ヴェローナというまちは、アディジェ川沿いに古代ローマの計画都市が建設

ヴェローナというまちは、アディジェ川沿いに古代ローマの計画都市が建設
されたことに由来している。その構造が、まちを歩くと見えてくる。アレーナ
という有名な古代の円形闘技場があるが、ここは夏の野外オペラの舞台として
非常に有名で、世界中の音楽ファンを惹きつけている。その経済効果はものす
ごく高い。そしてイメージを高めている。まちの中心にはローマ時代の広場が
ある。時代を越えてずっと受け継がれてきた広場は、野菜市が立つ非常に魅力
的で庶民的な空間だ。
まちの至る所に遺跡が出てきている。地上にあるものもあれば、道路の下に
あるものをギャラリーのように見せている所もある。銀行の地下から出てきた
床のモザイクを、吹き抜け空間にして、お客さんが下を覗いて見られるように
している。そういうスポットも何箇所かある。裁判所として使われている建物
は、地下から住宅の遺構や道路の石が出てきていて、ギャラリーのように訪ね
ることができる。
いわばタイムスリップができるわけで、訪れた人々の意識が古代ローマのま
ちまで一気に飛ぶ事ができると、それだけまちへのイマジネーションが膨らむ。
大掛かりな仕掛はないが、まちのいろいろな所に、古代中世、ルネッサンスの
建物がたくさんある。それが現代に活かされている。
アレーナの野外オペラには、着飾った音楽ファンも気楽な格好をした市民た
ちもやって来て、サンドイッチと生ハムとワインで楽しんでいる。オペラ公演
は12時過ぎまでかかるが、終わった後にまっすぐ家へ帰る人はいない。ホテル
へ泊まっている人も、家へ帰る人も、必ずどこかへ立ち寄って、都市全体が演
劇空間になる。歩行者空間というものが、徹底化しているから、人間のスケー
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アリア
オペラなどで歌われる声楽曲のこと。また
曲の中でも特に「聞かせどころ」を指すこと
もある。
ルで出来た街路を、オペラがはねた後にアリアの一節を歌いながら、みんな楽
しそうに余韻をエンジョイして、居酒屋へ行き、バーへ行き、レストランへ行
き楽しむ。非常に夜の生活が豊かだ。これはまちの中に人が住んでいなければ
できない事だと思う。
都市の魅力はいろいろな要素で考えなければいけないが、歴史の重なり、自
然と都市とのバランスを考えつつ、とりわけ都心部をどうやってショーアップ
するか、活気のある、魅力のあるものにしていくかは重要なテーマだ。町の真
ん中は、いろいろなアクティビティを持っていなければならない。もちろん建
築的に、アーバンデザイン的に、人を惹きつける魅力があるのは当然だが、そ
の使い方が重要になる。
イタリアのまちの都心部には、日曜日になると家族連れが集まってくる。乳
母車を押しているカップルがものすごく多い。都市の真ん中に家族が住んでい
たり、家族連れで行ってみたくなるような、伸び伸びした空間があるというこ
とだ。この辺は、日本のまちとは大きく異なる。ヴィチェンツァのサロンのよ
うなしゃれたフォーマルな広場でも、露店市が立ったり、ランジェリーショッ
プが突然出てきたりする。雑貨を売ったりするような広場もあるし、広場の裏
には野菜や果物を売っている日常のマーケットがあるなど、本当に市民が親し
く使う空間になっている。
日本人では箱モノ主義ではないが、建物の中だけ一生懸命プランニングし、
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