村内遺跡詳細分布調査報告書(1)

国頭村文化財調査報告書第 4 集
村内遺跡詳細分布調査報告書(1)
―平成24~26年度調査報告―
安田遺跡詳細分布調査(1)
安波貝塚詳細分布調査(1)
2015年3月
国頭村教育委員会
国頭村文化財調査報告書第 4 集
村内遺跡詳細分布調査報告書(1)
―平成24~26年度調査報告―
安田遺跡詳細分布調査(1)
安波貝塚詳細分布調査(1)
2015年3月
国頭村教育委員会
序
国頭村においては、今後の諸開発行為との円滑な調整
及び埋蔵文化財の保護を図る目的で、従来の予備調査
(分布調査・試掘確認調査)で把握される遺跡や、遺物
散布地の残存範囲や周辺環境、帰属時期、遺跡の性格等
についてより詳細な把握及び資料整備を行う目的で、
2012(平成 24)年度から文化庁国庫補助及び沖縄県補助
を得て、村内の埋蔵文化財の踏査や試掘調査を主にした
詳細分布調査を実施しております。
安田区・安波区は、本村の東海岸に位置し、現在では
過疎化・高齢化の課題に面し、自然保護や地域資源を活
用した新たな取り組みによってそれらを解消しようとす
る力強い地域であります。地域資源の活用には地域の歴
史・文化を再確認することが肝要であり、これまで本村
ではあまり行われていなかった発掘調査による遺跡の確
認作業がこの地域で行われたことにより、本村の歴史及
び文化を理解するうえで貴重な成果となったと考えてお
ります。
本報告書が対象文化財の調査記録として学術的な調査
研究の基礎資料となり、広く村民が郷土の歴史・文化、
そして文化財保護の重要性に関する理解を深め、教育文
化の一助となることを願っております。
末尾になりましたが、発掘調査ならびに資料整理・報
告書刊行に際し、ご助言・ご指導を賜りました沖縄県教
育庁文化課、うるま市・読谷村・恩納村・金武町・宜野
座村・名護市教育委員会並びに安田・安波区をはじめ村
民の皆様に厚くお礼申し上げるとともに、関係各位に心
から感謝申し上げます。
2015(平成 27)年 3 月
国頭村教育委員会
教育長 園原 實
例
言
1. 本報告書は平成 24~26 年度にかけて実施した安田遺跡詳細範囲確認調査、安波貝塚試掘調査の
成果をまとめたものである。
2. 調査地は沖縄県国頭村字安田及び字安波に所在する。
3. 本調査は文化庁国庫補助及び沖縄県補助を得て村内埋蔵文化財の踏査や試掘調査を主とした詳細
分布調査を国頭村教育委員会が実施したものである。
4. 本報告書記載の図面等における座標軸は平面直角座標第ⅩⅤ系(世界測地系)を使用しており、
断面図等の基準高は海抜高を用いている。
5. 遺構・層序実測図等の縮尺は適宜設定している。遺物実測図の縮尺は 1/2 が基本だが、対象遺物
のサイズに応じて適宜設定した。(遺物写真も同様)。
6. 自然科学分析は「パリノ・サーヴェイ株式会社」に分析委託を行った。
7. 出土遺物の獣魚骨の同定分析は樋泉岳二氏に報文を依頼した。
8. 層序の観察等で使用した土色は『新版標準土色帖 2008 年版(農林水産省農林水産技術会議事務局
監修)』を使用した。
9. 本報告書に関わる測量図・実測図・写真・遺物など一切の資料は国頭村教育委員会に保管してい
る。
10. 引用・参考文献等は各章・節の末尾に記載した。
国頭村遺跡詳細分布調査報告(1)
目
次
序
例言
遺物の各名称及び実測表現説明図
第 1 章 国頭村の位置と環境
第 1 節 地理的環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
第 2 節 歴史的環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
第 3 節 国頭村の文化財 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
第 4 節 調査体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
第 2 章 調査の記録
安田遺跡詳細分布調査(1)
第 1 節 安田遺跡調査の目的及び経緯
1.調査地周辺の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
2.調査の目的及び経緯 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
第 2 節 調査区と層序
1.調査グリットの設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
2.基本層序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
第 3 節 遺構 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・
15
第 4 節 遺物
1.土器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
2.石器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
3.貝製品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
4.陶磁器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
5.自然遺物
5-1 貝類遺存体
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
5-2 獣魚骨 安田遺跡から出土した脊椎動物遺体 ・・・・・ 60
6.遺物出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70
第 5 節 安田遺跡の自然科学分析報告 …パリノ・サーヴェイ ・・・・・・・ 77
安波貝塚詳細分布調査(1)
第 1 節 調査概要
1.調査地周辺の概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87
2.調査の目的及び経緯
3.調査経過
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90
第 2 節 調査グリットの設定及び層序
・・・・・・・・・・・・・・・・・
90
第 3 節 遺物
1.土器
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93
2.石器
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96
3.陶磁器類
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 96
4.自然遺物 (貝・骨) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
第 3 章 総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
98
引用・参考文献
報告書抄録
挿図目次
第 1 図
国頭村の位置図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
第 2 図
国頭村の遺跡分布図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
第 3 図
安田遺跡調査地周辺図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12・13
第 4 図
C-6 トレンチ断面図
第 5 図
C・E トレンチ断面図・1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
第 6 図
C・E トレンチ断面図・2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
第 7 図
C-6 トレンチ集石状況
第 8 図
C-6 トレンチ集石状況及び溝状?遺構
第 9 図
ピット及びその断面図
第 10 図
土器 第 1 類 Ⅰ
第 11 図
土器 第 1 類Ⅰ・Ⅱ-1・Ⅱ-2
第 12 図
土器 第 1 類Ⅱ-3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
第 13 図
土器 第 1 類Ⅱ-3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
第 14 図
土器 第 1 類Ⅱ-3・Ⅱ-4・Ⅱ-5 第 2 類Ⅰ・Ⅱ-1
第 15 図
土器 第 3 類Ⅰ~Ⅲ
第 16 図
石器
第 17 図
ヤコウガイ蓋附刃範囲模式図
第 18 図
ヤコウガイ螺蓋製敲打器・1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38
第 19 図
ヤコウガイ螺蓋製敲打器・2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
・・・・・・・・・・・・ 33
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
第 20 図
二枚貝有孔製品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
第 21 図
タカラガイ有孔製品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42
第 22 図
貝・小玉 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43
第 23 図
巻貝有孔製品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
第 24 図
青磁 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
第 25 図
白磁 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
第 26 図
染付 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
第 27 図
カムィヤキ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47
第 28 図
沖縄産陶器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48
第 29 図
第 3 層一括土器出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70
第 30 図
土器・石器出土分布図(第 3 層) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72
第 31 図
土器出土分布図(第 4 層) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
第 32 図
貝出土分布図(第 4 層) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 74
第 33 図
土器出土分布図(第 5 層) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75
第 34 図
貝出土分布図(第 5 層) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76
第 35 図
安波貝塚調査地周辺図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89
第 36 図
各試掘坑層序柱状図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91
第 37 図
試掘坑 8 断面図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92
第 38 図
土器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95
第 39 図
石器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95
写真図版目次
図版 1
安田遺跡航空写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101
図版 2
安田遺跡 上:遠景 下:近景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102
図版 3
安波貝塚航空写真 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103
図版 4
安波貝塚 上:遠景 下:調査終了状況(北より) ・・・・・・・・・・・・・ 104
図版 5
土器 第 1 類 Ⅰ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105
図版 6
土器 第 1 類 Ⅰ Ⅱ-1 Ⅱ-2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106
図版 7
土器 第 1 類 Ⅱ-3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107
図版 8
土器 第 1 類 Ⅱ-3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108
図版 9
土器 第 1 類 Ⅱ-3 Ⅱ-4 Ⅱ-5 第 2 類 Ⅰ Ⅱ-1 ・・・・・・・・・・ 109
図版 10
土器 第 3 類 Ⅰ~Ⅲ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110
図版 11
石器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111
図版 12
貝製品 ヤコウガイ螺蓋製敲打器 1
図版 13
貝製品 上: ヤコウガイ螺蓋製敲打器 2 中:二枚貝有孔製品
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112
下:タカラガイ有孔製品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113
図版 14
貝製品 上:小玉 下:巻貝有孔製品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 114
図版 15
陶磁器類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115
図版 16
安波貝塚 上:土器 下:石器 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
116
図版 17
貝類 1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117
図版 18
貝類 2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118
図版 19
貝類 3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119
図版 20
貝類 4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120
図版 21
貝類 5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121
図版 22
貝類 6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 122
図版 23
貝類 7
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123
図版 24
貝類 8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124
表目次
第 1 表
各ピットの計測表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
第 2 表
E-14-2 ピット間の計測表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
第 3 表
土器出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
第 4 表
土器観察表一覧(1)~(3) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26~28
第 5 表
石器観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
第 6 表
貝製品地区別出土状況集計表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35
第 7 表
ヤコウガイ螺蓋製敲打器観察表(1)(2) ・・・・・・・・・・・・・・・・37・39
第 8 表
二枚貝有孔製品観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
第 9 表
タカラガイ有孔製品観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
第 10 表
小玉観察表(1)(2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41・42
第 11 表
巻貝有孔製品観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44
第 12 表
陶磁器地区別遺物出土状況集計表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45
第 13 表
青磁観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
第 14 表
染付観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
第 15 表
カムィヤキ観察表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 47
第 16 表
沖縄産陶器観察表(1)(2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47・48
第 17 表
C-6-78 貝類(巻貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52
第 18 表
C-6-78 貝類(二枚貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
第 19 表
C-6-88 貝類(巻貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
第 20 表
C-6-88 貝類(二枚貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55
第 21 表
C-6-89・90 貝類(巻貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56
第 22 表
C-6-89・90 貝類(二枚貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
第 23 表
C-6-98・D-6-8 貝類(巻貝)出土状況
第 24 表
C-6-98・D-6-8 貝類(二枚貝)出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59
第 25 表
安波貝塚土器出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93
第 26 表
安波貝塚陶磁器出土状況集計表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
第 27 表
安波貝塚貝類出土状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58
第 1 章 位置と環境
第 1 節 地理的環境
国頭村は沖縄本島最北端、北緯 26 度・東経 128 度付近に位置し、面積は県内では 5 番目に広
い 194.8 ㎢で、その約 90%が山林原野となっている。隣接する行政区は太平洋側では高江川で境
をなす東村で、東シナ海側では田嘉里川で境をなす大宜味村である。本島最高峰の与那覇岳(503
m)
、西銘岳(420m)
、伊湯岳(446m)等の大小の山々が中央部を縦走し、その山岳が連なり海
岸近くまで丘陵地となっている。そのため河川後背が急で、かつ流路延長の短い河川が多く、そ
の河口流域の平坦地に水利の便を得て集落が存在している。西海岸へ比地川、与那川、辺野喜
川、東海岸へは奥川、楚洲川、安田川、安波川が注いでおり、安波川、普久川、辺野喜川にはダ
ムが建設されており、沖縄の水がめとしてその水は本島中・南部地方にも生活用水・工業用水と
して供給されている。
国頭村の地質は主として中生代の名護層、新生代第三期の嘉陽層が分布しており、辺土名の南
から桃原・鏡地一帯の低地に沖積層が、桃原公園森と半地採石場付近、また宜名真・辺戸付近に
古生~中生代の本部・与那嶺層に属す石灰岩が分布し、村の北端部辺戸岳にはカルスト地形と呼
ばれる雨水や地下水の浸食によって形成された石灰岩がつくる特徴的な地形がみられる。
1
辺戸のカルスト地形は台地状の地形表面が少し窪んだ地形となり、そこにほぼ円錐形をした小
さな丘が見られ現在では観光地となっており、特徴的なカルスト地形を楽しむことができる。
土壌は、強い酸性の土壌が特徴である「国頭マージ」とよばれる中南部のような新生代の地質
では見られない中・古生代の古い岩石が主に風化した赤土土壌で、その他海成沖積土壌、古世紀
石灰岩土壌、珊瑚石灰岩土壌層等から構成されている。
産業は農業が主体で、沖積層の低地でサトウキビや電照菊等の花卉栽培、山間地では茶、柑橘
類、土地改良整備区ではパイナップルの栽培が行われており、近年では国頭マージの特徴を生か
したジャガイモや赤土大根、かぼちゃなどが栽培されている。また、畜産では養豚・養牛が盛ん
で、猪と豚を交配させた山原猪豚や和牛の繁殖業など国頭村の畜産のブランド化に力を入れてい
る。林業では国頭村森林組合を中心に、製材品や合板等に使われるチップ、菌床などに使われる
おが粉等を作成し、チップは県外にも出荷される。近年は平成 23 年に策定された国頭村森林地域
ゾーニング計画に基づいた森林利用を行っており、皆伐は一箇所5ha 以下で隣接地は避ける等、
環境に配慮した利用を行っている。漁業では主体であったソデイカ漁が、近海での漁獲量の減少
により漁場が遠方化し、燃料費が高くつくようになったこと等から衰退の傾向にあるが、近年で
は定置網設置によるグルクマ、シイラ、マグロ、ギンガメアジ(ガーラ)等が水揚げされ、活魚
として県内居酒屋等へ卸されるとともに、貴重な種は観賞魚として水族館等へ販売されている。
また店舗販売はされていないが、宜名真区では時期になるとシイラの日干し(フーヌユー)が漁
港に並び、季節の風物詩として話題になっている。製造業では砕石業、コンクリート製品等の建
設関連製造業が中心となっている。
観光業はJALプライベートリゾートオクマ等大型リゾートホテルや、国頭村の自然をメイン
テーマにした大石林山等の大型観光施設やスポット的なエコツーリズム施設が開業しているほ
か、スポーツ施設の充実により、冬季にはサッカー・プロ野球・駅伝等のスポーツ団体のキャン
プ地としても注目されている。
第 2 節 歴史的環境
沖縄本島は歴史的に北からの日本本土の文化とのつながりが深いとされている。本島最北端に
位置する辺戸岬から隣接する与論島までは直線距離で約 23 ㎞であり、国頭村は島づたいにやって
くる北からの文化流入の窓口として、歴史的に重要な位置を占めている。
国頭村における先史遺跡の研究は、1954 年に宇佐浜で土器片が採取され、宇佐浜遺跡が発見さ
れたことである。それをきっかけに、多和田眞淳氏により分布調査が行われ、カヤウチバンタ遺
跡・宇佐浜 B 貝塚等が発見された。
宇佐浜遺跡は沖縄の先史文化を解明するうえで、重要な遺跡であると判断され、1967・1969・
1970 年に琉球政府文化財保護委員会により発掘調査が実施され、沖縄貝塚時代中期の宇佐浜式土
器と住居跡が確認された。そして 1972 年には沖縄先史時代において縄文時代から弥生時代への転
換期の様相をしめす代表的遺跡として国指定史跡に指定されている。
宇佐浜遺跡の調査によって、村内では古代遺跡への関心が高まり、琉球大学歴史研究クラブや
当時村内小中学校で教師をしていた知花博康氏、辺土名高校で教師をしていた宮城長信氏等によ
って村内遺跡が発見されていく。琉大歴史研究クラブによる安波貝塚・奥第一貝塚・奥第二貝
塚・奥第三貝塚の発見、知花博康氏の佐手貝塚・辺土名遺跡・伊地遺物散布地、宮城長信氏の安
2
田遺跡・国頭田名貝塚・謝敷貝塚、知花博康・宮城長信氏の辺土名兼久遺跡、當眞嗣一・金武正
紀・宮城長信氏の奥第四貝塚、宇佐浜遺跡調査団による辺戸遺物散布地・辺戸長尺原遺跡の発見
により遺跡の数も増加した。
1972 年の本土復帰後の第 1 次・第 2 次沖縄振興開発計画により、県下では開発が活発化し、そ
れによる文化財の破壊や滅失が起こってきた。国頭村では大規模開発の波は比較的緩やかではあ
ったものの、他地域の開発に使用するための採砂などにより、奥第二貝塚や国頭田名貝塚が未調
査のまま滅失している。このような現状を憂慮し、国頭村教育委員会では今後の村内における開
発計画に対して事前に遺跡の所在地・遺跡の範囲・性格等を明確にし、文化財の破壊を未然に防
ぐとともに、学校や地域の人々への普及活用を図る目的で、1985・1986 年に村内遺跡分布調査を
県の指導のもと行っている。その分布調査の一環として安波貝塚の小規模な発掘調査が行われ
た。
1962 年に宇榮原宗貴氏によってカヤウチバンタ遺跡より採取され、1974 年に宮城長信氏によ
り報告されていた「丸ノミ型石斧」は、1992 年の鹿児島県加世田市(現南さつま市)に所在する
栫ノ原遺跡の調査により出土した栫ノ原型石斧と類似するとして注目された。1998 年にはカヤウ
チバンタ遺跡において、丸ノミの出土地を特定し、伴出する土器・石器を明らかにすること、遺
跡の性格を解明すること、沖縄では未発見だった旧石器を発見することを目的に、春成秀爾氏を
中心とした文部科学省科学研究費重点領域研究「日本人および日本文化の起源に関する学術的研
究」による調査がおこなわれた。結果として丸ノミ型石斧の追加資料は得られなかったが、貝塚
時代前期(縄文後期)の伊波式・荻堂式・大山式・室川式土器が出土し、国頭村内で最も古い遺
跡であることが確認された。カヤウチバンタ遺跡はその後 2011 年から 2014 年にかけて沖縄国際
大学考古学研究室によっても調査が行われている。
1986 年の村内遺跡分布調査により、国頭村においては 22 箇所の埋蔵文化財が知られていた
が、1997 年には當眞嗣一氏の踏査により、パンギナグスクと小玉森が新たにグスクとして確認さ
れ、
『沖縄県立博物館紀要』第 23 号、
「いわゆる「土より成るグスク」について-沖縄本島北部の
グスクを中心に-」のなかでその縄張り図とともに報告された。また、1997 年には桃原の米軍保
養施設「奥間レストセンター」内において米軍下士官隊舎の建設工事に伴って行われた試掘調査
により、水田のものとみられる層序が確認され、
「桃原帆原水田遺跡」と命名され、新発見の遺跡
として 1998 年に発掘調査が行われた。調査では畦畔(けいはん)や水路跡の遺構や陶磁器類、グ
スク時代に比定される土器等が出土している。
以上のようにこれまでの研究によって国頭村においても先史遺跡の状況が次第に明らかとなっ
てきた。現在では周知の遺跡として 32 遺跡が知られている。
歴史時代になると、国頭に関連のある事柄が歴史資料への記述や、伝説として伝わるようにな
る。琉球最初の歴史書である羽地朝秀著の『中山世鑑』には、辺戸に所在する「安須森」が天帝
からつかわされた阿摩美久により一番に作られた御嶽として記述されており、毎年旧暦の正月と
九月には王府から使いが出され、王家の繁栄と五穀豊穣、航海安全の祈願が行われたといわれ
る。そのほか、
『中山世鑑』には舜天王統の三代目の王である義本王の即位から英祖への譲位まで
が記されている。英祖に譲位した義本王のその後は不明のままであるが、一説には国頭村辺戸の
旧家である佐久真家で隠遁したとの言い伝えがある。
3
また、
「羽衣伝説」で知られる察度の弟にあたる「金万」は、国頭村奥間で鍛冶屋を営み、鍛冶
屋の始祖とされる人物である。察度は鉄塊を買い取りこれで農具を作り農民に分け与え、名を上
げたとされるが、その農具は金万の作であったとされ、また農具以外にも群雄割拠の時代であっ
た当時には、武具の生産が重要な役割を占めていたと考えられ、金万はそれを担う人物であった
とされる。
そして後に第二尚氏を興した金丸(尚円王)が伊平屋で水泥棒の汚名をきせられ、宜名真に逃
れ、さらに南に逃れたときに与那覇岳麓のインチキ屋取に匿い、食料等を世話したのは金万の子
孫である奥間鍛冶屋であった。金丸が王となった時にはその功により次男が国頭総地頭に命ぜら
れ、その四代目が国頭按司に任じられた。そしてその際に即興で詠まれたのが現在お祝い事の場
では欠かせない「かぎやで風」節であるとされている。
その他辺戸集落の東側にある大川では毎年、五月・十二月にお水取りの行事が行われ、汲んだ
水が首里城へ届けられ、水撫でが行われていた。廃藩置県後は中城御殿に水は運ばれ、戦前まで
この旧慣が守られていたが、その後中断し、1999 年に現代風にアレンジしてお水取り行事が復活
し現在も行われている。
このように国頭村には、信仰の対象となる聖地や、時の王様に関係する記述・伝承などが残
り、王府の行事が欠かさず行われるなど、本島最北端の一地方としてだけでなく、歴史的に見て
重要な場所であったと考えることができる。
第 3 節 国頭村の文化財
国頭村には国指定特別天然記念物 2 件、国指定天然記念物 14 件、国指定重要無形民俗文化財 1
件、国指定史跡 1 件、国選択無形民俗文化財 2 件、県指定天然記念物 10 件、村指定建造物 1
件、村指定天然記念物 1 件が現在指定されている。
[天然記念物]
国指定特別天然記念物にノグチゲラとコウノトリが指定されている。ノグチゲラはキツツキ科
で翼と尾は黒く、その他の体色は赤茶色で翼を広げると白い模様がみえる。くちばしが長太く、
錐のようになっている。繁殖期は 3~6 月頃で、枯れ木や枯れかかった樹の幹に穴をうがって巣を
つくる。沖縄の北部、とくに「やんばる」に生息するとても珍しい鳥である。昭和 52 年 3 月 15
日に指定された。
国指定天然記念物には希少な動植物の生息地となっている与那覇岳天然保護区域や安波のタナ
ガーグムイの植物群落の他、地域を定めず指定するものとして、アカヒゲ・オカヤドカリ・カラ
スバト・ケナガネズミ・トゲネズミ・ジュゴン・リュウキュウヤマガメ・イイジマムシクイ・カ
