Clinical Case Study A 9-Month-Old Boy with

Clinical Case Study
A 9-Month-Old Boy with Seizures and Discrepant Urine Tryptophan
Concentrations
Adam S. Ptolemy1,2,*, Yijun Li3, Tamara Sanderson1, Omar Khwaja4, Gerard T. Berry3 and Mark Kellogg1
1
Department of Laboratory Medicine;
Manton Center for Orphan Disease Research, Division of Genetics, Department of Pediatrics; and
4
Department of Neurology, Children's Hospital Boston, Harvard Medical School, Boston, MA; and
2
current affiliation: Department of Laboratory Science, Covance Central Laboratory Services Inc., Indianapolis, IN.
3
*
Address correspondence to this author at: Department of Laboratory Science, Covance Central Laboratory Services
Inc., 8211 SciCor Drive, Indianapolis, IN 46214. Fax317-372-7990; e-mail: [email protected].
臨床症例研究
てんかん発作を起こした 9 ヶ月の男児と、矛盾した尿中トリプトファン濃
度
症例
てんかん発作歴のある 9 ヶ月の男児が、神経学的、生化学的ならびに遺伝学検査を受けた。脳の MRI 検査結
果はリー病の診断と一致し、これは亜急性壊死脳脊髄障害としても知られており、中枢神経系に影響するまれ
な神経代謝性疾患である。患者はレベチラセタム、ラモトリジン、フェノバルビタール、ビガバトリン、トピ
ラメートを含む、複数の抗てんかん薬を処方されている。遊離アミノ酸の代謝スクリーニング検査を小児の尿
で行い、自動化アミノ酸分析器(Hitachi L-8800)によって濃度定量も行われた。この市販の分析システムでは、
UV 検出前に、イオン交換液体クロマトグラフィーにポストカラムニンヒドリン誘導体化を加えたものである。
この分析で、トリプトファン溶出と同じカラム内滞留時間の、非常に大きいピークが見られた(図 1)。算出
尿中排出濃度は 125 204µmol/g クレアチニンであった。更に、アミノ酪酸(GABA)、5β-アラニン、β-アミノ
イソ酪酸、そしてグルタミンの尿中濃度も大幅に上昇していた。その他のアミノ酸濃度はそれぞれの標準濃度
域内であった。確認の為、尿サンプルの一部を液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC-MS/MS)に、
外部の参考検査室へ提出した。この分析で、71µmol/g クレアチニンのトリプトファン排出が定量された(標
準域 15-302µmol/g クレアチニン)。
1
図 1. Hitachi L-8800 自動化アミノ酸分析器による患者の尿中アミノ酸濃度のクロマトグラム。上昇した溶出物
は 77.22 分で溶出されたトリプトファンに該当した。
考察
2 つの分析方法間でのトリプトファン濃度の不一致と、GABA、β-アラニン、β-アミノイソ酪酸、グルタミン
の尿中排泄増加は、要因調査のきっかけとなった。患者は新生児期発症のてんかん発作、低血圧症、発育遅延、
MRI で確認されたリー病を持つが、高トリプトファン尿症はこの疾患の症状ではない。更にリー病を持つ患者
の予後は、一般に悪いとされている。この疾患は、特に酸化的リン酸化反応と、ピルビン酸酸化反応に代表さ
れる遺伝性のエネルギー代謝疾患郡の臨床的、放射線学的症状を呈する。リー病の根本的な病因は、ATP 産生、
又はエネルギー代謝不全である。リー症候群は、しばしば感染症に誘引される進行性神経退化と共に、MRI 所
見(両側性基底神経節の特に被殻、脳幹核、中脳水道周囲灰白質、中心白質での T2 延長)によって診断され
る。プロトン磁気共鳴分光法は、最も影響を受けているエリアで乳酸の上昇を示す可能性がある。この性向は
我々の研究背景を証明してくれるものである。なぜならばニンヒドリンベースの Hitachi L-8800 分析器によっ
て得られた尿中アミノ酸排泄の上昇は、この疾患には一般的でないからである。
疑問点
1.
尿中トリプトファンの大幅な増加を招く、2 つの病理学的疾患とは何か?
2
2.
尿中アミノ酸の検出に、イオン交換液体クロマトグラフィー分離とポストカラムニンヒドリン誘導体
化によって定量した場合、何がトリプトファン濃度の虚偽の上昇を招く可能性があるか?
