第三部 イタイタイ病闘争資料 章 第 第一章 運動の記録 弁護団声明(被害者が提訴決定したに際して) 心として、全国の住民の生活と健康を守るための斗いの第一歩であり 人聞が人間としてすこやかな生活をなすための裁判である。 従ってこの裁判の目的に共感をもたれる人々の協力を心から要請す るとともに我々弁護団も又更に拡大強化し、被害者、支援者、弁護団 昭和四十三年一月七日 が団結し、勝利することを誓うものである。 イタイイタイ病弁護団 弁護団声明(訴訟提起にあたって﹀ より三井金属神岡鉱業所によって排出されるカドミウム等の重金属に この原因については、萩野博士を中心とする多数の科学者の努力に とともに三井金属鉱業が今日まで行なってきた生存権侵害の事実を追 れてきた多くの被害者の苦痛のいく分でもつぐなうことを目的とする ている企業災害に対する警鐘となし、ひいてはこんどかかる惨禍によ って地域住民の健康や生命がおびやかされることのないことを願って 提起されたものであります。 我々弁護団はこのような被害者の決意及び支援者、支援団体の協力 あるため、単に訴訟活動での抵抗のみならず各種の困難な障害が伴う もとより長期にわたることが予想され、また相手とするのは大企業で 私たちはこの訴訟はかならず勝利をうるものと確信していますが、 に深い敬意を表するとともにこれを全面的に支持し、訴を近いうちに ことと思います。従ってそれだけに被害者および地域住民、支援者、 支援団体および弁護団の堅い結束がとりわけ重要となるわけでありま 提起することを決議した。 示すものである。 これは本鉱害問題を根本的に解決しようとする被害者の固い決意を とを決定した。 被害者は今回支援者支援団体の協力の下に、今回訴訟にふみきるこ 及し、その不法行為責任を明確にすることによって現在各地で発生し この訴訟は多年にわたりイタイイタイ病に苦しみ、尊い生命を奪わ えを提起しました。 井金属鉱業株式会社に対し、損害賠償の請求をするため富山地裁に訴 木日、私たち弁護団はイタイイタイ病の被害者らの依頼人として三 2 基づくことが明らかにされ 、我 々弁護団はこれを確信した。 る。更に地域一帯の農作物災害がみられてきた。 百五拾数名の疑似患者が報告されており、又約千名の潜在患者があ 既に百拾数名の死亡者を出し、七拾余名の患者が現存している他、 大な損害が発生してきており誠に非惨である。 富 山県婦 負郡婦中 町熊野地区 を中心と して人体・ 農作物等に対 し莫 結集し本事件の調査打合せをした。 我々弁護団は思想信条党派をこえて、 ヒューマニズムの立場の下に 1 この訴訟は単にイタイイタイ病のみではなく神通川流域の鉱害を中 227 運動の記録 す。これらの力を基礎として、最後までがんばり通す決意でありま 正力 助 我々の当初の確認が正しかったことをはっきりと 証明しています。 なんら己れの過失なくして、三井金属の利益のために、尊い命が傷 つけられ、奪われていくことを我々は絶対に容認できない。経済の成 つけられてきた 、 過 去の悲 し い鉱害の歴史を再びくりかえ して はなり 長によって 、 最も恩恵をうけるべき人聞が虫けらの様に一方的にふみ ません。 このイタイイタイ病をなくすことは、単に被害者のみならず、国民 の生命と健康、財産を公害から守る運動であると確信します。日本一 の公害といわれるこのイタイイタイ病は 、 文 字 通 り マ ン モ ス 裁 判 と し て展開されようとしており 、 それ故に 、 今後一層、被害者 ・弁護団 ・ 支援団体は結束を固め、不退転の決意で、所期の目的達成まで、パク 進することを内外に宣言する。 イタイイタイ病第二次訴訟激励集会 一九六八年一 O 月八日 しかし ながら 、加 害者である三井金属は何らその企業責任を負おう 判所に訴を提起しました 。本年三月九日に二八名が訴を提起 し て以 一、 本日三五二名の者がイタイイタイ病訴訟第二陣として富 山 地方裁 第二次訴訟提起にあたっての声明 とせず、むしろ、過日の第三回公判においては、厚生省の結論すら否 束もかたまり 、 被害の補償と公害の絶滅を期 して 訴提起のはこびと 態にかんがみ、このイタイイタイ病を絶滅し、日本から公害をなくす 被害者救済と被害拡大防止を遅らせている状態であります。かかる事 表し、私達の主張の正しさが政府によって確認されました。これは 鉱業神岡鉱業所が排出するカドミウムである ﹂ と い う 公 式 見 解 を 発 二、この間五月八日には厚生省が﹁イタイイタイ病の原因は三井金属 なったものであります。 