ンムリウミスズメ・ヤンバルクイナ・ヤンバルテナガコガネが指定されている。ヤンバルクイナ
は国頭村の「村の鳥」にも指定されており、足と嘴と目の周りが赤く、体の下面には黒と白の鮮
やかな横しま模様がある。飛べない鳥として有名であり、一時はマングースや野ネコ等の食害に
より数を減らしたが、保護策などにより近年では生息域が大宜味・東村までに広がっている。繁
殖期は 3 月~7 月頃で、ケッケッケという特徴的な声で鳴く。昭和 57 年 12 月 18 日に指定された
が、それ以前に国頭では「アガチャー、アガチ」の名前で知られていた。
県指定の天然記念物に安波のサキシマスオウノキと比地の小玉森の植物群落がある。比地の小
玉森はアカギやホルトノキ、タブノキなどの高木が生育し、巨木のアカギは神アシャギやほかの
4
拝所とともに長く信仰の対象となっており、旧暦の七月盆明けの亥の日にはウンジャミ(海神
祭)が行われ、植物群落としての生物学的研究のみならず、民俗学、考古学など様々な分野から
重要なフィールドとなっており、1991 年 4 月 2 日に指定された。その他、地域を定めず指定する
ものとして、フタオチョウ・コノハチョウ・イボイモリ・クロイワトカゲモドキ・ホルストガエ
ル・ナミエガエル・イシカワガエル・アマミヤマシギが指定されている。
村指定天然記念物に安田のアカテツ保安林がある。アカテツはツツジ目アカテツ科に属する常
緑の高木である。生息地はミクロネシアから琉球列島に分布し北限はトカラ列島である。沖縄本
島では、海岸地域に多く点在するが、安田のアカテツ保安林のように幅のあるベルト状に発達し
た林は他には例がなく貴重なもので、海岸防風林の見本林としての価値も高いという理由から
1983 年 3 月 31 日に指定された。
[無形民俗文化財]
国指定重要無形民俗文化財に安田のシヌグがある。シヌグやウンジャミは五穀豊穣・無病息災
を祈念する沖縄本島の北・中部に分布している村落行事であるが、なかでも安田のシヌグは規模
が大きく県内の代表的なものとされる。一日目の「ヤマヌブイ」では、男たちが一日神となり、
体につる草やシダ類等を身にまとい「エーヘーホーイ」とおたけびをあげながら山から下り、広
場に待つ老人や女性や子供にお祓いを施す。そのあと「ターンクサトゥエー」
「ヤーハリコー」な
ど特徴的な儀式があり、女性たちのウシデークで一日の幕を下ろす。1978 年 5 月 22 日に指定。
そのほか国選択無形民俗文化財(記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財)として、沖縄
北部のウンガミ・沖縄の綱引きがあるが、国頭では比地・与那のウンジャミ等、奥間大綱引き等
がこれにあたる。
[建造物]
村指定建造物に義本王の墓がある。義本王は沖縄の歴史上最初の王統といわれる瞬天王統三代
目で、瞬天の孫にあたる。1249 年に義本が王位についていたとき、大飢饉や伝染病の流行などに
よって住民の多くが死亡したため、義本は自分に国を治める徳がないためだと英祖に国王の代理
をさせたところ、悪疫も不作も起こらなかったため、正式に王位をゆずって消息を絶った。その
後の義本王の足取りは不明だが、辺戸に暮らしたという伝説があり、その墓がこの「義本王の
墓」だといわれている。墓は琉球石灰岩で作られ、周囲は幅約 70cm、高さ 90cm の石垣で囲ま
れ、入り口正面にヒンプンが立ち、家形の建造物となっている。沖縄の伝統的な破風墓や平葺
墓、亀甲墓等の造りでなく構造が特徴的で、また歴史的背景からみても貴重なものであるとして
1983 年 3 月 31 日に指定された。
[埋蔵文化財]
現在周知となっている国頭村の埋蔵文化財は貝塚時代前期~中期のカヤウチバンタ遺跡・辺戸
石山遺跡、貝塚時代中期の辺土名遺跡・辺戸長尺原遺跡・宇佐浜遺跡・宇佐浜 F 地点遺跡、貝塚
時代後期の浜遺物散布地・辺土名兼久遺跡・謝敷貝塚・佐手貝塚・宇佐浜 B 貝塚・奥第一貝塚・
奥第二貝塚・奥第三貝塚・奥第四貝塚・国頭田名貝塚・安波貝塚、後期~グスク時代の上島遺物
散布地・安田遺跡、グスク時代~近代の奥間グスク・奥間遺物散布地・パンギナグスク・小玉
森・伊地遺物散布地・辺野喜青磁採取地・辺戸遺物散布地・桃原帆原水田遺跡・義本王の墓、近
世・近代の奥間鍛冶屋跡・比地銅山・伊地銅山・奥の瓦窯跡・宜名真沖海底遺跡の 32 遺跡が知ら
れている。
5
以上、国頭村には多くの天然記念物・無形民俗文化財・建造物・埋蔵文化財が存在している。
その地勢を反映して与那覇岳天然保護区域や地域を定めず指定されている天然記念物が多く生息
していることが特徴である。村内には指定された文化財以外にも巨木や遺構などの未指定の文化
財も数多く残っており、今後それらの指定に向けた取り組みが課題となっている。
引用・参考文献
『琉球列島ものがたり 地層と化石が語る二億年史』神谷厚昭 2007 年
『沖縄の島じまをめぐって増補版』沖縄地学会 1997 初版 1982 年
『沖縄県史図説編 県土のすがた』 沖縄県教育委員会 2006 年
『琉球弧の地質誌』木崎甲子郎編 沖縄タイムス社 1985 年
『国頭郡天然記念物緊急調査Ⅱ 沖縄島国頭地域の現存植生図』沖縄県教育委員会 1987 年
伊藤 誠記「沖縄本島の水資源開発」
『しまたてぃ』№53 沖縄しまたて協会 2010 年
中村 正秀「沖縄の水資源開発がもたらしたもの~県民のくらしと水道~」
『しまたてぃ』№53
沖縄しまたて協会 2010 年
6
7
第 4 節 調査体制
2012(平成 24)年度
事業主体
国頭村教育委員会 教育課
事業責任者 教育長
小橋川 春武
事業総括
教育課長
金城 光彦
事業事務
教育課係長
金城 由美子
調査担当者 主事学芸員
赤嶺 信哉
調査嘱託員
岸本 利枝
発掘調査作業員 比嘉 和子、古堅 芳弘(氏名五十音順/以下同様)
2013(平成 25)年度
事業主体
国頭村教育委員会 教育課
事業責任者 教育長
小橋川 春武
事業総括
教育課長
金城 光彦
事業事務
教育課係長
金城 由美子
調査担当者 主事学芸員
赤嶺 信哉
調査嘱託員
岸本 利枝
調査補助員
前田 佳姫
資料整理員
大城 あゆみ
発掘調査作業員 伊計 明美、大城 文也、岸本 あすか、比嘉 和子、
2014(平成 26)年度
事業主体
国頭村教育委員会 教育課
事業責任者 教育長
園原 實
事業総括
教育課長
新城 高仁
事業事務
教育課係長
古堅 哲明
調査担当者 主事学芸員
赤嶺 信哉
調査嘱託員
岸本 利枝
調査補助員
前田 佳姫、池間 斗夢
発掘調査作業員 島袋 好子、玉城 親伴、比嘉 和子
現場調査及び資料整理指導及び調査協力
本業務において現場調査及び資料整理、報告書作成業務に際し、以下の方々並びに関係機関等
より貴重な指導・助言や協力を頂いた。(順不同・敬称略/所属等は当時)
沖縄県教育庁文化財課 田場 直樹
うるま市教育委員会
宮城 伸一
読谷村教育委員会
仲宗根 求
宜野座村教育委員会
田里 一寿
名護市教育委員会
宮城 弘樹 仲村 美代子
金武町教育委員会
安座間 充
恩納村教育委員会
崎原 恒寿
安田区事務所
神山 坦治
安波区事務所
渋井 登志代
大宜味村文化財保護審議会 宮城 長信
8
第 2 章 調査の記録
安田遺跡詳細分布調査(1)
第 1 節 安田遺跡調査の目的及び経緯
1.調査地周辺の概要
安田遺跡の所在する安田区は、国頭村の中東部に位置し、鳥獣保護区にも指定される自然豊か
な地域である。集落は東側を海に面している他は三方を山に囲まれており、山々はそれぞれサ
サ・メーバ・ヤマナスと呼ばれ、国指定重要無形民俗文化財である安田のシヌグの際にはヤマヌ
ブイの儀式の舞台となり信仰の対象となっている。その山より流れてきた川々は一つになり海へ
と注ぎ、その河口に形成された砂丘上に遺跡は立地している。遺跡前面の海には海の幸の宝庫と
なる広いイノーがあり、後背の山々からは食料となるイノシシ等の動物や木の実などの植物が獲
得でき、豊かな水源に恵まれた場所で、遺跡の所在した貝塚後期から現在にかけてこの砂丘地上
が人々の生活の場となっている。
琉球国郷帳や琉球國由来記には安田村と記され、マク名は「あだか」または「あだかもい」
で、その意味は不明。由来記には拝所として「ヨリアゲ森」が記載されている。
「ヨリアゲ森」と
は漁獲物が寄り上がる砂浜村落の持つ杜名で、古くからイノーにより生活が支えられていたこと
をうかがわせ、イノーでの追い込み漁に加え、近年では漁港の整備もあり、カツオ・カジキ・マ
グロの釣漁も行われている。
陸路交通の発達は今では県道 2 号線の横断線や 70 号線の一周線が開通し往来が便利になった
が、1950 年代後半までは他地域へ出るにも尾根伝いの険しい山道を歩いて行かなければならない
いわゆる「陸の孤島」であった。そのため交通は主に海路で、産物の輸送や日常生活物資の仕入
れには山原船などで中南部の平安座島や与那原港に立ち寄り行っていた。
産業は農漁業とともに古くは林業が主体で、有数の杣山地帯として知られていた。蔡温の時代
には中南部の森林が需要の増大のため荒廃し、北部の豊富な森林資源への需要が高まったため、
監督機関として謝敷・辺戸とともに山筆者が置かれ、さらに 1908 年に国有林法が施行された際、
安田保護区に指定され森林主事が配置された。林産物は主要な収入源であり、当時安田区の多く
の人は山稼ぎに励んだ。それは沖縄戦の戦災復興のための材木需要が高まった戦後一時期まで続
いたが、近年コンクリート建築や材木の輸入などで山原材の需要は減り、現在では林業は衰退し
ている。
近年では高齢化・過疎化が地域の課題であるが、安田区はその解消の一手段として、自然保護
に力を入れている。安田区はやんばるの中でも特にヤンバルクイナが多く生息する地域で、ヤン
バルクイナを中心とした自然保護活動と、これを通じた地域活性化に、関係機関と連携し取り組
んでおり、2002 年に区単位では全国初となる猫の飼養規則を制定し、飼い主に飼い猫の登録及び
個体識別のためのマイクロチップの埋め込みを義務付けた。さらに同年、観光業者や個人からの
基金を積み立てる方式の環境保全基金を設置し、事業に運用している。2006 年にはヤンバルクイ
ナ保護シェルターを設置、2013 年にはヤンバルクイナ生態展示学習施設を設置し、多くの観光客
が訪れている。地域にある身近な地域資源は、一つの地域のシンボルであり、一つの利活用のツ
ールであると考え、先人たちが命をかけて守ってきた自然を生かした活性化を図ることに舵をき
9
っている。このように安田区は地域が抱える課題を地域資源を活かしながらビジネス的な手法に
よって解決しようとする事業であるコミュニティビジネスの先進地域である。
[参考資料]
津波高志 他 1982 年 『沖縄国頭の村落《上巻》
』新星図書出版
仲宗根市幸 編 1990 年 『沖縄フェース(国頭村特集)』沖縄フェース出版
宮城栄昌 1967 年 『国頭村史』国頭村役場
比嘉明男 他 2014 年 『あらは 安田史誌』 安田字誌編さん委員会
2.調査の目的及び経緯
沖縄本島では、本土復帰後の開発の活発化により、文化財の破壊や滅失が起こってきた。国頭
村内でも採砂などにより、奥第二貝塚や国頭田名貝塚が未調査のまま滅失している。そのような
状況を防ぐためにも、今後の諸開発行為との円滑な調整及び埋蔵文化財の保護を図る目的で、従
来の予備調査(分布調査・試掘確認調査)で把握される遺跡や、遺物散布地の残存範囲や周辺環
境、帰属時期、遺跡の性格等についてより詳細な把握及び資料整備が必要不可欠である。そのた
め 2012(平成 24)年度から文化庁国庫補助及び沖縄県補助を得て、村内の埋蔵文化財の踏査や
試掘調査を主にした詳細分布調査を実施した。
安田遺跡は宮城長信氏により発見され、1985・1986 年に村内遺跡分布調査によって周知の遺跡
となった。国頭村の特徴でもある海岸まで迫る山並みと、入り組んだ海岸線に沿った河口付近の
わずかな平地に古くから集落が形成される状況は安田においても変わらず、安田遺跡はウィヌカ
ワ・ヒンナガー・ホーチガーと呼ばれる川が合流し、海岸にそそぐ河口部の砂丘地の現在の集落
とほぼ同じ場所に立地している。1985・1986 年の分布調査ではグスク土器や陶磁器が採取できる
アシャギ周辺やその後方の畑地一帯と、後期系土器が散布する公園一帯の 2 つの地点に分かれて
いるとされ、貝塚時代後期から 16 世紀頃までの遺物が採取されている。
安田遺跡は現在の集落と同位置であるため、個人住宅の建て替え等の開発行為により遺跡の破
壊が起こる可能性が高いと考えられる。そのため今回の調査では、前回調査で確認された安田遺
跡の所属時期の包含層の確認等、より詳細な分布や性格を明らかにするために試掘調査を実施し
た。
しかし、遺跡範囲は表面採集の遺物による範囲設定であり、遺物包含層の確認など遺跡の詳細
についての把握が必要であった。そこで、遺跡についての基礎情報把握のため予備調査を実施す
ることとなった。
調査年度は 2012(平成 24)年度、2013(平成 25)年度の 2 年間実施した。
まずは、1985・86 年の調査時に多く遺物が採集され、調査時の現場事務所的に公民館の利用を
許可してもらったこともあり、安田区公民館周辺より調査を開始した。
2012(平成 24)年度
7. 3
安田区内 測量
7. 4
安田区内 測量
7. 5
安田区内 測量及びトレンチ設定
10
7. 9
C-4-87 手掘りによる掘り下げ開始
7.11
C-4-87 層序確認のため北東側を溝掘り
7.12
C-6-78 伐採作業及び手掘りによる掘り下げ開始
7.18
C-6-78 層序確認のため北東側を溝掘り
7.25
國學院大学(現在西南学院大学)伊藤慎二先生他見学
7.26
奥間小学校の生徒見学
7.30
国頭村文化財保存調査委員会会長宮城樹正氏見学
C-4-87 重機による掘り下げ
C-4-12 重機による掘り下げ及び埋め戻し
8. 1
C-4-87 壁面実測
8. 3
C-4-87 埋め戻し
E-4-35 重機による掘り下げ及び壁面実測後、埋め戻し
8.14
岸本義彦氏見学
8.17
国頭村教育長他 3 名見学
8.23
出土土器を名護市教育委員会宮城弘樹氏に同定依頼
9. 6
C-6-78 壁面実測
C-6-78 埋め戻し
9.10
発掘道具片付け及び撤退
2012(平成 24)年度の発掘調査では遺跡の西側のみの調査であったため、引き続き 2013(平成 25)
年度も予備調査を実施した。
前年度調査の C-6-78 より遺物包含層が確認されたので、2013(平成 25)年度は、その広がりをみ
るため、C-6-88 を設定。さらに遺跡の東側への広がりを確認するため、トレンチを設定した。前
年度の調査により第 1 層は現在の耕作土で攪乱されていることが確認されたので、C-6-88 及び延
長トレンチの第 1 層は重機による掘削となった。
2013(平成 25)年度
6.27
安田区内 測量
6.28
安田区内 測量及びトレンチ設定
7. 1
E-2-41 重機による伐採及びトレンチ設定後、重機による掘り下げ
C-6-88 伐採作業
7. 2
C-6-88 重機による表土掘削、その後手掘りによる掘り下げ
E-1-40 トレンチ設定後、重機による掘り下げ
7. 3
D-1-89 重機による掘り下げ
7. 4
E-1-40 壁面実測後、埋め戻し
D-1-89 埋め戻し
7. 5
C-9-32 トレンチ設定、重機による掘り下げ後、埋め戻し
E-7-56 トレンチ設定
7. 8
E-7-56 重機による掘り下げ
11
12
13
7. 9
E-7-56 壁面実測後、埋め戻し
C-10-57・58 トレンチ設定
7.10
C-10-57・58 重機による掘り下げ後、埋め戻し
7.11
H-12-29 トレンチ設定、重機による掘り下げ後、埋め戻し
7.12
E-14-2 トレンチ設定
7.16
E-14-2 重機による掘り下げ
7.18
E-14-2 壁面実測後、埋め戻し
7.29
包含層確認のため C-6-89・90 及び C-6-98・D-6-8 設定、重機による表土掘削、その
後手掘りによる掘り下げ
8. 8
奥間小学校の生徒見学
8.27
国頭村文化財保存調査委員会会長宮城樹正氏見学
9.10
C-6-88 壁面実測
9.11
C-6-98・D-6-8 及び C-6-89・90 壁面実測
9.13
発掘道具片付け及び撤退
9.27
C-6-88、C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 埋め戻し
第 2 節 調査区と層序
1.調査グリッドの設定
グリッドの設定は、国頭村役場建設課より提供された、村道安田学校線測量成果簿表記の基準
点より、その交点が起点となる 30m メッシュを基本とした。30m 四方の調査区名は、北から南へ
の名称は 30m 毎にアルファベットの A から Z とし、西から東への名称は 30m 毎にアラビア数字
の1から 16 とし、アルファベットと数字の組み合わせで呼称した。
試掘坑は、上記で設定した 30m グリッドのなかに 3m×3m の方形の試掘坑(3m グリッド)を
設け、試掘坑の名称は 3m グリッドの北西から1から 100 の数字を付し、30m グリッド名称の後
ろにつけて呼称した。
調査対象の安田遺跡は現在の集落域であるため、試掘を行える箇所は休畑地等の空き地に限ら
れるという制限があったが、1985・86 年の分布調査の際に示された遺跡の推定範囲内外におい
て、遺物包含層の有無を確認するため、2012(平成 24)年度に 4 か所、2013(平成 25)年度に
8 か所の試掘グリッドを設定した。
2.基本層序
試掘調査グリッドの堆積層は東側と西側で違いが見られた。西側の現在安田区公民館付近(C6-78、C-6-88、C-6-89・90、C-6-98・D-6-8、E-7-56、C-4-87、E-4-35、E-1-40)の堆積土層は
5 枚に分層された。基盤となる砂丘の堆積砂層である第5層の上に遺物包含層である第4層が堆
積し、その上に遺物は包含するが後世の撹乱を受けた第3層が堆積する。その上層は当該地の現
在の状況によって変わるが、畑地では近現代の遺物を包含する耕作による撹乱土、宅地では客土
と思われる層が堆積する状況であった。C-4-87 においては第1層の下に、明黄褐色の赤土(第 2
層)が厚く堆積しており、一部では大規模な造成があったと思われる。
14
第 1 層…現表土で宅地では造成土(7.5YR にぶい褐色 5/4)、畑地では耕作土(10YR 褐色
4/6)
。耕作土では撹乱による下層からの巻き上げ遺物が含まれる(3~10cm程度の礫
混じり。炭少量含む)
。
第 2 層…細かい砂利が混じる赤土で上面には軽石が含まれる。遺物はみられない。
かなりしまっていて、転圧がされていると思われる。近年の造成土か(5YR 橙色
6/8+10YR 明黄褐色 6/6、細かい砂利が混じる)。
第 3 層…貝塚後期土器・陶磁器・貝・獣魚骨を含む砂層だが、陶磁器には近現代のものも含ま
れており、撹乱を受けていると思われる(10YR にぶい黄褐色 4/3、細かい炭・焼土・
3cm 程度の軽石混じり)
。
第 4 層…貝塚後期土器・石器・貝・獣魚骨を含む遺物包含層。年代測定・土器の状況により貝
塚時代後期前半の時期と考えられる(10YR 暗褐色 3/3、河口由来の丸みのある小礫と
後背の山由来の 30cm 程度の礫が多く混じる。枝サンゴを少量、層下部には軽石が多く
含まれる)
。
第 5 層…黄褐色砂層。基盤となる砂丘の堆積砂層。1.7mほどで湧水する(2.5Y 明黄褐色 7/6、
5~20cm 前後の礫とサンゴが多量に含まれる)。
東側(C-9-32、C-10-57・58、E-14-2)では砂丘の堆積砂層である第 4 層の上にややしまりの
良い第 3 層が堆積し、第 3 層下部からは pit が確認されたが遺物はみられなかった。その上に砂
質が強くしまりの良い赤褐色の土が堆積し、グスク土器等の遺物がわずかに確認できるが撹乱を
受けている第 2 層が堆積。旧表土かと思われる。その上層は西側と同様、現在の状況によって耕
作土(砂)や造成土が堆積する。H-12-29 においては、湧水するまで造成土が堆積していた。
第 1 層…現表土で宅地では造成土(7.5YR にぶい褐色 5/4)
、畑地では耕作土(10YR 褐色土
4/6、7.5YR 明褐色砂 5/6)
。
第 2 層…比較的しまりはよくわずかにグスク土器等を含むが、撹乱を受けている。旧表土かと
思われる(5YR にぶい赤褐色混土砂 4/3、貝や小礫をわずかに含む)
。
第 3 層…しまりの良い混土砂層(7.5YR 褐色 4/6)。遺物はみられないが下部から pit を確認。
第 4 層…黄褐色砂層。基盤となる砂丘の堆積砂層(10YR 明黄褐色 7/6、軽石とサンゴが少量含
まれる)
。
第 3 節 遺構
今回の調査ではおもだった遺構は検出されなかった。
集石
C-6-78、C-6-88、C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 のグリッド全体に集石かと思われる状況がみら
れた(第 7 図)。 第 3 層から下位の地層にかけて約 5~30 ㎝、大小様々な礫が散布している状況
で、それらの礫と共に土器や獣魚骨・貝も散在している。これらの礫は後背の山由来の礫と河口
由来の丸みのある礫で、若干枝サンゴも含まれる。第 3・4 層の礫の散布状態は 50%程だが、第
5 層になると若干減少するようである。遺構かどうかの確認のため、10 ㎝レベルで掘り下げ、変
化をみたがさほど変化はみられなかった。また、礫のサイズが大小様々で、人為的に積んだり、
敷かれたような状態ではなかった。
15
16
17
溝状?遺構
また、C-6-98・D-6-8 においてグリッドのほぼ中央に溝状?遺構が検出された(第 8 図)。
やや不定形の溝状?遺構で第 4 層下部にみられる(第 4 図断面図参照)。溝?の幅は約 150 ㎝、深
さ約 39 ㎝で、北東から南西へ緩やかな傾斜のある山の麓に東西に延びていると思われる。溝?内
も周辺と同様、大小様々な礫がみられる。
ピット
C-6-88 の第 4 層下部において 4 個のピットが確認された(第 9 図上)。ピットは若干の高低差は
あるが、全体的に概ね平坦地に存在し、第 4 層下部から掘り始められる。図以外にもピットらし
きものは存在したが、平面での配列や大きさ・形等が不規則であるため、柱穴である可能性は低
く、砂地特有のくぼみと判断した。上記のピットは平面においてピット同士の関連性を確認する
ことはできなかった。
もう一か所の E-14-2 の第 3 層から、6 個のピットが検出された(第 9 図下)。
ピットはやや不定形ながら、ほぼ円形を呈する。ピットの深さは若干浅いようである。図のよ
うに、ピットは 4 個及び 2 個セットで北西―東南方向に配列された状態で、E~I の 5 個のピット
は底面がほぼ平坦であるが、J のピットは V 字状の形をなし、北側がほぼ垂直に落ち深くなって
いる。これらのピットの平面での配列・形等から耕作痕(植栽痕)の可能性もあるが、調査面積が小
さいため断言できない。また、本グリッド第 3 層からの出土遺物はみられない。
18
第 1 表 各ピットの計測表
長径(㎝)
ピットA
ピットB
ピットC
ピットD
ピットE
ピットF
11.5
8.9
9.7
8.6
13.0
16.3
ピットG ピットH
10.4
11.7
ピットI ピットJ
10.6
11.8
短径(㎝)
-
8.5
8.8
6.0
9.4
10.7
9.9
10.5
7.7
9.5
深さ(㎝)
20.5
13.3~21.0
13.3
8.3
14.2
8.5
9.2
12.5
15.8
17.2
第 2 表 E-14-2 ピット間の計測表
径間(㎝)
pE-pF
pF-pG
pG-pH
pI-pJ
31.0
31.9
26.6
28.2
第 7 図 C-6 トレンチ集石状況
19
20
21
第 4 節 遺物
本遺跡からは土器、石器、貝製品、陶磁器の人工遺物の他、貝類、獣魚骨の自然遺物が出土し
た。以下、項目ごとに記述していく。
1.土器
本遺跡から出土した土器の破片数は 1,521 点で、部位ごとに口縁部 106 点、胴部 1,400 点、底
部 15 点を数える。すべて貝塚時代後期に属するものとみられ、そのほとんどが無文資料であり有
文資料は全体の僅か 4%となっている。器種は甕形、壺形が認められるが、甕形土器が大半を占め
ている。底部は乳房状尖底、尖底、脚台が確認される。出土状況を部位ごとに第 3 表に示した。
今回、出土した土器は器種を基準に、第 1 類 甕形土器、第 2 類 壺形土器、第 3 類 底部に
分類を行い、さらに文様ごとに細分を行った。また、分類対象資料は 133 点で、そのうち 52 点
を図示し観察表にまとめた。
第 3 表 土器出土状況
口縁部
胴部
甕形
無文 突帯文
C-6-78
C-6-88
C-689・90
C-698・D6-8
C-10-57
C-4-87
E-2
不明
1層
3層
4層
5層
1・3層
3・4層
4・5層
周辺採集
1層
4層
5層
1・4層
不明
1層
4層
5層
1・4層
不明
1層
4層
5層
不明
不明
1層
4層
表採
表採
合計
2
3
6
6
4
4
2
壺形
1
1
2
1
1
2
4
8
1
7
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
6
7
2
4
1
底部
甕形
沈線文 波状文 無文 突帯文 無文 無文
2
6
不明
2
4
11
5
壺形 不明
突帯文 沈線文 指頭押圧
突帯文+
沈線文+ 無文
指頭押圧
2
1
1
1
1
1
1
1
1
4
8
7
5
1
1
6
1
1
1
1
無文
合計
乳房状
尖底 脚台 不明
尖底
135
28
302
286
9
2
17
170
152
9
31
2
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
6
90
2
25
1
1
2
1
1
1
20
5
2
4
2
1
30
1
10
5
25
5
5
2
26
62
1
3
1
6
2
1
14
4
2
10
4 1322
5
5
2
147
43
343
315
9
1
3
21
1 192
2 184
20
32
1
7
100
2
26
1
1
27
8
2
1
14
4
2
15
3 1521
第 1 類 甕形土器
本遺跡から出土した土器の主体をなす器種である。全形がうかがえる資料が数点出土してお
り、有文資料も確認されている。本報告では文様によって下記に細分を行った。
Ⅰ 無文-口縁部資料で甕形になるものと推定される無文資料
Ⅱ 有文-口縁部及び胴部資料で文様を有し、文様の種類によりさらに細分を行った
1 突帯文-口縁部、胴部などの土器表面に突帯を施すもの
2 沈線文-口縁部、胴部などの土器表面に沈線を施文するもの
3 波状文-口唇部が指頭押圧や刺突文などによって波状にみられるもの
22
4 指頭押圧-肥厚させた粘土接合部に指頭押圧を施したもの
5 突帯文+沈線文+指頭押圧-土器表面に左記の文様を組み合わせて施文するもの
第 2 類 壺形土器
出土した壺形資料は僅か数点のみであるが、頸が非常に短い。分類対象はすべて口縁部となっ
ている。
Ⅰ 無文-壺形になるものと推定される無文資料
Ⅱ 有文-文様を有する資料
1 突帯文-土器表面に突帯を施すもの
第 3 類 底部
出土した底部は 15 点ほどであるが、以下の 3 つの形態が確認された。
Ⅰ 乳房状尖底
Ⅱ 尖底
Ⅲ 脚台
Ⅳ 不明底部-破片が小さく器種の判別ができないもの。今回、図示せず分類のみ行った。
以下、分類ごとにそれらを略述する。
第 1 類 甕形土器
Ⅰ無文:第 10 図 1~7、第 11 図 8 に示した。図 1 は口径が 29.8cm の大型の甕である。口縁部
はやや外反し、粘土接合部の隆起が目立つ。両面とも指頭によるナデ調整が施されるが、裏面に
は刷毛目状の擦痕が部分的に見られる。図 2~3 は口唇部が方形状を呈し、やや外反する。調整は
指頭によるナデ調整が施されており、図 3 は他の資料よりも器壁がやや薄くなっている。図 4~8
は口縁部が直口する資料である。図 4 は口唇部が丸みを帯びた方形状を呈する。図 5 は口唇部が
方形状を呈し、器壁は他の資料よりもやや薄く、大型の甕になるものと思われる。図 6 は口唇部
が丸みを帯びており、口縁部から胴部にかけてはほぼ直線的になるものと思われる。図 7 は口唇
部が丸みを帯びた方形状を呈している。口縁部表面が部分的に突出し、裏面に横位の擦痕が見ら
れる。図 8 も口縁部は直口するが、口唇部は舌状となっており、表面にはまだらにすすの付着が
見られる。
Ⅱ有文:第 11 図 9~21、第 12 図 22、第 13 図 23~29、第 14 図 30~33 に示した。以下、文
様ごとに記述を行う。
1 突帯文:第 11 図 9~15 に示した。図 9~14 は口縁部で同図 15 は胴部片である。図 9、10 は
口縁部に平たい逆 U 字状突帯が貼付されている資料である。突帯は口唇部裏側まで達してはおら
ず、口縁部はやや外側に傾くと考えられる。図 11 は口唇部裏側から口縁部にかけて鞍状突帯が貼
付されている資料であるが、小破片のため詳細ははっきりとしない。図 12~13 は口縁部に幅の広
い突帯を貼付し、肥厚させる資料である。図 12 は約 13~19mm 幅の突帯を口唇部から口縁部に
かけて貼りつけるが、口唇部左側がきれいにかぶせきれていないため、接合部がはっきりと残
る。図 14 は口縁部にボタン状の突帯を貼りつけ、その表面を指頭で押しつぶした資料である。口
唇部は丸くやや外反し、指圧によって波状となっている。図 15 は口縁部付近の資料と思われ、太
さが一定ではない突帯が縦に貼付される。
23
2 沈線文:第 11 図 16~21 に示した。図 16~19 は口縁部で、図 20~21 は胴部片となってい
る。図 16 は口唇部が丸く直口し、口唇部から縦、横、曲線状に沈線文が施文される。口唇部に刺
突文が施されているため、形が変形している。図 17 は口唇部直下に約 5mm 幅の浅い沈線文を弧
状に施文する。口唇部は方形状を呈しており、口縁部は直口する。図 18 は口唇部がやや外反し、
口唇部直下から胴上部にかけて曲線と横線を組み合わせた沈線文を施す。図 19 は口唇部が丸みを
帯びた方形状を呈しており、胴上部が膨らむ形状になると思われる。口唇部直下から棒状工具に
よる曲線状の沈線文を施文し、調整は指頭によるナデが全体的に行われているが、裏面に横位の
擦痕も見られる。図 20 は約 5mm 幅のヘラ状工具による曲線状の沈線文が施される資料である。
甕形になると思われるが、小破片のため詳細ははっきりとしない。図 21 は口縁部付近の資料と思
われる。棒状工具による沈線文が斜状に数条、不規則に施文され、直径約 5mm の孔が穿たれ
る。
3 波状文:第 12 図 22、第 13 図 23~29、第 14 図 30 に示した。図 22、23 は口唇部に波の弱
い不規則な波状が見られる資料である。口径は図 22 が 36cm、図 23 が 33.2cm と大型の甕となっ
ている。図 24 は口径 20.9cm で口唇部は方形状を呈し、直口する。指圧によって波状が作られる
が、波が弱い。図 25 は緩やかな波状が見られ、口唇部が僅かに外反する。指頭によるナデ調整が
行われるが、部分的に刷毛目状の擦痕が見られる。
図 26~28 は指圧によって規則的な波状が形成されている資料である。図 26 は口唇部が方形状
を呈しており、裏面の稜線がシャープに作られている。指圧によって波状が作られるが、波が弱
くなっている。図 27 は口唇部は指圧によって波状が作られ、口唇部は丸みを帯びている。図 28
は口唇部が方形状となっており、波状が丁寧に作られる。両面ともに指頭によるナデ調整が行わ
れているが、部分的に刷毛目状の擦痕が見られる。
