音と出会う街 - 富山大学 芸術文化学部

卒業研究・作品
音と出会う街
本計画はサウンドスケープを利用した街の活性化の提案である。敷地は静岡県浜
図面・模型
松市。今日、都市では郊外化が問題になっているが、浜松市においても周辺開発が行
われ大規模商業型店舗等の影響により中心市街地の空洞化がみられる。また、世界的
有吉 育美
な楽器の産地である浜松市では浜松駅周辺だけでも年間600以上の音楽イベントが
Ariyoshi, Ikumi
造形建築科学コース
催されている。そのイベントの中には市民参加型のイベントも組み込まれており、参
加団体は1日50組にものぼるが、市民が常時楽器を練習したり発表したりできる施
設は10か所程度である。
本計画では音楽好きな市民が楽器を演奏することにより、市民自らが浜松のサウ
ンドスケープをつくり出す場を提案する。日本では空間づくり、都市づくりにおいて
の景観は形あるもの、視覚的なモノが重要視されてきたが、浜松市では「音楽」という
聴覚的なモノによって景観をつくり出せる可能性が高く、創出されたサウンドス
ケープが浜松の新しいアイデンティティの確立につながるのではないか。
P
3
1
2
P
N
P
S=1:1500
計画のダイアグラム
音の方向性はステージの配置によって決定される
郊外
百貨店跡地
1
2
3
バスターミナル
3
♪
♩
♫
遠州鉄道
新浜松駅
♪
大通り
1
♬
浜松駅
2
♫
♫
♪
♪
ステージ
♬
練習室
既存ビル
♪
人のアクティビティの結節点にステージを計画する
♫
♪
全方向へ
レストラン
カフェ
線路を挟んで対面する
大通りと付帯施設のカフェと
ホームへ
レストランへ
081
卒業研究・作品
歴史都市奈良
法隆寺や平城宮跡などの歴史的資源が豊富な奈良であるが、地域住民と歴史的資
ー参道の交わりと人の交わりとー
源の繋がりは希薄で地域住民の郷土愛が低いというデータがある。歴史的資源は観
図面・模型
光利用されており、年間 3000 万人もの人々が訪れているが、観光客のリピーター
宮地 寛之
は少なく減少傾向にある。それは、奈良の歴史的背景を知らずに観光していること、
Miyachi, Hiroyuki
造形建築科学コース
地域住民と観光客との交流が少ないことが原因と考えられる。そこで、東大寺と春日
大社の参道が交わる浅茅ヶ原園地を計画敷地とし、歴史的・文化的都市軸である参
道の交わる場に、奈良の文化、歴史に触れられ、地域住民と観光客の憩いの場、出会い
の場となる文化交流センターを提案する。
まず、それぞれの参道に門を建てることで参道をより顕在化させ、それぞれの門を
円弧上の切妻屋根の回廊で繋ぎ、回廊内部には様々な機能を持ったヴォリュームを
点在させ、ヴォリューム同士の隙間には人や鹿などが憩える場を作りだす。
回廊を通り、門を抜け、奈良の歴史財産へと人々は足を運んでいく。
083
修了研究・作品
毛綱 毅曠 論
−マニエリストの中に見る恣意性の排除−
A Study of MOZUNA Kikoo To Exclude Arbitrariness in Architectural Design from the Viewpoint of Mannerists 根塚 陽己
Nezuka, Haruki
芸術文化学研究科
1章.序
あまりに偏執的な写実の方法を逆用、あるいは古典的作品を否定的媒
マニエリスムは、一つの歴史的潮流としてイタリアの後期ルネサン
ると毛綱は言及している。つまり、毛綱は、反構成を単純な意味で構
体として利用することで、最小の操作が従来の認識を根底から揺さぶ
スかの終焉から、
次のバロックの時代までのおよそ
(1530 ∼ 1620 ∼)
成を否定することではなく、古典的構成を基盤に揺らぎを与えること
期間の美術における傾向というのが一般的な見解である。それまでの
で、新たなる〈構成〉を求めることであると捉えていた。
盛期ルネサンス建築は調和比例を重視していたことに対し、後期ルネ
3-4. 増築建築論 毛綱は、増築建築がマニエリスムの手法に極
サンスつまりマニエリスムは、その調和を意図的に崩し対立させてい
めて類似していることを指摘している。増築は元の媒体に変化を与え
る。またマニエリスムの兆候はモダニズム、ポストモダニズムの中に
創作するように、マニエリスムも過去の培ってきた媒体に変化を与え
も見られることから建築史的「現象」と言える。しかし、ルネサンス
創作する。即ち、新しく建築を作る際にも、過去の伝統的遺産を如何
以降のマニエリスム研究は定義づけが多様で一定の見解がなく、特に