3.
それぞれの化学構造を元にして、処方されている抗てんかん薬の中でニヒドリンに反応し、トリプト
ファンの測定を阻害するものはあるか?
非生理学的高トリプトファン尿症
本来の高トリプトファン尿症は、トリプトファンからキヌレニンへの変換不全、又は腎アミノ酸輸送での異常
により生じる。ハートナップ病や Tada 病の患者は、高トリプトファン尿症を示す可能性があるが、その程度
は患者の尿排泄増加が非生理学的メカニズムによるものであることを示唆する。Hitachi L-8800 アミノ酸分析シ
ステム、そして一般的に液体クロマトグラフィーと分光光度法をベースとしたシステムの限界は、被検体の特
定がクロマトグラフィーの展開における滞留時間を元にしていることによる。よって目的の分析質が阻害物質
と共溶出することで、定量精度が悪化する可能性がある。我々のシステムにおいては、そのような代謝産物は
トリプトファン様クロマトグラフィー親和性と、ニンヒドリンへの反応性を持ち合わせている。LC-MS/MS シ
ステムによって測定されたトリプトファン濃度 71µmol/g クレアチニンは、トリプトファンとして予測範囲内
の濃度であり、患者の臨床状態により一致するものであった。この事実は、LC-MS/MS 分析による質量定量に
よって可能になった特殊性の向上と共に、我々の患者での偽高トリプトファン尿症の疑いを確実なものにした。
抗てんかん薬のアミノ酸濃度における影響の可能性
この人為的トリプトファン濃度上昇の原因を特定するために、我々は 5 つの処方されている治療薬(図 2)に、
阻害要因の可能性があると考えた。抗てんかん薬(AED)で、神経伝達物質 GABA の a-ビニル類似体であるビ
ガバトリンが、阻害物質である可能性が高いと見られた。なぜならば、遊離第一級アミンとカルボン酸をその
化学構造内に含み、ニンヒドリンがアミノ酸と似たように標識する可能性があるからである。GABA アミノ基
転移酵素の不可逆阻害剤であるこの薬剤は、The US Food and Drug Administration により近年許可され、新生児
でのけいれん発作やてんかん性発作の治療に使われている。GABA 異化作用の誘発減少は、薬剤の抗てんかん
作用をもたらす為に、脳内の GABA 濃度を上昇させる。なぜならば GABA は中枢神経系の重要な阻害伝達物質
だからである。ビガバトリンは主に腎排泄によって除去され、投与による大規模な代謝は行われない。更に、
ビガバトリンは今回の患者で見られたように、GABA、β-アラニン、β-アミノイソ酪酸の上昇を誘導し、特定
の患者の尿中アミノ酸濃度を変えてしまう(1、2)。
3
図 2. レベチラセタム(1)、ラモトリジン(2)、フェノバルビタール(3)、ビガバトリン(4)、トピラメ
ート(5)、トリプトファン(6)の化学構造
この阻害シナリオを調査するために、我々は Waters Micromass® Quattro Premier MS/MS を加えた
UltraPerformance LC® System(Waters)を使用する院内の LC-MS/MS 法により、尿中のビガバトリンの有無を評
価した。アミノ酸はより良い分離選択を示すイオン対試薬であるペンタデカフルオロオクタン酸を使用し、イ
オンペアリング逆相液体クロマトグラフィーによって分離された。分析プロトコールは、LC-MS/MS によって
非誘導体化されたアミノ酸分析についての、すでに報告されている方法に従った(3-5)。この分析では、最
適化された MS/MS クロマトグラフィー(プリカーサー m/z > プロダクトイオン m/z; 130.1 m/z > 70.1 m/z )で、
ビガバトリンの大きなピークが明らかになった。この元の薬の正体は、純粋なビガバトリン液の滞留時間と一
致したことで確認できた。同じ方法で分析されたいくつかのコントロール尿サンプルのクロマトグラムは、ビ
ガバトリン特有の MS/MS トランジションで検査したときに代謝物のピークが欠けていた。
我々の患者での尿中の抗てんかん薬存在の推測は、紫外線分析の前に、自動化液体クロマトグラフィーアミノ