図 29、30 は口唇部に刺突文を施し、波状を成形する資料である。図 29 は口唇部が舌状を呈し
ており、楕円形の深い刺突文が施文される。口縁部直下に粘土接合部が顕著に残っていることか
ら、突帯を意識しているものと考えられる。図 30 は口唇部が方形状の部分と逆 L 字状の部分か
らなっており、口唇部に雑な刺突文を施す。そのため、口唇部がややいびつな形になっている。
4 指頭押圧:第 14 図 31、32 に示した。図 31、32 は胴部片で、肥厚させた粘土接合部に指頭
押圧による刻みを施す。図 31 は肥厚部直上に幅の広い工具で沈線文を曲線状に施文する。また、
指頭押圧によって押しつぶされた凹みの部分にも擦痕が見られる。図 32 も肩部の肥厚させた粘土
接合部に指圧によって刻みを施す。
5 突帯文+沈線文+指頭押圧:第 14 図 33 は土器表面に複数の文様を組み合わせて施文する資料
である。口唇部直下から突帯状にくの字に肥厚させた肩部との間にリボン状の平たい突帯を貼付
する。その横にヘラ状工具による沈線文が曲線状に施文され、裏面にも斜沈線が施される。肩部
の肥厚部分には指頭によって押しつぶされた痕が残る。
第 2 類 壺形土器
Ⅰ無文:第 14 図 34~38 に示した。図 34 は口縁部が直口し、頸が短い。図 35 も同様に頸が短
いが、口縁部は僅かに外反がみられる。図 36 は小破片のため詳細がはっきりとしないが、ほぼ横
に傾くと思われる。口唇部は方形状で稜線がシャープに残る。図 37 は口唇部が舌状で口縁部は直
口しており、表面にすすの付着が見られる。図 38 は口唇部が方形状を呈し、外反する。
24
Ⅱ有文:第 14 図 39~41 に示した。以下、文様ごとに記述を行う。
1 突帯文:図 39 は口唇部直下に突帯文が貼付され、口唇部に浅い刺突文が施される。小破片の
ため詳細は不明であるが、口径が小さくなると思われることから、第 2 類に分類した。図 40 は口
唇部がやや外反し、口唇部直下から斜めに約 7mm 幅の突帯を貼付する。図 41 は口径が 7cm で
復元可能な資料となっている。口唇部は方形状を呈する直口口縁となっている。口唇部から口縁
部にかけて逆 U 字状に、肩部には横位に囲繞するように突帯が貼付されており、いずれも指圧に
よって刻みが施されている。また、指頭によるナデ調整が行われているが、胴部の輪積みの痕が
はっきりと残る。
第 3 類 底部
Ⅰ乳房状尖底:第 15 図 42~46 に示した。いずれも底径は小さく、先端はあまり目立たない。
図 42~44 は底面が厚く、平坦になっている。器面調整は指頭にナデが施されるが、図 42、44 は
工具による調整痕や細かい擦痕が見られる。図 45、46 は底面が薄く、先端が目立たないため、平
底のように見られる。図 45 は指頭によるナデ調整のほかに部分的に工具による調整の痕も見られ
る。
Ⅱ尖底:第 15 図 47~51 に示した。図 50、51 は胴部への立ち上がりが直線的で、図 51 は粘土
接合部が顕著に残っている。
Ⅲ脚台:第 15 図 52 に示した。上げ底の中空脚台で、形態から搬入土器の影響を受けていると
思われる。底部先端は破損しており、混入物も砂粒と石英が多量に混入し、粒も他の資料よりも
粗い。
小結
本調査で得られた土器は総数 1521 点で、そのほとんどが C-6-78、C-6-88 トレンチ、Ⅳ層、Ⅴ
層から出土している。出土した土器のほとんどが、粘土帯接合部を突出させ、外器面を隆起させ
るといった特徴を有していることから、本遺跡出土の土器は大当原式土器に属すると思われる
(新里 2004、岸本ほか 2000)
。図 52 は空中脚台で石英を多く混入しており、大当原式土器とは
胎土、形態が異なることからスセン當式土器に属すると思われる(新里 2000)。また、図 33 はス
セン當式土器の影響を受けたと思われる資料である(新里 2013)。肩部の肥厚帯を有することで
口縁部帯を意識した作りをしているなどスセン當式土器の形態的特徴を有しているが、胎土が細
かく、混入物も赤色粒が微量に含まれている程度とほとんど見られないなど相違点も見られる。
そのため、スセン當式土器の影響を受けた在地の土器であると考えられる。
以上、本遺跡から出土した土器について略述したが、今回の調査で得られた土器からみると年
代測定の結果も 1730±20BP が得られていることから(第 5 節参照)、今回の調査地は貝塚時代
後期前半(大当原期)の単純遺跡であることがわかる。
25
第 4 表 土器観察表一覧(1)
図版写真
番号
1
2
3
第 10図 ・
4
図版5
5
6
7
8
9
10
11
12
13
第 11図 ・
図版6
14
15
16
17
18
19
20
器種
法 量 ( mm)
部位
器 厚 ( mm)
甕形
口 径 298
口縁部
器 厚 5~ 9
甕形
―
口縁部
器 厚 6~ 7
甕形
―
口縁部
器厚 4
甕形
口縁部
―
器厚
7~ 11.5
甕形
―
口縁部
器 厚 4~ 7
甕形
―
口縁部
器 厚 7~ 9
甕形
―
口縁部
器 厚 5~ 8
甕形
―
口縁部
器 厚 5~ 6.5
甕形
―
口縁部
器厚 8
甕形
―
口縁部
器 厚 4~ 7
甕形
口縁部
甕形
口縁部
甕形
口縁部
裏面は刷毛目状の擦痕が
見られる。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。両面と
も横と斜めに薄い擦痕が
見られる。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
砂粒が微量に混入。
甕形
―
器 厚 4~ 6
甕形
―
口縁部
器 厚 6~ 7
甕形
―
口縁部
器 厚 6~ 9
指頭によるナデ。
赤色粒が多量。砂
表 7.5YR褐 4/3
粒 、 チ ャ ー ト が 少 量 裏 10YRに ぶ い 黄 褐 5/4
物が少量混入。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
―
指頭によるナデ。裏面に
器 厚 5~ 5.7
横位の擦痕が見られる。
―
器 厚 6~ 7
裏 2.5YR赤 褐 4/6
裏 5YR明 赤 褐 5/6
黒 色 鉱 物 、 砂 粒 が 少 表 5YR灰 褐 4/2
量混入。
物、石英、赤色粒が
裏 5YRに ぶ い 赤 褐 5/4
表 5YR明 赤 褐 5/6
裏 5YR赤 褐 4/8
赤 色 粒 、 砂 粒 が 微 量 表 5YR赤 褐 4/6
に混入。
裏 2.5YR明 赤 褐 5/6
土接合部の隆起がはっきりと残る。
C-6-98・
D-6-8
5層
良好
良好
良好
良好
口 縁 部 の 一 部 10Y褐 灰 4/1
砂 粒 、 光 沢 の あ る 鉱 表 2.5YR明 赤 褐 5/6
口唇が舌状で、やや外反する大型の甕である。粘
良好
口唇は丸みを帯びた方形状で、やや外反する。
口唇は方形状でやや外反し、表面の稜線がはっき
りと残る。器壁が薄く均一である。
口唇は丸みを帯び、口縁部から胴部にかけてほぼ
直線的になる。
良好
良好
6-8
4層
C-6-78
4層
C-6-78
になると思われる。
1・ 4層
口唇は丸みを帯びた方形状で、口縁部は直口であ
C-6-78
る。厚みがあり、作りは雑な印象を受ける。
る。口唇が部分的に突出し、裏面の粘土接合面が
僅かに隆起している。
良好
4層
C-6-98・ D-
口唇が方形状をしており、器壁が薄い。大型の甕
口唇は丸みを帯びた方形状で、口縁部は直口す
良好
C-6-88
口唇は舌状で、口縁部は直口し、表面にまだらに
すすの付着が見られる。
口 縁 部 は や や 外 側 に 傾 き 、 逆 U字 状 の 平 た い 突 帯 文
を貼付する。
口 唇 は 舌 状 で 、 ほ ぼ 直 口 し 、 口 唇 か ら 逆 U字 状 に 平
たい突帯文を貼付している。
5層
C-6-78
5層
C-6-78
4層
表採
C-6-78
4層
砂 粒 、 石 英 が 微 量 に 赤 褐 4/8 断 面 外 5YR明 赤 褐
混入。
5/6 断 面 内 5YR黒 褐 2/1の
良好
口唇部、突帯部ともに方形状で直口する。口唇部
C-6-78
裏側から口縁部にかけて鞍状突帯が貼付される。
4層
サンイッチ状
甕形
胴部
裏 5YR赤 褐 4/8
出土地点
表 5YR明 赤 褐 5/6 裏 5YR
指頭によるナデ。
口縁部
甕形
表 5YRに ぶ い 赤 褐 4/3
裏 5YR褐 灰 4/1
砂 粒 が 少 量 。 チ ャ ー 表 7.5YR灰 褐 4/1
トが微量に混入。
指頭によるナデ。
裏 7.5YRに ぶ い 褐 6/3
砂 粒 が 多 量 。 チ ャ ー 表 7.5YRに ぶ い 褐 5/3
トが微量に混入。
砂粒、チャートが少
量混入。
砂粒が少量混入。
突 帯 部 6~ 7
口縁部
裏 10YRに ぶ い 黄 褐 5/4
観察事項
C-6-88
良好
裏 5YRに ぶ い 赤 褐 4/4
が少量混入。
―
器 厚 3~ 4
7.5YR暗 褐 3/3
赤 色 粒 が 多 量 。 砂 粒 表 2.5YRに ぶ い 赤 褐 4/3
微量に混入。
―
―
混入。
焼成
表 7.5YRに ぶ い 褐 5/3
砂 粒 、 石 英 が 多 量 に 表 10YR灰 黄 褐 6/2
砂粒が少量、黒色鉱
指頭によるナデ。
肥厚部 9
器 厚 7~ 10
量混入。
横位の擦痕が見られる。 量に混入。
突帯部 7
器厚 6
砂粒、黒色鉱物が少
色調
指 頭 に よ る ナ デ 。 裏 面 に 黒 色 鉱 物 、 砂 粒 が 微 表 5YR暗 赤 褐 3/6
―
器 厚 6~ 9
混和材
混入。
突帯部 7
甕形
胴部
表面は指頭によるナデ。
―
器 厚 5.5
口縁部
甕形
器面調整
裏 5YR明 赤 褐 5/6
赤色粒、砂粒が少量
混入。
砂粒、赤色粒、角閃
石が微量に混入。
ず、接合部がはっきりと残る。
良好
良好
表 5YR明 赤 褐 5/6
裏 5YR黒 褐 3/1
裏 5YRに ぶ い 赤 褐 4/3
良好
し、肥厚させるが、接合部ははっきりと残る。
波状に形成される。口縁部にボタン状の突帯文を
裏 5YR明 赤 褐 5/6 5YRに ぶ い
良好
表 7.5YR暗 褐 3/4
26
口唇は方形状で、口縁部は直口する。口唇直下に
約 5mm幅 の 浅 い 沈 線 を 斜 状 に 施 す 。
直下から棒状工具による曲線と横線を組み合わせ
た沈線文を施す。
良好
裏 5YR赤 褐 4/6 5YR褐 灰 4/1
裏 7.5YR橙 6/6
施文するため、口唇が変形する。口唇から縦、
口唇はやや外反し、僅かに外側に突出する。口唇
良好
裏 10YRに ぶ い 黄 褐 4/3
石 英 、 チ ャ ー ト が 少 表 7.5YR明 褐 5/6
突帯文が縦に貼付される。
横、曲線状に沈線文が施文される。
赤 褐 4/3
7.5YR黒 2/1
口縁部付近の資料と考えられ、太さが一定でない
口唇は丸みを帯び、直口する。口唇部に刺突文を
良好
表 5YR明 赤 褐 5/6
す る 鉱 物 が 微 量 に 混 7.5YR灰 褐 4/2
量混入。
直 口 口 縁 で 、 口 縁 部 に 12~ 16mm幅 の 突 帯 文 を 貼 付
貼付し、押しつぶす。
赤 色 粒 、 砂 粒 、 光 沢 表 7.5YR褐 4/6
入。
し、肥厚させる。口唇部左上はかぶせきれておら
口唇は丸くやや外反する。口唇部は指圧によって
両 面 10YR黄 褐 5/6
砂 粒 、 赤 色 粒 が 微 量 表 5YR灰 褐 4/2
に混入。
直 口 口 縁 で 、 口 縁 部 に 13~ 19mm幅 の 突 帯 文 を 貼 付
良好
4層
C-6-88
1層
C-6-78
4層
C-6-78
3層
C-6-78
4層
C-6-78
4層
C-6-88
4層
口唇が丸みのある方形状をしており、胴上部が膨
C-6-98・
らむ。口唇直下から棒状工具による曲線の沈線文
D-6-8
を施す。
や や 脆 約 5mm幅 の ヘ ラ 状 工 具 に よ る 沈 線 文 を 曲 線 状 に 施 文
い
C-6-88
する。小破片のため詳細がはっきりとしない。
4層
C-6-78
1層
第 4 表 土器観察表一覧(2)
図版写真 番号
第 11図 ・
図版6
第 12図 ・
図版7
21
22
23
24
25
器種
法 量 ( mm)
部位
器 厚 ( mm)
甕形
―
胴部
器 厚 4~ 6
甕形
口 径 360
口縁部
器 厚 5~ 10
甕形
口 径 332
口縁部
器 厚 4~ 7
甕形
口 径 209
口縁部
器 厚 5~ 8
甕形
―
口縁部
器 厚 5~ 9
第 13図 ・
図版8
26
27
28
29
30
31
32
甕形
―
口縁部
器 厚 5~ 8
甕形
―
口縁部
器 厚 5~ 9
甕形
―
口縁部
器 厚 6~ 8
甕形
口縁部
指頭によるナデ。部分的
に刷毛目状の擦痕が見ら
れる。
指頭によるナデ。部分的
に刷毛目状の擦痕が見ら
れる。
指頭によるナデ。
器厚 7
―
器 厚 5~ 6
混和材
砂 粒 が 少 量 。 チ ャ ー 表 5YR明 赤 褐 5/6
トが微量に混入。
物が少量混入。
少量混入。
―
やや脆
い
4/2
砂 粒 が 多 量 。 赤 色 粒 両 面 2.5YR明 赤 褐 5/8 2.5暗
が少量混入。
赤 灰 3/1ま じ り
に 刷 毛 目 状 の 擦 痕 が 見 ら 砂 粒 が 微 量 に 混 入 。 両 面 10YR黒 褐 3/1
に刷毛目状の擦痕が見ら
れる。
砂 粒 、 光 沢 の あ る 鉱 表 2.5YRに ぶ い 褐 4/4
物が微量に混入。
裏 2.5YR暗 赤 灰 3/1
あ る 鉱 物 が 微 量 に 混 裏 7.5YRに ぶ い 褐 5/4
入。
良好
良好
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
量に混入。
れる。
指頭によるナデ。
が微量に混入。
砂粒、チャートが少
量混入。
口唇は方形状で直口し、指圧によって波状を作
る。
良好
良好
両 面 2.5YR明 赤 褐 5/6
良好
表 10YRに ぶ い 黄 橙 6/3
裏 7.5YRに ぶ い 褐 5/4
れる。裏面の稜線がシャープに作られ、胴部から
口唇は丸みのある方形状で、外反する。指圧に
よって規則的な波状が形成される。
口唇は方形状で、指頭による波状が丁寧に作られ
る。口縁部から胴部にかけては直線的である。
状口縁のようになる。口縁部直下の接合部が顕著
5YRに ぶ い 赤 褐 4/3
り、口縁部は直口を呈している。口唇に雑な刺突
肥厚させた粘土接合部に指頭による刻みを施す。
肥厚部直上に幅広の工具によって沈線文を曲線状
に施文する。
表 5YR橙 6/6
良好
裏 2.5YR明 赤 褐 5/8
C-6-78
5層
C-6-78
5層
C-6-78
5層
4・ 5層
文を施し、波状口縁のようになる。
良好
4層
C-6-88
口 唇 は 方 形 状 と 逆 L字 状 に な っ て い る と こ ろ が あ
良好
C-6-78
かな波状を呈する。
に残っており、突帯を意識していると思われる。
裏 5YR暗 赤 灰 3/2
出土地点
口唇が方形状をしており、僅かに外反する。緩や
口唇は舌状で、楕円形の深い刺突文が施され、波
赤 色 粒 、 光 沢 の あ る 表 5YR褐 灰 4/1
鉱物が少量混入。
部に微弱な波状がみられ、粘土接合部が僅かに隆
口縁部にかけては直線的になる。
砂 粒 が 微 量 に 混 入 。 7.5YR褐 灰 4/1
砂粒、黒色鉱物が微
る。粘土接合面が隆起し、厚さが疎らで器表面が
口唇は方形状で、指圧によって弱い波状が形成さ
良好
指 頭 に よ る ナ デ 。 部 分 的 光 沢 の あ る 鉱 物 が 多 表 7.5YR褐 4/3
れる。
と 思 わ れ る 直 径 5mmの 孔 を 穿 つ 。
起する。
破 損 部 ( 内 側 ) 10YR黒 2/1
に 刷 毛 目 状 の 擦 痕 が 見 ら 量 。 赤 色 粒 が 少 量 。 裏 7.5YRに ぶ い 褐 5/4
沈線文が不規則に数条施される。焼成前に開けた
口唇が方形状をしており、僅かに外反する。口唇
良好
砂 粒 が 多 量 。 光 沢 の 表 10YR灰 黄 褐 5/2
指頭によるナデ。
口縁部付近の資料と考えられ、斜めに棒状工具で
波打つ。
れる。
指頭によるナデ。部分的
観察事項
口唇が方形状をしており、不規則な波状が施され
良好
9cm下 5YR赤 褐 4/6
に刷毛目状の擦痕が見ら 物、光沢のある鉱物
器 厚 6.5~ 9
焼成
表 10YRに ぶ い 黄 褐 5/4
指頭によるナデ。部分的 砂粒が少量。黒色鉱
胴部
裏 10YRに ぶ い 黄 橙 6/3
砂 粒 、 黒 色 鉱 物 が 裏 口 唇 ~ 9cm間 10YR灰 黄 褐
―
甕形
裏 2.5YR明 赤 褐 5/6
砂 粒 、 光 沢 に あ る 鉱 表 10YRに ぶ い 黄 褐 5/4
器 厚 6~ 9
肥 厚 部 12~ 15
色調
指頭によるナデ。部分的
肥厚部 8
甕形
胴部
指頭によるナデ。
―
口縁部
甕形
器面調整
肩部部分の粘土接合部を肥厚させ、その部分に指
頭による刻みを施す。
C-6-89・ 90
4層
C-6-88
4層
C-6-78
3層
C-6-88
4層
C-6-78
5層
C-6-78
5層
C-6-88
1層
口縁部付近の資料と思われる。口唇直下から肩部
33
甕形
胴部
―
指頭によるナデ。部分的
器 厚 6~ 8
に刷毛目状の擦痕が見ら
突 帯 部 12~ 14
れる。
の間にリボン状の平たい突帯文を貼付し、その横
赤色粒が微量に混
表 10YRに ぶ い 黄 橙 6/4
入。
裏 5YR明 赤 褐 5/6 5YR褐 灰 4/1
良好
にヘラ状工具によって沈線文が曲線状に施文され
C-6-88
る。裏面にも斜沈線が施され、器表面にくの字の
4層
突帯状に肥厚させた肩部に指圧で押しつぶされた
痕が残る。
表 5YR橙 7/6
34
壺形
口 径 68
口縁部
器厚 8
指頭によるナデ。
光 沢 の あ る 鉱 物 が 少 裏 7.5YRに ぶ い 橙 6/4
量混入。
第 14図 ・
断 面 中 央 7.5YR褐 灰 6/1
良好
口唇が丸い直口口縁で、頸が短い。無頸壺の範疇
に入ると思われる。
C-6-78
1層
断面サンドイッチ状
図版9
35
36
37
38
39
40
41
壺形
口 径 56
口縁部
器厚 8
壺形
―
口縁部
器厚 6
壺形
口 径 68
口縁部
器 厚 4~ 7
壺形
―
口縁部
器 厚 6~ 7
壺形
―
口縁部
器 厚 5~ 7
壺形
口 径 52
口縁部
器 厚 7~ 8.5
壺形
口 径 70
口縁部
器 厚 5.8
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
指頭によるナデ。
砂 粒 、 黒 色 鉱 物 が 少 表 7.5YR明 褐 5/6
量混入。
裏 7.5YRに ぶ い 褐 5/3
砂 粒 、 石 英 が 少 量 混 表 5YR黒 褐 2/2
入。
砂粒、光沢のある鉱
物が少量混入。
裏 5YR黒 褐 2/1
良好
表 5YR橙 6/6
裏 5YR明 赤 褐 5/6 5YR明 赤 褐
良好
5/8
砂 粒 、 赤 色 粒 が 少 量 表 7.5YR灰 褐 4/2
混入。
良好
裏 10YR灰 黄 褐 5/2
良好
口縁部がやや外反し、頸が短い。無頸壺の範疇に
入ると思われる。
口唇は方形状で、稜線がシャープに残り、ほぼ横
に傾くと思われる。小破片のため詳細は不明。
赤 色 粒 が 少 量 混 入 。 両 面 10YR浅 黄 橙 8/3
良好
指頭によるナデ。
粒、チャートが微量
に混入。
指頭によるナデ。胴部に
輪積みの痕がはっきり残
る
表 5YR明 赤 褐 5/6
裏 5YRに ぶ い 赤 褐 4/4
砂 粒 、 赤 色 粒 が 少 量 表 10YR黄 褐 5/8
混入。
裏 5YR明 赤 褐 5/6
27
良好
付着が見られる。
1・ 4層
口唇は方形状で、外反する。
されている。口唇部に浅い刺突文が施文されてい
口唇は丸くやや外反する。口唇直下から斜めに約
7mm幅 の 突 帯 文 を 貼 付 す る 。
口 唇 は 方 形 状 を し て お り 、 口 縁 部 に 逆 U字 状 、 肩 部
良好
1層
C-6-88
る。
赤色粒が多量。砂
1層
C-6-78
口唇は舌状で、口縁部は直口する。前面にすすの
口唇は丸みを帯びており、口唇直下に突帯が貼付
指頭によるナデ。
C-6-88
に横位に囲繞するように突帯文が貼付され、指圧
による刻みが施される。
C-6-88
5層
C-6-78
4層
C-6-78
1層
C-6-78
3~ 5層
第 4 表 土器観察表一覧(3)
図版写真 番号
器種
法 量 ( mm)
部位
器 厚 ( mm)
底部
底 径 28
42 乳 房 状 尖
器 厚 ( 底 ) 12
底
〃 (胴) 7
底部
底 径 35
43 乳 房 状 尖
〃 (胴) 6
底部
底 径 20
底
底部
45 乳 房 状 尖
底
底部
46 乳 房 状 尖
底
底部
尖底
第 15図 ・
指頭によるナデ。表面に
細かい擦痕が見られる。
器 厚 ( 底 ) 12 指 頭 に よ る ナ デ 。
底
44 乳 房 状 尖
47
器面調整
指頭によるナデ。部分的
器 厚 ( 底 ) 11 に 工 具 に よ る 擦 痕 が 見 ら
〃 (胴) 7 れる。
―
器厚(底) 8 指頭によるナデ。工具に
〃
(胴)
よる調整もみられる。
5.5
―
器厚(底)
10 〃 ( 胴 )
指頭によるナデ。
7
―
器厚(底)
〃(胴)
11 指 頭 に よ る ナ デ 。
7~ 8
混和材
表 5YRに ぶ 赤 褐 4/3 5YR褐 灰
のある鉱物が微量に
4/1 混入。
5YR明 赤 褐 5/6
砂粒、赤色粒が少量
混入。
砂粒、赤色粒が微量
に混入。
48
底部
器厚(底)
尖底
10.5
〃(胴)
49
50
51
52
底部
尖底
底部
尖底
底部
尖底
底部
脚台
底径は小さく、内面は丸底状になっている。
表 7.5YR明 褐 5/6
7.5YRに ぶ い 褐 5/3
良好
先端のみの資料で、底径は小さい。
良好
先端が目立たないため、平底のように見える。
裏 7.5YR黒 2/1
一 部 5YR褐 灰 5/1
裏 5YR明 赤 褐 5/6
砂粒、赤色粒が微量
表 5YR明 赤 褐 5/6
に混入。
裏 5YR褐 灰 4/1
先端が目立たないため、平底のように見える。底
良好
面の稜がはっきりせず、内面は丸底状になってい
る。
表 2.5YR明 赤 褐 5/6
2.5YRに ぶ い 赤 褐 4/3
良好
内面が丸くなっている。
良好
全体的に丸みを帯びている。
良好
先端が若干潰れている。
裏 2.5YR暗 赤 褐 3/4
砂粒が微量に混入。
指頭によるナデ。
―
砂粒、光沢のある鉱
表 5YRに ぶ い 橙 6/4
物が微量に混入。
裏 5YRに ぶ い 赤 褐 5/3
砂粒が多量。赤色粒
11 指 頭 に よ る ナ デ 。
が少量。光沢のある
7
鉱物が微量に混入。
―
指頭によるナデ。部分的
〃 ( 胴 ) 6~ 8 れ る 。
60
器厚(底)
14
〃 (胴)
指頭によるナデ。
両 面 5YRに ぶ い 橙 6/4
断 面 中 央 5YR黒 褐 3/1
良好
表 5YRに ぶ い 赤 褐 5/4
13 に 刷 毛 目 状 の 擦 痕 が 見 ら 砂 粒 が 多 量 に 混 入 。
くびれ部分
裏 5YRに ぶ い 赤 褐 4/35YR褐 灰
4/1
〃(胴)8
器厚(底)
良好
褐 灰 4/1
表 5YRに ぶ い 赤 褐 5/4
6~ 7
―
〃(胴)
4/1 裏 5YR
表 2.5YR明 赤 褐 5/6 5YR褐 灰
表 5YR褐 灰 4/1
指頭によるナデ。
器 厚 ( 底 ) 14
器厚(底)
底径が小さく、内面は尖底状になっている。
混入。
量混入。
観察事項
良好
物、赤色粒が微量に
砂粒、黒色鉱物が少
焼成
裏
砂粒、光沢のある鉱
―
図 版 10
色調
砂粒、赤色粒、光沢
裏 10YRに ぶ い 黄 橙 7/5 10YR
良好
褐 灰 4/1
砂粒、石英が多量に
混入。
10
表 5YRに ぶ い 橙 6/4 5YR橙 6/6
底 5YRに ぶ い 赤 褐 5/4
裏 5YRに ぶ い 橙 6/4
底部から胴部への立ち上がりが直線的になってい
る。
底部から胴部にかけての立ち上がりが直線的に
なっている。
上げ底の中空脚台で、底部の先端は破損してい
良好
る。形態から搬入土器の影響を受けていると思わ
れる。
出土地点
C-6-88
4層
C-6-88
4層
C-6-78
4層
C-6-78
3層
C-6-88
5層
C-6-88
4層
C-6-78
4層
C-6-78
1層
C-6-78
1層
C-6-88
5層
C-6-88
C-6-89・ 90
4層
引用文献
岸本義彦・西銘章・宮城弘樹・安座間充 2000 「沖縄編年後期の土器様相について」
『琉球・東
アジアの人と文化(上巻) 高宮廣衞先生古稀記念論集』 高宮廣衞先生古稀記念論集刊行会
新里貴之 2000 「スセン當式土器」
『琉球・東アジアの人と文化(上巻) 高宮廣衞先生古稀記
念論集』 高宮廣衞先生古稀記念論集刊行会
新里貴之 2004 「沖縄諸島の土器」
『考古資料大観 第 12 巻 貝塚後期文化』 小学館
新里貴之 2013 「ナガラ原東貝塚出土のスセン當式類似土器について」
『ナガラ原東貝塚の研究
5 世紀から 7 世紀前半の沖縄伊江島』 熊本大学文学部 木下研究室
参考文献
名護市教育委員会 2005 『大堂原貝塚-古宇利屋我地線建設に伴う緊急発掘調査報告書-』
名護市文化財調査報告書第 17 集
沖縄県教育委員会 1996 『平敷屋トウバル遺跡-ホワイトビーチ地区内倉庫建設工事に伴う緊
急発掘調査報告書-』 沖縄県文化財調査報告書第 125 集
北谷町教育委員会 2012 『小堀原遺跡-桑江伊平土地区画整理事業に伴う発掘調査事業(平成
17~20 年度)
』 北谷町文化財調査報告書第 34 集
伊江村教育委員会 1979 『伊江島ナガラ原西貝塚 緊急発掘調査報告書』 伊江村文化財調査
報告書第 8 集
28
29
30
31
32
33
34
2.石器
本遺跡での石器の出土は第 16 図の 5 点であった。器種は磨石・敲石のみで、出土点数が少量の
ため分類は行わず、個々の詳細を第 5 表の観察表に記載した。石器の検出が少量だが、
「第 3 節
遺構」で述べたように集石の中からは石・サンゴ・軽石等多くが検出されており、石器になりう
る石材が多く存在しているにも関わらず、石器はこの 5 点のみであった。
第 5 表 石器観察表
図版番号
種類
出土地点
層
縦 (㎝ )
横 (㎝ )
幅 (㎝ )
重量
(g )
石質
観察結果
第16図53
磨石
C-4-87・1
16.8
15.4
7.5
285
砂岩?
完形品 正面はきれいな円形、断面 は楕 円形 を呈 する
全体的に軽微な研磨がみられる
54
磨石
C-6-88・4
8.2
5.7
2.3
92.1
破損が著しいため原形不明 軽微な研磨がみられる
55
磨石
C-6-88・4
3.7
6.0
2.7
88.9
破損が著しいため原形不明 軽微な研磨がみられる
56
磨石
C-6-78・3
12.8
10.6
8.0
142
砂岩?
完形品 正面は隅丸方形状で、断面 は三 角形 を呈 する
面のほとんどが自然面であるが、左 側稜 の一 部に わず
かに研磨がみられる
57
敲石
C-6-88・4
8.5
8.2
3.9
39.5
砂岩?
完形品 正面はほぼ円形、断面は 楕円 形を 呈す る 下
部及び両側面に敲打痕がみられるが 、両 側面 の敲 打痕
はあまり顕著ではない
3.貝製品
貝製品は総数 43 点出土した。そのうち用途別にみると、実用品と装飾品に大別でき、前者がヤ
コウガイ螺蓋製敲打器・二枚貝有孔製品、タカラガイ有孔製品、後者が小玉・巻貝有孔製品とな
っている。出土量をみるとヤコウガイ螺蓋製敲打器が 17 点と最も多く、続いて小玉の 16 点とな
っている。また、層序別にみると、C-6-88 及び C-6-98・D-6-8 の遺物包含層である第 4 層が 12
点と最も多く出土している。以下、貝製品 43 点を図示し、各種毎に特徴を記す。
第 6 表 貝製品地区別出土状況集計表
実用品
ヤコウガイ螺
蓋製敲打器
C-6-78
装飾品
タカラガイ
有孔製品
小玉
巻貝
有孔製品
小計
1
0
5
1
6
6
4
0
1
1
1
0
1
3
3
3
8
2
2
1
2
1
8
0
1
1
3
1
0
1
1
0
1
1
2
1
0
1
1
0
1
1
2
0
2
5
24
19
43
1
1
1
C-6-88
4
4
1
表面採集
C-6-89・ 90
3
C-6-98・ D-6-8
1
0
3
5
2
0
2
1
4
7
7
4・ 溝 状 遺 構 ?
1
1
5
2
2
1
C-4-87
1
2
C-6
表面採集
E-1
表面採集
E-7-56
4
不明
表面採集
合計
合計
小計
5
二枚貝
有孔製品
1
1
1
1
1
1
17
2
35
1
1
1
1
1
16
3
36
ヤコウガイ螺蓋製敲打器
これまで各遺跡から出土した貝刃、貝斧、貝
刀、螺蓋製貝斧、螺蓋製敲打器など様々な名称
で呼ばれている製品であるが、本報告書ではヤ
コウガイ螺蓋製敲打器の名称を使用する。
本品はヤコウガイの蓋の縁辺部で薄い部分に
数回の打撃による剥離痕が残る製品で、17 点出
土している。製品のすべてに剥離痕以外の使用
痕は確認されない。剥離痕の分布範囲をみるた
め、
「シヌグ堂遺跡発掘調査報告書」の中の模式
図(第 17 図)を参考にして、範囲を確認した。
出土地は C-6-98・D-6-8 の第 4 層(溝状?遺
構も含める)で 8 点検出され、続いて C-6-88 第
4 層の 4 点である。他は第 5 層からの出土と
表面採集から得られたものである。遺物実測図は、第 18・19 図で、詳細については第 7 表
に示した。
第 7 表 ヤコウガイ螺蓋製敲打器観察表(1)
縦・横
(㎝)
7.15
図版番号
出土地点 層
第18図58
C-6-88 4
59
C-6-98・D-6-8 4
60
表面採集
61
C-6-98・D-6-8 4
62
C-6-88 4
63
C-6-98・D-6-8 4
溝状?遺構内
64
C-6-98・D-6-8
4
65
C-6-88 4
66
C-6-98・D-6-8 4
8.0
6.5
7.6
7.4
8.2
6.9
7.9
6.55
7.4
7.5
8.3
7.1
8.1
5.7
7.15
7.3
8.3
重量
(g)
剥離範囲
160.2
②~⑮
141.8
③~⑬
172.1
④~⑪
数回の打撃による剥離痕 上端も 打撃 によ る破 損あ り 若 干摩
耗する 他の使用痕なし
146.3
④~⑪
数 回 の 打 撃 に よ る 剥離 痕 ⑫ ~① は軽 微な アバ タ状 を呈 する
他の使用痕なし
124.5
④~⑪
数回の打撃による剥離痕 ⑫~⑭ にも 打撃 あり
及び裏面風化 他の使用痕なし
152.8
④~⑬
数回の打撃による剥離痕 剥離面 の幅 が短 い 全 体的 に摩 耗し
鋭利さがなく鈍い 他の使用痕なし
151.4
④~⑬
数回の打撃による剥離痕 ④~⑦は 強い 打撃 のた め大 きく 破損
全体的に鋭利さを残す 他の使用痕なし
113.8
②~⑫
数回の強い打撃によって大きく剥 離す る 全 体的 に鋭 利さ を残
すが⑨~⑫あたりは若干摩耗する 他の使用痕なし
180.0
②~⑩
数回の打撃による剥離痕 全体的 に鋭 利さ を残 す 剥 離面 の幅
が若干短い 他の使用痕なし
観察結果
数回の打撃による剥離痕 他の使 用痕 なし
残す
全体 的に 鋭利 さを
数回の打撃による剥離痕 他の使 用痕 なし
全体 的に 鋭利 さを
残す ③~⑤の範囲は大きく破損、その後も使用か ?
