平成 27 年 3 月定例議会 町長施政方針並びに 提案理由説明要旨 平成 27 年 3 月 6 日 海 士 0 町 第 515 回海士町議会(3 月)定例議会にあたり、諸議案の説明 に先立ちまして、新年度へ臨む私の町政運営に対する基本的 な考え方を申し上げ、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ ます。 〔最近の経済情勢等〕 日本経済の動向を見ますと、安倍内閣のアベノミクスの効果 により、全国的には有効求人倍率が22年ぶりの高水準となり、 大企業の経常利益は過去最高水準になるなど、東京を中心に 経済の好循環は着実な歩みとなっています。 一方、地方では円安や消費税増などが影響し、景気の回復 には程遠い状況にあり、大都市圏と地方の経済回復に大きな格 差が生じつつあります。 このため、国は「地方創生」をスローガンに地方の活性化と人 口減対策のための総合戦略の策定に乗り出したところです。 若者にとって魅力ある「まちづくり、ひとづくり、しごとづくり」を 推進しようと、平成26年度補正予算において地域住民生活等 緊急支援のための交付金を創設、地方創生先行型において地 方版総合戦略の策定経費等 4,200 億円、27 年度予算において は、既存の歳出の振替により財源を捻出、総額 1 兆円の「まち、 ひと、しごと創生事業費」を創設、地方の取り組みを支援しており -1- ます。 本町の平成 27 年度予算は、こうした国の動向などを踏まえつ つも、耐震改修など教育関係の大型事業もピークを越えたこと、 一方で近年起債額の増大もあるため後年度の財政負担に配慮 し、一般会計の当初予算額は46億7千3百万円余(対前年度比 20.54%減)に編成したところであります。 〔予算編成にあたって〕 本町では、平成 16 年度の地方財政ショック以来、住民サービ スの低下を来さないよう「先憂後楽の精神」で、自立促進プラン に基づく思い切った行財政改革による人件費の大幅な削減等 により予算編成を行ってきました。その結果、16 年度から 10 年間、 赤字補填のための基金の取り崩しのない決算を続けておりま す。 また、13 年度末に 101.5 億円あった地方債残高も、近年続く 大事業にも拘らず 25 年度末は 63.8 億円(約 37%減 臨時財政 対策債 7.3 億除く)と漸減しております。 財政健全化判断比率については、9 月議会に報告したところ でありますが、自治体財政の健全度を表す実質公債費比率等 の 4 指標と公営企業の資金不足比率は、いずれも財政健全化 判断の基準を下回っております。 -2- しかしながら、町の財政は、国県の動向や、国勢調査の人口 結果に大きく影響を受け、予断は許されません。引き続き人口対 策を行政の基軸として「攻め」と「守り」を一体的に進める財政運 営を行って参りたいと考えております。 こうした状況を踏まえ、平成 27 年度当初予算については、町 民の皆様が住み慣れた町で最後まで安心して生活していただけ るよう、第四次海士町総合振興計画(島の幸福論)の施策の実 現に向けた諸事業、特に産業創出などによる雇用対策、定住対 策、隠岐島前高校魅力化から中学校を含めた人づくり等の諸事 業に重点配分致しております。 人件費については、モチベーション向上のため職員給与を 19 年度以降少しずつ復元しており、ラスパイレス指数は 17 年度 72.4(全国最低値)から 26 年度は管理職を除き給与復元したた め98.8となっております。管理職につきましては、昨年度「自分 たちの給料は自分たちで決めたい」という考え方のもと協議が行 われ、町の経営者の一員としてカットを継続させて欲しいとの申 し出を受け、5%のカットを行っておりますが、今後も引き続き検 討して参ります。 さて、国勢調査もいよいよ 27 年度 10 月と間近に迫りました。 町、議会そして、町民の皆様と一緒に「チーム海士」としてそれ ぞれが役割分担しながら、対策を進めていかなくてはなりませ -3- ん。 数字だけではなく、どのような方を受け入れたいか、また受け 入れた方に、島の歴史や文化を伝え、島の独特な支え合う協働 的な生活に馴染んでもらうなどソフト面も重要です。 そして守るべき島の歴史、伝統、文化を継承し発展させるため の人口対策、定住施策を一層進めて参りたいと考えております。 また、短期的には今年度の国勢調査が大きな目標であります が、20 年、30 年後を「成り行き」にまかせた場合に、島の未来は どうなるかを想像する一方、「ありたい未来、意志ある未来」を描 くため、国の地方創生の動きを最大限活用し、これまでのまちづ くりの推進が次世代へと引き継がれる取り組みとなるよう、町民参 加による「まち・ひと・しごと創生戦略会議」を近く設置して、今後 の海士町の5カ年戦略を策定し、輝きの連鎖が続くための施策と 人材育成を模索して参ります。 出郷者につきましては、この半世紀 20%~30%のUターン率 で推移しております。全国で最下位の島根県で 70%程度(鳥取 県 80%)であり、今後も、保~高の連携による「ふるさと教育」な どを絡めながら総合的にUターンの促進にも力を入れて参りま す。 ここで主な事業を挙げますと、ひまわり改修事業で 6 千 100 万 円、保育園緊急整備事業で 3 千万円余、港湾建設費で 1 億 4 -4- 千 960 万円、島食の寺子屋プロジェクト事業で 1 億 2 千万円、 隠岐神社周辺プロジェクト事業で4千万円、東京アンテナショッ プ整備事業で 8 千万円、多井今井門線を含む道路新設改良事 業で 2 億 750 万円、産業体験滞在施設整備事業(5 戸)で 1 億 80 万円、空き家活用事業で 5 千 180 万円、空き家除去事業景 観整備事業で 1 千 281 万円余、隠岐世界ジオパーク拠点施設 整備事業で 3 千 448 万円などであります。 〔機構改革について〕 平成 16 年 2 月の地方財政ショックを受け海士町自立促進プラ ンを作成、4 月に組織のフラット化と産業創出を急ぐための機動的な 体制づくりを目指した機構改革を行い、産業振興、交流人口の拡大 及び島前高校の魅力化等に果敢に挑戦して10年余が経過し、 お陰様で、近年全国から多数の皆様方が視察に訪れて戴ける 程に、一定の成果をあげることが出来ました。 そして町の進む方向性も少し見えて来たところであります。 しかし、単なるこれまでの延長線では、持続可能な海士町の 未来を切り開くことは出来ません。 そのためには、これからの 10 年を見据え、次世代を担う人材 育成と次なる布陣のために、敢えて一旦ここで機構の一部を改 編して、総務課と財政課、地産地商課と産業創出課を統合し、 -5- それぞれ総務課、地産地商課に再編し、更なる町政の発展を目 指し新たなスタートを切りたいと考えております。 