るために、裁判闘争・大衆運動によって解決せざるをえないという、 更に、国・県当局にしても、何ら有効な措置をとらず、いたずらに といわ ざるをえません。 来、県内をはじめ全国の人々の支援と激励をうけ被害地域住民の結 ます。 し 、 全国にさきがけて ﹁ 公 害病 ﹂ と発表した ことは承知の通りであり 金属神岡鉱業所が流した カドミウ ム に よ る 慢 性 中 毒 で あ る ﹂ と 認 定 月八日には、厚生省の結論が発表され、この﹁イタイイタイ病は三井 訴を提起して以来、すでに三回の公判を終えております。又、去る五 三月六日、幾多の困難と迫害にもめげず、二十八名の患者、遺族は いました 。 償を要求して、三井金属神岡鉱業所を相手どって、第二次訴訟を行な 本 日三五二 名の患者及び要観察者 、遺族は五億七千万余円の損害賠 す 。 昭和四十三年三月九日 団長 イタイイタイ病弁護団 之 イタイイタイ病第二次訴訟激励集会大会宣言 喜 定するという、全く非人間的・反社会的な態度に出ており、言語道断 4 3 2 2 8 れによりイタイイタイ病の原因は被告会社の流したカドミウムであ された結果、国の公式見解となった点に重要な意味があります。こ の力と因習によりくもらされていた原因が真理の光の前に明らかに と考えています。また私達は全国の公害問題に対する適切なとりく 今後もくりかえされるのです。私達は日本から公害を絶滅するとい です。公害に対する企業責任があいまいにされているかぎり悲劇は タイイタイ病や水俣病の危険は今もなお全国各地に存在しているの され新たな恐怖をよびおこしました。日本の川や海や空は汚されイ ることが公知の事実となったのであります。 三、 かつて被害者代表が補償要求に行った際﹁大三井だから逃げもか みがなされる中でイタイイタイ病の被害は直ちに救済され、今後の 四、県内の小矢部川や大分県・兵庫県に有機水銀やカドミウムが検出 くれもしない。公の機関によって原因が明らかになればいつでも補 被害発生の原因をとりのぞくことができるものと考えています。私 良心的な科学者や被害地域住民の長年の苦難の努力によって異説が 償する﹂と云ってこれを追いかえした被告会社はこの明解な厚生省 て行く事をここに声明致します。 達は勝利を確信し全国民の一層の支援のもとにこの裁判を押し進め 一つ一つ論破され学問的には有効な反論がなくなって、今まで資本 見解が出されるや不誠実な態度を示しこれに従おうとしません。ま う全国民的な利益のためにもこの裁判をかちぬかなければならない た第一陣の裁判においても全面否認の態度をとり三回の公判を経た イタイイタイ病対策協議会 昭和四十三年十月八日 せん。被告会社のこの態度は過去の多くの鉱害紛争においてそうで イタイイタイ病訴訟弁護団 富山県イタイイタイ病対策会議 今日にいたるも私達の主張に対応する具体的な主張を何もしていま あったように訴訟を長びかせ被害者の側を経済的・組織的困難にお イタイイタイ病弁護団事務局常駐と とし入れて闘争を押しつぶすという使い古された方法をとっている と断ぜざるを得ません。私達は第一陣の訴訟においてこのことを指 摘し裁判所は決してこのような会社の引きのばしに応じてはならな いことを要請して参りました。迅速な裁判によってはじめて客観的 きたかつての被害者とはちがっています。まだ微力ではあり未熟で 本格的立証段階に入ることになりました。その第一弾として一一月 る損害賠償請求訴訟は、本年九月二O 日に第三回口頭弁論を終え、 一、イタイイタイ病患者らと遺族による三井金属鉱業株式会社に対す 当面の運動についての声明 はあるけれど被告会社のどんな妨害に対してもそれをのりこえてい 一五、二ハ日の両日カドミウムを流した犯人、被告三井金属鉱業所 はいっこうに改まっておりません。しかし私達はもう泣寝入りして な公平が保たれるからであります。にもかかわらず被告会社の態度 く被害地域住民の結束があり、被害を自らの問題ととらえて共に闘 を中心に裁判所による現場検証が行なわれます。 またこの裁判の外に、厚生省がイタイイタイ病を公害病と認定し う支援団体があり若い力にあふれた全国的な弁護団の活動があり、 5 更にこれをあたたかくっつむ全国民的な支持があります。被告会社 の企みは必ず失敗に帰するでありましょう。 2 2 9 章 第 運動の記録 たことやこれまでの裁判の進展、そして全国的な公害斗争の盛り上 昭和四十三年一 O 月一 O 日 イタイイタイ病訴訟弁護団 イタイイタイ病対策協議会 りに勇気づけられて、被災者ならびにその遺族の殆んどが去る一 O 月八日に第二次訴訟を提起し、その原告の数は合計三五二名に及ん イタイイタイ病対策会議 こうしてイタイイタイ病のたたかいは訴訟と運動の両面で飛躍的 に発展すべき重要な段階をむかえています。 