37
剥離 面の 一部
38
第 7 表 ヤコウガイ螺蓋製敲打器観察表(2)
図版番号
出土地点 層
67
C-6-78 5
第 19図 68
C-6-98・ D-6-8 4
69
C-6-88 4
70
C-6-98・ D-6-8 4
71
C-6-98・ D-6-8 4
72
C-6-98・ D-6-8 5
73
C-6-98・ D-6-8 4
74
C-6 表面採集
縦・横
(㎝ )
5.6
6.3
7.0
8.0
6.5
7.45
6.3
7.7
7.0
5.0
6.4
5.4
5.5
4.5
31.5
6.4
重量
(g )
剥離範囲
59.3
④⑤
⑥~⑬
数回の打撃による剥離痕 全面風化が著しい 他の使用痕なし
155.3
④~⑨
数回の打撃による剥離痕 ⑫にも 打撃 によ る破 損あ り
に鋭利さを残す 他の使用痕なし
129.0
⑤~⑩
数 回 の 打 撃 に よ る 剥離 痕 ① ~③ ⑫に も打 撃に よる 破損 あり
全体的に鋭利さを残す 他の使用痕なし
125.0
~⑪
強打のせいか④~⑨は大きく破 損
の使用痕なし
94.5
~⑪
数回の打撃による剥離痕
なし
105.6
~⑨
強い打撃で大きく破損 全体的に強く摩耗 他の使用痕なし
81.3
~⑬
強い打撃で大きく破損
の使用痕なし
33.7
―
39
観察結果
全 体的
全 体的 に鋭 利さ を残 す
全体的 に風 化が 著し い
他 の使 用痕
全体的に 摩耗 し鋭 利さ がな く鈍 い
数回の打撃による剥離痕の部分の み残 る
す 他の使用痕なし
他
他
全 体的 に鋭 利さ を残
二枚貝有孔製品
二枚貝の殻頂部付近に敲打により穴を穿つ製品で、2 点出土した。他の遺跡でも有孔製品
や貝錘として知られている。
第 20 図 75 の資料は殻頂部にやや円形の粗孔を穿つ。粗い割れ口のみで研磨面はみられな
い。貝は全面にアバタがみられ、若干の摩耗もみられる。
同図 76 も同様、殻頂部に楕円あるいは円形の粗孔を穿つが、研磨面はみられない。この資
料も若干のアバタがみられ摩耗が著しい。
2 点の資料についての観察は次の表の通りである。
第 8 表 二枚貝有孔製品観察表
図版番号
出土地点
層
第20図
75
E-7-56
4
76
C-4-87
3
貝種
シャコガイ
科シラナミ
シャコガイ
科 ヒレ
ジャコ?
左右
貝法量(㎝)
表面孔径(㎝)
裏面孔径(㎝)
重量(g)
縦
横
厚さ
縦
横
縦
横
左
8
15.9
0.7
2.85
3.4
2.1
2.5
257.0
右
8.8
6.0
0.5
2.5
―
2.0
―
59.5
40
タカラガイ有孔製品
第 21 図の製品は、タカラガイの背面を除去した製品で、計 5 点出土した。この製品は民俗
事例から貝錘(網のおもり)として知られるが、本遺跡からは出土量が少数のため貝錘とは断言
できず、他の利用法の可能性も否定できない。また、装飾品として扱うには穿孔が雑で研磨
面もほとんど確認されないため、今回は実用品としてこの項に含め、有孔製品として報告す
る。詳細は第 9 表の観察表に記す。
第 9 表 タカラガイ有孔製品観察表
図版番号
出土地点
層
貝種
縦
(㎜)
横
(㎜)
孔径
縦×横
(㎜)
重量
(g)
第21図
77
表面採集
タカラガイ科
ハナマルユキダカラ
34
25
23×18
6.9
背面を除去 殻軸なし
若干摩耗する
殻口の 歯の 一部 破損
タカラガイ科
ハナマルユキダカラ
26
21
18×16
4.3
背面を除去 殻軸なし
若干貝の色調残る
殻口の 歯の 一部 破損
タカラガイ科
キイロダカラ
20.5
14
13×10
0.9
タカラガイ科
ハナマルユキダカラ
31
25
22.5×17
5.8
背面を除去
利さを残す
タカラガイ科
ハナマルユキダカラ
33.5
26
24×16
7.8
背面を除去 殻軸の一部が残 る 割 れ面 は鋭
利さを残す 貝の色調が明瞭に残る
C-6-88
78
79
4
C-6-89・90
4
E-2
80
表面採集
C-4-87
81
1
観察結果
背面を除去
殻軸の一部が残 る
細 かい アバ
タが疎らにみられる 死貝?
殻軸の一部が残 る
割 れ面 は鋭
小玉
イモガイやマガキガイなどの巻貝を利用した製品で、螺塔部を輪切りにし玉状に仕上げたも
のや、貝の形がそのまま残り殻頂部や体層部に孔を穿つものも含まれる。総数 16 点出土して
いる。
第 10 表 小玉観察表(1)
縦
殻高
(㎜ )
横
殻長
(㎜ )
孔径
縦×横
(㎜ )
重量
(g )
C-6-78
1
10
10
2× 2
0.3
全体的に研磨があり滑らか 殻軸なし
83
C-6-98・ D-68 4
12
11.5
1× 1
0.6
殻軸なし 全体的に摩耗し滑らか 肩部が一部残る
84
C-6-88
1
12
11.0
2× 2
0.5
内部の螺階部の一部が残る 肩部と螺溝の一 部が 残る
的に摩耗し滑らか 研磨なし
85
C-6-98・ D-68 4
12.5
12
2× 2
0.7
殻軸及び内部の螺階部なし
磨あり 肩部が一部残る
86
C-6-88
4
マガキガイ?
16
15.5
4.5× 4
1.7
殻軸なし 全体的に丁寧に研磨され螺塔部の一 部に 擦痕 あり
後溝が一部残る
87
C-6-88
4
マガキガイ?
22
20
6× 6
2.6
殻軸及び内部の螺階部の一部あり
は全体的に摩耗 若干アバタあり
88
C-6
表面採集
マガキガイ?
19
19
5× 4
3.7
殻軸なし 孔周辺に研磨あり
肩部・後溝が一部残る
図版番号
出土地点
層
第 22図
82
貝種
41
観察結果
表面にアバタあ り
全体
全 体的 に研
孔周辺にの み研 磨あ り他
雑な穿孔で螺階 部の 一部 残る
第 10 表 小玉観察表(2)
縦
殻高
(㎜ )
横
殻長
(㎜ )
孔径
縦×横
(㎜ )
重量
(g )
観察結果
C-6-78
4
16
16
2× 2
1.9
殻軸なし 肩部・結節の一部残る 全体的に若干アバタあり
90
C-6-88
表面採集
15
13.5
2× 2
1.3
殻軸なし
る
91
C-6-78
1
13
12
1× 1
1.0
加 工 途 中 の も の か ? 後 溝 ・ 体 層 部の 一部 残る
内部の螺階部の一部あり
92
C-6-78
1
1.95
20.5
7× 7
3.4
加工途中のものか?
殻軸なし
93
C-6-78
1
16.5
12
螺塔部
2× 2
体層部
1.3
加工途中のものか? 殻頂 部及 び体 層部 に円 形の 孔あ り
軸は一部残るが内部の螺階部はなし
94
C-6-78
1
22
13
3× 3
2.7
殻頂部に小孔あり 殻軸なし 他の加工なし
95
C-6-88
1
16.5
10.5
2× 2
1.1
殻頂部に小孔 殻軸の一部なし 他の加工なし
96
C-6-88
1
19
14
10.5× 10
1.6
殻頂部の穿孔なし 体層部及び殻軸を除去 他の加工なし
97
C-6-88
表面採集
12
13
6.5× 11
1.2
殻頂部の穿孔なし
他の加工なし
図版番号
出土地点
層
89
貝種
42
孔周辺にのみ研磨あり
体層部に薄 く貝 の柄 が残
殻軸 なし
孔 は 粗 雑 で内 部の 螺階 部が 一部 残る
体層部及び殻軸を除去
殻
若 干ア バタ あり
43
巻貝有孔製品
3 点出土した。中型のイモガイ科の貝の体層部及び殻軸を除去し、殻頂部に穿孔した未完
成の製品である。
各資料の詳細は下記の通りである。
第 11 表 巻貝有孔製品観察表
縦
(㎜ )
横
(㎜ )
孔径
縦×横
(㎜ )
重量
(g )
観察結果
C-6-89・ 90
4
26
26
4× 4
5.3
肩部直下より 切断 殻軸 なし 若干 摩耗 し研 磨面
の確認不可能 全面にひどいアバタあり 死貝?
99
C-6-88
4
23
41.5
0× 7
11.2
肩部直下より 切断 殻軸 なし 全体 的に 摩耗 をう
け滑らか 表面にアバタあり 死貝?
100
C-6-78
1
45
30
17× 0
8.7
体層部除去及び 穿孔 がと ても 雑 制 作途 中の もの
か 殻軸はないが内面の螺階部の一部が残る
図版番号
出土地点
層
第 23図
98
貝種
44
4.陶磁器
本遺跡より出土の陶磁器は外国産、本土産、沖縄産陶磁器が出土している。出土状況は第 1~3
層の近代・現代の攪乱部分や客土部分及び表面採集からの出土となっている。出土量が少なく大
半が小破片のため、器種の判別不可能な資料が多いが、確認できるものでは碗、鉢、壺、皿、
杯、甕、瓶、急須、蓋がみられる。
出土量が僅かで、小破片であったため、下記の通り、陶磁器出土状況集計表はまとめて扱い、
遺物の特徴は各種類別に記述する。
第 12 表 陶磁器地区別遺物出土状況集計表
青磁
碗
1
碗
1
4
1
壺
碗
1
9
皿
杯
カムィヤキ
小
計
壺
器
種
不
詳
沖縄産施釉陶器
小
計
碗
鉢
壺
3
1
9
0
11
0
0
0
0
1
4
0
0
0
0
周辺採集
0
0
0
0
2
4
0
1
29
0
0
0
0
1
3
0
2
3
0
8
1
C-6-88
3
壺
染付
小
計
3
C-6-78
C-6-89・
90
鉢
白磁
小
計
4
4
1
2
1
1
1
1
1
沖縄産無釉陶器
瓶
器
種
不
詳
小
計
鉢
1
2
18
1
壺
甕
小
計
碗
1
13
15
187
1
1
2
1
0
1
2
9
42
9
0
1
141
1
23
25
0
1
1
1
11
13
36
1・ 3(攪 乱 )
0
0
1
1
0
1
0
2
C-6-98・
D-6-8
4
0
0
1
1
0
0
0
2
C-10-57
掘削土採集
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
3
1
C-4-87
1
1
1
5
1
1
2
20
24
2
2
3
0
0
1
0
4
4
南壁面
0
0
0
0
1
1
0
D-1-89
表面採集
0
0
0
1
2
2
0
E-1
表面採集
1
14
1
1
3
3
1
1
3
18
12
3
0
0
2
2
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
1
0
掘削土採集
0
0
0
0
表面採集
合計
2
16
2
1
1
18
1
1
0
1
2
18
1
1
1
1
20
2
2
1
1
1
4
81
3
9
0
1
2
1
1
8
1
6
6
1
16
110
5
急
須
蓋
器
種
不
詳
小
計
7
31
5
1
1
3
235
282
2
4
1
2
4
6
95
1
1
2
1
12
3
1
3
10
6
合
計
2
4
173
246
1
2
43
71
2
4
1
3
4
1
2
2
4
39
69
1
1
8
1
2
1
1
1
10
0
1
杯
33
6
0
2
皿
1
6
2
E-7-56
不明
3
1
1
E-4-35
E-14-2
3
1
1
壺
1
1
1
1
鉢
1
2
2
本土産陶磁器
器
種
不
詳
1
0
3
11
43
3
17
0
0
1
2
0
2
8
9
7
9
3
0
2
110 431
1
2
10
53
10
3
5
18
0
1
3
13
2
7
532
796
青磁
青磁の検出量は 18 点と少なく、そのうち口縁部7点、胴部 10 点、底部 1 点となってい
る。器種は鉢・壺が各 1 点と、他は碗であった。すべて小破片であるが、その中で有文は 2
点のみで雷文がみられた。採集遺物のうち、特徴が窺える遺物を第 24 図に示し、観察事項は
第 13 表に示した。
45
第 13 表 青磁観察表
図版番
号
種類
出土地点
層
種類
部位
径
(㎝ )
第 24図
101
青磁
表面採集
碗
口縁
釉色は灰オリーブ色で薄くかかる 光沢なし 貫入は表面に
若 干 あ り 胎 土 は 明 青 灰 色 で 肌 理 や や 細 か い 器 壁 5㎜
102
青磁
E-1
表面採集
碗
口縁
釉色は灰オリーブ色で薄くかか る 光 沢な し 貫 入な し
土 は 明 青 灰 色 で 肌 理 細 か い 器 壁 4㎜
103
青磁
C-6-78
1
碗
口縁
釉色は灰色で薄くかかる 光沢あり 若干粗い貫入が全面に
あ り 胎 土 は 灰 白 色 で 肌 理 細 か い 器 壁 は 口 唇 部 6㎜ 胴 部 4㎜
104
青磁
E-7-56
2
碗
底部
3.8
観察結果
胎
釉色は オリ ーブ 灰色 高台 内は 無釉 光沢 あり 貫入 なし
胎 土 は 明 青 灰 色 で 肌 理 細 か い 器 壁 胴 部 4㎜ 茶 溜 り 3㎜
白磁
白磁は 2 点のみの検出で、そのうちの 1 点が第 25 図 105 であ
る。壺の口縁部で口径 3.8 ㎝。口縁部がラッパ状に開き、細く長
い頸を呈すると思われる。釉色は灰白色を呈し、にぶい光沢を発
する。素地は灰白色を呈し肌理が細く、黒色微細粒が疎らにみ
られる。器壁は 4 ㎜を呈する。E-1 表面採集。
もう 1 点の資料は胴部小破片のため割愛する。
染付
染付は口縁部 9 点、胴部 10 点、底部 1 点の計 20
点得られたが、すべて小破片である。第 26 図の 2
点は比較的文様が明瞭な資料である。特徴は下記の
観察表に示す。
第 14 表 染付観察表
図版番
号
種類
出土地点
種類部位
層
第 26図
106
染付
C-6-89・
90
1 壁 面
碗
口縁
釉 色 は 明 緑 灰 色 で 内面 は色 が若 干薄 い 光 沢あ り 呉 須は 淡い
全体的に粗い貫入が疎らにあり 磁胎 は灰 白色 で若 干肌 理が 粗い
文 様 は 草 花 文 系 と 思 わ れ る 器 壁 5㎜
107
染付
C-6-78
1
碗
口縁
釉色は灰白色で光沢なし 呉須は淡 い緑 灰色 磁胎 は灰 白色 で肌
理細かい 貫入なし 文様は草花文あ るい は丸 文と 呼ば れる もの
か 器 壁 3㎜
観察結果
46
カムィヤキ
わずか 4 点の検出で、そのうち口縁部は第 27 図 108 の 1 点のみであった。胴部に関して
も文様や調整痕の顕著に残る資料は第 27 図 109 のみであった。
第 15 表 カムィヤキ観察表
図版番号
種類
出土地点
層
種類
部位
観察結果
第27図
108
カムィヤキ
D-1-89
表面採集
壺
口縁
無文 口唇部が丸い 胎土は暗青灰色で若干 肌理 が粗 い 混
和材は白色砂粒が疎らにみられる 調整は回転 ナデ 、部 分的
にヘラけずり 器壁13㎜
109
カムィヤキ
表面採集
壺
胴部
表面に波状文3条と横位沈線文1条あり
き痕 両面とも青黒色 芯部は紫黒色
粒 調整は回転ナデ 器壁5.5㎜
裏面は 格子 目状 の叩
混和材 は細 かい 白色
沖縄産陶器
沖縄産陶器で確認された資料は、施釉陶器と無釉陶器に大別され、器種をみると、前者が
碗・鉢・壺・瓶で、後者が鉢・壺・甕となっている。出土量はともに 110 点で施釉陶器口縁
部 22 点、胴部 80 点、底部 8 点で、無釉陶器口縁部 6 点、胴部 101 点、底部 3 点となってい
る。
比較的良好な資料を第 28 図に呈示してある。特徴については第 16 表に示した。
第 16 表 沖縄産陶器観察表(1)
図版番号
種類
出土地点
層
種類
部位
第 28図
110
沖縄産施釉陶器
E-14-2
2
碗
口縁
111
沖縄産施釉陶器
E-4-35
1
碗
口縁
径
(㎝ )
観察結果
湧田焼 灰釉碗 口縁は直線的 釉色は灰オリーブ色
磁 器 質 で 灰 白 色 細 か い 貫 入 が 全 面 に あ り 器 壁 4㎜
13
光 沢あ り
胎 土は
壺屋焼 口縁僅かに外反 白化粧土+透明釉 釉はガラス質 で網 目状 の貫
入 胎 土 は 灰 白 色 で 肌 理 は 若 干 粗 い 黒 色 の 細 粒 が 疎 ら に あ り 器 壁 5㎜
47
第 16 表 沖縄産陶器観察表(2)
図版番号
種類
出土地点
層
種類
部位
径
(㎝ )
観察結果
112
沖縄産施釉陶器
E-4-35
1
碗
底部
6.6
壺 屋 焼 白 化 粧 土 + 透 明 釉 釉 ・ 胎 土 の 特 徴 は 111と 類 似 し 同 一 個 体 か ?見
込 み に 蛇 の 目 釉 剥 ぎ 畳 付 無 釉 高 台 内 に 飴 釉 (暗 オ リ ー ブ 色 )と 白 色 の 釉
で 施 文 茶 溜 り 部 分 器 壁 9㎜
113
沖縄産施釉陶器
C-6-78
表面採集
碗
底部
6.5
壺屋焼 底部から胴への立ち上がりがシャープ 両面鉄 釉 光 沢あ り 見
込 み に 灰 白 色 土 (光 沢 な し )施 釉 胎 土 は 明 青 灰 色 で 微 粒 の 白 色 粒 ・ 黒 色 粒
多 い 器 壁 は 胴 部 6.5㎜ 茶 溜 り 部 分 7.5㎜
114
沖縄産施釉陶器
E-4-35
2
碗
底部
5.4
壺屋焼 畳付無釉 透明釉+白化粧土で見込みは蛇の目釉 剥ぎ 表面 は鉄
釉 光 沢 あ り 畳 付 付 近 に ア ル ミ ナ ?付 着 胎 土 は 灰 白 色 で 肌 理 若 干 粗 い
貫 入 な し 器 壁 は 胴 部 5㎜ 茶 溜 り 部 分 4.5㎜
115
沖縄産無釉陶器
C-6-89・ 90
2
赤瓦
胴部
円 盤状 製品 細か く数 回の 叩打 痕あ り
厚 さ 1.7㎝ 色 は 両 面 橙 色
研 磨面 なし
縦 3.9 ㎝
横 3.8㎝
本土産陶磁器
総数 533 点得られているが、すべて小破片で現代の焼物が多いようである。器種は碗・
鉢・壺・皿・杯・急須・蓋などがみられる。部位での内訳は口縁部 194 点、胴部 271 点、底
部 68 点となっている。外国産や沖縄産陶磁器に比べ圧倒的に数が多いが、実測可能な資料は
なく、資料の図化は割愛する。
48
参考文献
・(監修)うるま市教育委員会 株式会社イーエーシー『平敷屋トウバル遺跡―ホワイトビーチ地区
内機材倉庫建設に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書―』2008(平成 20)年
・沖縄県教育委員会『平敷屋トウバル遺跡―ホワイトビーチ地区内倉庫建設工事に伴う緊急発掘
調査報告書―』沖縄県文化財調査報告書第 125 集 1996 年
・名護市教育委員会『大堂原貝塚―古宇利屋我地線建設に伴う緊急発掘調査報告書―』名護市文
化財調査報告書第 17 集 平成 17(2005)年
・沖縄県教育委員会『シヌグ堂遺跡―第 1・2・3 次発掘調査報告―』沖縄県文化財調査報告書第
67 集 1985 年
・沖縄県具志川村教育委員会『沖縄県・久米島具志川村 清水貝塚 発掘調査報告書』具志川村
文化財調査報告書第 1 集 1989 年
・宜野座村教育委員会『前原貝塚―村道サー原線道路改良事業に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書
―』宜野座村乃文化財 17 集 2005 年
・沖縄県・勝連町教育委員会『津堅貝塚―中城港湾(アギ浜地区)港湾改修事業に伴う緊急発掘調査
報告書―』勝連町の文化財第 23 集 2005 年
・沖縄県国頭村教育委員会『国頭村の遺跡―詳細分布調査報告―』国頭村文化財調査報告書第 2
集 1991 年
・伊江村教育委員会『伊江島ナガラ原西貝塚 緊急発掘調査報告 概報篇 自然遺物編』
伊江村文化財調査報告書第 8 集 1979 年
・沖縄県具志川市教育委員会『宇堅貝塚・アカジャンガ―貝塚 発掘調査報告』1980 年
・
『原色沖縄海中動物生態図鑑』新星図書 昭和 53 年
・
『生態/検索図鑑 沖縄の海の貝・陸の貝』沖縄出版 1995 年
・
『沖縄海中生物図鑑 ―新星図鑑シリーズ―第 4 巻 第 5 巻』新星図書出版 昭和 63 年
・
『考古学と動物学 考古学と自然科学②』西本豊弘・松井章編 1999 年
49
5.自然遺物
5-1 貝類遺存体
1.はじめに
本項では 2012~2013(平成 24~25)年度の安田遺跡詳細分布調査によりピックアップ法で得
られた貝類遺存体について報告する。安田遺跡詳細分布調査では 1985・86 年の分布調査の際に
示された遺跡の推定範囲内外において、遺物包含層の有無を確認するため 2012(平成 24)年度
に 4 か所、2013(平成 25)年度に 8 か所の試掘が行われ、貝塚時代後期の遺物包含層が確認され
ている。今回は遺物包含層が確認された C-6-78、C-6-88、C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 グリッド
(計 25 ㎡)から得られた貝類遺存体について報告を行う。
2.種・サイズ組成
第 17~24 表に層ごとの出土状況を示した。各層の時期は、遺物の出土状況・土器の年代測定結
果から、第 4 層が貝塚時代後期前半に比定されている。調査面積が小さいため多くは得られなか
ったが、全体で海産腹足類 25 科 72 種、二枚貝類 15 科 37 種、陸産腹足類 4 科 5 種、破片を含め
た総数 3,957 個、総重量 79.5 ㎏の貝類遺存体が得られた。
なお、第 17~24 表記載の生息地類型については古我地原貝塚(黒住 1987)の類型に準拠し、
最少個体数(MNI)の算出方法については、腹足類では完形と殻頂数(表の R 欄に表示)の合計
を、二枚貝類では左右殻で完形と殻頂を合計し、その多い値を最少個体数とした。
種組成をみてみると、現在の耕作土である第 1 層、沖縄貝塚時代後期前半の第 4 層、無遺物砂
層の第 5 層ともに陸産腹足類が多く、アマオブネ・オキナワイシダタミ・カンギク等の小型貝が
多く出土していた。小型貝類は「ダシ的な利用」
(黒住 2002)も想定されているが、オカヤドカ
リの宿貝となったと思われる殻口が広くなっているものが多く確認されたことや、調査区が海岸
に近く、調査時にもグリッド付近でオカヤドカリの散歩がみられたことなどから、オカヤドカリ
による持込みであった可能性もある。第 4 層では、これら小型貝類に加え、サンゴ礁斜面及びそ
の下部に生息するヤコウガイ・サラサバティの出土がみてとれた。安田区においては現在でも大
潮の干潮時にヤコウガイが採取されている。
サイズ組成については、資料整理時にチョウセンサザエ・イソハマグリ・マガキガイ・シャコ
ガイ類においてその殻長・殻高を計測したが、出土数が少なかったためグラフ化が行えなかった
(それぞれの平均がチョウセンサザエ殻長:71.0mm、チョウセンサザエ蓋長径:25.8mm、イ
ソハマグリ殻長:21.3mm、マガキガイ殻長:45.2mm)
。
3.まとめ
安田遺跡詳細分布調査により得られた貝類遺存体は、調査面積が小さいため出土数は多くはな
かったが、アマオブネ・オキナワイシダタミ・カンギク等の小型貝を主体とし、第 4 層のころに
は礁斜面から下部の大型貝を採捕していた。得られた貝のサイズ組成は、第 4 層でマガキガイ殻
長がやや小さい印象があるが、他種はこの時期にほぼ一般的なサイズであった。ただし、計測個
体が少ないため遺跡全体のサイズを反映していない可能性が高い。
50
参考文献
黒住耐二 「貝類遺体からみた奄美・沖縄の自然環境と生活」
『先史琉球の生業と交易‐奄美・沖
縄の発掘調査から‐』木下直子(編)熊本大学文学部 2002 年
赤嶺・黒住「勝連半島における遺跡出土貝類遺存体の状況」
『勝連城跡―四の曲輪北区発掘調査報
告書―』うるま市教育委員会 2011 年
51
第 17 表 C-6-78 貝類(巻貝)出土状況
C-6-78
1層
完形
科名
種名
生息地
1 ヒザラガイ科
ヒザラガイ
Ⅰ-1-a
2
オオベッコウガサガイ
Ⅰ-1-a
3
ベッコウカサガイ
4 ツタノハガイ科
ヨメガカサガイ
Ⅰ-1-a
5
クルマガサガイ
Ⅰ-1-a
L
3層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
2
ミミガイ科
L
4層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
MNI
完形
L
5層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
カノコガイ
Ⅲ-1-c
8
コシダカアマガイ
Ⅰ-1-b
9
キバアマガイ
Ⅰ-0-a
10
アマオブネ
Ⅰ-1-b
11 アマオブネガイ科
ニシキアマオブネ
1
ムラクモカノコガイ
3.8
1
1
2
2
1
1
1.2
1
1
2.5
1
1.8
1
1
1.3
1
1
0.4
0.8
1
3
1
7
3.6
1
2
10
62.3
5
6
1
8.5
1
1
4.5
2
3
0.5
1
1
3
1
1
2
6.3
1
1
2
4
6.9
2
1
5
2
14.5
5
1
1.1
1
1
1.2
1
23
8
61.8
23
1
7
12.6
1
1
1
5.9
1
1
1
3.1
1
1
0.9
1
1
2
6.1
2
18
58
23
48
2
15.5
7
1
2.7
1
2
1
7
8.8
1
2
2
3
427
3
4
3
7
748.0
3
6
4.9
1
2
21
1
1
21
2
1
1
3
7
15
サラサバティ
Ⅰ-4-a
16
ベニシリダカ
Ⅰ-4-a
ギンタカハマ
Ⅰ-4-a
オキナワイシダタミ
Ⅱ-1-b
1
チョウセンサザエ蓋
Ⅰ-3-a
チョウセンサザエ
Ⅰ-3-a
21
カンギク蓋
Ⅱ-1-b
22 リュウテンサザエ科 カンギク
Ⅱ-1-b
23
ヤコウガイ蓋
Ⅰ-4-a
24
ヤコウガイ
Ⅰ-4-a
25
コシタカサザエ
Ⅰ-2-a
26
オニノツノガイ
Ⅰ-2-a©
27
クワノミカニモリ
28 オニノツノガイ科
オオシマカニモリ
29
ナガタケノコカニモリ
9
47.4
1
14
126.2
1
12
1
3
4.1
3
15
40.1
2
21
352.7
30
14
77.1
1
6
210.3
1
37
254.2
1
1
1.6
2
1
2.3
1
1.5
1
1
4
11
1
4
137.8
1
1
0
3
2
20
8
1
不明
19
6
1
1
Ⅰ-2-a
5
0
Ⅰ-0-a
ニシキウズ
18
2.3
小計
MNI
Ⅰ-0(1)-c
14
ニシキウズガイ科
破片 重量(g)
R
0
1
不明
17
L
1
アマオブネ類(オカヤドカリ宿貝)
13
MNI
殻頂
R
Ⅰ-3-a
7
リュウキュウアマガイ
完形
L
1
不明
12
MNI
1
1
イボアナゴウ
完形
1
不明
6
1.4
MNI
30
2
3
1
0.3
1
1
22.2
3
1
2
2.4
2
4
29.4
2
9
65
1
11
181.1
1
21
3633.9
8
16
4
22.4
16
2
11
51
2
5
14
10
132.5
14
49
10
10
624.1
10
12
1.4
1
1
10
35
71.3
11
11
6
229.1
1
4
45
4747.0
8
18
1
41.5
1
1
1
9
1
2
2
1.1
2
2
1
1.9
1
1
1
4.2
1
2
1
1
1
Ⅰ-1-a
1
1
4
20.8
1
6
364.6
1
0.5
1
8
8
3
0
不明
30
キバウミニナ
Ⅲ-0-c
1
12.5
1
31 ウミニナ科
イボウミニナ
Ⅲ-1-c
1
1.2
1
2.9
1
1
112.6
10
10
1
6.1
1
1
13.8
1
不明
1
32
マガキガイ
Ⅰ-2-c
5
33
オハグロガイ
Ⅱ-2-c
1
スイジガイ
Ⅰ-2-c
クモガイ
Ⅰ-2-c
ラクダガイ
Ⅰ-4-c
34
35
スイショウガイ科
36
5
ハナマルユキダカラ
Ⅰ-3-a
38
キイロダカラ
Ⅰ-1-a
39
ハナビラダカラ
Ⅰ-1-a
40
ホシキヌタガイ
Ⅰ-2-a
41
ホシダカラ
Ⅰ-2-c
ヤクシマダカラ
Ⅰ-2-a
42
タカラガイ科
43
キッコウダカラ
44
ナツメダカラモドキ
Ⅰ-2-b
45
イボダカラガイ
Ⅰ-2-a
1
1(幼)
1
21
1
1
1
14
112.2
1
1
1
5.5
1
2
2
9.9
2
1
4.2
1
47
オキニシ科
147.5
1
2
1
517
2
3
16
178.2
1
3
1
0
2
0
0
1
2
1
32
1
1
1
14.3
1
1
5
1
1
1
1
0
不明
46
1
0
不明
37
1
1
ホラガイ
Ⅰ-4-a
1
74.6
1
1
シロナルトボラ
Ⅰ-4-a
1
1
1
1
48 フジツガイ科
シロシノマキ
0
49
トミガイ
0
50
タマガイ科
ヤツシロガイ科
51
52
53
アクキガイ科
アラゴマフダマガイ
0