〔健康福祉関連について〕 近年、I ターン施策等による若者世代の転入増加により、平成 25 年度には一時的に保育所待機児童問題に直面しましたが、 26 年度の保育所保育定数の引き上げにより、なんとか待機児童 ゼロを確保したところです。 人口対策にとって、安心して子育てができる環境整備は最も 重要なポイントであり、今回計画期間の終了に伴い新しい「次世 代育成行動計画」を策定したところです。 また、時限条例として制定した「子育て支援条例」の見直しを 行い、必要な条例改正案を今回上程致しております。また、保 育所入所児童の増加に伴い、けいしょう保育園園舎が手狭とな っていることから、27 年度には園舎の拡張工事を計画しておりま す。 高齢者福祉の「海士町地域福祉計画」、「海士町高齢者福 祉計画」、「隠岐広域連合介護保険事業計画(第六期)」も計 画期間の終了に伴い、今回計画策定を致しました。これらに 基づき、今ある施設や機能を活用しつつ、新しい時代にあっ た施策の充実を図って参ります。保健福祉センターひまわり -6- 居住部門のスプリンクラー設置と雨漏り対策、並びに、高齢者 住宅「福来の里」のスプリンクラー設置につきましては、26 年度 で終了の予定となっております。保健福祉センターひまわりの 老朽化等に伴う大規模改修につきましては、補助事業の活用 も含めて 27 年度から計画的に進めて参ります。 また、高齢者福祉の喫緊の課題である介護職員の確保に つきましては、26 年度から「学生の島体験事業」、「実務経験 者のスクーリングの地元開催」、全国各地で開催されている 「医療福祉業界の活性化を目指したイベント」への若手介護職 員の参加等新しい取り組みを開始しており、新年度には、これ らを充実させることで、介護の魅力アップや新たな人材の確保 に繋げるよう事業所と協力して参ります。 障がい者福祉につきましては、NPO 法人だんだんが運営 する「さくらの家」、「あまの里」を中心としたサービス提供体制 を整備しておりますが、現在、NPO 法人だんだんとしては、 経営基盤の強化等を図るため社会福祉法人化を進めている ところです。26 年度に「海士町障がい者プラン」、「海士町障害 者福祉計画」を策定しており、これに基づき 27 年度以降も諸 施策を推進して参ります。 保健活動につきましては、子どもから高齢者までを対象とし た健康づくり事業を展開して参りました。しかし、「がんによる -7- 死亡率が高い」、「慢性腎不全による透析患者が増えている」、 「脳卒中発症者が多い」等、まだまだ多くの課題があります。 従いまして、今後も検診受診率の向上や、職域における健 康相談の強化、特定保健指導の充実等、疾病の早期発見、 生活習慣の改善による予防活動をきめ細かく実施するとともに、 先進的に取り組んできた糖尿病対策事業や認知症対策事業 についても、引き続き関係機関と協力して推進して参ります。 また、障がい者相談支援センター業務、地域包括支援セン ター業務、児童虐待や子育て支援、若者の引きこもりへの対 応等、保健師が担う分野が益々増大しており、適切な支援や 解決に向けたコーディネートができるよう人材育成に努めて参 ります。 〔住民生活関連について〕 (1) 国民健康保険事業 生活習慣病対策として厚生労働省が平成20年4月より医療保 険加入者全員を対象としメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候 群)に着目した健康調査、いわゆる特定検診は、人間ドックを含 めた受診率が近年、約45.0~47.0%となっております。 今後も受診券の送付と広報、また、町内全域に情報提供が可 能な、あまコミュニティチャンネル、IP告知等、効果的と思われる -8- 様々な周知方法によって受診勧奨を行うことで生活習慣病等の 予備軍の早期発見と早期治療を強化し、医療費の抑制を目指し て参ります。 (2) 町税等徴収対策 平成21年度から副町長を中心に関係課長で構成する徴税等 収納対策会議を月1回、定期的に開催し、関係各課の連携、情 報の共有化による効果的、効率的な収納対策に取り組み、累積 滞納額の縮減に努めており、一定の成果を上げているところで す。 今年度も早期の納付勧告や納税相談を行う等、滞納額の減 少に努め、税負担の公平性及び自主財源の確保に努めて参り ます。 (3) 番号制度 現在、行政の各機関が保有する住民の情報は、それぞれの 機関が別々に管理してきたため、個人の情報を特定する番号は、 制度、組織ごとに多数存在しております。そのため、各種手当て の申請には、申請者個人が関係機関に出向いて証明書類を入 手することが必要であるなど、住民と行政両者にとって過重な負 担が生じているところですが、番号制度導入により、国と地方自 治体が保有する情報を照会、提供を行うことが可能となるため、 社会保障給付等の申請を行う際などに申請者個人が窓口で提 -9- 出する書類が大幅に削減される等、住民の利便性の向上が見 込まれるとともに、社会保障や税に係る行政事務の効率化が図 られることになります。 昨年より、国の支援を受けながら進めている番号制度導入の ための既存住基システム、税務システム、社会保障関係システ ム等の電算システム改修を、今年度も引き続き進めて参ります。 今後の予定と致しましては、27年10月以降に住民一人ひとり に住所、氏名、生年月日、性別、12桁の個人番号(マイナンバ ー)が記載された「通知カード」を通知し、その後、28年1月から 個人の申請により、個人カードの交付が予定されています。 そして、29年1月からは、国の機関間での情報連携と、その後、 29年7月からは地方公共団体も含めた情報連携が開始される 予定でございます。 〔診療所関係について〕 診療所につきましては、在宅支援診療所として往診・訪問診 療等 365 日、24 時間体制で対応しておりますが、今後の高齢化 率の上昇に合わせ、在宅医療を必要とする患者さんは年々増加 傾向にあります。このような状況の中、保健・福祉・医療の連携、 福祉施設との連携を更に進め、通院が困難な患者さんに対し、 住み慣れた家庭や地域で療養生活が行えるよう、また、身近な - 10 - 人に囲まれて在宅で最期を迎えられるよう、より質の高い在宅医 療を提供して参ります。 在宅医療・緩和ケア等を充実させるには、やはり、看護師等の 医療従事者の確保が重要となってきます。引き続き、地元出身 者等へのアプローチを積極的に行い、関係機関との連携を密に しながら、医療従事者の確保に向け取り組んで参ります。 歯科診療所においては、引き続き、通院困難な患者さんへの 訪問歯科診療及び訪問口腔ケアの充実に努めて参ります。 