の各民主団体、市民の人達とともに、イタイイタイ病のたたかいは る三井金属鉱業株式会社に対する損害賠償請求訴訟は、本年九月二 一、富山県神通川流域で発生したイタイイタイ病患者らと遺族らによ 二、私達弁護団、対策協議会、対策会 議 の三者はこれを支援する県内 全国の公害斗争の 重 要な一環であることを確認し、企業の利潤追及 亘って被告三井金属鉱業の神岡鉱業所を中心にイタイイタイ病の原 O 日に第三田口頭弁論期日を終え、来る一一月一五、二ハの両日に のうち代表的な人達が提起したものでありますが、本年五月厚生省 また現在富山地裁に係属している右損害賠償請求事件は、被災者 になりました。 因であるカドミウムの排出状況について現場検証が行なわれること の犠牲にされ、泣きねいりを余儀なくされてきた従来の鉱害訴訟の 付弁護団事務局の常駐について 日開イ病訴訟に関し訴訟救助の適用を要請する署名運動について 人達が大挙して来る一 O 月八日を期して訴訟を提起する運びとなり 争の盛り上りに勇気づけられて被災者ならびにその遺族の殆んどの が公害病と断定したことや本件訴訟の進展、そして全国的な公害斗 四、私達はこれらの運動がイタイイタイ病公害斗争を勝利させるため ました。その規模は被災者数にして約一五O名、訴額にして約六億 新訴に関し特設大法延の使用を要請する署名運動について に、欠くことのできない重要な運動として、県内の民主団体をはじ ることを確認し、企業の利潤追求の犠牲にされ、泣きねいりを余儀 もにイタイイタイ病のたたかいは全国の公害斗争の重要な一環であ これを支援する県労協をはじめとする県内の各民主団体の人達とと 二、ところで、私達弁護団は地元の被災者ならびにその遺族、そして て飛躍的に発展すべき重要な時期をむかえております。 こうしてイタイイタイ病のたたかいは、訴訟と運動の両面におい 円になります。 利させるため一 層奮闘する決意であることを、ここに芦明します。 公害を絶滅し、生活と健康を守るイタイイタイ病のたたかいを勝 を一層盛り上げるよう努力したいと考えます。 護士を中心とする弁護団事務局の常駐について支援を強化し、運動 また、特に対策協議会と対策会議は弁護団の決意に応えて近藤弁 強く訴えるものです。 め、公害斗争に支援を寄せてくれている全国の人々に、その支援を ω 次のことを決定し、直ちに 実 施する予定です。 三、そこで私達はイタイイタイ病斗争を発展させる当面の運動として して絶対に勝利させなくてはならないと考えています。 敗北の歴史を国民の生命と基本権を守る勝利の歴史に変える転期と 弁護団﹁資金カンパのお願い﹂ でおり、さらに今後第三次の訴訟を提起すベく準備中であります。 6 2 3 0 なくされてきた従来の鉱害訴訟の敗北の歴史を国民の基本的人権を 守る勝利の歴史に変える転期として絶対に勝利させなくてはならな いと考えています。 イタイイタイ病対策について を中心とする強力な弁護団事務局を確立することが必要であると考 主団体等との緊密な連絡を強化するため、現地富山県に常駐弁護士 え、莫大な準備作業、現地の原告の人達、そしてこれを支援する民 理解と御支援をいただきたく私達の訴えを申し上げたいと思います。 生しているイタイイタイ病問題について、神岡町の皆さんの暖かい御 富山県の婦中町、富山市、大沢野町、八尾町の神通川流域の一部に発 神岡町の皆さん 人道的立場で暖かい御支援を えるに至りました。この点については、本件訴訟提起の当初から弁 私達 の訴え 三、そこで私達弁護団は本件訴訟斗争が飛躍的に前進する時期を迎 護団としては問題にしていたことですが、このたびようやく具体化 私達イ病患者や遺族は本年三月やむにやまれず訴訟をおこしました。 なりました。近藤弁護士は当面はイ病訴訟に半専従的に活躍し将来 タイ病弁護団副団長近藤忠孝弁護士が現地富山市に常駐することに 態を決してひきおこしてはならないと考えております。同時に被災地 又、私達は、従業員や、町民の皆さんの生活に影響を及ぼすような事 生活に影響するような膨大なものでは決してありません。 しかし私達の訴えは大三井金属の経営をぐらつかせ 、 町民の皆さんの とも一生を富山県民主勢力の発展のために頑張る覚悟でおります。 そこで私たち弁護団一向、このたびの近藤弁護士の献身的な現地 繰り返してはいけないと考え、決意しております。 