不明
0
テツレイシ
Ⅰ-3-a
1
4.1
1
1
シラクモガイ
Ⅰ-3-a
1
55.4
1
1
テングガイ
Ⅰ-4-a
不明
54 オニコブシガイ科
コオニコブシ
Ⅰ-3-a
55
シマベッコウバイ
Ⅱ-1-c
56
アワムシロガイ
Ⅱ-2-c
ヨウバイモドキ
Ⅱ-2-c
エゾバイ科
57
2
2
12.5
1
2
50.4
2
1
10.2
1
2
1
69
1
2
1
158.9
1
1
2
5.4
1
2
1.5
1
2
1
1
0.5
1
1
0
不明
マクラガイ科
58
オリイレヨフバイ科
1
0
不明
1
アツムシロ
Ⅰ-2(1)-c
1
1
1.5
1
0.5
1
35.6
1
1
1
1
1
不明
2
0
59
イトマキボラ
Ⅰ-2-a
60
チトセボラ
Ⅰ-2-c
0
Ⅰ-3(2)-a
0
イトマキボラ科
61
リュウキュウツノマタ
1
1
不明
フデガイ科
0
不明
0
62
クロフモドキ
Ⅰ-2-c
1
154.2
1
1
63
アンボンクロザメ
Ⅰ-2-c
1
180
1
1
64
ヤナギシボリイモ
Ⅰ-(2)(3)-3
1
10.5
1
2
65
アジロイモガイ
Ⅱ-2-c
0
66 イモガイ科
アンボイナ
Ⅰ-2-c
0
67
サラサミナシガイモドキ
Ⅰ-2-a
0
68
アカシマミナシ
Ⅰ-2-c
69
マダライモ
Ⅰ-1-a
1
71
72
カラマツガイ科
ナツメガイ科
73 ユキノカサ科
クロカラマツガイ
ナツメガイ
0.5
1
1
4
1
1
1
37.1
1
1
2.8
1
4
1
64
3
59.5
64
84
3
1
2.6
3
4
100
48
56.6
100
103
1.1
2
23
33.7
1
4
286
9063.4
317
508
1
0
不明
0
ウノアシ
0
107 キセルガイ科
ツヤギセル
Ⅴ-8
108
シュリマイマイ
1
21.1
18
1
0.5
1
Ⅴ-8
1
5.3
1
Ⅴ-8
19
16
19.2
19
2
1.1
1
20
72.6
1
213
1851.7
147
1
0.8
2
2
1.9
1
1
0.7
1
2
不明
0
パンダナマイマイ
オキナワウスカワマイマイ
陸産マイマイ
2
Ⅰ-2-c
18
オナジマイマイ科
37.6
コウダカカラマツガイ
Ⅴ-8
110
5
1
オキナワヤマタニシ
109
1
0
2
106 ヤマタニシ科
ナンバンマイマイ科
37.7
0
不明
70
2
19
2
不明
3
0
巻貝 不明
小計
0
120
0
12
0
8
0
52
2
1
0.2
1
24
436.3
18
0
7
0
8
2
10.4
1
61
4098.5
26
0
257
0
50
第 18 表 C-6-78 貝類(二枚貝)出土状況
C-6-78
1層
完形
科名
種名
生息地
L
3層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
MNI
R
L
74
エガイ
Ⅰ-2-a
75
カリガネエガイ
Ⅱ-1-a
76
リュウキュウサルボウ
Ⅱ-1-c
オオタカノハガイ
Ⅰ-2-a
1
2.7
1
ソメワケグリガイ
Ⅱ-2-c
1
2
1
1
0.7
1
77
フネガイ科
78
3
4.7
ウグイスガイ科
4層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
MNI
完形
R
L
5層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
MNI
完形
R
L
3
R
1
MNI
殻頂
L
2
破片 重量(g)
1
1
2
5
3.5
2
2
30
1
1
1
3
1
2
1
2.5
1
2
1
0.3
1
1
1
66.5
2
1
4
4.1
1
1
アコヤガイ
0
リュウキュウナデシコ
1
111 ウミギクガイ科
イタボガキ科
小計
16.7
2
不明
80 イタヤガイ科
MNI
R
1
不明
79
完形
1
1
1
0.9
1
1
不明
81
カブラツキガイ
82 ツキガイ科
カゴガイ
キクザルガイ科
ケイトウガイ
1
0
Ⅰ-2-a
84
カワラガイ
Ⅱ-2-c
85 ザルガイ科
リュウキュウザルガイ
Ⅱ-2-c
1
5
8.5
5
2
1
2.3
2
7
5.6
3
3
12
2
2
1
1.1
1
1
2
1
1280.9
2
1
3
501.4
3
6
5
113.5
1
4
1
3.1
1
3
14
2
3
1
1
0
1
1
不明
86 トマヤガイ科
クロフトマヤガイ
Ⅰ-2-c
87
シラナミ
Ⅰ-2-a
88
シャゴウ
Ⅰ-2-c
89 シャコガイ科
ヒレジャコ
Ⅰ-2-c
90
ヒメジャコ
Ⅰ-2-a
0
0
1
92
イソハマグリ
Ⅰ-1-c
リュウキュウバカガイ
Ⅱ-2-c
112 シジミ科
210.5
1
17
1
5
53.5
2
1
1
47.5
1
48
470.6
1
1
4
50.2
1
2.2
2
1
1
4.1
1
2
1
2.7
1
1
2
不明
チドリマスオガイ科
1
0
2
91
3
0
Ⅱ-2-c
不明
83
1
1
2
2
1
Ⅲ-0-c
1
1
3
1
2
1
102.6
1
1
1
1
93
サメザラガイ
Ⅰ-2-c
0
94 ニッコウガイ科
リュウキュウシラトリ
Ⅱ-1-c
0
不明
95
0
リュウキュウマスオ
Ⅱ-1-c
96
リュウキュウナミノコ
Ⅰ-1-c
97
ヌノメガイ
98
99
シオサザナミガイ科
0
0
Ⅱ-(1)(2)-c
4
19.6
1
アラヌノメガイ
Ⅰ-2-c
1
9.5
1
オキシジミ
Ⅲ-1-c
100
アサリ
Ⅱ-1-c
101 マルスダレガイ科
オイノカガミガイ
Ⅱ-1-c
2.8
1
102
ホソスジイナミガイ
Ⅱ-1-c
0
103
イナミガイ
Ⅱ-1-c
0
104
マルオミナエシ
Ⅰ-2-a
105
ユウカゲハマグリ
Ⅱ-1-c
27.5
1
2
1
0
0
1
1
0
0
二枚貝 不明
小計
1
1
12
5
4
16
30.5
1
76
843.5
26
0
0
0
53
2
4
10.1
1
9
107.8
3
0
0
0
0
1
102.6
1
14
12
4
6
11
9.6
1
3
30
2097.6
30
60
第 19 表 C-6-88 貝類(巻貝)出土状況
C-6-88
種名
科名
生息地
1 ヒザラガイ科
ヒザラガイ
Ⅰ-1-a
2
オオベッコウガサガイ
Ⅰ-1-a
3
ベッコウカサガイ
4 ツタノハガイ科
ヨメガカサガイ
Ⅰ-1-a
5
クルマガサガイ
Ⅰ-1-a
1
ミミガイ科
イボアナゴウ
9
10.6
1
4
0.2
1
1
0.6
1
5
コシダカアマガイ
Ⅰ-1-b
9
キバアマガイ
Ⅰ-0-a
3
アマオブネ
Ⅰ-1-b
36
Ⅰ-0(1)-c
1
13
ムラクモカノコガイ
1
Ⅰ-2-a
15
サラサバティ
Ⅰ-4-a
1
ベニシリダカ
Ⅰ-4-a
1
17
ギンタカハマ
Ⅰ-4-a
18
オキナワイシダタミ
Ⅱ-1-b
3
6.5
7.3
3
17
102.6
37
1.5
1
2
4.5
1
1
4
1
6
3
90.4
7
1
0.9
1
1
1
1
1
0.8
1
2
4.4
3
3
36.1
13
1
1.9
10
6.4
10
2
1
1
0.9
1
1
12
8.4
1
8
34.4
1
4.7
2
1
10.1
6
9
6
2
17.1
6
60
2
2
4.3
2
3
4.2
2
5
10
11.5
1
1
1.4
1
1
5
867.2
3
11
6
2
9.1
6
43
1
91.5
1
46
10
3
2
4
9.1
4
2
4.1
1
7
25
1
4
30.4
26
3
7
1
13
87.1
6
1
19
412.4
4
1
1
2
196.9
2
3.6
2
2
2
4
18.4
4
7
21
612.4
1
1
9
105
8333.6
16
1
18
1
1
1
12.6
10
6
6.1
1
24
548.7
39
6
Ⅰ-3-a
1
8
81
4
2
2
Ⅱ-1-b
Ⅱ-1-b
1
0.9
1
1
1
23
ヤコウガイ蓋
Ⅰ-4-a
10
267.4
1
24
ヤコウガイ
Ⅰ-4-a
80
424.2
1
25
コシタカサザエ
Ⅰ-2-a
26
オニノツノガイ
Ⅰ-2-a©
27
クワノミカニモリ
0.4
1
1
2
0
1
16
7(1稚)
34 4782.3
2
9
5
1
4.6
6
3
1.7
3
2
1
2.5
3
1
0.5
1
0.8
1
0.6
1
1
6
1
1
63.9
6
24
0
0
Ⅰ-1-a
28 オニノツノガイ科 オオシマカニモリ
1
ナガタケノコカニモリ
イボウミニナ
Ⅲ-1-c
4
1
1
不明
31 ウミニナ科
2
0
0
不明
32
マガキガイ
Ⅰ-2-c
33
オハグロガイ
Ⅱ-2-c
スイジガイ
Ⅰ-2-c
35
クモガイ
Ⅰ-2-c
36
ラクダガイ
Ⅰ-4-c
34
スイショウガイ科
14
4
1
176.7
18
2
20
1
0
4
63
1
37
ハナマルユキダカラ
Ⅰ-3-a
1
7.9
1
38
キイロダカラ
Ⅰ-1-a
1
1.2
1
39
ハナビラダカラ
Ⅰ-1-a
2
3.5
2
40
ホシキヌタガイ
Ⅰ-2-a
1
1.7
1
ホシダカラ
Ⅰ-2-c
42
ヤクシマダカラ
Ⅰ-2-a
43
キッコウダカラ
44
ナツメダカラモドキ
Ⅰ-2-b
1
1.7
1
45
イボダカラガイ
Ⅰ-2-a
1
2.1
1
26.5
1
タカラガイ科
8
Ⅰ-4-a
47
シロナルトボラ
Ⅰ-4-a
48 フジツガイ科
シロシノマキ
49
トミガイ
タマガイ科
50
ヤツシロガイ科
テングガイ
Ⅰ-4-a
54 オニコブシガイ科 コオニコブシ
オリイレヨフバイ科
0.6
60
イトマキボラ科
Ⅱ-1-c
アワムシロガイ
Ⅱ-2-c
ヨウバイモドキ
Ⅱ-2-c
アツムシロ
チトセボラ
リュウキュウツノマタ
1
1
1
5
1
6.9
1
1
26.3
1
1
1
1
0.2
1
Ⅰ-(2)(3)-3
65
アジロイモガイ
Ⅱ-2-c
66 イモガイ科
アンボイナ
Ⅰ-2-c
67
サラサミナシガイモドキ
Ⅰ-2-a
68
アカシマミナシ
Ⅰ-2-c
69
マダライモ
Ⅰ-1-a
5.3
1
1
0.7
1
1
1
11.4
2
18.5
1
1
2.8
1
4
2
1
1
1
1
3
1
1
1
2
27.2
1
7
1
6.5
1
1
124
1
1
1
2
2.4
1
3
34.1
1
1
1
4
12.9
1
2
2
2.2
1
1
0
0
0
3.3
1
1
1
1
5.9
1
1
0
0
3
7
22.9
3
93.3
1
3
3
2
40.1
3
1.4
2
5
1
2
1
1
5.5
1
1
27.5
49
116
0
2
2
1
Ⅰ-2-c
0
不明
1.5
1
1
28.5
29
1
0.5
1
1
12.2
16
2
1
1
10
30.6
47
2.9
6
1
ウノアシ
Ⅴ-8
107 キセルガイ科
ツヤギセル
Ⅴ-8
108
シュリマイマイ
Ⅴ-8
29
16
不明
47
Ⅴ-8
6
オキナワウスカワマイマイ
不明
巻貝 不明
小計
2
1
コウダカカラマツガイ
パンダナマイマイ
2
2
クロカラマツガイ
オキナワヤマタニシ
陸産マイマイ
1.3
1
1
106 ヤマタニシ科
オナジマイマイ科
0.2
1
不明
110
3
0
1
1
ヤナギシボリイモ
109
2
1
Ⅰ-2-c
64
ナンバンマイマイ科
52.7
1
不明
ナツメガイ
1
0
Ⅰ-3(2)-a
Ⅰ-2-c
73 ユキノカサ科
1
1
1
Ⅰ-2-a
アンボンクロザメ
ナツメガイ科
1
49.5
0
63
72
3
3
Ⅰ-2(1)-c
Ⅰ-2-c
71
1
3
1
不明
クロフモドキ
カラマツガイ科
127.1
2
62
70
2
1
0
不明
フデガイ科
1
329.8
0
Ⅰ-3-a
シマベッコウバイ
イトマキボラ
61
3.2
2
不明
59
1
4
1
不明
58
1
0
不明
マクラガイ科
254.6
2
2
0
Ⅰ-3-a
57
5
1
シラクモガイ
エゾバイ科
1
158.7
1
1
不明
52
56
253
1
アラゴマフダマガイ
Ⅰ-3-a
55
1
2
1
1
テツレイシ
アクキガイ科
1
1
51
53
1
0
ホラガイ
オキニシ科
30.9
359.5
1
1
不明
46
4
2
1
不明
41
3
6136.3
カンギク
3
3
32
10.9
2
2
13.5
5
カンギク蓋
Ⅲ-0-c
8
1
2
チョウセンサザエ
キバウミニナ
2
1
0.9
14.4
39
30
18
4
1
1
3
3
Ⅰ-3-a
29
1
2.8
計
R
3
1
12
チョウセンサザエ蓋
リュウテンサザエ科
5.0
3
2
MNI
1
5
1
10
不明
22
4
1
ニシキウズ
21
9
25.4
0.2
L
R
L
R
2
破片 重量(g)
0
1
14
20
107.8
3
MNI小
殻頂
完形
MNI
Ⅰ-0-a
不明
19
9
3
アマオブネ類(オカヤドカリ宿貝)
リュウキュウアマガイ
1
重量(g)
0
1
4
8
12
1
L
R
L
2
破片
1
不明
11 アマオブネガイ科 ニシキアマオブネ
殻頂
完形
Ⅰ-3-a
Ⅲ-1-c
ニシキウズガイ科
1
1
カノコガイ
16
1
1
7
10
2.8
4
不明
6
9
破片 重量(g)
MNI
R
L
R
L
R
L
R
L
破片 重量(g)
殻頂
完形
MNI
5層
4層ピット内
4層
1層
殻頂
完形
0
223
0
28
5
0.8
1
121
208.2
1
360
2329
268
1
38
49
1
31.6
38
3
0.8
1
8
15.9
22
1
0.5
1
75
341.7
1
1
0.9
1
359 17605.8
195
7
13.9
10
1
16
5
22
2
103
173
44
54.7
103
6
9.3
1
4
132 6802.3
210
683
6
1
0
136
0
46
54
0
7
0
0
0
193
0
11
第 20 表 C-6-88 貝類(二枚貝)出土状況
C-6-88
1層
完形
科名
種名
生息地
74
エガイ
Ⅰ-2-a
75
カリガネエガイ
Ⅱ-1-a
リュウキュウサルボウ
Ⅱ-1-c
オオタカノハガイ
Ⅰ-2-a
ソメワケグリガイ
Ⅱ-2-c
76
77
フネガイ科
78
L
殻頂
R
4
4層
L
破片 重量(g)
R
1
4
13.6
MNI
完形
L
4
2
4層ピット内
殻頂
R
L
1
破片 重量(g)
R
MNI
完形
L
殻頂
R
L
5層
破片 重量(g)
R
MNI
完形
L
MNI小
殻頂
R
L
1
1
1
11.6
3
1
1
1
1
1
24.9
1
1
1
破片 重量(g)
R
1
1
計
MNI
14.1
2
78.6
1
0
ウグイスガイ科
1
2.1
1
1
0
アコヤガイ
1
23
1
1
不明
80 イタヤガイ科
1
2
3
8.3
2
2
不明
カブラツキガイ
82 ツキガイ科
カゴガイ
1
3
56.3
2
3
4
21
3
0.6
1
2.3
1
2.7
2
Ⅱ-2-c
1
1
ケイトウガイ
Ⅰ-2-a
84
カワラガイ
Ⅱ-2-c
85 ザルガイ科
リュウキュウザルガイ
Ⅱ-2-c
5
2
7
4
4
1
3
1
1
6.5
0.2
7
2
1
3.3
3
1
3
1.8
4
86 トマヤガイ科
クロフトマヤガイ
Ⅰ-2-c
87
シラナミ
Ⅰ-2-a
88
シャゴウ
Ⅰ-2-c
89 シャコガイ科
ヒレジャコ
Ⅰ-2-c
90
ヒメジャコ
Ⅰ-2-a
1
0.7
4
3
3
4
3
4.5
3
13
1
0.6
1
5
6
1
70.2
1
1
1518.6
1
3
263.9
1
1
484.7
1
7
0.9
1
9
4.3
1
2
1
1
Ⅰ-1-c
1
1
1
1
3
3691.9
2
1
1
1
4
1
54.3
4
38
498.1
1
1
5
1
7.2
5
Ⅱ-2-c
1
4.3
1
2.8
1
1
2
2
1
5
34
1
9.2
1
2415.8
5
3.8
3
2
1
5
8
1
1
1
1
Ⅲ-0-c
93
サメザラガイ
Ⅰ-2-c
94 ニッコウガイ科
リュウキュウシラトリ
Ⅱ-1-c
0
1
1
1.5
1
2
0
不明
95
0
リュウキュウマスオ
Ⅱ-1-c
96
リュウキュウナミノコ
Ⅰ-1-c
97
ヌノメガイ
98
アラヌノメガイ
Ⅰ-2-c
99
オキシジミ
Ⅲ-1-c
アサリ
Ⅱ-1-c
100
シオサザナミガイ科
1
1
1
不明
112 シジミ科
1
2
1
2
イソハマグリ
チドリマスオガイ科
92
リュウキュウバカガイ
4.9
1
不明
91
1
0
不明
キクザルガイ科
1
0
1
81
83
21.6
リュウキュウナデシコ
111 ウミギクガイ科
イタボガキ科
2
0
1
不明
79
9
1
1
1
1
12.9
1
1
1
9.1
1
2
0
Ⅱ-(1)(2)-c
1
1
1
0
1
1
1
5.3
2
2
1.6
1
1
1
1
101 マルスダレガイ科 オイノカガミガイ
Ⅱ-1-c
102
ホソスジイナミガイ
Ⅱ-1-c
103
イナミガイ
Ⅱ-1-c
0
0
104
マルオミナエシ
Ⅰ-2-a
0
105
ユウカゲハマグリ
Ⅱ-1-c
1
0.5
1
2
0
二枚貝 不明
小計
1
8
15
5
5
35
50
1
85
662
31
9
13
6
15
55
8
24.8
1
63
6311.5
39
0
0
0
0
0
0
0
8
11
3
3
3
2
1
3
20
2478.4
21
91
第 21 表 C-6-89・90 貝類(巻貝)出土状況
C-6-89・90
1層
完形
科名
種名
生息地
1 ヒザラガイ科
ヒザラガイ
Ⅰ-1-a
2
オオベッコウガサガイ
Ⅰ-1-a
3
ベッコウカサガイ
L
4層
殻頂
R
L
破片
R
1
1
重量(g)
MNI
完形
L
R
L
表面採集
5層
殻頂
破片 重量(g)
R
MNI
完形
L
1.5
1
4
1
1
1.5
1
3
7.8
1
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
1
7
MN
MNI
完形
L
1
殻頂
R
L
MN
破片
R
重量(g)
小計
MNI
2
2
3
3
0
0
4 ツタノハガイ科 ヨメガカサガイ
Ⅰ-1-a
0
0
5
Ⅰ-1-a
0
0
2
2
0
0
0
0
0
0
クルマガサガイ
不明
6
ミミガイ科
1
イボアナゴウ
0.5
1
3
11.5
1
Ⅰ-3-a
不明
7
カノコガイ
Ⅲ-1-c
8
コシダカアマガイ
Ⅰ-1-b
9
キバアマガイ
Ⅰ-0-a
アマオブネ
Ⅰ-1-b
10
11
アマオブネガイ科
ニシキアマオブネ
1
5
Ⅰ-0(1)-c
2
14
5
6
9.3
1
1
3
2
リュウキュウアマガイ
13
ムラクモカノコガイ
1
0.7
1
不明
6
3.2
1
ニシキウズ
Ⅰ-2-a
15
サラサバティ
Ⅰ-4-a
16
ベニシリダカ
Ⅰ-4-a
17
ギンタカハマ
Ⅰ-4-a
2
27.2
1
18
オキナワイシダタミ
Ⅱ-1-b
1
0.8
1
1
7.5
3
チョウセンサザエ蓋
Ⅰ-3-a
20
チョウセンサザエ
Ⅰ-3-a
21
カンギク蓋
Ⅱ-1-b
カンギク
Ⅱ-1-b
23
ヤコウガイ蓋
Ⅰ-4-a
24
ヤコウガイ
Ⅰ-4-a
25
コシタカサザエ
Ⅰ-2-a
26
オニノツノガイ
27
クワノミカニモリ
28
リュウテンサザエ科
オニノツノガイ科
29
1
4
1
12 1215.4
1
不明
19
72.8
1
2
1
0
5
10
10
1
1
1
2
2
2
1
1
1
0
0
1
1
2
2
0
0
7
7
1
1
1
1
14
5
2
11.8
242.8
1
1
1
5.5
7
2
0.4
1
9
1
11
32.4
1
2
35
1
3
57
7
8
27.4
1
2 119.5
1
8
95.2
1
3
9
3
3
0
0
1
1
1
12
12
2
2
Ⅰ-2-a©
0
0
Ⅰ-1-a
0
0
5
5
1
1
1
0.5
1
307.2
1
64 4955.6
10
0.5
1
1
オオシマカニモリ
5
ナガタケノコカニモリ
1
3.7
2.9
1
1
1
710.3
10
1
12
5.9
2
1
9
1
1
1
62
5
9
8
2.5
6
4
2
0
1
7
5
6.4
2
11.5
Ⅰ-0-a
14
22
2
3
1
アマオブネ類(オカヤドカリ宿貝)
12
ニシキウズガイ科
2.3
21
5
1
不明
2
0
0
30
キバウミニナ
Ⅲ-0-c
0
0
31 ウミニナ科
イボウミニナ
Ⅲ-1-c
0
0
1
1
不明
1
32
マガキガイ
Ⅰ-2-c
33
オハグロガイ
Ⅱ-2-c
スイジガイ
Ⅰ-2-c
35
クモガイ
Ⅰ-2-c
36
ラクダガイ
Ⅰ-4-c
34
スイショウガイ科
2
12.9
2
2
1
2
1
1
53.2
4
1
50.7
3
5
5
2.3
1
1
1
1
1
1
1
0
0
1
2
不明
5
1
2
2
6.1
1
1
1
0
0
1
1
Ⅰ-2-a
0
0
ホシダカラ
Ⅰ-2-c
0
0
42
ヤクシマダカラ
Ⅰ-2-a
1
1
43
キッコウダカラ
0
0
44
ナツメダカラモドキ
Ⅰ-2-b
0
0
45
イボダカラガイ
Ⅰ-2-a
0
0
3
3
ハナマルユキダカラ
Ⅰ-3-a
38
キイロダカラ
Ⅰ-1-a
39
ハナビラダカラ
Ⅰ-1-a
40
ホシキヌタガイ
41
タカラガイ科
4
1
1
1
不明
46
1
1
80.7
37
237.2
147.1
1
14.2
1
1
27.5
2.5
3
1
1
1
3
21.3
1
ホラガイ
Ⅰ-4-a
0
0
47
シロナルトボラ
Ⅰ-4-a
0
0
48 フジツガイ科
シロシノマキ
0
0
49
トミガイ
0
0
1
1
0
0
1
1
1
1
0
0
1
1
1
1
50
オキニシ科
タマガイ科
アラゴマフダマガイ
1
1.5
1
ヤツシロガイ科 不明
51
52
53
アクキガイ科
テツレイシ
Ⅰ-3-a
シラクモガイ
Ⅰ-3-a
テングガイ
Ⅰ-4-a
1
1
49.5
2
1
1
不明
54
オニコブシガイ科
55
56
エゾバイ科
57
マクラガイ科
58
オリイレヨフバイ科
5
40
1
コオニコブシ
Ⅰ-3-a
シマベッコウバイ
Ⅱ-1-c
0
0
アワムシロガイ
Ⅱ-2-c
0
0
ヨウバイモドキ
Ⅱ-2-c
0
0
不明
0
0
不明
0
0
0
0
0
0
アツムシロ
1
18.5
1
Ⅰ-2(1)-c
不明
59
イトマキボラ
Ⅰ-2-a
0
0
60
チトセボラ
Ⅰ-2-c
0
0
Ⅰ-3(2)-a
0
0
1
1
0
0
2
2
1
1
0
0
1
1
0
0
1
1
0
0
0
0
4
4
2
2
0
0
0
0
1
1
イトマキボラ科
61
リュウキュウツノマタ
不明
フデガイ科
1
62
クロフモドキ
Ⅰ-2-c
1
283
1
63
アンボンクロザメ
Ⅰ-2-c
1
212.5
1
64
ヤナギシボリイモ
Ⅰ-(2)(3)-3
65
アジロイモガイ
Ⅱ-2-c
66 イモガイ科
アンボイナ
Ⅰ-2-c
67
サラサミナシガイモドキ
Ⅰ-2-a
68
アカシマミナシ
Ⅰ-2-c
69
マダライモ
Ⅰ-1-a
71
72
カラマツガイ科
ナツメガイ科
73 ユキノカサ科
1
146.5
16.2
1
1
1
1
1
10.8
1
2
クロカラマツガイ
2
46.8
1
2.3
2
11
2
ナツメガイ
不明
1
Ⅴ-8
ツヤギセル
Ⅴ-8
108
シュリマイマイ
0.7
1
Ⅴ-8
2
1
2.8
2
18
2
5
20.9
20
14
0.7
1
1
3
0
0
17
14
36
36
0.7
1
2
2
0
0
1
1.1
1
1
1
2
3.2
7
8
8
オキナワウスカワマイマイ
0
0
不明
0
1
不明
パンダナマイマイ
オナジマイマイ科
陸産マイマイ
2
ウノアシ
オキナワヤマタニシ
110
7.9
Ⅰ-2-c
107 キセルガイ科
109
2
1
コウダカカラマツガイ
106 ヤマタニシ科
ナンバンマイマイ科
1
1
不明
70
0.8
不明
Ⅴ-8
1
巻貝 不明
小計
0
15
0
5
7
20.1
1
27
1053
29
4
39
0
46
0
16
1.9
1
76.7
1
204 7325.7
83
56
7
0
31
0
9
9
17.8
1
3
80
1391
53
165
0
3
0
1
0
0
0
5.9
1
166
第 22 表 C-6-89・90 貝類(二枚貝)出土状況
C-6-89・90
1層
完形
科名
種名
生息地
L
4層
殻頂
R
L
破片
R
重量(g)
完形
MNI
L
R
L
破片 重量(g)
R
2
1
L
R
L
R
1
2
破片
重量(g)
完形
MNI
L
MN
殻頂
R
L
合計
破片
R
重量(g)
MNI
エガイ
Ⅰ-2-a
1
6.8
3
5
5
カリガネエガイ
Ⅱ-1-a
1
0.8
1
1
1
76
リュウキュウサルボウ
Ⅱ-1-c
1
6.4
1
1
1
77
オオタカノハガイ
Ⅰ-2-a
1
1
78
ソメワケグリガイ
Ⅱ-2-c
0
0
0
0
1
1
0
0
1.5
2
MN小計
殻頂
75
1
12
完形
MNI
74
フネガイ科
1
表面採集
5層
殻頂
1
不明
79
ウグイスガイ科
80 イタヤガイ科
アコヤガイ
1
1
不明
カブラツキガイ
82 ツキガイ科
カゴガイ
1
3
1
1
1.2
1
3.4
1
1
1
Ⅰ-2-a
84
カワラガイ
Ⅱ-2-c
85 ザルガイ科
リュウキュウザルガイ
Ⅱ-2-c
2
3
86 トマヤガイ科
クロフトマヤガイ
Ⅰ-2-c
87
シラナミ
Ⅰ-2-a
88
シャゴウ
Ⅰ-2-c
89 シャコガイ科
ヒレジャコ
Ⅰ-2-c
90
ヒメジャコ
1
2
2
2
3.1
1
3
3
0
0
0
0
1
1
0
0
Ⅰ-2-a
1
イソハマグリ
Ⅰ-1-c
リュウキュウバカガイ
Ⅱ-2-c
112 シジミ科
29
1
1.5
1
3
3
1
1
1.1
1
2
2
1
3.4
1
2.3
1
2
2
1
1.7
1
1
1
0
0
117.5
1
1
1
0
0
1
1
1
1
1
2
1
4
1.3
0.5
1
不明
92
1
158.1
1
不明
チドリマスオガイ科
0
36
2
ケイトウガイ
91
0
1
Ⅱ-2-c
不明
キクザルガイ科
1
リュウキュウナデシコ
81
83
0.8
不明
111 ウミギクガイ科
イタボガキ科
1
12
1
1
498.1
1
42.6
1
158
1
0.4
1
2.4
1
1
1
5
2
1
1
1
79.8
1
3
3
4.7
2
3
3
1
1
0
0
1
1
1
1
Ⅲ-0-c
93
サメザラガイ
Ⅰ-2-c
94 ニッコウガイ科
リュウキュウシラトリ
Ⅱ-1-c
1
1
0.8
1
5.9
1
1
不明
3.4
1
1
1
0.3
1
1
1
Ⅰ-1-c
0
0
Ⅱ-(1)(2)-c
0
0
アラヌノメガイ
Ⅰ-2-c
0
0
オキシジミ
Ⅲ-1-c
0
0
アサリ
Ⅱ-1-c
0
0
101 マルスダレガイ科 オイノカガミガイ
Ⅱ-1-c
0
0
102
ホソスジイナミガイ
Ⅱ-1-c
2
2
103
イナミガイ
Ⅱ-1-c
0
0
104
マルオミナエシ
Ⅰ-2-a
1
1
105
ユウカゲハマグリ
Ⅱ-1-c
95
2
リュウキュウマスオ
Ⅱ-1-c
96
リュウキュウナミノコ
97
ヌノメガイ
98
99
100
シオサザナミガイ科
1
2
1
1
5
4.9
1
23
1010.9
19
1
二枚貝 不明
小計
4.4
1
0
0
0
0
3
8
1
8
40
3
4
7
4
3
57
4
8
1
4
5.7
2
2.2
1
1
1
0.9
1
3
20
163
22
44
1
3
0
0
0
0
0
0
0
44
第 23 表 C-6-98・D-6-8 貝類(巻貝)出土状況
C-6-98・D-6-8
1層
完形
科名
種名
生息地
1 ヒザラガイ科
ヒザラガイ
Ⅰ-1-a
2
オオベッコウガサガイ
Ⅰ-1-a
3
ベッコウカサガイ
4 ツタノハガイ科
ヨメガカサガイ
Ⅰ-1-a
5
クルマガサガイ
Ⅰ-1-a
L
4層
殻頂
R
L
破片
R
重量(g)
MNI
完形
L
5層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
1
3
MNI
完形
L
1
1
1
2
22.6
3
4層溝状遺構?