〔産業振興関連について〕 新年度は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」における政策パッ ケージの一つである、「地方にしごとをつくり、安心して働けるよう にする」ことを実現するため、地域資源を活用した6次産業化支援 対策や平成28年度を見据えた新規就農・経営継承総合支援事 業を進めて参ります。 (1) 農業振興 農業振興につきましては、島前地域農業再生協議会を中心 に、島前 3 町村の農業の推進及び円滑な事業の実施のために、 関係団体との連携を図り、農家の所得向上に努めて参ります。 また、平成 26 年産の米価の下落はご承知のとおりですが、今 後の米価の低下に対応するため、平成 27 年産米から一定数量 - 11 - を町が安定価格で購入し、ふるさと納税(寄附金)をされた方へ のお礼として特産品セットの一品として全国に地元の美味しい お米をお届けすることでしっかりとPRして行きたいと考えており ます。 そして、島内外でお米の販売実績を更に上げ、農家の方々 が安心してお米づくりが続けられるよう、また認定農業者と意欲 ある新規就農者の確保、育成にも努めて参ります。 また、国土や自然環境、景観の保全など、農業の持つ多面 的機能の維持・発揮のため、地域活動や営農活動に対して行 われる日本型直接支払い制度を積極的に活用し、農地の保全 にも努めて参ります。 次に、農業基盤整備につきましては、既に整備が終了した農 地を経営規模拡大、戦略作物・地域振興作物の生産を促進す ることを目的に、平成 22 年度から実施してきた暗渠排水事業を 平成 27 年度は東地区と北分地区で継続実施して参ります。 また、平成 25 年度から始まった、農村地域防災減災事業(中 里ため池改修事業)は、昨年度に実施設計を終え、今年度から 平成 29 年度までの 3 年間で改修工事を実施して参ります。 さて、この度島根県内の11JAが統合し、3月1日付で島根県 農業協同組合(JAしまね)が発足しましたが、今後も、さざえカレ ーを中心とした加工施設の運営や隠岐牛の発展等、農業や畜 - 12 - 産業に、引き続き取り組んでいただくことにしております。 (2)畜産振興 畜産振興につきましては、隠岐牛のブランド化に向けた取組 支援と繁殖農家の規模拡大や担い手の確保、育成に向けた取 組を引き続き支援して参ります。 繁殖雌牛の生産向上対策としましては、受精卵技術を引き続 き導入し、高能力の子牛生産体制の整備を推進するとともに、 放牧基盤整備対策としての公共放牧場の草地整備と牧柵整備 を実施して機能改善を進めて参ります。 肥育牛につきましては、肉質面においても上物率 80%台を 推移し、依然として高品質な肉質を維持しており、新年度にお きましても更なる隠岐牛の品質向上に向けた取組を引き続き支 援して参ります。 (3)林業振興 林業振興につきましては、昨年度から始めた「ふるさとの森再 生事業」を継続することで、菱浦港周辺の雑木を伐採し、ヤマ ザクラやコナラを植栽、船からの景観や散策時の景観対策に向 けた取組を実施して参ります。 また、島前 3 島の林業に携わる人材を育成するとともに、隠岐 島前森林組合、隠岐島前森林復興公社と島前 3 町村が積極的 に連携を図りながら、伐採木の木質バイオマス燃料や畜産敷料 - 13 - などへの利用を含め、今後20年間の長期的な展望に立った森 林整備事業計画を策定し、着実に実行して参ります。 (4)地産地商の推進 地産地商の推進についてでありますが、安全・安心な農産物 の品質向上、生産拡大を図ると共に、直売所への安定した供 給体制及び加工用の供給体制も整備し、引き続き、地元農産 物の消費拡大を図って参ります。また、以前から喫緊の課題と なっていた生産者の高齢化と後継者不足への対応につきまし ては、新規品目の品質の安定と栽培技術の向上を図ることで魅 力ある産品、換金作物として生産者の所得向上を第一に取り組 んで参ります。 また、一昨年から取り組みを始めた「崎みかん」再生プロジェ クトは、3 年目を迎え、二人の後継者はみかん栽培の傍ら地域 行事にも積極的に参加して、今ではすっかり崎地区の住民とし て地域に溶け込んでおり、嬉しく思っております。 昨春初めて定植した400本の苗木は予期しなかった改植を 迫られ、残念ではありますが収穫は後 2 年ほどの歳月を要する 見込となっております。しかしながら、この 2 月から定植を始め た1,200本の苗木は、昨年の反省を踏まえ定植方法を改善し ており、今後順調に育ってくれるものと期待を致しております。 また、農家としての意識や栽培技術の向上を図るため、引き - 14 - 続き、広島県大崎上島町の農家の方々との連携を密にして参り ます。 なお、今年度は、1,800 本を大苗育苗するとともに、農園の 管理や圃場整備等を更に進め、最終的には、栽培規模が約 8 ヘクタール、12,000 本を超えることを見据え、現在島前高校の 校長先生はじめ先生方のご理解をいただき、生徒と一緒になっ て、新しいネーミングやパッケージデザインを検討しており、まも なく案をお示しできる予定となっております。 更に、今後は、「巡の環」と連携し、プロジェクトの取り組み内 容や作業風景等の動画や写真を使い、SNS(ソーシャル・ネッ トワーキング・サービス)で全国に向けて情報発信することで、 取り組みに関心を寄せる方々の購買意欲を喚起しながら、近い 将来、より多くの方々に、味わってもらえるようにと考えておりま す。このように、期待を膨らませて収穫を待ってくれる方々に、 海士町が誇る、味に自信のあるみかんを一度味わってもらうこと で、全国の有名な産地のみかんとの差別化を図って参りたいと 考えております。 そのために、将来の購買者の方々にしっかりとPRすると同時 に、生産・加工・販売の一体化や、6 次産業化に向けた地産地 消の取り組みを推進して参ります。 (5)水産振興 - 15 - 漁業後継者(現在 7 名の U・I ターン者)の育成については、 昨年度に引き続き、漁業研修船の導入や制度資金等の活用を 通じ、自営漁業の確立に向け積極的に支援をして参ります。 漁業の新技術及び新商品の開発を手がける付加価値漁業 並びに経営改善等に取り組む諸団体の活動につきましては、 国の離島交付金事業をはじめ、県の「新がんばる事業」等を活 用して、漁業再生への活路を切り開いて参ります。 特に、いわがき生産の労力軽減とコスト縮減に資する対策と して、昨年度から継続している磨き作業及びバラシ作業の自動 機械化の完成を目指すほか、新たにカイデライト養殖の接着固 定装置の開発に着手致します。 また、海藻「海松(ミル)」によるオーラルケアー商品の販売展 開に関しましては、連携企業及び漁協との調整の下、向こう 3 カ 年を目途に年間 40t(湿重量)の養殖生産の体制を確立して参 ります。 