知っておきたいメンテ技術 第 6 回 知っておきたいメンテ技術 2−5.錆の種類とコンクリートのひび割れ ―錆の膨張― 鉄筋が腐食して生じる錆は、酸化鉄ではなく無機化学的には水酸化物、水和酸化物 (オキシ水酸化物)などと呼ばれ、水溶液中で生じる直径 1μm 以下の粒子であるコ ロイド粒子が集まったもので、実際には金属塩などを含んだ複雑な構造をしています。 連載第5回で簡単に記述しましたが、鉄筋表面上で保護被膜が破壊されると、鉄イ オン(Fe2+)とコンクリート中の水酸基(OH−)とが反応し、2価の水酸化物 (Fe(OH) 2 )が生成します。これが『緑さび』とよばれる錆ですが、直ぐに酸化 するので、われわれが観察してもなかなか見つけることが出来ません。2価の水酸化 物は3価の水酸化物となり、水を失うことで水和酸化物(FeOOH)に変化します。 水和酸化物は三つの多形を持っています。α−FeOOH(ゲーサイト)、β−FeOOH (アカガネイト)、γ−FeOOH(レピドクロサイト)です。大気中の錆ではβ−FeOOH は存在しませんが、塩分環境下で存在するようになります。 水和酸化物が酸化してマグネタイト(Fe 3 O 4 )と呼ばれる『黒さび』に変化します。 鉄筋の錆は、三つの多形を持った FeOOH とマグネタイトの微粒子が集まったものと 考えられています。錆層はきわめて隙間多い状態で、隙間に酸素や水分が侵入するこ とで錆の速度が加速します。表−6.1は鉄錆の環境別成分量の表です。 表−6.1 鉄錆の環境別成分量 6−1) 環境名 支配イオン α−FeOOH β−FeOOH γ−FeOOH Fe 3O4 アモルファス質 都市・工業地帯 硫酸イオン 30∼65% 0% 20∼30% <20% 相当量 海岸地帯 塩化物イオン 15∼80% <30% <10% 10∼85% 相当量 生成した錆の体積は2 .5∼4 倍にも膨れあがるといわれていま す。この体積膨張がコンクリート のひびわれを誘発します。皆さん の中には、鉄筋腐食が生じている にも係わらず、コンクリートにひ び割れが発生していない場合を経 験されている方もいらっしゃるか と思います。これは図−6に示す ようにかぶりが影響しています。 図−6 鉄筋腐食膨張によるコンクリートの ひび割れパターン 6 − 2 ) 6−1)井上勝也:錆をめぐる話 題、p36、裳華房 6−2)社団法人 日本コンクリート工学協会 究委員会報告書、p27 コンクリート構造物の電気防食法研 難易度 ★★☆☆☆
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