殻頂
R
L
破片
R
MNI
重量(g)
完形
L
殻頂
R
L
MNI
破片
R
MNI
重量(g)
小計
1
1
1
1
4
0
0
1
0.4
1
不明
6
ミミガイ科
Ⅰ-3-a
0
不明
0
7
カノコガイ
Ⅲ-1-c
8
コシダカアマガイ
Ⅰ-1-b
9
キバアマガイ
Ⅰ-0-a
10
アマオブネ
Ⅰ-1-b
11 アマオブネガイ科
ニシキアマオブネ
1
2
リュウキュウアマガイ
13
ムラクモカノコガイ
2
4
2
Ⅰ-0(1)-c
ニシキウズ
Ⅰ-2-a
15
サラサバティ
Ⅰ-4-a
16
ベニシリダカ
Ⅰ-4-a
ギンタカハマ
Ⅰ-4-a
オキナワイシダタミ
Ⅱ-1-b
19
チョウセンサザエ蓋
Ⅰ-3-a
20
チョウセンサザエ
Ⅰ-3-a
カンギク蓋
Ⅱ-1-b
カンギク
Ⅱ-1-b
23
ヤコウガイ蓋
Ⅰ-4-a
24
ヤコウガイ
Ⅰ-4-a
25
コシタカサザエ
Ⅰ-2-a
26
オニノツノガイ
Ⅰ-2-a©
27
クワノミカニモリ
Ⅰ-1-a
28 オニノツノガイ科
オオシマカニモリ
29
ナガタケノコカニモリ
22
リュウテンサザエ科
2
2
24.7
10
2
5
8.5
2
1
2.2
1
1
1.5
1
1
1
1
1
1
1
1
3
3
1
1
1
1
1
1.8
1
14
3
1
0
1
13.4
1
1
1
1
1
8.3
1
1
1
1
2
1
12.0
1
1
4
1
2
2
13
1
5
142.5
1
3
1
15.0
1
2
3.7
1
1.5
1
10
38.5
1
2
23.2
2
5
2
59.4
5
1
4.9
1
2
21.5
1
3
4
2
1
1
1
6
377.6
1
2
134.5
1
48 2687.7
3
15
784.1
1
79.1
1
64.5
1
1.5
1
1
1
1
0.6
1
3
4
43.2
1
2
27.5
1
7
1
3
3
2
6
22 2761.7
6
1
1
34.6
1
3
0
1
0
1
キバウミニナ
Ⅲ-0-c
31 ウミニナ科
イボウミニナ
Ⅲ-1-c
0.5
1
1
24.0
1
1
20.5
1
38
1
1
353.5
1
5
87.4
1
1
0
不明
0
32
マガキガイ
Ⅰ-2-c
33
オハグロガイ
Ⅱ-2-c
34
スイジガイ
Ⅰ-2-c
クモガイ
Ⅰ-2-c
ラクダガイ
Ⅰ-4-c
36
10
0
1
不明
35
3
0
2
1
30
スイショウガイ科
1
13
0
4
不明
21
3
10
不明
18
1
Ⅰ-0-a
14
ニシキウズガイ科
1.5
1
アマオブネ類(オカヤドカリ宿貝)
12
17
1
0
イボアナゴウ
1
12.1
1
1
3
1
26.5
1
3
0
1
1
1
不明
263
1
32.5
1
1
1
4
2
37
ハナマルユキダカラ
Ⅰ-3-a
0
38
キイロダカラ
Ⅰ-1-a
0
39
ハナビラダカラ
Ⅰ-1-a
0
40
ホシキヌタガイ
Ⅰ-2-a
0
41
ホシダカラ
Ⅰ-2-c
0
ヤクシマダカラ
Ⅰ-2-a
0
42
タカラガイ科
43
キッコウダカラ
44
ナツメダカラモドキ
Ⅰ-2-b
45
イボダカラガイ
Ⅰ-2-a
0
0
0
不明
46
47
オキニシ科
1
4
1
1
ホラガイ
Ⅰ-4-a
0
シロナルトボラ
Ⅰ-4-a
0
48 フジツガイ科
シロシノマキ
0
49
トミガイ
0
50
タマガイ科
ヤツシロガイ科
51
52
53
アクキガイ科
アラゴマフダマガイ
0
不明
0
テツレイシ
Ⅰ-3-a
シラクモガイ
Ⅰ-3-a
テングガイ
Ⅰ-4-a
0
0
0
不明
1
1
コオニコブシ
Ⅰ-3-a
55
シマベッコウバイ
Ⅱ-1-c
0
アワムシロガイ
Ⅱ-2-c
0
ヨウバイモドキ
Ⅱ-2-c
0
エゾバイ科
57
13.7
1
54 オニコブシガイ科
56
1
7
1
1
不明
マクラガイ科
58
オリイレヨフバイ科
0
不明
0
アツムシロ
Ⅰ-2(1)-c
0
不明
0
59
イトマキボラ
Ⅰ-2-a
60
チトセボラ
Ⅰ-2-c
イトマキボラ科
61
リュウキュウツノマタ
1
1
11.8
1
0.4
1
6.5
1
0
不明
フデガイ科
1
1
Ⅰ-3(2)-a
0
不明
1
1
62
クロフモドキ
Ⅰ-2-c
0
63
アンボンクロザメ
Ⅰ-2-c
0
64
ヤナギシボリイモ
Ⅰ-(2)(3)-3
0
65
アジロイモガイ
Ⅱ-2-c
0
66 イモガイ科
アンボイナ
Ⅰ-2-c
0
67
サラサミナシガイモドキ
Ⅰ-2-a
0
68
アカシマミナシ
Ⅰ-2-c
69
マダライモ
Ⅰ-1-a
0
0
不明
70
71
72
カラマツガイ科
ナツメガイ科
73 ユキノカサ科
1
11.2
1
1
32.5
1
クロカラマツガイ
ナツメガイ
0
Ⅰ-2-c
0
不明
1
0.3
1
3
2
1
ウノアシ
0
オキナワヤマタニシ
Ⅴ-8
107 キセルガイ科
ツヤギセル
Ⅴ-8
108
シュリマイマイ
Ⅴ-8
3
1
6.1
3
2
1
0.7
1
110
オナジマイマイ科
陸産マイマイ
6
0
1
1
不明
109
2
0
コウダカカラマツガイ
106 ヤマタニシ科
ナンバンマイマイ科
2
0
パンダナマイマイ
Ⅴ-8
2
1
7
3
2
1
1
2
1
0.3
1
1
0.1
1
7
13.5
1
3
39 2925.4
20
105
オキナワウスカワマイマイ
巻貝 不明
小計
3
0
不明
30
0
6
0
1
0
66.4
7
0
32
0
14
58
76.4
1
153 4002.5
54
10
0
10
0
2
26
1
45 1523.9
24
0
4
0
8
1
第 24 表 C-6-98・D-6-8 貝類(二枚貝)出土状況
C-6-98・D-6-8
1層
完形
科名
種名
生息地
74
エガイ
Ⅰ-2-a
75
カリガネエガイ
Ⅱ-1-a
76
リュウキュウサルボウ
Ⅱ-1-c
オオタカノハガイ
Ⅰ-2-a
ソメワケグリガイ
Ⅱ-2-c
77
フネガイ科
78
L
4層
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
1
1.5
MNI
完形
L
1
R
1
5層
殻頂
L
破片 重量(g)
R
MNI
完形
L
1
2.9
1
1
24.7
1
4層溝状遺構?
殻頂
R
L
破片 重量(g)
R
2
2.6
MNI
完形
L
殻頂
R
2
L
MNI
破片 重量(g)
R
1
2.9
小計
MNI
1
0
1
0
1
2.7
1
1.8
1
1
1.9
1
3.5
1
0.3
1
1
26.9
1
1
不明
79
ウグイスガイ科
80 イタヤガイ科
0
アコヤガイ
1
1
不明
0
リュウキュウナデシコ
0
111 ウミギクガイ科
イタボガキ科
不明
81
カブラツキガイ
82 ツキガイ科
カゴガイ
1
16.5
1
1
6.5
1
Ⅱ-2-c
1
1
1
1
2
2
27.7
1
不明
83
キクザルガイ科
ケイトウガイ
2
1
カワラガイ
Ⅱ-2-c
85 ザルガイ科
リュウキュウザルガイ
Ⅱ-2-c
1
1
5
2
1
86 トマヤガイ科
クロフトマヤガイ
Ⅰ-2-c
87
シラナミ
Ⅰ-2-a
88
シャゴウ
Ⅰ-2-c
89 シャコガイ科
ヒレジャコ
Ⅰ-2-c
90
ヒメジャコ
Ⅰ-2-a
チドリマスオガイ科
リュウキュウバカガイ
Ⅱ-2-c
112 シジミ科
18.2
5
1
1
2
1
1
4.5
1
7
1
1.6
1
1
1
172.5
1
213.5
1
1956.7
1
6
4
1
3.5
1
2
1.7
1
2.3
1
1
1
2
710.6
1
71.1
1
96.1
1
0.6
1
1
1700
1
サメザラガイ
Ⅰ-2-c
94 ニッコウガイ科
リュウキュウシラトリ
Ⅱ-1-c
2
31
2
1
5
1
2
1
5
1
1
1
137.6
1
3
0.4
1
6
1.4
1
2
0
1
0
不明
95
96
シオサザナミガイ科
リュウキュウマスオ
リュウキュウナミノコ
3
0
1
Ⅲ-0-c
93
1
0
1
Ⅰ-1-c
2
0
不明
イソハマグリ
1.7
1
不明
92
3
0
Ⅰ-2-a
84
91
5
0
Ⅱ-1-c
0
Ⅰ-1-c
1
Ⅱ-(1)(2)-c
2
0.3
1
1
5.5
1
1
97
ヌノメガイ
98
アラヌノメガイ
Ⅰ-2-c
0
99
オキシジミ
Ⅲ-1-c
0
100
アサリ
Ⅱ-1-c
0
101 マルスダレガイ科
オイノカガミガイ
Ⅱ-1-c
0
102
ホソスジイナミガイ
Ⅱ-1-c
0
103
イナミガイ
Ⅱ-1-c
104
マルオミナエシ
Ⅰ-2-a
105
ユウカゲハマグリ
Ⅱ-1-c
0
1
7.9
1
1
0
二枚貝 不明
小計
1
2
0
0
0
0
2.5
2
2
13
0
59
3
28
37.2
1
70
2470
25
5
7
1
2
7
930.5
14
2
2
1
2
2
2.7
1
2
9
1875
8
49
5-2 獣魚骨 安田遺跡から出土した脊椎動物遺体
樋泉岳二(早稲田大学)
はじめに
安田遺跡は沖縄島北部、国頭村東岸の海岸砂丘上に立地する貝塚時代後期~グスク時代の遺跡
である。本遺跡では平成 24~25 年度に国頭村教育委員会によって実施された発掘調査において、
主に貝塚時代後期前半(後 1 期)の遺物包含層から多数の脊椎動物遺体(魚骨・獣骨など)が出
土した。ここではその分析結果を記載し、その特徴について予察する。沖縄島最北部(現国頭・
大宜味・東村域)の遺跡においてこれまでに得られている脊椎動物遺体のデータはきわめて少な
く、今回得られた資料は当該地域における脊椎動物資源利用の様相を示すものとしてきわめて重
要である。
Ⅰ.分析資料と分析方法
採集方法:資料は基本的にピックアップ(現場における目視確認と手での拾い上げ)によって
採集されたもので、出土位置を記録して単体で取り上げられた資料と層準・グリッドごとに一括
して取り上げられた資料があるが、ここでは区別せずに扱った。なお、一括取り上げ資料の中に
は 5mm 目程度のフルイで回収されたと思われる比較的小型の資料も多数含まれているが、ピッ
クアップ資料と明確に分離することができなかったので、ここでは一括して取り扱った。
層準・年代:資料の出土層準は,第 3 層~5 層(とくに第 4 層)が大半を占めており、第 1 層
からも若干の資料が得られている。第 2 層からの出土資料はない。
第 3 層~5 層から出土した土器の大部分は貝塚時代後期前半の大当原式土器であることから、
同層準から出土した骨類についてもほとんどはこの時期のものと推定される。ただし第 3 層では
陶磁器も若干出土していることからグスク時代以降の資料も混じっている可能性があるが、第 3
層からの出土骨が少ないこと、第 3 層と第 4 層・5 層の間で遺体の組成に明確な違いがみられな
かったことから、第 3~5 層の資料は一括して大当原式期のものとみなした。
これに対して第 1 層からは現代の遺物が出土しており,出土骨にも飼育動物が含まれているこ
と(詳細は後述)などから、詳細な年代の特定は困難だが、グスク時代以降(おそらくおもに現
代)の資料が主体をなしていると推測される。また出土層位不明の資料も内容は第 1 層と同様で
あることから、集計の際には一括して扱った。
分析方法:同定対象部位は、魚類では主上顎骨、前上顎骨、歯骨、角骨、方骨、椎骨を必須部
位とし、他の同定可能な部位も適宜追加した。魚類以外では部位の判定可能な資料を同定対象と
したが、四肢骨骨幹の全周を残さない破片は除外した。同定は原則的に現生標本との比較によっ
て行った。
Ⅱ.分析結果
1.遺体の出土数と分布
同定結果を表 2~表 3 に、また同定標本数(NISP)および最小個体数(MNI)による組成を表
4 に示した。層別の出土数(NISP.表 4)をみると、第 4 層が 494 点と圧倒的に多く、第 5 層が
43 点でこれに次ぐ。第 1 層は 35 点、第 3 層は 13 点と少なく、また 4 カ所のピットから計 9 点
が得られている。そのほかに出土層準不明の資料が 15 点ある。
主体となる第 4~5 層の出土数をグリッド別にみると、C-6-88 が 346 点(第 4 層 320 点、第 5
層 26 点)、C-6-78 が 144 点(第 4 層 97 点、第 4~5 層 30 点、第 5 層 17 点)で、そのほかに第
60
4 層の C-6-89・90 で 60 点、C-6-98・D-6-8 で 17 点が出土している。このことから、骨類は C-688 の第 4 層を中心に集中的な分布傾向を示していることがわかる。
以下、第 3~5 層と第 1 層・層位不明に分けて出土資料の内容を記載する。
2.第 3~5 層(大当原式期)
脊椎動物全体の組成:魚類が圧倒的に多く、NISP 比・MNI 比のいずれにおいても全体の9割
近くを占める(図 1)
。魚類以外ではウミガメ類とイノシシが普通であり、リクガメ類もわずかに
みられる。両生類・鳥類は確認されなかった。
魚類:NISP は合計 516 点で、軟骨魚類(板鰓類)1 分類群、硬骨魚類(真骨類)17 分類群が
同定された(表 1)
。組成はブダイ科が MNI 比で約 40%、NISP 比では 70%以上を占めており、
圧倒的に優占する(図 2)
。そのほかにハリセンボン科、ハタ科、ニザダイ科、ヨコシマクロダ
イ・フエフキダイ科、ベラ科も普通である。出土した魚類の大半がサンゴ礁周辺の生息種で占め
られており、他に回遊魚類としてサメ類・アジ類、河口周辺やマングローブ水域の生息種として
クロダイ属がみられるが、いずれもごく少数である。
ハタ科は前上顎骨・歯骨でマハタとスジアラに類するタイプが確認され、それぞれ「マハタ
型」
、
「スジアラ型」とした(図版 1-5~8)
。MNI は各 2 である。
「ハタ型」とした椎骨もハタ科の
ものである可能性が強い。
フエフキダイ科は前上顎骨と歯骨でヨコシマクロダイ、方骨でフエフキダイ属が確認された
(図版 1-11~12)
。MNI はヨコシマクロダイが 3、他のフエフキダイ科が 2 である。「タイ型」と
した椎骨の多くもフエフキダイ科のものである可能性が強い。
ベラ科では金子(1996)が「タキベラ」としているタイプの下咽頭骨(ここでは「タキベラ
型」とした)が 2 点確認されたほか、椎骨にはシロクラベラに類するタイプが確認された(図版
1-15・17)
。
ブダイ科は咽頭骨・前上顎骨・歯骨でアオブダイ属とイロブダイ属が同定された。前者が大半
を占めており(NISP=97,MNI=17)
、後者は第 3 層で咽頭骨が1点確認されたのみである。ア
オブダイ属の前上顎骨・歯骨は顎骨体が薄く肥厚しないタイプのもの(図版 2-5)がかなり多くみ
られた。
爬虫類:ウミガメの四肢骨および甲板が 40 点と比較的多く検出されているが、MNI は 1 であ
る。その他にリクガメ類(おそらくリュウキュウヤマガメ)の肋骨板が第 4 層から 1 点検出され
ている。
哺乳類:イノシシが大半を占める(NISP=26,MNI=3)。現生リュウキュウイノシシと同程
度の小型のイノシシである。全身の骨が出土しており、部位の偏りはとくに認められない。成獣
と幼獣が混在しているが、資料数が少ないため正確な年齢構成や性比については不明確である。
イノシシ以外では第 4~5 層でネズミ科の下顎切歯(おそらく自然の遺骸と思われる)
、第 4 層か
ら小型哺乳類の大腿骨(図版 3-17)が各1点検出されている。後者は大型のネズミ科(ケナガネ
ズミ?)の可能性があるが未確定である。
解体痕:第 3 層出土の詳細な同定が困難な哺乳類の骨片にカットマークが確認された(図版 316)
。おそらく金属器によるものと思われることから、グスク時代以降のものの可能性がある。ま
た第 4 層出土のイノシシ脛骨(図版 3-12)および第 5 層出土のおそらくイノシシと思われる四肢
骨破片にスパイラル・フラクチャーが確認されている。
61
3.第 1 層・層位不明(グスク時代?~近現代)
NISP は合計 50 点(第 1 層 35 点,層位不明 15 点)
、内訳は魚類 17 点、リクガメ類 19 点、鳥
類 2 点、イノシシ類(イノシシまたはブタ)5 点、ウシ 2 点、詳細な同定が困難な哺乳類骨片 5
点である。ほかに NISP 算定対象外のウミガメ類肋骨板破片が 1 点ある。
魚類はブダイ科が主体で、他にハタ科、ヨコシマクロダイ・フエフキダイ科、ハリセンボン
科、サメ類が確認された。リクガメ類は NISP では 19 点と最も多いが、すべて C-6-88 からの採
集資料であり、肋骨板や縁骨板には接合する資料も多くみられることから同一個体の骨の可能性
が高い。鳥類はニワトリおよび鳥類の可能性のある四肢骨が各 1 点確認された。イノシシ類 5 点
のうち第 1 層出土の 3 点はおそらくブタと思われ、橈骨には金属器によると思われるカットマー
クが確認された(図版 3-10)
。ウシは第 1 層と層位不明資料から臼歯が各 1 点検出されている。
第 3~5 層の資料と比較すると、飼育動物(ニワトリ・ブタ・ウシ)がみられる点で明らかに異
なる。沖縄諸島における飼育動物(イヌを除く)の導入年代はグスク時代と考えられること(樋
泉 2011)
、またリクガメ類の上腹板には表皮が残っており、明らかに現生の遺骸と判断されるこ
とから、これらの資料の年代は少なくともグスク時代以降のものが主体であり、現生資料も確実
に含まれていると考えられる。なお第 3~5 層に比べて魚類が少ない点も沖縄諸島のグスク時代以
降の特徴(樋泉 2011)と合致しているが、魚類の組成には第 3~5 層と明確な差は認められなか
った。
Ⅲ.大当原式期の脊椎動物資源利用の特色
冒頭で述べたとおり、沖縄島最北部ではこれまで脊椎動物遺体のデータが少なく、その様相は
不明確であったが、今回第 3~5 層(大当原式期)から年代が明確な資料が豊富に得られた。ここ
ではその特徴について考察する。
脊椎動物全体の組成は、魚類が圧倒的に多く、イノシシがこれに次ぎ、ウミガメ・リクガメが
加わる。また魚類はブダイ科を主体とするサンゴ礁魚類が大半を占め、回遊魚類や河口域の生息
種がまれである。こうした特徴は沖縄諸島のサンゴ礁海岸に立地する貝塚時代遺跡に普遍的に認
められる傾向(樋泉 2011)である。本遺跡と同じく国頭東岸に位置する貝塚時代後期前半の宇佐
浜 B 貝塚(沖縄県教育庁文化課編 1989)でも上記の基本パターンは同様であることから、国頭東
岸域においても、少なくとも貝塚時代後期前半の脊椎動物資源利用に関しては、沖縄諸島の一般
的傾向と連動している可能性が強まった。
なお、本遺跡が立地する低地はごく狭小であり、周囲を深い山林に囲まれているが、イノシシ
の出土量は決して豊富とはいえない。また本遺跡の近隣には複数の小河川の河口が集中している
が、そうした水域に生息する魚類もごく少ない。これは本遺跡の脊椎動物資源利用が遺跡前面に
広がるサンゴ礁の資源に対してきわめて強く依存していたことを示唆するものといえるだろう。
参考文献
沖縄県教育庁文化課編(1989)
『宇佐浜遺跡』沖縄県教育委員会
金子浩昌(1996)
「平敷屋トウバル遺跡出土の動物遺体(軟体動物を除く)
」
『平敷屋トウバル遺
跡』沖縄県教育委員会
樋泉岳二(2011)
「琉球先史時代人と動物資源利用-脊椎動物遺体を中心に-」
『先史・原史時代
の琉球列島~ヒトと景観~』六一書房
62
表1.安田遺跡から採集された脊椎動物遺体の種名一覧.
軟骨魚綱
CHONDICHTHYES
サメ類
Lamniformes ?
硬骨魚綱
OSTEICHTHYES
ウツボ科
M uraenidae
ヤガラ科
Fistulariidae
ハタ科(マハタ型)
Serranidae cf. Epinephelus
ハタ科(スジアラ型)
Serranidae cf. Plectropomus
アジ科(大)
Carangidae (large)
ヒメジ科
M ullidae
フエダイ科
Lutjanidae
クロダイ属
Acanrhpagrus sp.
ヨコシマクロダイ
Monotaxis grandoculis
フエフキダイ属
Lethrinus sp.
ベラ科(シロクラベラ型)
Labridae cf. "Cherodon shoenleinii "
ベラ科(タキベラ型)
Labridae cf. "Bodianus perditio "
イロブダイ属
Balbometopon sp.
アオブダイ属
Scarus sp.
ニザダイ科
Acanthrinidae
モンガラカワハギ科
Balistidae
ハリセンボン科
Diodontidae
爬虫綱
RRPTILIA
ウミガメ科
Cheloniidae
リュウキュウヤマガメ
Geoemyda spengleri japonica
鳥綱
AVES
ニワトリ
Galus galus
哺乳綱
M AM M ALIA
ネズミ科
M uridae
イノシシ
Sus scrofa
ウシ
Bos taurus
MNI(N=53)
NISP(N=584)
0%
魚類
10%
20%
ウミガメ類
30%
40%
50%
リクガメ類
60%
70%
80%
イノシシ
90%
100%
その他
図 1.安田遺跡から採集された脊椎動物遺体の組成.
MNI(N=47)
NISP(N=439)
0%
10%
20%
ハタ科・ハタ型
ベラ科
ハリセンボン科
30%
40%
50%
60%
70%
ヨコシマクロダイ
ブダイ科
その他
80%
90%
100%
フエフキダイ科・タイ型
ニザダイ科
図 2.安田遺跡から採集された魚類遺体の組成.
表3.安田遺跡から採集されたイノシシ顎骨・遊離歯の詳細.
* 顎骨残存状態の凡例: [ ] 顎骨残存範囲,< > 未萌出歯,( )萌出中の歯,x 脱落歯.
遺構/層準
グリッド
レベル
取り上げNo.
/位置
部位
左右
数
顎骨残存状態*
pit1
C-4-87
-
半裁東側
上顎C
R
1
-
4層
C-6-89・90
45/50
-
上顎P3
L
1
-
4層
C-6-89・90
-
587
上顎P4
L
1
-
4層
C-6-88
63/68
-
下顎骨
R
1
[(C)m1m2m3<P4>M1<M2>]
C萌出開始直後,P4・M2未萌出
4層
C-6-98・D-6-8
65/70
-
下顎骨
L+R
1
L[<I1>]-[<I1><I2>x<I3>x<C>(P1)m1x]R
I~C未萌出,P1萌出開始直後
4層
C-6-78
55/65
-
下顎I2
R
1
-
4層
C-6-88
63/68
-
下顎M3
L
1
-
63
備考
♂
64
椎骨
椎骨
歯骨?
サメ類
ウツボ科
ウツボ科?
ヤガラ科
ハタ科(マハタ型)
ハタ科(マハタ型)
ハタ科(スジアラ型)
ハタ科(スジアラ型)
ハタ科
ハタ科
ハタ科
ハタ科
ハタ科
ハタ型
ハタ型
アジ科(大)
ヒメジ科
フエダイ科
クロダイ属
クロダイ属
ヨコシマクロダイ
ヨコシマクロダイ
ヨコシマクロダイ
ヨコシマクロダイ
ヨコシマクロダイ
フエフキダイ属
フエフキダイ属
フエフキダイ科
フエフキダイ科
フエフキダイ科
フエフキダイ科
フエフキダイ科
タイ型
タイ型
シロクラベラ型
タキベラ型
ベラ科
イロブダイ属
アオブダイ属
アオブダイ属
アオブダイ属
アオブダイ属
ブダイ科
ブダイ科
ブダイ科
ブダイ科
ブダイ科
ブダイ科
ニザダイ科
ニザダイ科
ニザダイ科
ニザダイ科
ニザダイ科
ニザダイ科
モンガラカワハギ科
モンガラカワハギ科
ハリセンボン科
ハリセンボン科
ハリセンボン科
ハリセンボン科
ハリセンボン科
ハリセンボン科
前上顎骨
歯骨
前上顎骨
歯骨
主上顎骨
角骨
方骨
擬鎖骨
第1椎骨
腹椎
尾椎
角骨
前上顎骨
前上顎骨
前上顎骨
歯骨
前上顎骨
前上顎骨
前上顎骨
歯骨
歯骨
方骨
口蓋骨
主上顎骨
歯骨
角骨
第1椎骨
腹椎
腹椎
尾椎
尾椎
下咽頭骨
歯骨
上咽頭骨
上咽頭骨
下咽頭骨
前上顎骨
歯骨
主上顎骨
角骨
方骨
第1椎骨
腹椎
尾椎
前上顎骨
主鰓蓋骨
擬鎖骨
腹椎
尾椎
楯鱗
前上顎/歯骨
第1椎骨
前上顎骨
歯骨
前上顎/歯骨
方骨
第1椎骨
棘
部位
種類
w
ant
post
ant
post
残存位置*
<1>
1
1
1
1
1 /
1
/ 1
1 /
1 /
1
1
/ 1
2
1層
1
1
1
1 /
1 / 1
/ 1
/ 2
1 /
/ 1
1
3層
表2.安田遺跡から採集された脊椎動物遺体の同定結果.
1
1
1
2
1 /
3
13
21
1 /
1 / 1
4
5 / 5
2 / 2
1 /
2
1
1 /
/ 1
1 /
/ 1
/ 2
/ 1
1 /
1
/ 1
1
1
C-6-78
1
5
1 /
8
7
<4>
1
3 /
8
8 /
6 /
1 /
/
/
6
52
79
1 /
2 /
1 /
2
1
1
3
1 /
2
9
3
2
1
6
/ 1
/ 1
/ 1
1 /
1 /
/ 1
/ 1
1 / 1
1
2
1 / 1
1 / 1
1
1
1
1
6
8
1 /
2 / 3
3 / 2
3
2
/ 1
1 /
1 /
/ 1
C-6-88 C-6-89・90
4層
<1>
2
5
1 /
/ 1
/ 1
1
1
C-6-98
・D-6-8
* 残存位置の略号凡例は表末に示した.