水産資源の開発造成につきましては、アワビ及びナマコ等の 増殖を促す魚礁の開発と追跡調査を引き続き実施し、漁協及 び海藻センターと共同して資源管理技術の構築を目指して参り ます。 (6)第三セクターふるさと海士関連事業 CAS 凍結センターは、新たな商品ニーズの対処や、いわがき - 16 - 「春香」の 50 万個生産に対応すべく、漁業者のやる気と海士町 の魅力を全国テレビで放映する「海士町テレビ通販番組」を自 主制作します。テレビによる海士町通販プロジェクトを展開する ことで、島の魅力をアピールし、ブランド認知を促進し、リピート につながる海士ファンを確実に増やしたいと考えています。 また、競争力のあるオリジナリティーの高い商品開発と安全・ 安心な商品づくりに向け、HACCP(ハサップ)の食品安全衛生 管理手法取り入れた食品安全マネジメントシステム ISO22000 認証取得を目指したいと考えています。今後は、国内はもとより、 TPP を睨んださらなる海外進出を視野に、販路の拡大を押し進 め、海士町ブランドの発信と漁業者の所得向上に努めて参りま す。 島の表玄関を彩るキンニャモニャセンターの拡張リニューア ルがこのほど完成しました。島の素材を活かしたおみやげ産品 の開発販売を促進するため、お菓子や総菜工房の機能を新た に加えたことにより、島で頑張る人たちの笑顔とともに海士流の 地産地「商」を盛り上げ、なお一層の情報発信と交流人口の拡 大に努めて参ります。 (7) 漁港及び港湾整備 漁港整備につきましては、菱浦伊野地区の飛沫対策として係 船型防波堤(L=80m)の測量調査設計並びに菱浦臨港道路 - 17 - の老朽橋梁 2 カ所の測量調査設計及び工事に着手致します。 また、海岸堤防等の老朽化対策事業として菱浦及び多井地区 の長寿命化計画を策定致します。 港湾整備につきましては、いわがき養殖の作業効率を高める ため、諏訪港菱敷地区の物揚場及び取り付け道路の早期完成 を目指すほか、須賀港内泊地の静穏度を高めるため、防波堤 (L=60m)の測量設計に着手致します。 一方、漁業者の高齢化と廃業により、離島においては廃船処 理の対策が急務となっております。隠岐全島の廃船処理を視 野に海士町での廃船処理業及び廃船処理施設運営等の可能 性や雇用創出効果等について調査を開始致します。 〔交流促進関連について〕 海士町の観光振興については、お客様と最初に接する窓口 を運営する「観光協会」を中心に「観光を産業」に育てるべく 様々な取組にチャレンジしております。 離島隠岐への観光客のアクセスは現状、島民の足である「隠 岐航路」を利用しなければなりません。空港を持たない島前3町 村においては、隠岐航路以外他に選択肢が無い状況です。島 民優先の時刻表になっている現状においては、関東圏、関西圏 或いは九州圏域いずれの方面からのお客様であっても、列車や - 18 - 飛行機、そして接続の公共交通を利用した場合、「隠岐」へはと ても来やすい環境とは言えず、どちらかと言うと行きにくい場所 「隠岐」と言われており、接続の待ち時間や移動距離など二次交 通の不便さは隠岐を目指す旅行代理店など、観光客にとっては 訪れにくい状況にあります。 昭和 40 年代後半からの離島ブームで観光客がどっと押し寄 せたのをピークに、隠岐神社や海水浴客をはじめ団体客などの 受入を整えて観光振興をすすめてきましが、現状はドンドン観光 客数は減り続けております。はじめに申しました様に、便利さを 求めるお客様が多い中、一方では「島らしい・海士らしい」、「隠 岐だから行きたい・海士だから行きたい」と思って戴けるような魅 力の充実がなければ、観光の減少を止める事は不可能です。そ の「らしさ」を磨きあげる取組が、世界ジオパークであり、隠岐神 社或いは島ならではの生活様式など、観光資源の磨き上げに可 能性を求めたいと思っております。 世界ジオパークについては、島根県はじめ行政と民間が一体 となり取り組んでいますが、観光資源としての磨きあげはまだま だ各島においても不十分であろうかと思っております。宿泊施設 や交通機関等観光事業に従事する方々の高齢化や後継者不 足は過疎地においては大きな課題であり、観光を産業にして行 くうえでマンパワーの不足は一次産業同様に厳しい状況にありま - 19 - す。 訪れたお客様に島の食材100%使用した食事の提供と全国 で減少している和食職人を育成する「日本食の学びの場」の整 備事業として「島食の寺小屋プロジェクト事業」に取り組みます。 勿論世界ジオパークの認定を受け、情報発信と併せ、新しい需 要を求め、松江・米子までは来ている外国人観光客、いわゆる 「インバウンド対策」にも果敢にチャレンジしたいと思っておりま す。 また、定住促進の政策に見られる「空き家対策」ですが、「空き 家」を観光資源の一つにならないか。民宿や旅館といった宿泊 施設の後継者が居なくなり、宿泊のキャパシティが減る中にあっ ては、一泊二日とか二泊三日などの観光客やビジネス客の対象 とは少し視点を変えた取組になりますが、短期・長期滞在して島 を楽しみたい、例えば離島ブームの時に多く訪れた「バックパッ カー」の様な外国人を含めた新しい需要のキャパとして、新ビジ ネスモデルの構築にも挑戦してみたいと考えております。その受 け皿としての「空き家」の活用と、仕組み作りに挑戦したいと考え ています。 定住促進と観光振興を別々に捉えがちですが、いずれの取 組においても、「魅力的なモノ・資源」がなければお客様は興味 を持たず、わざわざ行きにくい隠岐・海士町まで来ると言う期待 - 20 - は持てないと思います。 「定住とか 移住とか ジオパークとか」ただ印象的な言葉を並 べるだけでは、一瞬は賑わったとしても、継続的な集客にはつな がらないと考えますので、「これぞ海士」・「海士に行きたい」と思 える施策を磨きあげ、発信出来る様に努力して行きたいと考えま す。この様な取組に、地域おこし協力隊を募集し、「島食の寺小 屋プロジェクトリーダー」として3年後には寺小屋の運営者として この島に根付いて活動を継続してもらいたいと考えております。 そして今年第20回の記念大会を向かえる「キンニャモニャ祭」 は、商工会を中心に町民をあげて盛大な祭にしたいと計画して おります。是非、8月22日はこれまで以上に出郷者や島外から の参加者が集い、歴史に残る賑やかな記念大会になるよう取り 組んで参りたいと思います。 〔環境整備関連について〕 (1)エネルギー関連 エネルギー関係につきましては、より身近な課題でもあり、引 き続き「海士町地域新・省エネルギービジョン」に基づき、各種事 業を展開して参ります。 ① 新エネルギー 26年度はマリンポートホテルに太陽光発電設備を整備いたし - 21 - ましたが、27年度は水道施設へ太陽光発電設備を導入する予 定であります。 その他、新エネルギーとして検討していきたいのがバイオマス エネルギーであります。バイオマスエネルギーとは、CO2 の発 生 が少 ない自 然 エネルギーのことで、種 類 は木 材 (木 くず) や糞 尿 、生 ゴミなどが挙 げられます。日 本 では古 くから薪 や 炭 、肥 料 として身 近 に利 用 されてきましたが、近 年 は電 気 や ガスの普 及 などから使 われなくなり、廃 棄 物 となっています。 これらは隠 れた資 源 でありますので、何 らかの形 で使 えない か模 索 して参 ります。今 着 目 しているのが、間伐材等の林地 残材や竹、公共工事で伐採する雑木などです。いずれも処理に 困っており、それらが活 用 できれば有 用 な資 源 になるものと 考えます。 地 域 の経 済 循 環 創 出 という視 点 から、新 たな雇 用 創 出 に もつながるよう、事業展開を試みて参ります。 具 体 的 な検 討 をするに当 たっては、各 業 界 との連 携 及 び 協 力 が必 要 であるため、林 業 や建 設 業 などにアプローチし ながら活路を見出したいと考えております。 ソフト面では、家庭用の太陽光発電普及に向けた取り組みは 年々件数も増えており、地道ではありますがエネルギーの自給 率向上に役立っており、更なる普及へ向け引き続き支援して参り - 22 - ます。 ② 省エネルギー 25年度からモニター家庭へ「省エネナビ」を設置して海士町 の各世帯での電力使用状況把握に努めて参りました。本年度は このデータを整理し、専門家のアドバイスを仰ぎながら、太陽光、 風力、バイオマス等、新エネルギー部門と連携し、海士町にとっ ての最適なエネルギーミックスを探って参ります。 また、省エネや節電というと「減らす、地味、我慢、頑張って取 り組む」など、ネガティブなイメージを持たれている方が多いと思 いますので、楽しく取り組める内容や減らすのではなく増やすこ とでも省エネになるといった「足し算の省エネ」など、住民の発想 の転換を促せるよう、広報等で啓発して参ります。 (2)環境衛生 ゴミの不法投棄、ポイ捨てついては、先般の子ども議会でも提 案がありましたが、改善の余地がありますので、引き続き「環境美 化推進対策会議」を中心に、関係機関と連携を図りながら、根気 強く取り組んで参ります。 ごみ処理について、最近各地区に設置しているゴミステーショ ンにおいて、「他地区の人が持ってきて入れている」、「指定日の 前日から入れている人がいる」などの苦情が寄せられているため、 改めて周知徹底を図ります。また、可燃物について、近年のライ - 23 - フスタイルの変化とも相まって、段ボールの増量が目立つように なり、清掃センターでの処理に苦慮しています。このため、新年 度はリサイクル及び減量化の観点から、段ボールの処理方法や 有効な活用方法などを検討して参ります。 ゴミの減量、分別、リサイクルの推進対策として、引き続き「ゴミ を拾おうデー」の実施や各種イベントでの分別方法の周知、また 注意喚起を促す看板を設置するなどして、幅広く意識啓発を図 って参ります。 海岸漂着物について、離島が故の永遠の課題でもありますが、 国の補助金が続く限り継続して参ります。 なお、新年度は海底に堆積したゴミも補助対象になるという情 報があり、それが実現すれば海域全般の環境保全に取り組める ものと期待しております。 廃屋について、町内に多数散在しておりますが、景観上も悪 く、放っておくと倒壊の恐れもあるため大変危険です。特に道路 に隣接した建物などは、第三者に危害を加える可能性もあるた め、補助事業を活用し、解体撤去を推進します。 施設の管理面では、「清掃センター」、「リサイクルセンター」、 「最終処分場」の運営の効率化に努め、ゴミの減量化やリサイク ル対策を推進します。 (3)景観関連 - 24 - 海士町は「日本で最も美しい村」連合に加盟しております。 「日本で最も美しい村」とは、地域独自の景観や地域文化を持つ 村と定義されていますので、それにふさわしい村(まち)にしてい かなくてはなりません。そこで、改めてどういった“まち”を目指し ていくのか、その指針となる計画づくりが必要と考え、昨年から事 例調査や意見集約に着手しました。 新年度は協議会を立ち上げ、様々な視点から議論を深め、海 士らしい「景観計画」を策定したいと考えています。 (4)簡易水道 水道については今後維持管理が肝要となってくるため、26年 度に水道施設監視の心臓部とも言える中央監視システムをリニ ューアルし、管理体制の強化を図ったところであります。 ハード面はほぼ整備されましたので、今後は安心・安全な水 道水の供給を図るため、あらゆる事態を想定しながら維持管理 に万全を期したいと考えています。それには担当職員の知見と 技術力が不可欠であるため、後継者育成という意味合いも含め、 今年度若手職員に資格を取得させ、迅速な対応ができる体制を 整備いたしました。 引き続き健全計画を立て、適切な管理に努めて参ります。 (5)下水道 下水道についても水道と同様、維持管理が課題となってい - 25 - ます。特に中継ポンプ場等の設備関係が老朽化により補修、 取替を余儀なくされており、コストが嵩んでいます。 このため、26 年度に長寿命化計画(海士方地区公共下水 道)策定に着手し、現在とりまとめの作業を行っています。 本計画が完成すれば、改修に係る補助事業の活用が見込める ため、県、国に働きかけながら事業を取り込み、改修工事の 目処を立てたいと考えております。 今後も委託業者と連携を図りながら、適切で効率的な維 持・管理に努めて参ります。 (6)町道関連 道路は住民生活に直結する重要な社会資本であり、幅員、歩 道空間の確保等改良の余地があるため、今後も可能な限り工事 を進めて参ります。特に学校に通じる通学路は、児童・生徒の安 全を確保するという観点から、優先的に整備します。 現在着工している「多井今井門線」については、継続的な事 業促進を図り、早期完成を目指します。 東地区の「金屋舟原線」(県道から金屋住宅までの道)につい ては、ほぼ用地買収が終了し、工事に着手しています。道路幅 員は5m、延長は約800mであります。完成すれば安全で円滑 な交通体系の確保ができますので、一刻も早い供用開始を目指 します。 - 26 - 西地区の「西の原線」(中学校から日ノ津方面)の道路改良に ついては、26年度に測量・設計を行い、27年度は用地買収と一 部工事を予定しています。歩車共存道として幅員は6m、延長は 約780mです。早期に工事着手ができるよう、用地交渉等の手 続に全力を尽くします。 