に受け止め、如何に反映させるかは毛綱にとっての増築的建築論の主
現代の視点でから論じたものは稀である。そこで本稿では、ポストモ
題であったと考えられる。
ダニズムの建築家でありマニエリストである毛綱毅曠(1941 ∼
3-5. 形而上的概念 毛綱は土地のコンテクストを即物的な環境
2001)の言 説 1 及び作品 2 を資料とし、マニエリスムの設計論と設計
としてではなく、神様や宗教、風水的な観点から捉えている。古来よ
手法を分析することで、現象としてのマニエリスムを現代的視点で論
り建築は、形而上的な信仰心(神社や教会など)を可視化してきた背
じ、現代の建築の可能性の一端を検証することを目的とする。
2章.歴史上のマニエリスム
景を踏まえて、毛綱は合理化を図った近代建築により忘却されつつあ
る形而上的観点を再び設計へと反映させることを試みたと考えられる。
3-6. 3 章のまとめ マニエリスムにおける法則違反は、媒体に
おける法則の知識を有していないと認識できないことから、マニエリ
本章ではルネサンス期、モダニズム期、ポストモダニズム期のマニ
スムは衒学的であり、歴史の理解を必要としている。同様に、毛綱の
エリスム現象を整理した。
設計論も常に歴史的なことを例に挙げながら、新たな建築の価値を模
3章.言説からみる設計論
にあると考えられる。
本章では、毛綱の言説から設計論を以下の 5 つに分類した。
4章.作品解説からみる設計手法
3-1. アノニミティ 毛綱はアノニミティ(無名性)について、
索していることから、毛綱の考える新しさは常に歴史の積み重ねの先
J.‐K. ユイスマンス著「大伽藍―神秘と崇厳の聖堂讃歌」
(桃源社)
、
本章では毛綱の設計した建築作品の図面、写真から設計に用いた手
安部公房著「他人の顔」
(新潮文庫)
、倉橋由美子著「反悲劇」
(河出書
法(マニエラ)について分析する。
房新社)
、の 3 冊の小説を例に挙げ、建築の問題提起として紹介して
4-1. 入れ子 「入れ子」の手法が最も顕著に表れた毛綱の建築
いる。これらの小説に共通して見られるのは、
本来主体的なストーリー
は「反住器」である。反住器の平面図、断面図、ダイアグラムに着目
展開のみで成立する小説に、第三者による視座を持ち込んでいる点で
すると、スケー ル の異なる8m
(環 境 暗 号 器)
、4m
(人 体 応 答 器)
、
あると考えられることから、毛綱にとってのアノニミティとは、いわ
1.5m(皮膚反応器)の 3 つの立方体を 3 重入れ子にして、各立方体
ば主体性と他者性を同時にもつ両義的なことを指していると言える。
の 3 面を対角線上に切り欠き、開口部としている。用途、構造が異な
3-2. 建築の原型 エジプトの「コム・オンボ神殿」
、
ローマの「ポ
る3つの立方体は、切り欠いた形態が特異である故に、同じデザイン
ポロ広場の双子の建築」
、山形県の「済生館」の 3 つの作品を例に挙
言語として捉えることができる。横断的なスケールの変化は、その建
げて、毛綱はヴァナキュラーな建築、手法や技巧が洗練された建築と
築に特異点をつくらず、焦点が定まり難いことから、
「反住器」は、内
いう二つの相反する価値を有する建築を建築の原型として捉えてい
部から外部へ、あるいは外部から内部へと常に凝縮と拡張を繰り返し
る。毛綱はその相反する条件を満たす数少ない建築に新時代の建築の
ているような空間であると言える(図 1)
。
可能性を見出していたと考えられる。
4-2. 双子 双子の手法が現れたものは計画案の「宇宙庵Ⅰ」で
3-3. 反構成 毛綱は、
「ルドルフ二世の肖像」ジュゼッペ・ア
ある。
「宇宙庵Ⅰ」の平面図と模型写真に着目すると、分棟形式の建築
ルチンボルド、
「出 い」
M.
C.エッシャー、サルバドール・ダリ「モナ・
であるが、通常の分棟形式と決定的に異なっており、立方体に 1/4 球
リザ」
、
の3つの絵画を例に挙げ、
反構成を説明している。それら絵画は、
のドームがのった特異な形態を向かい合わせにしてブリッジで繋いで
160
修了研究・作品
図 1 .反住器(環境暗号器)/ 同(人体応答器)/ 同(皮膚反応器)/ 図 2 .宇宙庵Ⅰ 模型写真 / 同 解剖図 / 図 3 :鏡の間 内観写真 / 同 平面おこし図
図 4 .釧路キャッスルホテル 外観 / ふくしま医院 外観 / 図 5 .日吉台教会 外観写真 / 同 解剖図 / 図 6 .釧路市立博物館 外観写真 / 同 配置図
いる。また向かいあった形態は同じ形態でありながらスケールに大小
明治時代の折衷主義の病院建築まで歴史の中にある多種多様な建築を