2
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
2
3
2
5
/
/
/
/
/
/
1
3
/
/
12
/
/
/
/
/
9
73
113
1 /
3 /
1
9
9
<5>
1
1
1
2
5
1 /
1
15
12
1
1
1
7
1
1
1
0
0
0
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
1
0
0
0
1
1
1
1
1
合計
0
0
0
10
13
4
3
1
7
0
0
0
1
1
1
2
0
1
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
1
1
1
1
4/5層
<1>
1
1
5
3
1 /
1 /
2
1 /
/ 1
/ 1
/
5
/ 1
1 /
<1>
1
<1>
1
/ 1
2
/ 2
/ 1
1 /
1 /
C-6-78 C-4-87 C-6-78
1
1
8
11
C-6-88
5層
1
<2>
1
1
8
12
0 / 1
2
0 / 2
0 / 1
1 / 0
1 / 0
合計
1
Pit1
1 /
1 /
1
Pit3
1
Pit9
Pit10
1
出土
位置
不明
1
2
3
17
14
1
1
1
1
0
9
1
1
0
0
0
2
1
1
0
1
0
2
2
1
1
2
1
0
2
0
0
0
1
3
1
1
1
/
/
/
/
/
/
/
/
1
6
1
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
2
3
2
5
5
2
/
/
/
18
/
/
/
/
/
11
88
130
/
/
1
10
11
<8>
3
1
1
2
7
/
1
<1>
合計
0
0
0
13
16
5
3
1
0
1
10
0
0
1
1
1
2
1
1
1
1
1
0
0
0
0
2
0
1
1
2
1
1
1
65
椎骨
主鰓蓋骨
第1椎骨
椎骨
主上顎骨
歯骨
方骨
第1椎骨
椎骨
橈骨
大腿骨
頂骨板
椎骨板
肋骨板
肋骨板
縁骨板
臀骨板
背甲板
烏口骨
上腕骨/大腿骨
椎骨板
肋骨板
縁骨板
上腹板
剣状腹板
脛骨
四肢骨
下顎I
頬骨
上顎遊離歯
下顎骨
下顎遊離歯
胸椎
椎骨
上腕骨
橈骨
橈骨
尺骨
寛骨(座骨)
膝蓋骨
脛骨
脛骨
脛骨
腓骨
踵骨
手/足根骨
基節骨
末節骨
肋骨
上顎M
下顎M1/M2
大腿骨
椎骨
四肢骨
四肢骨
肋骨
胸椎
四肢骨
肋骨
要確認
合計
真骨類(未同定)
真骨類(保留)
真骨類(保留)
真骨類(保留)
真骨類(同定不可)
真骨類(同定不可)
真骨類(同定不可)
真骨類(同定不可)
真骨類(同定不可)
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
ウミガメ類
リクガメ類
リクガメ類
リクガメ類
リクガメ類
リクガメ類
リクガメ類
リクガメ類
ニワトリ
鳥類?(同定不可)
ネズミ科
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
イノシシ
ウシ
ウシ
小型哺乳類(未同定)
哺乳類(同定不可)
哺乳類(同定不可)
哺乳類(同定不可)
哺乳類(同定不可)
哺乳類(保留)
哺乳類(保留)
哺乳類(保留)
(保留)
m
m
p
棘突起
骨端
m
p
m
<p->-<d->
(d-)fr
d
m
(d)
w
fr
m-<d->
<p->-m
<d->
(d)
臼
表3参照
表3参照
表3参照
p
m
p-<d->
p
d
m-d
m
残存位置*
3層
1
35
1
2
13
1 ←おそらくブタ
1
/ 1
1 ←ブタ?
/ 1 ←おそらく
ブタ
1
/ 1
1
5
/ 1
1
1
1
1
1層
97
1
/ 1
1
/ 1
1
1
3
1
6
1
C-6-78
4層
320
/ 1
1
1
1
1 /
1
1
1
1
1
2
1
1 /
1
6
11
3
4
1
1
1
12
1
26
1
60
1
2
1
9
6
1
1
/ 2
C-6-88 C-6-89・90
1
17
1
1
1
1
C-6-98
・D-6-8
0
0
1
0
1
0
1
494
1
/
/
1
/
1
1
1
1
2
1
1
2
2
2
1
2
/
1
/
1
7
11
3
5
1
1
2
/
1
38
1
1
1
1
25
合計
1
1
0
1
0
2
4/5層
30
1
1
1
1
2
+
17
5
1 /
1
C-6-78 C-4-87 C-6-78
* 残存位置凡例: w完存,p近位端,m骨幹,d遠位端,fr 破片.(p)・(d)は未癒合の骨端のみ,(p-)・(d-)は骨端未癒合脱落,<p->・<d->は骨端のみ欠損.
部位
種類
表2(つづき).
26
/ 1
1
2
1
C-6-88
5層
43
0 / 1
6
2
1
1 / 0
1
合計
2
1
Pit1
4
/ 1
Pit3
1
Pit9
2
1
1
Pit10
15
1
1
1
1 /
1
7
2
不明
2
0 /
1
42
1
1
1
1
28
1 /
1 /
1
7
13
4
11
1
1
1
1
1
8
7
0 /
1 /
0 /
1
1
0 /
3
2
2
1
2
0 /
0 /
1
1
1 /
1
1 /
1
0 /
1
1
1
2
2
3
0 /
1
0 /
1
1
1
1
1
1
2
1
639
合計
1
1
1
1
0
1
1
1
1
0
1
0
0
2
66
2
サメ類
ウツボ科
ウツボ科?
ヤガラ科
ハタ科(マハタ型)
ハタ科(スジアラ型)
ハタ科
ハタ型
アジ科(大)
ヒメジ科
フエダイ科
クロダイ属
ヨコシマクロダイ
フエフキダイ属
フエフキダイ科
タイ型
シロクラベラ型
タキベラ型
ベラ科
イロブダイ属
アオブダイ属
ブダイ科
ニザダイ科
モンガラカワハギ科
ハリセンボン科
真骨類(未同定)
真骨類(保留)
真骨類(同定不可)
ウミガメ類
リクガメ類
ニワトリ
鳥類?(同定不可)
ネズミ科
イノシシ *1
ウシ
小型哺乳類(未同定)
哺乳類(保留)
哺乳類(同定不可)
保留
合計
97
35
4
2
1
6
4
1
1
13
1
1
20
38
4
1
3
2
2
2
1
1
1
1
1
1
C-6-78
3
1
1
4
1
1
+
8
1
1
1
3
2
1
2
1
1
1
5
2
1
3層
2
1
1層
種類
320
1
11
42
144
18
1
7
1
27
13
28
1
5
4
2
2
1
2
2
5
2
1
C-6-88
60
3
8
11
1
13
15
1
1
1
2
3
1
C-689・90
4層
1
17
3
1
1
9
+
1
1
C-6-98
・D-6-8
1
494
1
1
21
76
206
23
2
10
2
42
28
30
1
2
1
2
3
6
3
1
1
1
2
8
2
8
7
1
1
1
合計
4/5層
30
1
1
2
1
1
5
10
2
5
1
1
C-6-78
*1 1層の「イノシシ」はおそらくブタ. *2 MNIは1層・出土位置不明の資料を除外して計算した.
+
<1>
C-4-87
NISP
17
6
1
1
6
1
<1>
1
1
26
1
1
3
1
20
C-6-88
5層
C-6-78
表4.安田遺跡から採集された脊椎動物遺体の組成(NISP:同定標本数,MNI:最小個体数).
43
1
1
1
9
2
6
21
1
1
合計
2
1
1
Pit1
4
1
1
1
1
Pit3
1
1
Pit9
2
2
Pit10
15
1
1
1
11
1
出土
位置
不明
3
1
1
1
5
4
7
7
1
1
1
2
11
3
9
7
5
2
1
1
97
241
27
2
14
2
46
31
40
20
1
1
1
31
2
1
4
4
1
639
合計
1
1
1
2
2
<2>
1
1
1
1
3
<1>
2
1
2
<1>
1
17
<11>
3
1
6
1
1
1
3
1
54
MNI
*2
67
68
69
6.遺物出土状況
C-6-78、C-6-88、C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 の遺物包含層が確認されたトレンチにおいて光
波測距儀による遺物出土位置の記録を行った。記録は土器、石器、貝製品などの人工遺物と貝
類、獣魚骨などの自然遺物を対象とし、第 4 層、第 5 層を中心に記録を行った。その結果を第 30
図~第 34 図に遺物及び層別に示した。土器は口縁部、有文胴部、底部を対象に図示し、貝類はヤ
コウガイ(破片)
、ヤコウガイ蓋、チョウセンサザエ、チョウセンサザエ蓋、サラサバティ、大型
イモガイ、シャコガイ科、オオベッコウガサガイ、ホラガイの 9 種類を対象に図に示した。以
下、層ごとに説明を行う。
1.第 3 層 遺物出土分布状況
第 3 層の遺物出土分布状況を第 30 図に示し
た。第 3 層は撹乱層であり、C-6-78 トレンチ
でのみ認められるため、出土量も少ない。第 3
層からは土器が 43 点、石器が 1 点確認されて
いる。その内、記録を行ったものを図に示し
た。層の厚さも薄く、レベル分布からみても
3.3m~3.4m の約 10cm 幅から出土しているの
がみられる。また、南にいくにつれて層がなく
なっていくとともに遺物の出土もみられなくな
る。
本トレンチからは一括土器も認められてお
り、その図を第 29 図に示した。50cm 四方に
土器片が 13 点まとまって出土している様子が
見られている。
第 29 図 C-6-78 第 3 層一括土器出土状況
2.第 4 層 遺物出土分布状況
第 4 層は遺物包含層で、出土量が最も多い層である。この層の特徴としては、石の混入が全体
の約 50%を占めており、東にいくにつれて遺物の出土量が減少していく点である。
土器の出土状況を第 31 図に示した。土器は C-6-78、C-6-88 トレンチでは全体に広がって出土
しているが、C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 トレンチでは出土量が少なくなっている。また、C-689・90 トレンチに関しては、東側半分からの土器の出土がみられないため、包含層の東側への広
がりはあまりみられないと考えられる。
貝の出土状況は第 32 図に示した。貝の出土状況も前述と同様に東側への広がりがみられない。
貝製品についてはヤコウガイ螺蓋製敲打器を図に示した。C-6-88 及び C-6-98 ・D-6-8 トレンチ
からの出土が確認されているが、特に C-6-90・D-6-8 トレンチ南側からの出土が目立つ。自然貝
70
についてはヤコウガイ(破片)の出土が最も多く、各トレンチ全体に広がりがみられる。ヤコウ
ガイ蓋、シャコガイ科は C-6-78 トレンチからの出土は見られず、C-6-98・D-6-8 トレンチ南側に
集中してみられる。チョウセンサザエは出土量が少なく、C-6-88 トレンチ中央に集中して出土し
ている。チョウセンサザエ蓋は C-6-98・D-6-8 トレンチ南側でのみの出土である。サラサバティ
は C-6-88 トレンチ全体に広がっているが、その他トレンチへの広がりはあまりみられない。ま
た、レベル分布では 3.3m 付近に集中して出土がみられ、下部にいくにつれて出土がみられなく
なる。
3.第 5 層 遺物出土分布状況
C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 トレンチでは第 5 層が認められない部分があるため、出土する遺
物の量が少なくなっている。しかし、C-6-78 トレンチにおいては第 4 層と同等量の遺物の出土が
確認されている。
土器の出土状況を第 33 図に示した。土器は各トレンチからの出土量の減少がみられ、C-6-89・
90 トレンチからは出土がみられなくなる。また、接合破片が南北に散らばって出土している状況
がみられるが、土器の出土量は大幅に減少する。
貝類の出土状況を第 34 図に示した。C-6-89・90、C-6-98・D-6-8 トレンチは遺物の出土量の減
少が著しい。第 4 層と同様にヤコウガイ(破片)の出土が目立ち、全体に散らばっている。次い
でシャコガイが多く出土しており、C-6-78 トレンチからも出土がみられるようになる。ヤコウガ
イ蓋に関しては出土量が減少し、貝製品の出土も少なくなっている。レベル分布からみても C-678 トレンチは 3.0m から 3.3m の間からの出土がみられるが、C-6-88 トレンチは 3.0m 付近に固
まって出土している傾向がみられる。
71
72
73
74
75
76
第 5 節 安田遺跡出土試料の自然科学分析
パリノ・サーヴェイ株式会社
はじめに
国頭村に所在する安田遺跡では、平成 24 年に行われた発掘調査により、沖縄貝塚時代後期とされ
る土器や石器および貝や獣骨などの遺物、さらには陶磁器類や現代遺物なども確認された。本報告で
は、出土した土器付着物および炭化材の放射性炭素年代測定を行うことにより、これらの遺物の年代
資料を作成する。また、土器の材質(胎土)の岩石学的な特性を捉えることにより、既存の地質情報と
の比較などから、その製作地域や移動などについて検討する。
Ⅰ.土器付着炭化物および炭化材の分析
1.試料
試料は、安田遺跡から出土した大当原式土器より採取した土器表面の付着物 1 点と、同遺跡のトレ
ンチから出土した炭化材 3 点の計 4 点である。炭化材試料の内訳は、C-6-88 トレンチ 3 層より出土
した DOT-522、C-6-78 トレンチ 3 層より出土した DOT-165、同トレンチ同層より出土した DOT115 である。
付着物と炭化材 3 点の計 4 点について放射性炭素年代測定を行い、炭化材 3 点について樹種同定を
行った。
2.分析方法
(1)放射性炭素年代測定
土壌や根など目的物と異なる年代を持つものが付着している場合、これらをピンセット、超音波洗
浄などにより物理的に除去する。その後 HClにより炭酸塩等酸可溶成分を除去、NaOH により腐植
酸等アルカリ可溶成分を除去、HClによりアルカリ処理時に生成した炭酸塩等酸可溶成分を除去す
る(酸・アルカリ・酸処理)。
試料をバイコール管に入れ、1g の酸化銅(Ⅱ)と銀箔(硫化物を除去するため)を加えて、管内を真空
にして封じきり、500℃(30 分)850℃(2 時間)で加熱する。液体窒素と液体窒素+エタノールの温度差
を利用し、真空ラインにて CO2 を精製する。真空ラインにてバイコール管に精製した CO2 と鉄・水
素を投入し封じ切る。鉄のあるバイコール管底部のみを 650℃で 10 時間以上加熱し、グラファイト
を生成する。
化学処理後のグラファイト・鉄粉混合試料を内径 1mm の孔にプレスして、タンデム加速器のイオ
ン源に装着し、測定する。測定機器は、3MV 小型タンデム加速器をベースとした 14C-AMS 専用装置
(NEC Pelletron
9SDH-2)を使用する。AMS 測定時に、標準試料である米国国立標準局(NIST)か
ら提供されるシュウ酸(HOX-Ⅱ)とバックグラウンド試料の測定も行う。また、測定中同時に 13C/12C
の測定も行うため、この値を用いて δ13C を算出する。
放射性炭素の半減期は LIBBY の半減期 5,568 年を使用する。また、測定年代は 1950 年を基点と
した年代(BP)であり、誤差は標準偏差(One Sigma;68%)に相当する年代である。なお、暦年較正は、
RADIOCARBON CALIBRATION PROGRAM CALIB REV7.0(Copyright 1986-2013 M Stuiver
and PJ Reimer)を用い、誤差として標準偏差(One Sigma)を用いる。暦年較正とは、大気中の 14C 濃
77
度が一定で半減期が 5,568 年として算出された年代値に対し、過去の宇宙線強度や地球磁場の変動に
よる大気中の 14C 濃度の変動、及び半減期の違い(14C の半減期 5,730±40 年)を較正することであ
る。暦年較正は、CALIB REV7.0 のマニュアルにしたがい、1 年単位まで表された同位体効果の補正
を行った年代値を用いて行う。また、北半球の大気中炭素に由来する較正曲線を用い、測定誤差σ、
2σ双方の値を計算する。σは統計的に真の値が 68%の確率で存在する範囲、2σは真の値が 95%の
確率で存在する範囲である。表中の相対比とは、σ、2σの範囲をそれぞれ 1 とした場合、その範囲
内で真の値が存在する確率を相対的に示したものである。較正された暦年代は、将来的に暦年較正曲
線等の改正があった場合の再計算、再検討に対応するため、1 年単位で表された値を記す。
(2)樹種同定
試料を自然乾燥させた後、木口(横断面)・柾目(放射断面)・板目(接線断面)の 3 断面の割断面を作製
し、実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて木材組織の種類や配列を観察し、その特徴を現生標
本および独立行政法人森林総合研究所の日本産木材識別データベースと比較して種類を同定する。
なお、木材組織の名称や特徴は、島地・伊東(1982)、Wheeler 他(1998)、Richter 他(2006)を参考
にする。また、日本産樹木の木材組織については、林(1991)や伊東(1995;1996;1997;1998;1999)を参
考にする。
3.結果
(1)放射性炭素年代測定
同位体効果による補正を行った測定結果を表 1 に示す。4 点の試料のうち、大当原式土器付着物と
DOT-522、DOT-165 の 3 点は、互いに近接した年代を示し、順に 1,730±20BP、1,790±20BP、
1,750±20BP である。DOT-115 の炭化材は、これらとは全く異なる 50±20BP の年代を示す。各試
料の較正暦年代を表 2 に示す。なお、DOT-115 は較正不能の年代である。測定誤差をσの年代でみ
ると、大当原式土器付着物と DOT-165 は、3 世紀中頃から 4 世紀前半頃までであり、DOT-522 は 2
世紀中頃から 4 世紀前半頃までとなる。
(2)樹種同定
樹種同定結果を表 3 に示す。炭化材は、針葉樹 1 分類群(マツ属複維管束亜属)と広葉樹 2 分類群(イ
チジク属・アカテツ属)に同定された。各分類群の解剖学的特徴等を記す。
・マツ属複維管束亜属(Pinus subgen. Diploxylon)
マツ科
軸方向組織は仮道管と垂直樹脂道で構成される。仮道管の早材部から晩材部への移行は急~やや緩
やかで、晩材部の幅は広い。垂直樹脂道は晩材部に認められる。放射組織は、仮道管、柔細胞、水平
樹脂道、エピセリウム細胞で構成される。分野壁孔は窓状となる。放射仮道管内壁には鋸歯状の突起
が認められる。放射組織は単列、1-15 細胞高。
・イチジク属(Ficus) クワ科
散孔材で、道管壁は厚く、横断面では楕円形、単独および 2-4 個が複合して散在する。道管の分布
密度は低い。道管は単穿孔を有し、壁孔は交互状に配列する。放射組織は異性、1-5 細胞幅、1-50 細
胞高。柔組織は独立帯状で目立つ。
78
表1. 放射性炭素年代測定結果
試料
トレンチ・
補正年代
δ 13C
測定年代
試料名
試料の質
番号
採取層位
BP
(‰)
BP
大当原式土器
1
炭化物
1,730± 20 -23.35±0.37 1,700± 20
付着炭化物
C-6-88
2
DOT-522
炭化材
1,790± 30 -24.72±0.51 1,790± 20
3層
C-6-78
3
DOT-165
炭化材
1,750± 30 -24.33±0.54 1,730± 20
3層
C-6-78
4
DOT-115
炭化材
50± 20
-28.11±0.72
110± 20
3層
1)年代値の算出には、Libbyの半減期5568年を使用。
2)BP年代値は、1950年を基点として何年前であるかを示す。
3)付記した誤差は、測定誤差σ (測定値の68%が入る範囲)を年代値に換算した値。
表2. 暦年較正結果
試料 補正年代
番号
(BP)
暦年較正年代
1,731± 23
σ
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
254
315
248
144
169
210
299
134
281
251
271
237
365
-
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
cal
IAAA-131505
IAAA-131506
IAAA-131507
IAAA-131508
相対比
Code No.
302 cal BP 1,696 - 1,648 0.638
343 cal BP 1,635 - 1,607 0.362 IAAA-131505
381 cal BP 1,702 - 1,569 1.000
151 cal BP 1,806 - 1,799 0.048
194 cal BP 1,781 - 1,756 0.195
256 cal BP 1,740 - 1,694 0.590
2
1,794± 25
IAAA-131506
318 cal BP 1,651 - 1,632 0.168
259 cal BP 1,816 - 1,691 0.792
324 cal BP 1,669 - 1,626 0.208
266 cal BP 1,699 - 1,684 0.196
332 cal BP 1,679 - 1,618 0.804
3
1,745± 25
IAAA-131507
357 cal BP 1,713 - 1,593 0.962
380 cal BP 1,585 - 1,570 0.038
4
54± 22
計算不可
IAAA-131508
1)計算には、RADIOCARBON CALIBRATION PROGRAM CALIB REV7.0(Copyright 1986-2013 M Stuiver
and PJ Reimer)を使用
2)計算には表に示した丸める前の値を使用している。
3)1桁目を丸めるのが慣例だが、暦年較正曲線や暦年較正プログラムが改正された場合の再計算や比較が行
いやすいように、1桁目を丸めていない。
4)統計的に真の値が入る確率はσ は68%、2σ は95%である
5)相対比は、σ 、2σ のそれぞれを1とした場合、確率的に真の値が存在する比率を相対的に示したものであ
る。
1
cal
cal
2σ cal
cal
cal
σ
cal
cal
cal
2σ
cal
cal
σ
cal
cal
2σ
cal
Code No.
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
AD
・アカテツ属(Pouteria) アカテツ科
散孔材~放射孔材で、道管は 2-
表3. 樹種同定結果
試料名
トレンチ 層位 状態 種類
備考
D0T-522 C-6-88 3層
破片 マツ属複維管束亜属
IAAA-131506
る。道管は単穿孔を有し、壁孔は
D0T-165 C-6-78 3層
破片 イチジク属
IAAA-131507
交互状に配列する。放射組織は、
D0T-115 C-6-78 3層
破片 アカテツ属
IAAA-131508
10 個が放射方向に複合して配列す
異性、1-3 細胞幅、1-20 細胞高。軸方向柔細胞は短接線状~幅の狭い帯状となる。
79
4.考察
(1)年代について
大当原式土器は、岸本ほか(2000)により沖縄貝塚時代後期前半期を構成する尖底土器の後半の型式
とされている。同時にその年代観として、九州の弥生時代後期から古墳時代にかけての範囲に相当す
ることも示されている。今回の土器付着物および DOT-522、DOT-165 の 3 点から得られた年代は、
その暦年代を考慮すると、ほぼ上述の大当原式土器の年代観と整合する。
発掘調査所見では、尖底土器が出土したことから、安田遺跡の年代が約 1,500 年前の弥生時代後期
~古墳時代まで遡ることが示されているが、今回の測定結果は、その所見を支持するものと言える。
なお、DOT-115 の炭化材については、おそらく現代の炭化材がトレンチ内に混入したものであろ
う。
(2)炭化材の樹種について
炭化材には 3 種類が認められた。マツ属複維管束亜属は、本地域にはリュウキュウマツ 1 種のみが
分布しており、今回の試料もリュウキュウマツの可能性が高い。リュウキュウマツは、海岸の岩地、
集落周辺の二次林等に生育する常緑高木である。木材は、軽軟であり、水に対する保存性は比較的高
いが、シロアリには弱いとされ、油脂(松脂)を多く含み、燃焼性が高い。イチジク属は、アコウ、ガ
ジュマル、イヌビワなど 16 種がある。その特徴は、主に林縁部などに生育し、常緑性の種類が多い
が、落葉性の種類もあり、低木から高木のほか、つる性の種類もある。木材は一般に軽軟で、あるこ
とから強度・保存性が低く、燃焼性が高い。アカテツ属には、アカテツとムニンノキの 2 種がある
が、琉球地域にはアカテツのみが分布することから、今回の試料もアカテツの可能性が高い。アカテ
ツは、海岸付近に生育する常緑高木であり、木材は極めて重硬で強度が高いとされる。また、薪炭材
として優良とされる。
年代測定結果をみると、マツ属複維管束亜属とイチジク属は、年代値が近い値を示し、暦年較正結
果から沖縄貝塚時代後期の 2 世紀中頃~4 世紀前半頃のものと考えられる。この時期の遺跡周辺で
は、海岸の崖地などにマツ属複維管束亜属、周囲の森林の林縁部などにイチジク属が生育し、その木
材を利用したことが推定される。
一方、アカテツ属は、年代測定で 50±20BP の値が得られており、ほぼ現代の炭化材と考えられ
る。本地域でアカテツは、ガジマンと呼ばれ、その生態性から、周辺部で木材の入手が可能であった
と考えられ、優良な薪炭材であることや、炭化を考慮すると、周辺での炭焼きの関係性も指摘でき
る。
Ⅱ.土器の胎土分析
1.試料
試料は、安田遺跡から出土した土器片 2 点である。それぞれ DOT-154、DOT-006 という記号が付
されているが、前者は試掘トレンチ C-6-78 で確認された 3 層より出土しており、後者は土器一括出
土で 3 層とされている。いずれも型式は大当原式とされている。
2.分析方法
胎土分析には、現在様々な分析方法が用いられているが、大きく分けて鉱物組成や岩片組成を求め
る方法と化学組成を求める方法とがある。前者は切片による薄片作製が主に用いられており、後者で
80
は蛍光X線分析が最もよく用いられている方法である。前者の方法は、胎土の特徴が捉えやすいこ
と、地質との関連性を考えやすいことなどの利点があり、胎土中における砂粒の量や、その粒径組
成、砂を構成する鉱物片、岩石片および微化石の種類なども捉えることが可能であり、得られる情報
は多い。ただし、胎土中に含まれる砂粒の量自体が少なければ、その情報量も少なくなる。一方、蛍
光 X 線分析は、砂分の量や高温による鉱物の変化にあまり影響されることなく、胎土の材質を客観的
な数値で示すことができる。今回の分析では基礎資料の作成という目的から、薄片作製観察を行う。
以下に分析手順を述べる。
薄片は、試料の一部をダイアモンドカッターで切断、正確に 0.03mm の厚さに研磨して作製した。
観察は偏光顕微鏡による岩石学的な手法を用い、胎土中に含まれる鉱物片、岩石片および微化石の種
類構成を明らかにした。
ここでは薄片観察結果を松田ほか(1999)の方法に従って表記する。これは、胎土中の砂粒につい
て、中粒シルトから細礫までを対象とし、粒度階ごとに砂粒を構成する鉱物片および岩石片の種類構
成を調べたものである。この方法では、胎土中における砂の含量や粒径組成により、土器の製作技法
の違いを見出すことができるために、同一の地質分布範囲内にある近接した遺跡間での土器製作事情
の解析も可能である。
砂粒の計数は、メカニカルステージを用いて 0.5mm 間隔で移動させ、細礫~中粒シルトまでの粒
子をポイント法により 200 個あるいはプレパラート全面で行った。なお、径 0.5mm 以上の粗粒砂以
上の粒子については、ポイント数ではなく粒数を計数した。また、同時に孔隙と基質のポイントも計
数した。これらの結果から、各粒度階における鉱物・岩石別出現頻度の 3 次元棒グラフ、砂粒の粒径
組成ヒストグラム、孔隙・砂粒・基質の割合を示す棒グラフを呈示する。
3.結果
薄片観察結果を表 4、図 1、2 に示す。2 点の試料間では、鉱物片や岩石片の種類構成、砂粒の粒径
組成および砕屑物・基質・孔隙の割合のいずれにおいても、ほぼ類似した組成を示す。鉱物片と岩石
片の組成では、石英の鉱物片が主体をなし、これに少量のチャートの岩石片とシルト・粘土塊が伴わ
れ、他に微量の斜長石や黒雲母の鉱物片や多結晶石英などが含まれる。これらのうち斜長石には累帯
構造を呈する清澄なものも認められる。なお、胎土の基質は、雲母粘土鉱物質で褐色を呈するが、シ
ルト・粘土塊とした砂粒も、同様の様相を呈する。すなわち、シルト・粘土塊とした砂粒は、胎土の
基質を構成する粘土が塊となったものである可能性がある。ただし、その外形は亜角礫~亜円礫状で
あり、例えば土器片を砕いた砕屑物などではない。
粒径組成では、細粒砂の割合が突出して多く、次いで極細粒砂、中粒砂の順に多い。砕屑物・基
質・孔隙における砕屑物の割合は、10~15%程度である。
4.考察
土器胎土に含まれる鉱物片や岩石片は、胎土の材料となった粘土や砂の採取地背後の地質に由来す
る。したがって、土器胎土における鉱物・岩石組成は、土器材料採取地の背後に分布する地質すなわ
ち地質学的背景を示唆している。今回の 2 点の試料では、ほぼ同様の鉱物・岩石組成が得られたこと
から、2 点の土器のそれぞれの材料採取地は、同一地点であることも含めて同一の地質学的背景を有
する地域内であったと考えられる。
81
今回の試料の胎土の鉱物・岩石組成から推定される地質学的背景については、砂粒がほとんど石英
とチャートのみからなるという組成が手がかりとなる。石英とチャートはともに物理的・化学的に風
化変質に対する抵抗性の高い鉱物および岩石である。その由来としては、上流域にチャートが分布す
る河川の最下流域~河口の堆積物あるいはそのような堆積物に由来する砂岩や泥岩が再び風化して生
成された砕屑物のいずれかが考えられる。まず沖縄本島を想定した場合に、上流域にチャートが分布
する河川というのは本部半島にしか分布しないが、本部半島の地質分布(木崎編,1985)と本部半島の地
形および河川の長さを考慮すると、河口の堆積物でも石英とチャートが選択的に残るということはな
く他の岩石や鉱物がかなりの割合で混在すると考えられる。
表4. 薄片観察結果
砂 粒 の 種 類 構 成
鉱 物 片
砂
粒
区
分
試
料
石
英
斜
長
石
黒
雲
母
岩石片・その他
不
透
明
鉱
物
チ
ャ
ー
ト
多
結
晶
石
英
シ
ル
ト
・
粘
土
塊
細礫
DOT-154
C-6-78 3層
大当原式
1
粗粒砂
2
中粒砂
7
細粒砂
28
極細粒砂
16
粗粒シルト
4
1
1
1
1
10
1
3
2
11
1
41
1
17
4
0
基質
482
孔隙
12
備考
基質は、雲母粘土鉱物、酸化鉄などによって埋められ、赤褐色を示す。シルト・粘土塊には砂
の混じるものも散見される。累帯構造を有する清澄な斜長石が含まれる。
細礫
DOT-006 3層
土器一括出土
大当原式
合
計
1
中粒シルト
砂
植
物
珪
酸
体
0
極粗粒砂
砂
植
物
片
0
極粗粒砂
4
4
粗粒砂
4
4
4
6
3
28
中粒砂
1
1
細粒砂
17
1
極細粒砂
12
1
粗粒シルト
2
1
6
2
15
2
中粒シルト
0
基質
472
孔隙
12
備考
基質は、雲母粘土鉱物質で、褐色を示す。シルト・粘土塊には砂の混じるものも散見される。
累帯構造を有する清澄な斜長石が含まれる。角閃石あり。
82
したがって、今回の試料の胎土の地質学的背景は、沖縄本島内であれば、砂岩や泥岩の分布地域で
ある可能性が高い。
上述した木崎編(1985)による地質記載に従えば、沖縄本島における砂岩や泥岩からなる主な地質と
しては、古第三紀の砂岩からなる嘉陽層と新第三紀の砂岩・泥岩からなる島尻層群とがあげられる。
これらのうち、嘉陽層は、金武町以北の沖縄本島北部に広く分布し、安田遺跡の位置する背後の山地
も嘉陽層により構成されている。しかし、嘉陽層の砂岩中には変成岩である泥質千枚岩が多く挟まれ
ており、砂岩を構成する砕屑物中には泥質岩片や安山岩片、玄武岩片なども含まれているとされてい
る。したがって、嘉陽層からなる山地斜面の風化堆積物などは、石英とチャート以外の鉱物や岩石片
が多く混在すると考えられ、嘉陽層の分布域を流れる河川の河口の堆積物であっても、その長さや地
形を考慮すると石英とチャート以外の砕屑物が多く混在すると考えられる。なお、安田遺跡は、河口
域に位置するが、その河川の流域をみると、嘉陽層だけではなく、主に千枚岩や緑色岩などからなる
83
名護層も分布していることから、安田遺跡周辺の低地堆積物中には名護層由来の岩石片も多量に混在
していると考えられる。
一方、島尻層群は沖縄市以南の南部に広く分布し、砂岩を構成する砕屑物として雲母片やチャート
が記載されており(兼子・氏家,2006 など)、さらに凝灰岩層が多数挟まれている。今回の胎土では、
微量であるが黒雲母が含まれており、さらに清澄な斜長石も認められている。清澄な斜長石は、火山
噴出物に多く認められるものであるから、島尻層群中の凝灰岩層に由来する可能性がある。また、島
尻層群の分布域に接して分布する島尻層群以外の地質は主に琉球石灰岩からなる琉球層群のみであ
る。島尻層群および琉球層群の分布からは、島尻層群分布域内では、琉球石灰岩などが混在しないよ
うな河川堆積物や斜面の風化堆積物の分布は比較的広範に想定される。
以上のことから、今回の試料の胎土の地質学的背景は、沖縄本島内であれば、南部の島尻層群分布
域である可能性があると考えられる。それは、土器の材料採取地が南部であり、おそらく製作地も南
部であった可能性のあることを示唆する。すなわち、安田遺跡から出土した大当原式土器は、南部か
らの搬入品であった可能性がある。今後、この可能性を検証するためには、沖縄本島内における大当
原式土器の出土遺跡の分布など発掘成果も考慮しながら、分析事例を蓄積するなどの検討を必要とす
る。
引用文献
林 昭三,1991,日本産木材 顕微鏡写真集.京都大学木質科学研究所.