北分地区の「北分線」(海士小から北分方面)について、歩道 空間の整備を図り、児童・生徒の安全対策を図ります。 舗装関係では、経年劣化等により随所で破損箇所が見受けら れるため、オーバーレイ(上からかぶせる)等で補修し、交通安 全の確保に努めます。 橋梁関係について、国の道路インフラ老朽化対策方針に則り、 橋長2m以上の道路橋を点検し、点検結果に基づき補修を行い ます。なお、橋梁の補修にあたっては、路線の重要度から優先 順位を付け、順次対応して参ります。 既設道路の維持管理について、入念なパトロールにより不具 合の早期発見に努め、迅速な対応を心がけます。 (7)県事業関係 現在行っている「日須賀・崎線バイパス整備」について、鋭意 工事中でありますが、今年度中に暫定断面で日須賀地区付近 まで下りてくる予定です。早期完成が待たれますので、事業促進 を図るよう県に働きかけます。また、日ノ津崎港線の改良工事の - 27 - 継続や、住民の生命・財産を守るための砂防・急傾斜地対策等 についても強く要望して参ります。 (8)住宅整備 人口減少を克服するためには定住促進は欠かせません。その 基盤となる居住環境の整備に引き続き力を入れて参ります。 27年度は新築住宅を菱浦地区、福井地区、御波地区に計10 戸程度を建設する予定です。 一方、昨今の住宅事情は、高まる需要に対して供給が追いつ いておらず、需給バランスが保たれておりません。 また、既存住宅についても、耐用年数を経過した住宅の建て 替えや、大規模改修を検討する時期に差し掛かっております。 このような状況を鑑み、今後は住宅の安定供給に向けた整備 方針の策定と空き家の更なる利活用へと政策転換が必要と考え ます。 従来の新築住宅建設主体の方法では、財源等において建設 戸数に限度があり、需要戸数を確保することが困難であります。 そこで計画しているのが“空き家”の更なる活用です。 現在社会問題となっている空き家の増加が、当町でも例外で はありません。空き家対策の一環として、利用可能な空き家を活 用し、住宅戸数を確保していきたいと考えています。 このように創意工夫を凝らし、新築住宅と空き家活用の両輪に - 28 - より住宅の安定供給が図れるよう、整備促進を推進して参りま す。 (9)住宅管理 住宅整備もさることながら、住宅管理についても深刻で切迫し ている問題です。 町営住宅の管理戸数は年々増加しており、現在 180 戸を超え、 人口の約 15%が町営住宅に入居しています。 管理戸数が増加する中、既存住宅の設備などの老朽化対策 に迫られ、修繕費用も増加の一途を辿っております。また、維持 管理のサービス提供についても十分行き届いているとは言えな い状況にあります。 このため、維持管理体制や払い下げ制度も含め、抜本的な見 直しを行い、将来を見据えた維持管理方針を打ち出します。 (10)村上家整備 村上家は昨年「村上家資料館」としてリニューアルオープンい たしましたが、その後の利用状況から一部改良と付帯設備が必 要となったため、追加工事を行い、一連の村上家整備を完了と 致します。 〔消防防災関連について〕 平成 23 年の東日本大震災を教訓に、島根県を始め各自治体 - 29 - において大幅な防災計画の見直しを行っております。本町でも県 の改定に沿って一部修正を行うこととしておりましたが、検証の結 果ほぼ全般に渡る見直しが必要との判断から、平成27年度に新 たな計画策定に着手し、年度内に県との協議を踏まえて海士町 防災会議に諮る予定です。 近年は大型津波を想定した防災避難訓練を実施しております が、最も懸念されている要援護者に対する避難支援など課題解 決に向けて、避難訓練の継続と充実を図って参ります。 また、海士町消防団の組織強化に併せて地域の総合防災力 の向上に努め、火災や自然災害など不測の事態に備えた防災対 策を怠ることなく、今後も引き続き安全・安心なまちづくりに向けて 必要な対策を講じて参りたいと考えております。 〔情報政策関連について〕 海士町は隠岐島内でいち早く、町内全域全戸に光ケーブルを 敷設し、インターネットやひかり電話などの通信環境のみならず、 町独自のテレビ放送局「あまコミュニティチャンネル」により様々な 情報を提供しております。 テレビという媒体を利用した映像による情報発信は非常にわか りやすく、誰でもどこでもいつでも情報が伝わるという特性が最大 限に活かせることから大変好評をいただいておりますが、今後も - 30 - 制作スタッフのスキルアップを図りながら、放送事業会社、映像コ ンテンツ制作会社の立ち上げを視野に入れ、地域住民が主役と なるようなローカルな話題を中心に、さらに充実した情報コンテン ツを制作し皆様へお届けして参ります。 また、今年度には知夫村にも光が整備されました。これにより、 隠岐島内の全町村が光整備されたことになります。 光ケーブルは情報を伝達するには無限の可能性を秘めており、 将来的には隠岐島内を光で結ぶことで放送事業の広域事業化を 展開し、あまコミュニティチャンネルの運営強化を柱に隠岐島内 の情報産業分野をリードしたいと考えています。 そして、これら重要な役割を果たす光ケーブルが災害などで遮 断されないように災害にも強い情報インフラの整備、特に無線を 活用した通信環境の整備など、あま光ネットの強靭化を図ります。 また、26年度避難所に指定されている各地区公民館や公共施 設にはインターネットの無線(Wi-Fi*ワイファイ)環境を整備しま した。これにより災害時の情報収集や情報発信はもちろんですが、 平時でも誰もが自由に利用できるため、住民や観光客等に有効 な情報提供やサービスを目指して参ります。 一方、隔月発行の「広報海士」も住民の皆さんへの情報発信と して大切な紙媒体であります。住民はもとより出郷者の皆様、海 士町を応援して下さる皆様など、海士にご縁のある多くの方々に - 31 - ご覧いただいております。これからは、更に広範囲にタイムリーな 情報を分かりやすく伝えるべく、「海士町オフィシャルサイト」や、 一部番組を本土でも放送し始めている「あまコミュニティチャンネ ル」による外部向け情報発信も重要と位置付け、紙、インターネッ ト、テレビを連動させた新しいビジネスモデルの構築を目指しま す。 「広報海士」が持つ“島外とのつながり”、つまり、出郷者を中心 とする海士関係者や海士を応援してくださる全国の海士ファンの 皆様と情報交流できる機能を活かし、絆を強めることで、ひいては 白いかや岩がきなど、特産品の販売や隠岐への観光誘致にもつ なげられる仕組みを作り、他の発信メディアとの相乗効果を狙っ ていきたいと考えております。 