がある。どちらかの建物内部に身を置く時はもう一方の建物の外部に
取り上げ、解説されていること、及び設計手法にパロディを用いるこ
身を置くことになる。双子という手法は内部と外部の両義性を獲得し
とから、ソフィストケートされた建築に限らず、
ヴァナキュラーな建築
た建築といえる(図 2)
。
の価値を等価に捉え、
自身のつくる建築へと還元していると考えられる。
4-3. 鏡像性 「鏡の間」の内観写真、平面起こし図を見ると、
5-2. 歴史的手法の引用 毛綱の建築は、言説より取り上げる建
ゲストハウスのエントランスホールのおおよそ半分が大階段であり、
築と手法を比較して見ると、断片的な形態の集積だけではなく、
「構
階段と対面するように大きな鏡の壁面があることがわかる。大階段は
成する手法」についても過去の歴史的建築物を媒体として引用してい
壁面に映し出され、視覚的な広がりを獲得しながら階段室によって挟
ることがわかる。
まれたような空間となっている。鏡の壁面の中心に大きな亀裂のよう
5-3. 斜投影とパースペクティブ 毛綱の建築を取り上げた誌面
な開口部が設けられており、映し出された空間はあくまで虚像である
には、パースペクティブが掲載されていない。建築や空間を立体的に
ことを物語っていることがわかる(図 3)
。
表現をする際には、視点と焦点が固定されたパースペクティブを徹底
4-4. 隠れ家 「釧路キャッスルホテル」や「ふくしま医院」の
して排除し、その代用として斜投影を用いている。このことより、毛
外観写真に着目すると、それらはプログラムが異なりながらも船の形
綱は立体図法においても、主観性を排除していたと考えられる。
状をストレートなアナロジーで表現した建築と言える。一般的にモダ
5-4. 非正面性 毛綱の建築を取り上げた誌面には、インフラを
つことができるよう
含む配置図が掲載されていない。近世以降の建築は接道などインフラ
になり、大きなガラス面により建築における透明度を高め、内部と外
ニズム建築は、技術革新により自由に開口部を
との関係をもとに正面が決定される。そうした敷地とその周辺を即物
部の視覚的連続性を獲得してきた。一方、毛綱は、そうした内外の直
的な環境として捉えるコンテクスチュアリズムに対し、毛綱の建築は、
接的な連続性を否定し、内部と外部の関係を裏切るため、別のイメー
社会的基盤からの正面性を否定し、自然あるいは形而上的側面から正
ジとして外観を覆い、建築そのものを偽装することから、皮膜自体が
面性を作っていると考えられる。
より自由であることを目指したと考えられる(図 4)
。
5-5. 未完結性 入れ子、鏡像性、双子、などの手法を用いて、
4-5. パロディ 「日吉台教会」の外観写真や解剖図に着目する
毛綱がこれまでに設計した建築は、それぞれが未完結な構成を有して
と、過去の建築を断片的に引用し、それらを集積することで建築を構
いることがわかる。毛綱の建築は断片的なヴォリュームの集積によっ
成するといったパロディの手法が見て取れる。毛綱は、断片はあらゆ
て全体を構成することで、混沌とした形状を表に表出させ、未完結な
る建築のコピーだが、断片を集積、統合することでオリジナリティを
全体性の獲得を目指していたと言える。
創出させたと言える(図 5)
。
4-6. 反象徴性 「釧路市立博物館」に着目すると、中心にある
形態は象徴的でありながらも、アプローチや軸をずらすことによって
結
その象徴性を弱めている(図 6)
。近代以前の建築は概して様々な空間
一般的に、マニエリストは、形態操作によって表現的な建築を追求
的ヴォキャブラリーを駆使することで空間の象徴性を高めてきたが、
すると認識されている。それに対し、毛綱は、建築を歴史の積み重ね
毛綱は象徴的形態を用いながらも、その象徴性を無化することを試み
として位置づけていたことから、表現的でありながら恣意性を消すと
ていたと考えられる。
いう両義性を備える建築を探究したと考えられる。毛綱にとって、マ
4-7. 4 章のまとめ 毛綱の設計手法の共通項として「虚像性」
ニエリスムとは、歴史を肯定的に等価に捉え、過去の建築を引用し、
というキーワードが挙げられる。毛綱の手法は、確実な実体として現
かつ媒体とすることで恣意性を限りなく排除する方法であった。この
れてくる建築そのものの存在を、曖昧な状態へと導き、実体性を虚像
ような歴史の重層性を等価な視点で捉えるという毛綱の開示した視座
化することで、主体性の排除を試みたと考えられる。
は、我々が現代の建築を生み出す際の有効な価値基準として再評価で
5章.