酸分析によって、コントロール尿サンプルの分取へビガバトリンを段階増加的に(例えば、0, 500、 1500、
7500 µmol/g クレアチニン)加えたことで、更に確認できた。コントロール尿サンプルにおいて、内因性トリ
プトファンは 76.81 分で溶離した。ビガバトリンを加えたサンプルでは、相対的滞留時間は、内因性トリプト
ファンで 76.86、76.54、76.37 分、ビガバトリンで 77.82、77.67、77.62 分であった。それぞれのサンプルでビ
ガバトリンのピークは、トリプトファンのピークの直後に現れ、我々の患者の尿中の未知の阻害物ピークは、
77.22 分の溶離時間で一致していた。この確認は、GABA の構造的類似物 (例;75.40 分) へのビガバトリン
阻害剤とされている物質の、溶離時間の相対的近似性により裏付けられる。注目すべきことは、このインビト
4
ロ検査での抗てんかん薬濃度は、トリプトファンのピークを完全に隠すほど十分に高くはないが、そのような
シナリオの可能性はインビボの尿濃度でより高いことは明らかである。更に、限られたサンプル量は LCMS.MS による GABA、β-アラニン、β-アミノイソ酪酸の定量測定を不可能にしている。よって、これらアミ
ノ酸のビガバトリン治療への上昇の確認は文献を参考にした(1、2)。
この症例は、尿中アミノ酸濃度へのビガバトリンの影響を浮き彫りにしている。加えて、このアミノ酸分析で
使われたニンヒドリンベースの化学誘導体の知識が、それぞれの化学構造と物理化学的性状により、阻害物質
の可能性を区別しうることを示した。患者の薬剤と文献、特に近年許可された治療法の使用の慎重な見直しは、
患者の臨床症状が検査結果と一致しない場合の実務基準であるべきである。特に小児科でのこの代謝スクリー
ニング分析法の広範囲の使用によって、この原則は間違ったクロマトグラム解釈のリスクを減らすであろう。
最後に、増加する評価によって証明されるように、急速に現れつつある定量 LC-MS/MS アミノ酸プロトコール
(6-9)の更なる採択、実施は、まれな代謝疾患の誤診断の減少につながるかもしれない。
覚えておくべきポイント
•
本態性高トリプトファン尿症は、トリプトファンからキヌレニンへの転化異常(ハートナップ病)、
又は腎アミノ酸輸送の異常(例、Tada 病)により生じる可能性がある。
•
ビガバトリンはニンヒドリンと反応し、Hitachi L-8800 分析器による尿中アミノ酸定量を阻害する。
•
ビガバトリンは、GABA、β-アラニン、β-アミノイソ酪酸といった尿アミノ酸の上昇を招く。
•
化学構造と反応メカニズムの知識は、アミノ酸阻害物質の可能性の徹底的な調査において重要である。
•
非生理学的アミノ酸濃度が見られる場合には、治療薬による阻害の可能性について説明する文献を参
考にすべきである。
脚注
5
Nonstandard abbreviations:GABA, -aminobutyric acid; LC-MS/MS, liquid chromatography–tandem mass spectrometry;
AED, antiepileptic drug.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
5
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication February 5, 2010. Accepted for publication June 14, 2010.
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6
論説
Tina M. Cowan*
Department of Pathology, Stanford University, Palo Alto, CA.
* Address correspondence to the author at:Stanford University, 3375 Hillview Ave., Palo Alto, CA 94304. Fax650-7241567; e-mail [email protected].