「広報海士」、「海士町オフィシャルサイト」、「あまコミュニティチ ャンネル」それぞれの特性を活かし、また総合的に連動させ、住 民の皆さんの元気を少しでも底上げできるよう、愛される地域メデ ィアを目指して、情報発信を続けて参ります。 〔教育委員会関連について〕 教育委員会は教育総務課と、地域共育課で役割分担し連携 を図りながら、引き続き「人間力溢れる人づくり」を推進して参りま す。 - 32 - 21 年度に発足した「保-高連携教育推進協議会」は、保育園 から高校それぞれが手を取り合って、海士の子ども達の成長を 願い、教育活動に傾注しております。本年度もこの特色ある縦の 連携教育を更に推し進め、家庭、地域を絡ませた横の連携教育 体制の充実により、島ぐるみで「未来を支える人づくり」に邁進す る決意であります。また、今年度は地方教育行政に関する法律 の改正により、首長の教育行政に果たす責任や役割が今まで以 上に大きくなります。教育委員と密に協議、調整を行い教育政策 の方向性を共有し、一致して執行にあたりたいと考えておりま す。 (1) 学校教育関係 学校教育においては、引き続き「学力向上への取り組み」、「読 書活動の推進」、「ふるさと環境教育の推進」の 3 つを、重点施策と して取り組むと共に教育環境の整備に努めて参ります。 保-高連携教育推進協議会については、これまでの取り組みを 振り返り、異校種交流の機会拡大・充実を図りながら保小部会、小 中部会、中高部会といった各部会の連係が更に充実したものとな るよう支援して行きます。また、各学校のキャリア教育及びふるさと 教育の取り組み内容を共有し、保から高の取り組みが一本化する よう連携を深めて参ります。 また、本年度も小学校両校で複式学級編成となります。島根県 - 33 - から教育委員会へ派遣されている派遣指導主事と両小学校教員と の連携により複式学級への指導力の向上を図り、加えて、各小中 学校へ教育コーディネーターを 1 名ずつ配置することで、より手厚 い学習支援とキャリア教育を進めて参ります。 小学校の耐震化事業につきましては、海士小学校の大規模 改造事業が完了し、新校舎での授業が開始されました。また、前 年度から福井小学校についても改築事業に取り組んでいるとこ ろではありますが、工事期間が長く、子ども達に大きな負担を強 いております。しかしながら、安心安全な学校づくりのためご理 解ご協力をお願い致します。 (2) 中央図書館 教育行政の柱のひとつである「読書活動の推進」を教育委員 会の重点施策と位置づけ、引き続き力を入れて参ります。 図書館は乳幼児から高齢者まで、すべての自己教育に資する とともに、情報を入手し、芸術や文学を鑑賞するという、地域文 化の創造にかかわるとても重要な場であります。 25 年度までに、「子どもの読書活動優秀実践校」として、海士 小学校、福井小学校が、「子どもの読書活動優秀実践図書館」と して海士町中央図書館が、いずれも文部科学大臣表彰を受け ております。26 年度にはNPO法人IRIより、先駆的取り組みを行 っている図書館として「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」の優秀賞 - 34 - をいただき、図書館運営について全国的に注目されるようになっ て参りました。学校図書館の利用も年々増加しており、調べ学習 での図書館活用など、着実に読書活動の芽が育ち、人間力あ ふれる人づくりに大きく寄与していると実感しております。 その一方で、中央図書館の利用率は島民の3割弱にとどまっ ており、より多くの方々に利用いただけるよう工夫していくことも 必要となっております。海士町中央図書館が教育及び文化のイ ンフラとしての役割を果たしていけるよう、新年度も「島まるごと図 書館構想」を基軸として、図書館のさらなる充実と利用拡大に取 り組んで参ります。 (3) 地域共育関係 「まちづくりは人づくり」を基軸に、人づくりの先導的な役割を 担うのが社会教育であり、本年度も「交流による人づくり」をキー ワードに根気強く取り組んで参ります。 地域共育課としましては、引き続き地区公民館活動への支援 強化を充実させて参ります。集落支援員、中央公民館、地域共 育課職員と共に各地区に出向き、地域の課題を、一緒に考え、 行動し、そして解決していくことで、地域の自主運営能力を高め、 持続可能な地域づくりができるように取り組んで参ります。 また、引き続き島根大学をはじめ各種大学などとの交流事業 を推進します。島根大学からは教育学部の「基礎体験活動事 - 35 - 業」を活用して小中学校への学生を派遣する交流事業を実施し ます。 京都造形芸術大学からは、空間デザイン学科・情報デザイン 学科の授業を受け入れます。隠岐開発総合センターを主な会場 としますが、島前3島でフィールドワークを行い、ファッションマガジン誌 作成の素材集めを実施します。本年度は2年目となりますので町 内の小中高等学校との交流事業も計画しております。 青少年教育分野につきましては、地域の環境を活かしたふる さと教育を展開することとして、小学校4年生対象の「通学合宿」 (2泊3日)、小学校6年生対象の子ども議会、中学校1年生対象 の「大山スキー教室」、中学2年生対象の「普段の生活学校」(6泊 7日)、高石漁港倉田海岸で行われる「アドベンチャーキャンプ」(5泊6 日)、などの体験学習に力を注いで参ります。 ① 文化財部門 平成25年9月に隠岐世界ジオパーク認定を受けましたが、利 活用が十分ではないため、昨年10月から島根県、隠岐4町村等 の行政及び民間で構成する隠岐世界ジオパーク活用推進検討 会議で検討されている拠点施設整備について、26年度地方創 生先行型交付金事業により調査研究を進めて参ります。また関 連して町内の希少動植物の保護や海士町指定文化財の補修、 指定見直しや新規指定及び歴史文化基本構想等について文 - 36 - 化財保護審議委員を中心に調査研究を進めて参ります。 ②社会体育部門 社会体育部門については、海士町体育協会各種スポーツ団 体理事や各委員の皆様の自主的な運営を補助する形で支援を 進めて参りました。本年度はある程度高齢になっても継続できる ニュースポーツの普及、具体的にはスポーツチャンバラやスポー ツ吹き矢、屋内屋外の何処でもできるスポーツ雪合戦などをスポ ーツ推進委員とともに推進して参ります。更に毎年実施している 隠岐等綱引き大会は本年記念すべき第30回大会を迎えます。 30年も続く隠岐諸島随一の春の一大イベントとなっておりますの で今後も継続して参ります。 また6月に行われる海士町ソフトボール大会は、各地区対抗 または職場対抗で行われており、昨年は16チームの参加があり 沢山の交流が生まれております。一昨年より協賛に岡部株式会 社様にご協力いただいたことにより、更に大会が盛り上がってお ります。 