作品と言説から読み解く思想
本章ではこれまでの3,4章で記述した毛綱の言説及び作品から毛
綱の背景にある思想を読み解き、記述する。
5-1. 価値の等価 毛綱の言説には、紀元前エジプトの神殿から
きるのではないだろうか。
[分析資料対象]
1 言説は、
主として毛綱毅曠の著作である
『都市の遺伝子』青土社
(1987年)
、
「建
築 #144 1972年9月号 」中外出版(1972年)
などから抽出する。
2 作品は 、
毛綱毅曠の作品集『記憶の建築』
に掲載されている建築作品14作品
中、
7作品と初期作品と毛綱の故郷、
釧路にある作品を主として取り扱う。
161
卒業研究・作品
小学校区建築
Design of a School District
かつて日本では子供と街とが深く関わり合い、人情の厚い地域社会が築かれてい
ー子供と街の関わり合いー
様々な問題が生じている。高岡市でも駅前商店街はシャッターが目立つようになり街
図面・模型
の関係性はより希薄なものとなっている。
桑原 海
Kuwahara Kai
造形建築科学コース
た。しかし現在では地域社会のコミュニティは希薄化し、いじめや老人の孤独死など
そこで高岡市の平米小学校の校区を敷地として選定し、既存の敷地に小学生の通
学路を子供と街、住人がより密に関わり合うように設計した。元来街には学ぶ、遊ぶ
といった行為が潜在しており、その行為を建築化することを考えた。遊ぶための公
園、かつて学びの場であった寺、様々な体験教室など建築的ヒントとなる子供や住人
の行為の場所を既存の敷地から洗い出し、それらをつないでいく。
この通学路で様々な行為を誘発させ、人と人、場と場の関係性がより密になってい
く。そうして子供を通して以前のコミュニティを再生させることを提案する。
082
卒業研究・作品
祭×建築
敷地となる富山県高岡市山町筋は、土蔵造りの町並みが広がる重要伝統的建造物
ー伝建地区における現代建築の
ケーススタディー
群保存地区であり、国の重要有形・無形民俗文化財に指定されている高岡御車山祭
図面・模型
民たちは祭と密接に関わり合いながら生活を行っている。
乙川 佳奈子
しかし、土蔵造りの町家のファサードは表の通りに対して閉鎖的であるため、山町筋
Otogawa Kanako
造形建築科学コース
の舞台である。また、その他にも1年を通して様々な祭やイベントが催されており、住
の中で行われている生活文化は、通りから感じ取ることができないという現状がある。
本計画では、祭による町の変化に柔軟に対応していくコミュニティ施設を設計する
ことで、人々の生活文化を顕在化し、世代を超えた地域の交流や文化継承を行う場を
つくることを提案する。 084
修了研究・作品
近世高岡の痕跡を
顕在化するための建築的手法
図面・模型
蒲 由奈
高岡の市街地には近世以来の経路を保持している道路が多くあり、主要道とされた
旧北陸街道に沿うまちのいくつかは当時の繁栄を物語っている。また、
千保川や小矢部
川を利用した舟運が高岡の発展に大きく貢献していた。しかし、道路や河川などの線的
インフラはモータリゼーション化によって様相が変化し、さらに、機能性や効率性を優
Kaba Yuna
先させた画一的な近代的都市計画手法により近世以前の都市構造も失われつつある。
芸術文化学専攻
本計画は、地域の伝統文化や風土を重んじてきた近世高岡の「痕跡」を現代的にアレ
ンジしながら顕在化することで、高岡の固有性を再生することを目的としている。対象と
したのは、高岡銅器発祥の地とされる“金屋町(現金屋本町)の鋳物工場跡地”、近世以
来の道路と街区が、駅から拡張された県道により分断されて発生した“川原町・川原本
町の三角形敷地”、
千保川と小矢部川の合流地点に位置し近世には物資の揚陸地となっ
たものの、現在では国道8号により市街地から分断されている“木町の路地”である。こ
れらの地域において、
それぞれの特徴を強化する建築的手法を提案する。
168
卒業研究・作品
099
常に、人々の傍らに重く横たわっている様々な問題。高度な情報化が進む現代社会
ー現代社会における99の
事象に対する建築的提言ー
において、それら問題群はより身近に共有できるものとして大きな存在感を示すよう
模型・小本
類を抽出し、それらを解決すために建築的提言を行うものとする。
足立 拓巳
それらの提言をタイトル・解説・ダイアグラム・スケッチを備えた小本にし、コンセ
Adachi Takumi
造形建築科学コース
076
になった。そこで、その新たな局面に立つ現代の人々を取り巻く様々な問題から99種
プトモデルを付け加え表現する。さらに、それらをいくつかの指標を使って類型化し
考察することで、建築的可能性を探る。
卒業研究・作品
児童養護施設計画
in高岡駅前
今日、児童養護施設の社会的認知度は低く、施設に対する偏見を持った人が多く
ー駅前ビルのリノベーションー
なく、関わりがないため知らない、または関心がないことが挙げられます。人々にとっ
模型・図面
1100×900mm
て施設が身近で当たり前の存在となれば、偏見もなくなると考えます。
竹下 みゆき
れる駅前ビル・駅地下空間を敷地として選定し、駅利用者の動線と施設のこども達の
造形建築科学コース
動線が積極的に関係づくようにします。一般の人々と施設の子供たちの動線が自然に
Takeshita Miyuki
いるのが現状です。この理由として、一般の人々と児童養護施設との接点が極端に少
そこで本計画では、JR高岡駅の改築計画から外れ、今後ますますの衰退が予想さ
交わり、こども達の遊び場や人々のたまり場として利用できるようにリノベーションす
ることで、人通りが少なくなった高岡駅前に活気を取り戻すきっかけとなり、この施
設を通し人々の中の児童養護施設に対する概念が身近で親しみやすいものになるよ
うにと考えます。
080
卒業研究・作品
仮設住宅×写真
3.
