組まれている公契約法の制 雛型を検討・作成していくことが必要といえま 定運動の全国展開と前進をはかるための対策が す。 求められます。 また、 !建設労働者保護法制"の創設は、現 行の労働基準法が、常用雇用労働者に適用する ③ 野丁場労働者の組織化に向けての !建退共"等の活用と労働条件拡充 にむけた検討 (日雇、パートなどへの適用も在る)もので、 建設労働に直接適用されにくい法律として存在 していること、前述したように建設雇用改善法 が労働者保護として十分な機能を果たしていな 建退共は本来、期間労働者に対する労働福祉 いことに鑑み、建設労働に特化した!建設労働 の面から、国と業界、そして私たちの要求によ 者保護法制"を創設する必要があると思われま って作られたものです。全建総連の事務組合、 す。 任意団体を通しての加入者調査結果では4万1 そこで、以下の保護法制の創設のための検討 ・研究をしていくことが必要といえます。 千人(全体の建退共共済者は16万人)と圧倒的 に少数にあります。特に、全国で被共済者は240 〔!建設労働者保護法制"の創設・制定の内 万人といわれる建設作業従事者の多くは!未加 容事例案〕は以下の通り 入"となっている状況にあります。権利として ○建設現場に雇用された労働者の賃金・労働 退職金が積み立てられていることを知らせるこ 条件、労働福祉等の雇用契約締結の義務付 と、そしてその当該労働者への印紙貼付状況等 けと不履行使用者への罰則規定 やその月数の合致など組織的に調査し、野丁場 ○労働安全衛生法の遵守、職場環境の改善向 上 の組織化のひとつとして、その促進を図るため の対策を講じていくことが必要です。あわせ ○公共工事設計労務単価を準用した最低賃金 制度の導入の明記 て、ドイツ、フランスなどの労働条件を参考に しつつ、労働条件の改善のための方策を検討す ○賃金不払い等の元請責任の明示 ることが必要です。 ○建設業退職金制度の義務化 ○技術技能向上等のための職業訓練基金の設 ④ 労働者供給事業、技術・技能訓練 の向上に向けた検討 立 ○その他 現場労働者にとって雇用の確保ほど重要な問 題はありません。現場労働者は、現在の仕事が ② 下請保護、労働者保護対策に向け た検討 終われば解雇されたのも当然で、次の仕事が無 ければその日から収入が無くなります。その重 元請企業のダンピング発注や倒産等による下 要な雇用対策として、労働組合が労働者を組織 請企業への保護対策は、労働者保護とあわせ重 し、企業などに供給するシステムや制度を作る 要な課題です。アメリカの下請契約、ボンド制 ことが必要であり、労働協約を締結するために 度や!メカニックス・リーン制度"等を参考に も重要な要素となります。そのため、その組織 して、下請業者や建材業者保護のための日本版 化を図ることは技術・技能が優れものであると 保護制度を検討することが必要といえます。そ いうことを認識させることが求められます。 の際は、下請業者に多大な負担とならないよう な措置が必要であります。 労働者供給事業は職業安定法第45条で労働組 合による労働力の提供ができることになってお ―8― り、検討をすすめていくことが必要と思われま 業者が健全に発展し活躍している例のように、 す。 町場における経営基盤、営業体制の強化のため また、技能者養成、技術技能の向上などを推 進するためには、国や地方公共団体、建設業界 の支援体制の強化と労働協約実現のための検討 を進めることが必要です。 ・企業等による!技能者養成基金"(仮称)の 創設によることが必要であるといえます。 6.今後の建設政策検 討委員会での検討・ 対応について この事業や対策を講じるまで、様々な困難をも たらしますが、その実現に向けた検討が必要で す。 ⑤ 町場工務店の経営基盤強化のため の対策の検討 以上、検討課題とその措置について記述して きましたが、全建総連運動のなかで重要な課題 町場の機能が大手住宅企業などの進出で変化 のひとつでもあり、本年度中に検討結果や提言 してきている中で、住宅生産において長年培っ することは時間が少なく不十分なこととなるた てきた建築職人、建設労働者の技術・技能が発 め、来年度も引き続きこの課題を中心に建設政 揮できるばかりでなく、地域住民との連携、地 策検討委員会で検討をすすめることとし、本年 域経済の活性化・波及効果からして、町場の再 度は経過報告と問題提起、課題提起にとどめる 構築は重要な課題といえます。住宅着工の減少 こととしました。 などのなかで厳しい現状はあることは承知しつ つも、町場工務店は!元請"受注を原則として 営業活動を展開することであり、それを労働組 合が支援するという図式をつくりあげることが 必要です。 また、町場機能を再構築するということは、 大手企業の町場進出を規制し、建設労働者、職 人の健全な!労使"関係、賃金・労働条件の維 持を推進することができる土壌が構築できると いうことにもなります。 あわせて、十分な議論と合意が必要ですが、 町場工務店と労働者・職人の間で健全な!労 使"関係、労働協約を結ぶことができるならば、 労務費部分について賃金・労働条件の維持に必 要なコストを施主に説明することができ、地域 住民との信頼関係を築く上で有利になります。 それを活用することによって、低単価受注を封 じ込め、質の高い技能労働者を確保でき、競争 力も確保できることとなり、経営基盤を強化す ることも可能となります。労働協約によって大 手企業が労働者を横暴・勝手に使用する自由を 制限することであります。 こうしたことから、欧米各国の小零細企業や ―9―
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