ばまれ、この世を去ってゆかなければならないような不幸は、二度と ても保障してもらいたい、人の生命が公害によっていつのまにかむし い、イ病を根絶したい、人間として生きぬく生存の権利だけは何とし 域にあっては、もうこれ以上子や孫にイ病の被害を与えてはいけな 常駐にこたえ、かつ現地に強力な弁護団事務局を確立し、三OO名 私達の今回の訴えは人間として生きぬくための最後の叫びとして病の イタイイタイ病は古くから発生し、一度この病にかかると全治するこ 原因不明のまま さるようお願い致します。 お互いに生きぬく権利を認めあい、私達の訴えを暖い気持で御理解下 原因を明らかにするためなのです。 をこえる弁護団の連絡体制を強化するため、弁護団の活動資金援助 昭和四十三年一 O 月 イタイイタイ訴訟弁護団一同 利させるために絶大な御支援と御協力をおねがいいたします。 公害を絶滅し、生活と健康を守るイタイイタイ病のたたかいを勝 を広汎な法律家の人達に要請するものであります。 ける進展に伴うだけの資金は充分ではありません。 四、本件のたたかいは徐々に発展してまいりましたが、訴訟の面にお そして今回、東京弁護士会所属元青年法律家協会議長・イタイイ することになったものです。 7 とを知らず、村人は業病、奇病と考え、かた身のせまい思いで、この 2 3 1 運動の記録 第一章 病が何であるか知らないまま、多くの人々がただ﹁イタイイタイ﹂と 富山県イタイイタイ病対策会議 イタイイタイ病訴訟弁護団 入り込み、長い間門を閉ざしてきた三井金属神岡鉱業所の現場検証を 私たちイ病弁護団は、一五、二ハの二日にかけて、岐阜県神岡町に からお祝い致します。 総評弁護団臨時総会および討論集会が成功裡に開催されたことを心 総 評 弁護 団 討 論 集 会 へ のメッ セー ジ イタイイタイ病弁護団からの 岬きながらこの世を去っていきました。 しかし、人の生命を尊び、病を研究した多くの学者の努力により私達 の病は 、 業病、奇病ではなく、白からの病弱や欠陥によって発生した 厚生省の見解発表 ものではない事が明らかにされました。 多くの学者や厚生省の調査により科学の真理は、ただ一つであること が証明されました。 本年五月八日厚生省は、イタイイタイ病は三井金属神岡鉱業所より流 発表いたしました。 虚偽の事実を述べるなど証拠隠滅にやっきとなりました。 団の写真撮影や録音活動に妨害を加え、構内の説明には真実を隠し、 被告会社およびその代理人は、この検証にあたり、私たち原告弁護 しました。 い。公的機関によって原因等が発表されればいつでも補償する﹂と発 全国から参加した三O名の常任弁護団は、これと断固斗い、立証上 人道的立場で暖かい御支援を 容が早期に実現することを期待しております。 た 。 廃さい堆積場などの重要部分を残して、突如打ち切る暴挙にでまし り、原告申請の検証順序に従って行なってきた神岡鉱業所の検証を、 は、神岡鉱業所の検証予定時間が正午までであったことをたてにと しかし、二ハ日正午に至り、被告代理人とこれに追随した裁判所 も多くの成果を得ました。 本日十五日裁判所が現場検証の為に神岡を訪れます。 のすべてが被告会社のしつような妨害行為にあったこと、被災地を含 われわれ弁護団は、予定時間どおりに検証を進行できなかった原因 う、心から御願い申し上げます。 ち切る必要性は全くないことを明らかにしましたが、被告の妨害行為 む全体の検証予定時間は午後五時までで正午に神岡鉱業所の検証を打 イタイイタイ病対策協議会 昭和四十三年十一月十五日 た暖かい気持で御理解を賜わり、広い視野で御支援をいただきますよ 私達はこの機会に町民の皆様に私達の気持を訴え、人道的立場にたっ した、三井金属経営者の発言であると確信いたしております。発言内 私達はこの言葉こそ真実の言葉であり、イ病に悩む患者の立場を理解 言してきました。 れもしな 過去三井金属鉱業の会社主脳は﹁大三井だから逃げも、隠一 です。 私達の病がこの時始めて公的機関によって公害病として認められたの 出したカドミウムによる慢性中毒であり、公害病であるという見解を 8 2 3 2 てが被告会社施設にかくされているという公害訴訟の特質を全く理解 て、神岡鉱業所の検証を打ち切った裁判所の暴挙、公害の原因のすべ に対して何ら適切な訴訟指揮をせず、原告の正当な異議申立を却下し 斗っている人々が参加しましたが、これを契機に、今やこの斗いは県 今回の検証には、三O O名を越える被害者、支援団体、全国の公害と 総評弁護団の先生方には、従来から物心両面の暖かい御援助と御指 内外のあらゆる層の人予を結集して大きく飛躍しようとしています。 