11東日本大震災で被災した写真を洗浄し、持ち主に返すという写真洗浄ボラン
ティアが発足し、私も参加した。この活動は全国に広がったが、被災地では、展示・保
図面・模型
管・返却という場所が確保されないために活動に支障をきたした。
根本 絵梨子
被災地では仮設住宅の問題として、そこに暮らす人々が、均一な建て方による無機
Nemoto Eriko
造形建築科学コース
質な空間、コミュニティーの崩壊など疎外感に悩まされている。また、人々の退去後仮
設住宅に用いられていたプレハブやコンテナの使い道も決定していない。
本計画は上記の二つの問題を解決することである。敷地は現在仮設住宅のある宮
城県気仙沼公園を敷地とした。コンテナの仮設住宅に写真洗浄ボランティア活動場
所を設けることにより、活動場所の確保だけでなく、仮設住宅内でのコミュニティ形
成を促し、人の交流や生活を豊かにする。時間の経過とともに人は減っていくが、使
用されなくなった仮設住宅の利用方法として、人がいなくなった場所は洗浄した写真
を展示する場所になり、メモリアルな場所へと変化していく。
②
082
③
卒業研究・作品
移ろう風景
古来より我々の経済発展の背景には土地開発が付きものであった。しかし、現在わ
ースキー場跡地における再生計画ー
たしたちはその後もたらされた問題と真摯に向き合えているのだろうか。
図面・模型
敷地は立山町芦峅寺。ここに、人間の経済的理由により切り開かれ、そして閉鎖へ
加藤 智子
と追いやられたスキー場がある。豊かな自然環境の中にぽっかりと空いた空白をこの
Kato Tomoko
造形建築科学コース
場所のアイデンティティと捉え、自然と人間の適切な距離感を再認識するための自然
科学館を計画する。
建築形態は敷地形状に沿い、2m間隔の植林グリッドを平面計画に、樹高を断面計
画に用いた。建築の幅は樹種別の樹間距離を反映し、幅の広いところには人が集ま
り、狭いところは通路となる。人々は、立山青少年自然の家と立山博物館をつなぐ散
歩道にもなるこの空間を歩く。単に館内に何かを展示するだけでなく、時間の経過に
よってその森が自然に還り、対象敷地の空間の質が変化していく在り様を感じられる
ようになっている。
083
卒業研究・作品
防波堤、防潮堤と暮らす
2011年3月11日。日本全土を未曾有の大震災が襲った。特に津波による被害は甚大
ー震災、建築、土木、町、記憶ー
で、町が全て流された場所も少なくない。
図面・模型
計画敷地は宮城県牡鹿郡女川町。漁業産業が支える小さな港町である。海から入
尾田 かほる
り込んだ独特な地形が津波のエネルギーを増幅させ、町は壊滅状態となった。ここで
Oda Kahoru
造形建築科学コース
も高台移転復興案が検討されているが、山に囲まれたこの土地では全ての宅地を高
台に移すことは困難である。
本計画では、ここに新たな防波堤、防潮堤の整備による復興案を提案する。ただ
し、それらは従来のものとは違い、土木としての役割の他に建築、町としての機能を
併せ持つ。元の町の姿を写し取ることで、震災以前の町の記憶も取り戻す。
土木と建築が一体となり町を守る。土木と建築、人が寄り添いながら暮らすこと
で、防波堤、防潮堤をヒューマンスケールに落とし込む。
087
卒業研究・作品
人を引き込む店舗デザイン
店舗に人を引き込む役割はファサードに掲げる看板などの平面要素が担ってき
ー創成川公園周辺スポットにつながる
視覚体験空間ー
た。
図面・模型
を誘引し街全体の価値を高めることを目的とする。
鈴木 雅代
敷地は、今春完成予定であり札幌中心部を東西に分ける創成川公園とし、周辺の高
Suzuki Masayo
造形建築科学コース
本計画では、店舗を視覚的に操作し、周辺の魅力的な店舗を関連づけることで、人
層ビルに対してヒューマンスケールの店舗や休憩所を公園全体に分散して配置する。
さらに視覚操作の手法としては遠近法や錯視を利用し、建築ファサードよりも奥
(建築内部やそこから見える周辺スポット)に対する関心を引き起こさせ、見る角度
や動的視野の変化によって人を自然に誘導できる店となるように計画した。
071
卒業研究・作品
建築の終末
ー 建物は、物体として残しておかなければ、そのうち忘れ去られてしまう ー ー漁業用網倉庫の自然死と
周辺一帯のランドスケープー
そこには漁業を生業としていた人たちの記憶がつまっていた
図面・模型
その街に住んでいた人たちにも網倉庫は記憶として残る大切な場であった
鳴海 雄介
そんな街のアイデンティティをもつ場を消してしまうのは寂しいことではないだろうか
Narumi Yusuke
造形建築科学コース
新湊漁港に存在する漁業用網倉庫も約50年間使われた後に取り壊されてしまった
網倉庫が自然に朽ち果てる姿を見守ってやれないだろうか
網倉庫はボロボロになりながらも、その場所に立ち続ける
色だって元がわからないくらい漂白されて、それでも確かなフォルムだけは残している
木材や瓦が落ちてくる頃には仮設通路を設け、壊れゆく内側を見渡せるようにする
建物が自然死したのちには、仮設通路は取り除かれ、
周辺は落ちた材料や通路を用いて整備され、住民の憩いの場として機能する
072
卒業研究・作品
歩 交 車