また健康福祉課と進めてまいりました、町民健康フェアで行う 「歩こう大会」など継続している事業も更に参加しやすく準備し、 スポーツ活動の普及により健康で過ごせるための事業を進めて 参ります。 ③中央公民館 - 37 - 中央公民館の各事業は社会教育の実働部隊として最大限に 力を発揮し、重点施策を絞って臨みたいと考えております。第一 に子供たちへの自然体験や農業体験を行う「子どもダッシュ村」 事業です。稲作農業体験を主な活動内容として、年間10回程 度実施し、親子で参加できるよう一貫した内容で実施して参りま す。 第二は、「ふるさと再発見ツアー」です。昨年は地域の自然や 隠れた文化や・文化財を中心にふるさと再発見ツアーを実施し ました。タケシマシシウド保護活動ツアーや、海士町指定の天然 記念物パトロールツアーを実施して参りました。本年度もこれら に加えて島前3島や各地区を巡る再発見ツアーを計画して参り ます。 活動の様子は、毎月発行している中央公民館だより「絆」や、 あまチャンネル、IP 告知によって広く情報発信してまいります。 ④集落支援事業 集落支援事業は、5年目となりました。本年度は、中央公民館、 地域共育課、あまマーレに集落支援員を直接配置し教育委員 会職員と一緒に各事業を実施して参ります。 また昨年から継続している地区については引き続き支援を行 います。そのほかの地区も課題に応じて方策を検討し、地域の 方々と一つ一つ実行して参ります。集落を見守り、各種団体をつ - 38 - なぎ、集落を元気にするサポーターとして本年度も、関係する各 課や関係機関とも連携して事業を進めて参ります。 〔隠岐島前高校魅力化プロジェクト関連について〕 隠岐島前高校魅力化プロジェクト関連については、全国から 島前高校への志願者数も順調に増えております。先頃行われた 平成 27 年度の島外からの推薦入試志願者数は過去最多の55 名となり、倍率は県内トップの2倍強となりました。また、島前三町 村からの一般入試における入学希望者も目標としていた7割を 超えるところとなりました。これも、島前高校をはじめ、島前三町 村の各中学校や多くの関係者の努力の賜物だと感謝しておりま す。この場をお借りして厚く御礼を申し上げたいと存じます。 去る 3 月 1 日には、第 50 回卒業式が行われ、魅力化プロジェ クトが取り組んで初めて二クラス化が実現した、平成 24 年度入学 の 51 名の生徒たちは口々に、何時か島に恩返しをしたいなど嬉 しい言葉を残して、勇躍それぞれの進路に向かって船出をして 行きました。 引き続き、島外からの生徒を一定数確保し、全国から意欲あ る生徒たちの入学により、島内の子どもたちも刺激を受けるなど、 よりよい「地域の学校づくり」に更に邁進してまいります。 一方、今後の島前地域の中学校卒業生の推移を見てみると、 - 39 - 6年後には三町村合わせて20人台になるという、非常に厳しい 状況が迫っており、こうした現実から目を逸さず、これを果敢に 乗り越えていくためには、昨年策定した「新魅力化構想」に基づ いた新たな戦略と、そして地域あげての実行力が必要となりま す。 新年度より、「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」の名称を近く 島前管内の関係機関や保護者の理解を得て「隠岐島前教育魅 力化プロジェクト」と改称いたしたいと考えており、今後は高校の 魅力化にのみ特化するのではなく、三町村で連携しながら保育 園から高校まで「地域教育の魅力化」を推進してまいりたいと思 います。 具体的には、これまで高校にのみ配置していたコーディネー ターを新年度より海士中学校にも新たに配置いたします。これに より小中高の交流授業や、地域協働の「ふるさと教育」や「キャリ ア教育」などを進めてまいります。 また、「新魅力化構想」に基づく「グローカル人材」の育成も推 進していきます。現状の「地域課題解決型」の学習に加え、国際 交流や海外での実践など、島の子どもたちが、グローバルとロー カル、両側面から物事を考え、多角的な視野で行動できるように なることを目指してまいります。足下の島前地域を様々なかたち で世界と結ぶことで多文化を知る中から、新たな視点や価値観 - 40 - を学び、それぞれの違いを超えて協働する力を養うなど、まさに 「グローカルな感覚」を磨く教育を実践してまいります。 更に、島の子どもたちが、島内だけでなく、島外との子どもた ちと切磋琢磨、共創できるような環境づくりを目指し、インターネ ットを活用した授業配信の仕組みにも取り組んでいきます。 こうした「新たな学び」の拠点として、平成26年度末に完成予 定の「隠岐國学習センター」の新校舎と、年明けに完成した「島 前研修交流センター」を積極的に活用してまいります。具体的に は、中高生の基礎学力の向上や、高校生と地域との密接な関わ りをより強化できるよう努めてまいります。 新年度から「新魅力化構想」の実現に向けていよいよ本格的 に動き出すことになりますが、今後も多くの苦難や試練が予想さ れます。この構想が島前地域一丸となって持続可能な取り組み にしていくために、更に全力で努めてまいります。議員の皆さま も一層のご支援とご協力を宜しくお願い致します。 以上、私の施政方針並びに提案理由の説明を申述べました が、今議会に提案させていただきました提出議案は、平成 27 年 度一般会計予算は 46億7千347万8千円(対前年比20.54% 減)となっております。特別会計予算につきましては、国民健康 保険事業勘定特別会計4億541万2千円(対前年比6.16%増)、 - 41 - 診療施設勘定特別会計4億2千804万6千円(対前年比2.13% 増)、歯科診療施設勘定特別会計5千74万2千円(対前年比3. 92%増)、簡易水道特別会計1億8千231万6千円(対前年比4 0.06%減)、下水道特別会計2億9千432万2千円(対前年比4. 85%減)、後期高齢者特別会計8千397万2千円(対前年比7.6 6%増)となっており、各会計の総額は61億1千828万8千円(対 前年比17.58%減)となっており、以上予算案は 7 件でありま す。 予算以外の条例案件等は、条例の制定に関するもの 3 件と、 条例を改正するもの 12 件です。 その他、公の施設の指定管理者の指定についてが 1 件、建設 工事請負契約が 1 件と海士町教育長の選任等人事案件が 3 件 の計 27 案件を提案しております。 この後、予算案を含め諸議案につきましては、各担当課長から 説明させることに致します。 何とぞ宜しくご審議のほど、お願い申し上げまして、私の説明 を終了いたします。 - 42 -
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