Ptolemy らは長く知られていたニンヒドリン検出による、陽イオン交換アミノ酸分析での共溶出薬物ピークの
問題について解説した。そのような阻害は抗生物質 (アンピシリン、アモキシシリン)治療、またその他の
薬剤、そして放射線不透過性色素(ジアトリゾ酸メグルミン)使用の患者の尿でしばしば観察される。抗てん
かん薬はあまり見られないが、患者の尿サンプルでのビガバトリン阻害は、Preece ら(1)によってトリプト
ファン(明確にはアンモニアとオルニチンの間)の近くに大きなピークが溶出すると報告されている。そして
それは今回見られたピークと間違いなく同じものである。そのような阻害物質はそれまで、分光光度分析の
570nm と 440nm の比率を確実なアミノ酸標準物質の比率と比較することで評価していた。この計算により、
ピークはトリプトファンではなく、阻害物質であるという手がかりを迅速に得ることが出来るのである。そし
て、血清トリプトファン濃度の測定が更にサポートになるのである。血清トリプトファンは主なトリプトファ
ン代謝疾患で上昇するものの、腎臓での急速な薬物クリアランスの為、薬剤阻害のある場合は標準値となる。
中性アミノ酸輸送疾患であるハートナップ病は、この症例では可能性が低かった。なぜならばハートナップ病
の排出パターン(トリプトファン、メチオニン、リシン、グリシンを含む)が存在しなかったからである。
外因性物質による阻害は、ここで示したように、更に特定の質量分析方法を用いることで取り除くことが出来
る。しかしながらアミノ酸の上昇は、バルプロ酸塩(グリシンを上昇させる)、メトトレキセート(ホモシス
テイン)、塩酸アルギニン(アルギニン)、経静脈免疫グロブリンのいくつかの調剤(グリシン)を含む様々
な治療により、直接的、又は間接的に起こりうるのである。質量分析による解析は、そのような製剤によって
引き起こされる解釈上の問題を回避するものではない。よって、臨床検査室での質量分析器の使用増加にも関
わらず、アミノ酸の結果は可能な限り、臨床症状、薬剤、食事歴に照らして解釈すべきである。
脚注
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: No authors declared any potential conflicts of interest.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
7
Received for publication December 16, 2010. Accepted for publication December 28, 2010.
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論説
Michael J. Bennett*
Department of Pathology and Laboratory Medicine, Children's Hospital of Philadelphia, Philadelphia, PA.
* Address correspondence to the author at:Department of Pathology and Laboratory Medicine, Children's Hospital of
Philadelphia, 5NW58, 34th St. and Civic Center Blvd., Philadelphia, PA 19104. Fax215-590-1998; e-mail
[email protected].
何十年にもわたって、体液中のアミノ酸測定方法は、イオン交換クロマトグラフィー分離とポストカラムニン
ヒドリン誘導体化、そして二重波長分光光度検出によるものが主流であった。ニンヒドリンは多くのアミノ酸
を含む第一級アミンと、そしていくつかの第二級アミンと反応する。識別はピークの滞留時間と、相対的二重
分光光度シグナルによる。いくつかの一般的に使用される抗生物質を含む多くの薬剤も、ニンヒドリンと反応
し、尿中でのアミノ酸測定を阻害すると長い間知られてきた(1)。
この報告は、患者の尿中トリプトファン近くのクロマトグラフィー域での、重大な阻害物質の症例を浮き彫り
にしたもので、不適切な診断であった可能性の示唆が、未だ手付かずであった本来のニンヒドリン陽性ピーク
についての調査につながった。ビガバトリンは最新の抗てんかん薬のうちの一つで、内因性のアミノ酪酸アミ
ノ基転移酵素の代謝を阻害するものである。それは第一級アミンでもあり、尿中に変化しないまま排泄される。
この報告の中で使われたイオン交換クロマトグラフィーでは、尿中ビガバトリンの溶出はトリプトファンのピ
ークの非常に近くに現れ、初期段階では高トリプトファン尿症と示唆された。そのような結果は、全身性アミ
ノ酸尿と関係するミトコンドリア病の可能性を調査していたこの患者の臨床症状と一致しなかった。その後の
トリプトファン尿症の鑑別診断では、SLC6A19 輸送体での変異により起こるハートナップ病が含まれた。それ
は尿中の中性アミノ酸が尿細管再吸収異常により上昇するものである(2)。小人症に関連したトリプトファ
ン尿症は、Tada らにより非常にまれな欠損として初め報告され、キヌレニン経路の異常と仮定された(3)。
阻害物質の正体は超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)分離と、タンデム質量分析によるピーク特定によって
明らかになり、それは非病原性の尿中トリプトファン濃度を示した。この症例報告の重要なポイントは、滞留
時間のみに依存しない、質量分析を使った決定的方法の利点である。これは、HPLC, UPLC, キャピラリー電気
8
泳動、ガスクロマトグラフィーといった他の検出器に依存する、すべての非質量分析での分離プロセスに応用
できるであろう。
(訳者:加藤
久美子)
脚注
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have
met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or
analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of
the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the
Disclosures of Potential Conflict of Interest form. Potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: M.J. Bennett, Clinical Chemistry, AACC.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and
interpretation of data, or preparation or approval of manuscript.
Received for publication December 7, 2010. Accepted for publication December 14, 2010.
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