移動手段を車に依存する現在の地方都市においては、車の利用者をメインターゲッ
ー歩行者と車が共存する駅空間の提案ー
トとしない駅舎及びその周辺は、公共交通の利用者の減少にともない、急速に求心力
図面・模型
竹内 友子
Takeuchi Tomoco
造形建築科学コース
を失ってしまった。
そこで本計画では、歩行者とは分離した二重らせんの斜路から車を引き込み、車と
歩行者の共存を可能とする駅舎コンプレックスを提案する。具体的には、人の空間と
車の空間の境界を段差・列柱・大開口を有する壁・腰壁などにより形成し、歩車を完
全に分離しながらも双方の空間に連続性を持たせた。さらに、二重らせんの斜路に連
動して、吹き抜け空間をスパイラル状に設け、上下の階を開放的かつダイナミックに関
係づけることで、車と人の空間が立体的に交錯し、施設の至るところで人と車が密接
に関われるように計画した。
073
卒業研究・作品
p
ー公私の空間の境界を曖昧にし、
高岡駅前商店街を再生するー
図面・模型
瀬戸 真理子
Seto Mariko
造形建築科学コース
現在の地方都市の商店街は、大型ショッピングセンターの進出や高齢化、後継者不
足などの問題により以前の賑わいを失い、シャッター通りと化している。
本計画ではこうした現状を踏まえ、商店と住居が混在する高岡駅前商店街におい
て、空き店舗や空地等を利用し、利用者を限定しない公的な空間と、利用者を限定す
る私的な空間の境界を曖昧に構成し、商店街を再構築する。
具体的には外部空間や外部通路を店舗や住居へ引き込み、店舗や住居を街路や路
地、広場に開放することで、公と私の曖昧な外部空間と段階的に連鎖させ、街区全体
にネットワークを形成する。その結果、これまでの線的な商店街は面的に広がり、か
つ、公私の空間を混在させることによって、これまでの領域を超えたアクティビティ
が誘発され、年齢や、職業、目的に関係ない、新たな出会いを生みだす。
ここでの提案は、疲弊する他の地方都市の商店街を活性化するうえでも、有効な改
善策の一つとして考えられる。
→
074
卒業研究・作品
Unify Architecture with Bank
水の町として名高い岐阜県郡上市八幡町には、人々が普段から湧水や河川の水を利
ー生活景修景ー
用する固有の日常風景「生活景」がある。しかし、生活様式の変容に伴って、人々の日
図面・模型
蒲 由奈
Kaba Yuna
造形建築科学コース
常的な河川利用と水辺でのコミュニケーションの機会が減少しつつある。本計画で
は、建築(住宅)と土木(護岸)をスケールの操作によって一体的にデザインし、二者の
関係性を再編した。敷地固有の住宅がリニアに並んだ景観と水辺の生活景の継承
は、地域のアイデンティティの保持に繋がる。また、建築と土木の境界が曖昧になる
ことで住民の生活は外部へと拡がり、春秋には生活の一部を屋外に持ち出したり、夏
には河川からの冷気を住宅に取り込んだりと、季節の変化に対応した住まい方が可
能である。
076
卒業研究・作品
でこぼこの町並み
富山県高岡市福岡町の旧北陸街道沿いは、以前は古い町屋が軒を連ねる端正な町
ー高岡市福岡町旧北陸街道の特性を
活かした中心市街地活性化計画ー
並みだったが、現在は道路拡張計画や駐車場を設けるために町屋が街道から後退し、
図面・模型
本計画では、高齢化によって衰退してしまった中心市街地において凹凸の町並みと
根塚 陽己
Nezuka Haruki
造形建築科学コース
その結果、町屋の妻側が見える凹凸の町並みとなってしまった。
町屋特有の細長い形状を活かしながら、空き地や駐車場に、ものづくりを通して様々
な世代の人々が互いに教わることのできる生涯学習施設を計画する。そして、町の至
る所で住人による創作活動をギャラリーのように見ることができることで、様々な
シーンが通りに溢れだし、町全体が活性化するであろう。
077
卒業研究・作品
コートハウスの連鎖によって生じた
外部空間の連続性を有する住宅地
模型・図面
橋本 千夏
庭を大きく設け庭に対して開放的にする一方、その他の面に対して閉鎖的にすると
いった住宅配置が形骸化している。そのような住宅配置が、画一的な敷地に展開され
た現在の住宅地では、庭が個々の敷地で完結し、敷地に表と裏が生じてしまう。
そこで本計画では画一的に区画された敷地に、住宅のプライバシーを確保しつつも
Hashimoto Chinatsu
視線の抜けや外部空間の繋がりを配慮してコートハウスを計画することで、より豊か
造形建築科学コース
な住環境を作り出すことを目的とする。
具体的には、敷地の接道面数と中庭の関係を検証し、配置計画では外部空間を住
宅の抜けと捉え立体的に空地を配置する。さらに町を歩く人や住人から様々な方向か
ら緑が見え、かつ自分の敷地の外部空間が隣地の敷地の外部空間と視覚的に繋がる
ように新たな建築協定を作成し、その協定に基づき住宅14棟の計画をした。
GL
078
卒業研究・作品
参加型産科
敷地は、高岡市伏木古国府。勝興寺にほど近い舌状台地とその谷間である。既存の
ー包括的こども施設の提案ー
幼稚園と公民館に産院を加えた3つのプログラムから成る複合こども支援施設を、台
図面・周辺模型 S=1:500・詳細模型 S=1:100