導をいただいてきましたが、今後もこの斗いを水俣病や四日市の斗い していない裁判長の態度に対する怒りは、その極に達し、原告弁護団 の異議を却下した段階で、岡村裁判長に対する忌避の申立をせざるを と結合して更に発展させるため了ぞうの御指導御援助合お願い致しま 三井金属は、多年にわたり神通川に、カドミウムを放流しつづけ、 このような事態が放置される社会的条件のもとでは、日本国民の生 奮斗する全国六O O名の弁護士を擁する総評弁護団は、イタイイタイ 総評に結集する労働者を中心とした国民の生活と権利を守るために 対する抗議ハ総評弁護団) イタイイタイ病訴訟現場検証打ち切りに イタイイタイ病訴訟弁護団一同 一九六八年一一月一七日 りましょう。 労働者、農民の生命と健康、権利を守り発展させるためともに頑張 す 。 えませんでした。 下流の土や飲料水や作物を汚し、農民の骨を侵し、数百名の生命を奪 い、身体を殺傷してきました。そして、神通川流域の農民が、片時も 激痛から解放されることなく、身をもだえることもできず、ただイタ イイタイと泣きさけんで死んでいく世にも悲惨な病気を発生させまし た 。 他方三井金属は、多年にわたり、地元民や萩野博士らのイタイイタ イ病の原因究明活動を妨害し続け、本年五月厚生省によってその原因 が確定されてもなお開きなおり、裁判を引きのばして責任を免れよう 命と健康はますます大きな危険にさらされます。全国から集った青法 病訴訟の進行について、国民の生存権を実現する裁判として当初から としています。 協会員を中心とする三O 名の常任弁護団は三O O名のイ病弁護団を編 注目してきました。 とりわけ、去る一一月一五、二ハの二日にわたって行なわれた現場 長い間因習と無力感の中で斗えなかった被害地域の人々もようやく 業所の過去数十年に及ぶ工場施設の実態とカドミウム放流過程が明ら い、その他多数の農民の生活と健康を破壊した犯人、三井金属神岡鉱 検証は、カドミウムを放出して、神通川流域の農民数百名の生命を奪 立ち上り、富山県をはじめとする県内の民主団体もこれをつつんで斗 しかるに、貴裁判所が、二ハ日正午、この重大な検証を、原告弁護 う体制が次第に出来上ってきましたが、全国の法律家の積極的な援助 期勝利のために頑張っています。 の責任をてってい的に追求しようという決意にもえて、この訴訟の早 成し、被害者を救済し、日本の公害を絶滅するため、三井独占と権力 9 かにされるべきものであるだけに特に注視していました。 が更にこれをはげましています。 2 3 3 章 第 運動の記録 団の異議を全く無視し、検証をつ守つけるに十分な時間的余裕があった 証を、何ら正当な理由がないにかかわらず、これを半ばにして打ち切 われわれは、貴裁判所が、全国民の見守るなかで行われた今回の検 されないよう要請するものである。 治 質を十分理解し、全国民の期待を裏切る今回のようなことを今後絶対 ったことに対し、強く抗 議 す る と と も に 、 貴 裁 判 所 が 、 公 害 訴 訟 の 特 にもかかわらず、これを打ち切ったことは全く不当というほかありま 新聞報道、原告弁護団報告によると、貴裁判所が神岡鉱業所の検証 せん。 を 正 午 で 打 ち 切 っ た 唯 一 の 根 拠 は、 単 に 、 ﹁ 神 岡 鉱 業 所 の 検 証 は 正 午 一九六八年一一月一七日 静 総評弁護団 会長 白 イ までにおえるよう﹂との予定時間がきたからというのにあります。 支援決議(総評弁護団﹀ イタイイタイ病訴訟に対する 殿殿殿 、が、被告代理人の一方的申出を取り上 げ 、 原 告 弁 護 団 の 正 当 な 異 議 を た の で あ り 、 検 証 を 続 け る の に 何 の支 障 も な か っ た の に 、 貴 裁 判 所 ら 、 原 告 の 指 図 ど お り 、 神 岡 鉱 業所 の検証を続行するのが当然であっ ち、三井金属こそ、この病気をつくり出し多くの人を悲嘆のどん底に けて来た工場廃液中に多量に含まれるカドミウムにあること、すなわ 流、岐阜県神岡町の三井金属鉱業神岡鉱業所が長年この川に放流し続 かつて、風土病として放 置 さ れ て き た こ の 病 気 の 原 因 が 、 神 通 川 上 にも拘らず、利潤追求の前には、国民の生命、身体、財産を犠牲に 却下し、神岡鉱業所の検証を打ち切ったことは、残された鉱業所の検 であること。 つき落した元兇であることは、今や科学的に明らかにされている。 