伊東隆夫,1995,日本産広葉樹材の解剖学的記載Ⅰ.木材研究・資料,31,京都大学木質科学研究所,81-181.
伊東隆夫,1996,日本産広葉樹材の解剖学的記載Ⅱ.木材研究・資料,32,京都大学木質科学研究所.66-176.
伊東隆夫,1997,日本産広葉樹材の解剖学的記載Ⅲ.木材研究・資料,33,京都大学木質科学研究所,83-201.
伊東隆夫,1998,日本産広葉樹材の解剖学的記載Ⅳ.木材研究・資料,34,京都大学木質科学研究所,30-166.
伊東隆夫,1999,日本産広葉樹材の解剖学的記載Ⅴ.木材研究・資料,35,京都大学木質科学研究所,47-216.
兼子尚知・氏家 宏,2006,糸満及び久高島地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 図幅),産総研地質
調査総合センター,47p.
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琉球・東アジアの人と文化(上巻).高宮廣衛先生古希記念論集刊行会,131-152.
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石学的・堆積学的による-.日本文化財科学会第 16 回大会発表要旨集,120-121.
Richter H.G.,Grosser D.,Heinz I. and Gasson P.E.(編),2006,針葉樹材の識別 IAWA による光学顕微
鏡的特徴リスト.伊東隆夫・藤井智之・佐野雄三・安部 久・内海泰弘(日本語版監修),海青社,70p.
[Richter H.G.,Grosser D.,Heinz I. and Gasson P.E.(2004)IAWA List of Microscopic Features for
Softwood Identification].
島地 謙・伊東隆夫,1982,図説木材組織.地球社,176p.
Wheeler E.A.,Bass P. and Gasson P.E.(編),1998,広葉樹材の識別 IAWA による光学顕微鏡的特徴リ
スト.伊東 隆夫・藤井智之・佐伯 浩(日本語版監修),海青社,122p.[Wheeler E.A.,Bass P. and
Gasson P.E.(1989)IAWA List of Microscopic Features for Hardwood Identification].
84
85
86
安波貝塚詳細分布調査(1)
第 1 節 調査概要
1.調査地周辺の概要
安波貝塚は国頭村字安波兼久原の安波川河口の砂丘上に形成されている。安波集落は国頭村の南東
端にあり、東側は太平洋に面し、南側は東村に隣接している。南北を山々が囲み、与那覇岳の麓を源
流とする安波川が集落を横切り東側へと流れ、南流してきた普久川と合流して太平洋へと注ぐ。集落
は前田、島中、福地、美作に分かれており、前田、島中、福地は安波川の下流に形成し、美作は山手
に形成されている。
琉球国郷帳や琉球国由来記には「あは」と記されており、マク名は「おうじまく」である。おうじ
まくは“奥武地マク”であり、安波川の奥に形成された村という意味である。最初に安波に住み着い
たのは、浦添間切安波茶から来た侍一家であったと伝えられており、現在は集落の氏神様として「御
拝(ウガミ)
」にまつられている。
「御拝(ウガミ)
」は琉球国由来記にみえるお嶽「ヤギナハ森城」
であり、海浜関係のお嶽といわれている。
「ヤギ」は海岸の細長い土地、「ナハ」は漁場(ナバ)であ
る。この森の神を安波の人々はマシラジの神と称しているが、マシラジはマシラゴであり白砂のこと
である。次に久志間切川田村の上大屋(ウンフェー)という狩人が寄留してきた。上大屋は山中に迷
い込み、猟犬と共に山越えをしてきた。しかし、帰れなくなったため侍一家の世話になり、侍一家の
娘を妻に迎え、子孫を広めた。安波のノロは上大屋の子孫であり、ノロ殿内は上大屋の住居跡であっ
たといわれている。上大屋は後に比嘉姓へと変わり、現在では上原姓、屋号・上大屋(ウンフェー)
となっている。その後、南山から落武者松平大主が寄留し、現在の宮城姓、屋号・新屋(ミーヤ)と
なる。この頃から近隣の村々からも人々が移り住み、集落形成が本格的になっていった。この上大屋
と新屋はノロと根神を世襲し、村の中心となっている。
安波集落の産業は昭和 30 年以前までは林業が主産業であった。農業はアキケーバタと称される焼
畑農業によって、芋、麦、粟、大根等の栽培を自給自足程度に行っていた。しかし、昭和 30 年以降
はパイナップルやサトウキビが主産業となり、野山の開墾が進んでいった。そのため、林業は衰退
し、アキケーバタは行われなくなっていった。
安波川河口付近には県指定天然記念物安波のサキシマスオウノキや普久川の中流には安波のタナガ
ーグムイ植物群落がある。また、旧暦 7 月初亥の日にはシヌグ及びウンジャミが隔年ごとに行われ
る。
<参考文献>
津波高志他 1982 年 『沖縄国頭の村落《上巻》』
(有)新星図書出版
仲宗根市幸編 1990 年 『沖縄フェース(国頭村特集)
』沖縄フェース出版
百周年記念誌編集委員会 1995 年 『国頭村立安波小学校百周年記念誌』国頭村立安波小学校
宮城栄昌 1967 年 『国頭村史』国頭村役場
87
2.調査の目的及び経緯
安波貝塚は後背には海岸付近まで迫る山並みと、前面に入り組んだ海岸があり、それに沿った安波
川河口付近のわずかな平地に立地している。このような状況は他の村内遺跡と同様で、このような地
形による遺跡の立地は国頭村内の遺跡特徴ともいえる。
安波貝塚は 1967 年に琉大歴史研究クラブによって発見され、1986 年に村内遺跡分布調査事業の一
環として小規模な発掘調査が行われている。その調査によって沖縄貝塚時代後期後半~終末期に比定
される遺跡であることが明らかとなり、踏査による遺跡の推定範囲が示された。ただし、発掘調査も
小規模であったため、貝塚のすべての性格や所属時期が判明している状況にはなっていない。そのた
め今後は諸開発行為との円滑な調整及び埋蔵文化財の保護を図る目的で、推定範囲内やその周辺にお
いて試掘調査を行い、遺物包含層の広がりなどさらなる詳細な分布域の調査が必要となる。
今回の調査は、2013 年 7 月に国頭村役場経済課より国頭村字安波兼久原 1931 番地 1 他において船
溜まりの施設整備計画が予定されているため、その予定地について文化財の有無照会をうけたことよ
り開始された。照会に対し、付近に周知の遺跡である安波貝塚が存在するため、開発予定地について
文化財調査が必要である旨を回答し、2013 年 10 月より踏査を開始した。調査には平成 25 年度文化
庁国庫補助および沖縄県補助による村内遺跡詳細分布調査費を充てている。調査には船溜まり建設計
画地内における踏査と試掘調査を行っている。
88
89
3.調査経過
今回の調査は、船溜まり施設整備計画の予定範囲内において、はじめに表面踏査(地上遺構及び表採
遺物の確認)を行い、その後任意に設置された杭を基準に 9 か所の試掘調査を行った。
2013(平成 25)年度
10. 25
経済課により設置された杭を基準に杭周辺の踏査
2. 26
重機による試掘 順は試掘坑 6→試掘坑 5→試掘坑 8→試掘坑 9→試掘坑 7
層序観察・写真撮影後、順をおって埋戻しを行う 試掘坑 8 は土器が採集されたため、
手掘り調査を行うこととした
2. 27
試掘坑 8 表土~地表より 45 ㎝レベルは重機による掘り下げ 地表より 45~60 ㎝レベ
ルは手掘り 60 ㎝レベルで遺物の出土が確認されないため、手掘り終了
2. 28
試掘坑 8 北・東壁面の写真撮影及び断面実測
3. 12
試掘坑 8 地表より 60 ㎝レベルから重機による掘り下げ 層序確認・写真撮影後、埋戻
し
遺物が出土したため、試掘坑 8 の拡張のための伐開
試掘坑 4→試掘坑 3→試掘坑 2→試掘坑 1 の順で重機による伐開
2014(平成 26)年度
7. 16
試掘坑 8 拡張トレンチ部分の重機による伐開 周辺の測量
7. 17
試掘坑 8 重機による表土はぎ
試掘坑 3→試掘坑 2→試掘坑 1→試掘坑 4 の順で設定後、重機により掘り下げ
層序観察・写真撮影後、順をおって埋戻し
7. 22
発掘作業員が入るが、台風の影響で雨天のため午前中のみ作業
7. 23
試掘坑 8-1 より手掘りにはいる
7. 28
安田・安波シヌグのため現場休み
7. 31
台風 12 号のため現場休み
8. 1
台風 12 号のため現場休み
8. 4
雨天のため現場休み
8. 7
台風 11 号のため現場休み
8. 14
試掘坑 8 平面・断面写真撮影後、発掘道具片づけ及び撤退
作業員終了
8. 18
第2節
試掘坑 8 北・東壁面 断面実測
調査グリッドの設定及び層序
グリッドの設定は、船溜まり施設整備計画の予定範囲内において国頭村役場経済課により任意に設
置された杭を基準に、予定地内を把握できる 9 か所に 3m×3mの方形の試掘坑(3mグリッド)を設定
した。グリッド名は北西のグリッドより試掘坑 1 とし、グリッドそれぞれの基準杭の北西側を基本と
90
したが、掘削地の状況により方角をずらして設定した。掘削後に経済課より提供された船溜まり施設
のための地形測量基準点より、各グリッドの基準杭の座標を計測した。
今回の調査地は、貝塚の範囲に近い西側である海岸砂丘後背の低地が対象である。聞き取りで、サ
トウキビ畑として使われ、それ以前は水田を営んでいたということで、もともと低湿地であり、田畑
跡や休耕地であった。
以下、試掘坑の 9 か所の基本的な層序は次の通りである。なお、調査の都合上、試掘坑 1~7 及び
9 は層序柱状図のみで、層序実測は、遺物の出土した試掘坑 8 のみとした。
91
1 層 … 10YR 暗褐 3/3 表土・客土・腐食土
試掘坑 4・5 はみられない 遺物なし
2 層 … 10YR 暗黄褐 6/6 客土 小石~50 ㎝大の石含む
試掘坑 1・2・3・6・9 のみ確認される 遺物なし
3 層 … 10YR 暗褐 3/3 10YR にぶい黄褐 4/3
混土砂層 畑跡?と思われる
試掘坑 4・5・7・8 のみ確認される
試掘坑 7 では焼土・炭が疎らにみられ、試掘坑 4 では 3´層に赤褐色土がまじる 試
掘坑 8 において土器・陶磁器・貝が出土
4 層 … 10YR 暗褐 3/4 混土砂層 若干シルト質 水田跡?
試掘坑 8 のみで確認される 土器が出土
5 層 … 10YR にぶい黄褐 5/4 10YR 褐 4/6 混土砂利層 小石~こぶし大の石まじり すべ
ての試掘坑で確認される 遺物は試掘坑 8 のみで土器が少数出土
6 層 … 10YR 褐 4/4
混土砂利層 小石~約 50 ㎝以上の石まじり 5 層よりも砂利の粒が大
きく量も増える 試掘坑 8 のみ確認 遺物なし
7 層 … 灰白色 砂利層 湧水レベル
92
第 3 節 遺物
出土遺物は土器、陶磁器、表面採集の石器の人工遺物のほか、貝類、魚骨の自然遺物が確認されて
いるが、全体的に出土数が乏しい。以下、土器、陶磁器、石器、自然遺物に分けて記述していく。
1.土器
本貝塚から出土した土器は総数 180 点で、口縁部 13 点、胴部 165 点、底部 2 点を数える。すべて
貝塚時代後期に属するものと考えられ、そのほとんどが無文資料である。器種は甕形と壺形が認めら
れるが、壺形は 2 点のみで、底部は尖底と平底が 1 点ずつ出土している。その中で特徴的な 11 点に
ついて第 38 図に示した。以下、甕形土器、壺形土器、底部に分けて記述していく。
第 25 表
安波貝塚土器出土状況
口縁部
甕形
胴部
壺形
底部
甕形
不明
無文 波状 無文 突帯文 無文 刺突文 無文
3層
試掘坑8
2
4層
1
3
4・5層
3
11
15
1
4
2
20
14
表採
2層
試掘坑8-1
3層
5
3層
2
1
1
合計
2
4
5層
試掘坑8-2
尖底 平底
19
30
3
4
1
40
2
2
22
45
14
26
3層
11
試掘坑8-3
4層
5
10
15
5層
5層
3
試掘坑8-2・3
3
3
6
3
合計
2
9
1
1
77
1
1
1
87
1
1
180
甕形土器
第 38 図 1 は口唇が方形状で若干膨らむ無文資料である。指頭によるナデ調整が行われ、光沢のあ
る黒色鉱物が多量に混入する。器厚は 5.5mm とほぼ均一で、焼成は良好である。色調は外器面
7.5YR にぶい褐 5/4、内器面 10YR 褐 4/4 を呈する。試掘坑 8-2、3 層より出土。
第 38 図 2 は口唇が舌状で口縁部がやや外反する無文資料である。胴部の粘土接合部から破損して
いるが、接合部の厚みがみられる。器面調整は指頭によるナデが施されており、光沢鉱物及びチャー
トが僅かに確認できる。焼成は良好で、器厚は 5mm、接合部は 11mm を測る。色調は口唇部付近の
外器面は 5YR 黒褐 3/1、その下部からは 10YR 暗赤褐 3/6 で、内器面は 10YR 灰黄褐 4/2、割れ面は
10YR 黒褐 2/3 を呈している。試掘坑 8-2、3 層より出土。
第 38 図 3 は口唇が丸く直口する無文資料である。口唇に不規則な波状がみられ、肩部が僅かに屈
曲し、口縁部よりも膨らんでいるようにみえる。内外面ともに肩部屈曲部より上部は指頭によるナデ
93
が行われるが、下部は工具によって調整が行われ、外器面は横位、内器面は斜位に施される。光沢鉱
物の混入が少量確認され、器厚は 5mm、接合部は 7mm を測る。色調は外器面が 5YR にぶい褐
4/3、内器面は 5YR 赤褐 4/6、断面中央が 7.5YR 黒褐 3/1 のサンドイッチ状を呈し、焼成は良好。試
掘坑 8、4 層及び試掘坑 8-1、3 層より出土。
第 38 図 4 は口縁部の立ち上がりは直線的であるが、口唇に刺突が施されているため波状を呈す
る。刺突文は方形状で幅が 13mm の楕円形のものと、点状のものとの 2 種類認められ、指頭による
ナデ調整が行われる。砂粒及び光沢鉱物の混入が少量みられ、両面とも 5YR 赤褐 4/6 を呈する。焼
成は良好で、試掘坑 8、4・5 層より出土。
第 38 図 5 は口唇が方形状で刺突が 1 つ施され、波状を呈する。粘土接合部から破損しているが、
接合部に厚みがみられる。器厚は 5mm、接合は 7mm を測り、光沢鉱物及び赤色粒が少量含まれ
る。色調は外器面が 7.5YR 褐 4/3、内器面が 5YR にぶい赤褐 4/4、断面は 7.5YR 黒 2/1 を呈し、指頭
によるナデ調整が施される。焼成は良好で、試掘坑 8-1、3 層より出土。
第 38 図 6 は口唇が舌状を呈し、口縁部はほぼ直口する資料である。口唇に細かい刻みが施され、
丁寧な波状が成形される。光沢鉱物及び砂粒が少量混入し、器厚は 4~5mm を測る。色調は両面と
も 2.5YR 赤褐 4/6 を呈するが、断面の一部は 5YR 黒褐 2/1 を帯びる。焼成は良好で、試掘坑 8、4・
5 層より出土。
第 38 図 7 は甕形土器になると推定される有文胴部片である。棒状工具による刺突が縦に 2 つ施さ
れ、下部には粘土接合部が確認される。両面共に工具による調整が施され、横位の擦痕がみられる。
器厚は 7~8mm を測り、光沢のある黒色鉱物の混入が少量含まれる。焼成は良好で、色調は両面共
に 2.5YR 赤褐 4/8 及び 5YR 黒褐 3/1 まじりを呈する。試掘坑 8-3、3 層より出土。
壺形土器
第 38 図 8 は口唇が丸みのある方形状で口縁部が強く反り返る無文の口縁部片である。指頭による
ナデ調整が行われ、赤色粒の混入が少量みられる。器厚は 6mm を測り、色調は外器面が 7.5YR 黒褐
3/1、内器面が 7.5YR 暗褐 3/3 を呈する。焼成は良好で、試掘坑 8-2、3 層より出土。
第 38 図 9 は口唇が丸みのある方形状で、口唇から平たい突帯が縦に貼付される。指頭によるナデ
調整が行われ、光沢鉱物及び赤色粒の混入が少量みられる。器厚は 5mm で、突帯部は 7mm を測
り、色調は両面共に 2.5YR 赤褐 4/6 を呈する。焼成は良好で、試掘坑 8-2、3 層より出土。
底部
第 38 図 10 は尖底の底部片である。小破片のため詳細は不明であるが、チャートの混入が僅かにみ
られる。器面調整は指頭によるナデが行われ、表面に指頭の痕が残る。器厚は底面が 10mm で、胴
部への立ち上がり部分が 7.5mm を測り、色調は両面共に 5YR 暗赤褐 3/6 を呈する。焼成はやや脆
く、試掘坑 8、4・5 層より出土。
第 38 図 11 は平底の底部片である。部分的に外側に突出しており、くびれ平底のようにもみえる。
底径は 46mm で、内底面は丸底状で厚さが一定ではない。砂粒及び赤色粒が少量混入し、指頭によ
るナデ調整が施される。器厚は 5mm で、底面が 10mm を測り、焼成は良好である。色調は外器面が
10YR にぶい黄褐 4/3 及び 7.5YR 褐 4/6 まじりで、内器面は 7.5YR 灰褐 4/2 及び 7.5YR 褐 4/4 まじり
を呈している。試掘坑 8-1、3 層より出土。
94
95
2.石器
今回、試掘調査の発掘によって石器の出土はみられなかったが、第 39 図 12 の石斧が表面採集によ
って得られた。
平面形は短冊形を呈するほぼ完形の石斧である。刃部は大半が破損しているが、残存部分をみると
片刃と思われる。石斧の基端部及び刃部の一部に敲打剥離がみられ、研磨面はみられない。基部の表
裏面は自然面に近く、素材をほぼ原形で使用したと思われる。研磨は両側面のみに認められるが、擦
痕も認められず研磨は弱い。両側面の研磨面は一面のみであるが、その研磨面の両縁は、丁寧な打剝
によって調整され、断面形は隅丸方形状を呈する。全体的に角がとれ摩耗している感がある資料であ
る。法量は長さ 10.5 ㎝、幅 4.8 ㎝、厚さ 1.6 ㎝、重量 160.2gを測る。石材は粘板岩?
3.陶磁器類
今回の試掘調査では、試掘坑 8 のみで陶磁器の出土がみられた。しかし、出土量がわずかで、大半
が小破片のため、器種の判別不可能な資料が多い。層序をみると、表土及び近代・現代の耕作層であ
る 3 層からの出土である。出土状況は第 26 表に示したが、図面はほとんどの遺物が小破片のため割
愛した。
出土した陶磁器の中でただ 1 点の青磁は碗胴部破片で無文である。釉色が緑灰色で 1 ㎜弱の厚みで
施釉される。磁胎は灰白色で肌理が細かい。貫入は粗く表裏面にみられる。器壁は 5 ㎜を測る。
染付は 3 点得られた。その中で口縁部は 1 点のみであった。口唇が若干外反する碗形である。表面
に花弁文と思われる文様が描かれ、裏面口唇部に 1 本の圏線がみられる。呉須は青灰色で文様の輪郭
がはっきりしている。磁胎は灰白色で肌理が細かい。貫入は見られず、光沢あり。器壁は 5 ㎜を測
る。
カムィヤキも青磁と同様 1 点のみ出土している。壺形と思われる胴部片で、両面とも暗青灰色、芯
部は暗紫灰色となっている。器壁は 3 ㎜と薄い。文様はなく、両面とも横方向の擦痕がみられるが、
表面は薄く、裏面は深くはっきりと観察される。両面に叩き痕はみられない。混和材は石灰質状の白
色細片少量と赤色細粒微量を含む。
沖縄産陶器で確認される器種は碗・鉢・瓶のみで、施釉陶器は碗が多くみられる。無釉陶器の器種
不詳は、甕や壺などの大型のものと思われるものであるが、1 点のみ擂鉢の胴部片が出土している。
本土産陶磁器の碗 2 点はどちらも胴部で表面採集の資料である。スンカンマカイとよばれる本土産
印判手である。型摺技法の染付で、四国・愛媛県の砥部町を中心に焼かれた砥部焼と思われるもので
ある。器種不詳の 2 点は碗あるいは壺の可能性のある資料である。
96
第 26 表 安波貝塚陶磁器出土状況集計表
青磁
碗
沖縄産
施釉陶器
カムィヤ
キ
器種不詳
染付
碗
碗
1層
試掘坑8-1~3
3層
試掘坑8-2
3層
試掘坑8-3
3層
試掘坑8-2・3
3層
器種不詳
鉢
本土産陶磁器
合計
碗
器種不詳
1
3層
試掘坑8-1
瓶
沖縄産
無釉陶器
器種不詳
2
3
2
2
2
1
2
5
1
1
1
1
2
1
1
2
1
2
1
表面採集
合計
1
3
1
9
1
2
2
10
3
1
7
1
2
9
2
3
2
31
4.自然遺物
自然遺物は貝類と魚骨が検出された。
魚骨は直径 7 ㎜の小さな椎骨が 1 点のみであった。これは試掘坑 8 の 1 層からの出土であるため、
本来の貝塚に関わるものではなく、現代のものである可能性もある。
貝類は腹足網(巻貝)が 3 科、斧足網(二枚貝)が 1 科の出土で、出土状況は第 27 表に示す。
すべて小破片で風化と摩耗が著しく、指でふれると白い粉が付着し脆い。スイショウガイ科の 1 点
の資料は指状突起の破片であるが、種名は確認できず、シャコガイ科もまた著しい破損のため小片と
なり、種名・貝の左右も不明である。
今回の調査では貝類の出土が少数であったが、以前、包含層や貝層が確認されたとの報告もあり、
本貝塚の貝層・包含層が調査地付近に形成されている可能性は十分にあると思われる。
第 27 表 安波貝塚貝類出土状況
試掘坑8
試掘坑8-1~3
試掘坑8-2
3層
1層
3層
試掘坑8-3
試掘坑9
科名
種名
リュウテン 科
スイ ショ ウガイ 科
イ モガイ 科
シャコガイ 科
完形
殻頂 破片 重量(g)
L
L
R
ヤコウガイ
ヤコウガイ 蓋
巻貝不明
合計
MNI
R
1
3.2
完形
殻頂 破片 重量(g)
L
L
R
1
1
1
0
0
0
0
1
3.2
1
0
0
0
MNI
R
1
7.5
殻頂 破片 重量(g)
L
L
R
1
2
1.9
3.1
1.2
1
1
1
4
13.7
4
MNI
R
1
合計
3層
完形
1
7.0
完形
殻頂 破片 重量(g)
L
L
R
MNI
R
1
1
8.1
完形
殻頂 破片 重量(g)
L
L
R
MNI
R
2
29.9
1
1
9.8
1
完形
殻頂 破片 重量(g)
L
L
R
2
4
1
1
1
2
29.9
25.8
9.8
1.9
3.1
1.2
1
4
1
1
1
1
10
71.7
9
1
0
0
0
0
1
97
7
1
0
0
0
0
1
8.1
1
0
0
0
0
3
39.7
2
0
0
0
MNI
R
1
第 3 章 総括
本報告書は 2012~2014(平成 24~26)年に行われた安田遺跡と安波貝塚の詳細分布調査をまとめ
た。それぞれ 1985・86 年に行われた村内遺跡分布調査により示された遺跡推定範囲を基に、その内
外において遺物の分布状況と遺跡包含層の確認を目的に調査を行っている。
安田遺跡においては、遺跡上に現在の集落が営まれているため、試掘調査は休畑地等の空き地に限
られたが、トータルで 12 か所の試掘調査を行うことができた。これまでの調査によって、安田遺跡
はグスク土器や陶磁器が採取できるアシャギ周辺やその後方の畑地一帯と、くびれ平底の後期系土器
が散布する公園一帯の 2 つの地点に分かれているとされていたが、今回の試掘調査においては、現在
の公民館付近の畑地より、貝塚時代後期前半の大当原式土器と思われる尖底の土器群とその良好な包
含層が確認された。土器の付着物による年代測定においても 1730±20BP の値が得られていることか
ら、安田遺跡はこれまでの認識より古くから営まれた遺跡であることが明らかになった。土器以外の
遺物では、試掘時にヤコウガイの破片が多く目につき、蓋を利用した貝製品も調査面積に比して多い
印象を受けた。第 4 節の脊椎動物遺体の項でも指摘されているが、遺跡前面の海への依存度の高さを
感じさせた。
今後の課題としては、当初の目的の一つである、これまで表採されているグスク土器や陶磁器のグ
スク時代、くびれ平底土器の貝塚時代後期後半の両時期における遺物包含層の確認が、今回の調査区
においては確認できなかったことがあげられる。今回も表採ではそれらの遺物がみつかっているた
め、それらの包含層の確認を行うことが必要であろう。
安波貝塚においては、今回の調査区は安波区の船溜まり施設整備計画を受けての予備調査であり、
遺跡推定範囲からは西に外れた部分である。当該地は現在、休畑地となっており、サトウキビ畑や水
田として利用されていたことがわかっている。表面踏査においてはその当時の畑の囲いであると思わ
れる石積みが確認されたが、安波貝塚の時期とされる沖縄貝塚時代後期後半に比定される時期の遺物
は確認できなかった。船溜まり施設建設予定範囲において 9 か所の試掘調査を行ったが、明確な遺物
包含層は確認されなかった。しかし、試掘坑8においては、流れ込みによるものと思われたが、総数
180 点の土器片が得られており、近くに包含層が存在することの傍証が確認されている。土器はくび
れ平底とともに尖底の資料も得られており、口縁部資料からも大当原式期と思われる資料が得られて
いるため、貝塚後期前半から遺跡が形成されている可能性が高くなった。今後はさらに東側を調査
し、それらの遺物包含層の確認を行う必要がある。
両遺跡とも、今回の調査により従来想定されていたより古い形成時期である可能性が高まったこと
が今回の大きな収穫であった。しかし、当初予定の時期の遺物包含層の確認に至らなかったことが課
題として残り、今後さらなる調査が必要である。
98
写 真 図 版
図版 1 安田遺跡航空写真
101
図版 2
安田遺跡
上:遠景 下:近景
102
図版 3
安波貝塚航空写真
103
図版 4 安波貝塚
上:遠景
下:調査終了状況(北より)
104
図版 5 土器
第1類
Ⅰ
105
図版 6
土器
第1類
Ⅰ(8) Ⅱ-1(9~15)
Ⅱ-2(16~21)
106
107
図版 7 土器 第 1 類 Ⅱ-3
図版 8
土器
第1類
Ⅱ-3
108
図版 9 土器
第 1 類 Ⅱ-3(30) Ⅱ-4(31・32) Ⅱ-5(33)
第 2 類 Ⅰ(34~38) Ⅱ-1(39~41)
109
図版 10 土器 第 3 類
Ⅰ(42~46)
Ⅱ(47~51)
110
Ⅲ(52)
図版 11 石器
111
図版 12 貝製品
ヤコウガイ螺蓋製敲打器 1
112
図版 13
貝製品
上:ヤコウガイ螺蓋製敲打器 2
中:二枚貝有孔製品
下:タカラガイ有孔製品
113
図版 14 貝製品
上:小玉
下:巻貝有孔製品
114
図版 15 陶磁器類
115
図版 16
安波貝塚
上:土器
下:石器
116
図版 17 貝類
1
117
図版 18 貝類
2
118
図版 19 貝類
3
119
図版 20 貝類
4
120
図版 21 貝類
5
121
図版 22 貝類
6
122
図版 23 貝類
7
123
図版 24
貝類
8
124