地上にある伏木小学校と勝興寺を結ぶように計画した。
三上 恵理華
Mikami Erika
造形建築科学コース
それぞれのプログラムに合わせた3つのマッスは、この施設を利用する人が自由に行
き来できるよう、内部のスロープを介して一体となり、台地の上と下をつないでいる。
各マッスはプログラムに応じて、互いに手を差し伸べ合うように接続し、かつ、部屋を
各々に完結させるのではなく、パスのような空間に、最低限の分節のみを設けること
により、互いのアクティビティが交錯するようにした。これにより、園児が産科にいた
り、産科に訪れた妊婦が子育ての先輩である園児の親と話すなどといった場が生ま
れ、3つのプログラムが垣根を飛び越えて融合する新たな子育て支援の場が形成され
る。
079
卒業研究・作品
密集市街地における
残余空間の立体的活用
図面・模型
梁島 綾香
Yanashima Ayaka
造形建築科学コース
日本の密集市街地では、法令の範囲内で各々の建物が異なる時期、条件に基づい
て建設された結果、街区には意図しない隙間や空隙が生まれ、活用されぬままに取り
残されている。本研究ではそういった残余空間を活用し、建物の関係性や居住性を向
上する事で、密集しているがゆえに各々に閉じながら生活している現状を改善するこ
とを目的とする。
建物と建物の間、屋上、閉じた壁面、空き家になっている敷地、オフィスビルの空
きフロアなどを敷地とみなし、街区の新たな動線や、街区の庭として、街区全体で共
有する一体的な外部空間として活用する。それにより、建物同士の関係をつくりだ
し、密集市街地における新たな住まい方を提案する。
模型写真(接写)
081
卒業研究・作品
ペラ・テラ
かつて冠婚葬祭をはじめ地域交流の中心にあった寺は、近年の宗教離れや地域住
Flat Buddhist Temple 民の結びつきの希薄化などによって、利用されることが少なくなっている。
ー地域の中での新しい寺と境内のかたちー
そこで、私は以下の 3 つの工程によって寺と周辺の公共施設を再構築し、地域
図面・模型
生駒 岳大
の人々と寺が新たな関係を結べるよう設計した。
1 つ目は、寺の敷地の残余空間を利用して、寺と公共施設をほぼ平屋で再構築す
Ikoma Takahiro
ることで、屋上へのアクセスを容易にすると共に周辺の住環境を向上させる。2 つ
造形建築科学コース
目は、各施設を住宅と同スケールの大小のボリュームに分割し、敷地内に分散させ
ることで、周辺街路を引きこんだようなネットワークを敷地内に展開し、住宅地と
の一体感をもたせる。そして、3 つ目は、再分配した境内の緑地と、高低差のある
各ボリュームの屋上庭園を一体的に利用することで、敷地全体が住宅地共有の庭と
なるようにする。
鳥瞰図
断面ダイアグラム
平面ゾーニングイメージ
071
卒業研究・作品
まちなかまちごとコティ
図面・模型
石黒 綾
Ishiguro Aya
造形建築科学コース
現在高齢者の為に設けられたあらゆる施設は、閉鎖的で周囲と関わりを持たず、
高齢者は自らが社会の一員であるという意識までも剥奪されている。そこで、まち
なかの住宅地に住戸や交流のためのスペースを点在させ、高齢者が必要な手助けを
受けながら、まちをいえとして取り込む生活が送れるようにする。
敷地となる住宅地には、美容院や医院・銭湯があり、商店や図書館からもほど
近く、その他の機能を補完することで、まち自体が高齢者の生活空間となりうる高
岡市白金町とする。コティとはフィンランド語で「いえ」を意味する。この「いえ」
は高齢者の豊かでのびやかな生活つくりだす。
072
卒業研究・作品
福岡駅前区画整理事業に伴う
再開発
富山県高岡市福岡町では、旧街道沿いに町家が軒を連ね路地や裏庭の空間が多く
ー家と街のつなぎ目ー
るため予定されている区画整理事業では、町家的なスケールの街区を画一的に作り
図面・模型
伊藤 あかね
残る一方で、国道を越えた駅前地域は閑散としており、活気がない。現状を改善す
替えられ、駅前と旧街道沿いは分断されてしまう。
この計画に対し、既存の路地や裏庭といったヒューマンスケールな要素を活かし
Ito Akane
ながら以下の四つを主軸としたまちづくり・再開発の提案を行った。①駅前メイン
造形建築科学コース
パーク:街に対し大きなパブリックスペースを与える②ポケットパーク:庭と路地
のネットワークの先に配置し、生活空間を拡大する③中央通り:駅前地域と旧街道
地域を、公園化し歩行者優先の道にする③サンクンガーデン:国道の下を通り、メ
インパークにアクセスする。この計画により、小さな緑でつくられる庭と路地のネッ
トワークが広がり、住民の生活空間は街中に連続していく。そして活気を失ってい
た街へ人が再び流れ出し、家と街を行き来しながら人々が生活する風景が生まれる。
073
卒業研究・作品
川の起点の図書館
かつて富山市の中心部を蛇行しながら流れていた神通川は、およそ 100 年前、
ー川と共にある街並みー
工事によりその流れを変え、松川を残して残りは廃川地と呼ばれる大きな空き地と
図面・模型 猪倉 雄飛
なった。当時その空き地は、子供の遊び場や屋外映画場といった人々の憩いの場と