た 主とする多数住民の生命を奪い、身体を損ね、その生活を破壊してき 富山県下、神通川流域に発生したイタイイタイ病は、これまで農民を 佐 しかし、われわれは、貴裁判所が次の諸点について、重大な誤りを 裁判長岡村利男 富山地方裁判所民事部 質問がなければ具体的事項の説明をせず、その説明もことさら事実を 裁判官藤邦晴 一、検証予定時間が遅れた原因は、被告会社説明員が原告代理人の 犯したものと断。せざるをえません。 いんぺいしたことにあるにかかわらず、これに対して貴裁判所が適切 裁判官前重和 二、公害訴訟であるイタイイタイ病訴訟では、カドミウムなどの原 な訴訟指揮をしなかったこと。 因物質の流出過程についての全証拠が被告会社にかくされているので あるから、裁判所自らが、積極的に、被告会社の実態を究明しなけれ ついての義務を放棄し、むしろ被告会社に迎合する態度をとったこ ば、裁判の公正は保証されないものであるが、貴裁判所は、この点に ル コ 三、原告は、検証後の立証方法を考慮した上、検証を申請し、検証 庵伊 証予定場所が重要な場所であるだけに、検証そのものを放棄したもの 順序も原告の指示に基いて行なうことの合意ができていたのであるか 1 0 234 してはばからない三井独占は、被害者住民に対し、加害者として責任 し、国家権力に庇護される大企業が今後再びかかる悲惨な害悪をもた 全に勝利させることにより 、 公 害 と い わ れ る も の の 実 態 を 明 ら か に らすことを阻止するためにも、被告三井金属に対し 、 はっきりと 加害 を果す誠意 の片鱗 すら示そうとはしない 。 ここに至って、長年の屈従に耐え忍んできた被害者とその家族は多 する損害賠償請求の訴提起を決断し、右訴訟は富山地方裁判所に係属 、 団の総 力 をあ げて 局面を迎えたイタイイタイ病の完全勝利をめざ し 民、市民と共に 、 明年 一月から証人尋問が行なわれるという重大な新 我 々 は 、 真 実 と 人 権 を 尊 び 、 不 正 を 憎 む 全 国 の 広 範 な 労 働 者、 農 者としての 責 任を認めさせなければならない。 して 、 全国民注視の中で、審理が進められ、多数の総評弁護団員を含 くの地域住民、 農 民、市民の広範な支持のもとに、三井金属を被告と む三OO名の弁護士が全国から原告代理人として参加し 、献身的な訴 、 ‘ I l i l i I l l i I l l イタイイタイ病対策協議会 イタイイタイ病対策会議 - 1 1 1 1 1 1 1 - 十一月十六日の岡村裁判官の検証打ち切りに対する 忌 避問題については 一万 五千名に近い人が裁 判官に対する 抗議 大きな 世論の中で 団 一層強力な支援活動を行なうものである。右決議する。 ω 護 訟活動を展開している。 一九六八年一一月一七日 弁 国民の生活と権利 を守り、 資 本の不正に抗して斗ってきた我々は、 1 1 新潟 、熊本、四日市等の公害斗争と併せて、イタイイタイ病訴訟を完 イタイイタイ病の裁判費用免除と大法廷使用要求署名 イタイイタイ 病の裁判費用免除 と 評 h h u j iuuuNUM u u u u u u h a s u s h i大 法 廷 使 用 要 求 署 名 の お 願 いu 総 の署名をょせるなど、イタイイタイ病訴訟は、公害絶滅を願う県内外の多数の人の支援を得て大きな盛り 上 りをみせ 235 章 第 動動の記録 ています。 勝利をめざして これを力として被害者および弁護団は、一二井金属側の引きのばし策動を排して早期完全勝利をめざし頑張っていま すが、そのためになお克服すべきいくつかの間題をかかえています 裁判費用免除は当然の要求 その一つは二八五万円の印紙の外、証拠調に要する多額の裁判費用の問題です。半年に十八億円の利益をあげる三 井金属の繁栄の犠牲となってイタイイタイ病の被害者は地獄の苦しみを味わってきました。貴重な労働力を失ったば かりか、農業被害による収穫の減少という損害を蒙り、医療費や看病その他目にみえない出費が農家の家計を苦しめ てきました。このような苦難の末、日本有数の大企業三井金属を相手に裁判をおこした今、被害者に多額の裁判費用 を負担しろというのはあまりにも不公平に過ぎます。民事訴訟法第一一八条によりこれを免除する方法がある以上被 害者に裁判費用を負担させるべきではないと考え、訴訟救助の申立をしました。 マンモス裁判にふさわしい大法廷の設置を 第二は法廷の問題です。富山地方裁判所の法廷は狭く、三八O 名の原告はもとより、重大な関心をよせている多数 の県民の傍聴は全く不可能です。