なっていた。しかし、近代化にともない次第にその場には中高層ビルが建ち始め、
Inokura Yuhi
川沿いは利用されなくなった。
造形建築科学コース
そこで、ここでは取り壊し予定の既存の図書館を、松川沿いの五つの敷地に分散
して配置し、人と川との接点とする。そして、このような人の居場所を、街を囲む
ように流れている松川に段階的に設けることで、再び川は街と密接に関わっていく。
また、離れた敷地同士を船でつなぐことで、街の新たな動線とし、路面電車ととも
に人の流れを活性化させていく。
本を求めて、あるいは休息を求めて、川沿いには少しずつ人々が増え始め、次第
にそれは川を介して街中に広がっていく。 074
卒業研究・作品
地方都市の中心市街地における
集合住宅の提案 図面・模型
加藤 祐衣
現在、地方においても郊外に暮らす高齢者の中心市街地への住み替えがみられる。
家族形態の変化や地域社会のつながりの希薄化によって近隣に頼ることのできる人
がいないこと、車なしでは生活を送ることが困難な生活環境であることなどから利
便性の高い中心市街地への住み替えが起きている。
Kato Yui
しかしながら中心市街地では集合住宅は多くの人を入居させることに重点が置か
造形建築科学コース
れ、高密で閉鎖的な生活環境が当たり前のものとなっている。そのため従来の集合
住宅では他者とのつながりが希薄でコミュニティが形成されにくく、住み替えをす
る孤立しがちな高齢者の欲求を満たすことができない。
そこでプライベートな空間とパブリックな空間の間に〈ニワ〉や〈ドマ〉といっ
た中間領域を組み込み、住人の空間と共用部分を緩やかに分節する。
住人の生活が両者の性格を持つ中間領域へとにじみだし、その場を介して住人同
士の交流を促す集合住宅とする。
5m 10m 15m 20m
076
卒業研究・作品
駅前の地層
図面・模型
酒井 克弥
富山県高岡市の駅前では、
1961年に建てられた駅前ショッピングセンタービル
が建設当初とは姿を変えながらも残っている。また、その駅前ビルは広場の下で、
地下街を介して駅舎とつながっている。現在、それらの施設は空き店舗が目立つ状
Sakai Katsuya
況であるが、2015 年の完成に向けて新しい駅舎の建設がはじまり、駅前の再開発
造形建築科学コース
が進められようとしている。しかし、市の都市計画では地下街に対する提案はなく、
現在の駅舎よりも古い駅前ビルが取り壊されるのも時間の問題である。それらを踏
まえて、既存の要素に対して、
①取り除く②組み替える③付加する④緑化するとい
う 4 つの操作を施し、今まで隠れていた空間を開放し、レベル差のあるスラブを連
続的に繋ぐことで、駅前広場に再活性化された駅前施設を内包する立体的なランド
スケープを提案する。
077
卒業研究・作品
Scape Building
現在の都市の多くは中高層の建物により構成されており、そうした建物の低層部
ー新たな都市風景となるビルの提案ー
では人々のアクティビティにより賑わいや活気がみられるのに対し、その上層部で
図面・模型
島崎 貴人
は効率的にフロアを積層させ、外壁は人工的で無機質なガラスやコンクリートで画
一的に覆われているため、都市の風景は私たちに閉鎖的で冷たい印象を与えている
Shimasaki Takato
と考えられる。
造形建築科学コース
本計画では、建築にパブリックスペースとなるヴォイドを、周辺街路の軸線を取
り入れながら立体的に組み込むことで、建物の上層部まで人を導き、人々のアクティ
ビティ、賑わい、活気のようなものを高層部に表出させ、都市の新たな風景となる
ことを提案する。
078
卒業研究・作品
境界空間
郊外住宅地では核家族を対象として、効率的な宅地化と車移動の生活を基盤とす
ー郊外に暮らすー
る街区計画が進められてきたため、塀によって閉ざされた住宅が均一に並ぶ風景が
図面・模型
藤本 章子
見られる。しかし、少子高齢化が進み、家族の単位や関係性は変化しており、この
ような住宅地の在り方はそぐわなくなっている。
Fujimoto Akiko
この計画では、既存の住宅は残したまま、住人が自由に行き来できる路地的な空
造形建築科学コース
間を隣地境界に設けることによって、従来の街区をヒューマンスケールを有する路
地空間のネットワークへと変化させる。
そうした路地空間を隣接する住宅の配置や空間構成、庭の有無により性格づける
ことで、住宅と住宅、住宅と人間や空地といった隣接するもの同士の新たな関係を
つくりだす。
079
卒業研究・作品
影の様相
図面・模型
松本 玲子
影とは物体や人などが、光の進行を遮る結果、壁や地面にできる暗い領域である。
季節や天候や周辺の環境要素によって刻々と変化する光と影によって、空間は
様々に特徴づけられる。こうした影がもたらす空間的効用を顕在化するため、様々
Matsumoto Reiko
な建築物のシーンにおいて見られる特徴的な影を有する空間を切り取り、一つの建
造形建築科学コース
築物として再構成することで、時間の経過により多様に変化する空間の様相を体験
できる美術館を計画した。場所は水面の反射、風の揺らめき等を強く感じることの
出来る水に囲まれた島根県、松江市にある中州区域を敷地とした。
080