裁判は原告や県民の傍聴のもとに行なわれてこそ三井側の妨害を排し真に公正に進 められるものです。裁判所法第六九条により地方裁判所は最高裁判所の許可を得て裁判所以外の場所に大会場を設け 法廷を聞くことができます。私たちは早期に正しい裁判を得るためにこのような大法廷を設けるよう関係当局に強く 要請致します。 みんなの要求として 私たちは当面この二つの要求を大勢の人々の協力を得て実現したいと考えております。右趣旨に御賛同の上御署名 昭和四十三年十二月 下さるようお願い致します。 236 章 第 運運の記録 官 廷 を 数 多 れ る 裁 公 害 タ イ 裁 公 害 l 土 設のベ イ 置と原仁ヒ1 き 判 イ 判 す だはタの るとと悲 惨 イ 訴 こ傍考 病訟 費 と聴えな訴 要 J を者 希望ま被害 訟 用 す。を告 原は 要 求 致の しい ま る すイ タ イ イ タ イ 病 訴 公 日 お し 、 て、 」 ラー ー れ ら の 人 々 の 入 廷 し う る 大 237 う 全 員者 害 被 け 7 こ I こに 原 告 の 参 加 つ負 い担 てさ 訴せ 訟る と救助 べ き 重ので 大申は 関 な立な をい 心認と をめ考 よ るえ せこ ま るとす 人を 求 富山地方裁判所所長殿 一 、私 達 富山地方裁判所民事部裁判官殿 一 一 、 法 .- 且 . EL 住 所 氏 名 々 の 要 求 傍し 聴ま のす も と 印 開 カ ミ 左記のことを要求し署名致します 』 - - る は 設のだ 置 す原 告 と判 考は こ る 、 と ま え 惨 悲 要 。る 原 t 仁と 1 の イ タ イ イ タ イ 参 加 病 重 し 、 て、 寄 お ー : .- れ ら の 人 々 の 入 所 求 と 、 大 な 関 む を 訴 訟 住 一御 中 と を 傍 者 練 希 望 す 。 被 害 な 要 求 を し う け まの すい こ ア 裁判所 廷多数ベ公害 裁 私 を き 達 左記のことを要求し署名致します 法 日夜古同 ・ -. . . 氏 J せ る 人 々 の 名 傍 聴 の も 廷 し う 開 る カ ミ 大 れ と ~p . 1 238 す 。 四、しかし、このようなぼう大な数の原告の参加する訴訟を審理する 同社並びに国及び富山県の適切な対策もなく、多くの住民が苦痛に 株式会社神岡鉱業所の排出する鉱毒によるものと指摘されながら、 一、富山県神通川流域で発生したイタイイタイ病は多年三井金属鉱業 して尊重されなければならないものです。同時にイタイイタイ病の として法廷に出廷して公開の裁判をうける権利は害山法上の基本権と を含む)の原告しか入廷できない状態です。元来、原告らが当事者 傍 聴 席 に 原 告 が 出 席 し た と し て も 、 わ ず か 六O 名(うち記者席一一 大 法 廷 設 置 に 関 す る 要 請書 うめきながら悲惨な状態で死亡することを放置してきました。しか の憤りから自然に裁判へ関心を深め、法廷に白から出席することも 患者及びその遺族らが前記のような悲惨な状態におかれてきた長年 富山地方裁判所の法廷は極めて狭く、現在使用中の最も広い法廷の し今日では、昨年五月厚生省の発表でもイタイイタイ病の原因が前 強く希望しています。 記三井金属神岡鉱業所の流した排水、廃さい中に含まれるカドミウ ウムによるものであることが明確にされ、この結果厚生省はイタイ 一一、一方イタイイタイ病患者とその遺族らによる三井金属鉱業株式会 く、傍聴できない者があふれでいる状況です。そして私達は今後は り、毎回多数の者が傍聴席をうずめて法廷を傍聴しているだけでな また富山県民も、地元イタイイタイ病訴訟の成行きに注目してお 社を相手とする損害賠償請求訴訟は、その第一次の訴訟が昨年三月 さらにより多数のものが傍聴できるよう、特設大法廷の設置を強く タイ病を国として初めて公害病と認定しました。 に富山地方裁判所に提起され、すでに立証の段階に入っています。 富山地方裁判所に要請しています。 喜之助 徳政 義久 る大法廷を設置し、憲法にしたがって公開による公正な裁判を行う 所が富山地方裁判所に、緊急に、原告及び傍聴者が出廷・傍聴でき 五、そこで私達は、このイタイイタイ病訴訟の特質に鑑み、最高裁判 続いて第二次訴訟は昨年一 O 月 に 提 起 さ れ 、 近 く 第 一 回 の 口 頭 弁 論 を迎えようとしています。そして被災住民はさらに本年三月第三次 の訴訟を提起すベく、現在その準備を進めています。 三、これらイタイイタイ病に関する訴訟は、その被害が言語に絶する ことができるよう、強く要請します。 力 田 松 悲惨なものであるばかりでなく、大正、昭和と長期に亘り、婦負郡 正森小 昭和四四年一月二二日 富山市イタイイタイ病対策協議会 団会会 長長長 婦中町を中心として大沢野町、八尾町及び富山市に及ぶ広範な地域 において人間並びに農作物に甚大な損害を及ぼしていることから日 本の歴史上まれな大規模な公害裁判というべきであります。 イタイイタイ病訴訟弁護団 富山県イタイイタイ病対策会議 殿 この結果、原告の数も第一次訴訟では二八人、第二次訴訟では三 石 外 最高裁判所 長官 来 日 五二名にのぼり、さらに潜在患者が一千名といわれ、第三次訴訟で はかなりの数の原告がみこまれています。そして今後引続いて広範 239 1 2 な地域に亘る農業被害にもとずく損害賠償訴訟も予想されていま 田 運動の記録 第一章 名 に よ り 、 四 日 市 、 新 潟 に ひ き つづき 、 全 国 で 第 三 番 目 の公害訴訟を 提 起 しま し た 。 そ れ 以 来 既 に 一 年 が す ぎ 、 この間一 O 名 の 新 患 者 の 発 病 は 公 害 病 で あ る ﹂ と 発 表 し 裁 判 も 六 回 を む か え て 現 場 検 証、 証人尋 生と原告四名を含む二十四名の死亡をみています。又、厚生省は﹁イ 問も行なわれましたが未だに加害者である三井金属は、萩野博士や多 イ タ イ イ タ イ 病 訴 訟 の 大 法 廷 設 置 に 関 す る 要 請書 今 般、 私達 は 、 最 高 裁 判 所 に 対 し 、 イ タ イ イ タ イ 病 訴 訟 に つ い て 別 、 責任を免れようと くの学者の研究成果を否定し 、審理をひきのば し 会長小松義久 富 山市 イ タ イ イ タ イ 病 対 策 協 議 会 喜之助 富 山県 イ タ イ イ タ イ 病 対 策 会 議 会長森田徳 団長正力 イタイイタイ病訴訟弁護団 大法廷設置を実現し、早期完全勝利を 三井金属を告発する さらには、行政機関においても、三井金属に対する毅然とした態度 と具体的な措置や施策を示さず、被害者はひきつづき、大きな苦しみ 訴訟も第三次にいたって、原告総数回二八名、損害賠償請求額六億 の中におかれています。 八千五百万円、原告弁護団二九九名の文字どおり、日本一のマンモス 裁判となりました。 現在も一 O 二 名 の 患 者 と 二 三 ニ 名 の 要 観 察 者 を か ぞ え ているとき、 裁判の早期完全勝利をかちとり 、 三井金属に対する徹底的な責任追求 と被害の完全補償さらには公害のない住みよい生活環境をつくるた め、 県民総ぐるみ運動に発展させなければなりません。 妨害を排し、公正な裁判をかちとるため 裁判費用免除と大法廷の設置を! イタイイタイ病被害者は、半年に一八億円の利益をあげる三井金属 の繁栄の犠牲となって 、 地 獄 の 苦 し み を 味 わ っ て き ま し た 。 貴 重 な 労 働 力 を 失ったばかりか 、 農 業 被 害 に よ る 収 獲 の 減 少 と い う 損 害 を 蒙 り、 医 療 費 や 看 病 そ の 他 目 に み え な い 出 資 が 農 家 の 家 計 を 苦 し め て き 長 年、 業 病 と あ き ら め 、 権 利 主 張 を 鴎 賭 し て い た 、 イ タ イ イ タ イ 病 まりにも不公平に過、ぎます。民事訴訟法第一一八条により、これを免 判をおこした今、被害者に多額の裁判費用を負担しろというのは 、 あ ました。このような苦難の末、日本有数の大企業三井金属を相手に裁 被害地の人々が、数多くの困難を克服して、昨年の三月九日原告二八 被害の完全防止と補償を行なえ! する態度をとっています。 紙要請書記載の趣旨にもとずき憲法にしたがって公開による公正な裁 虎 昭和四四年一月二二日 山 日本弁護士連合会 会長萩 殿 イタイイタイ病の裁判費用免除と 雄 政 富山地方裁判所に大法廷が設置されますよう、御援助を要請します。 イ病訴訟のもつ特質に鑑み、私達の要請の趣旨を御理解頂き、緊急に つきま しては、 貴 日 本 弁 護 士 連 合 会 に お か れ で も 、 本 件 イ タ イ イ タ 判 を 行 な え る よ う 特 設 の 大 法 廷 設 置 に 関 して 要請をいたしました。 1 3 1 4 240 除する方法がある以上、被害者に裁判費用を負担させるべきでない 可能です。裁判は原告や県民の傍聴のもとに行なわれてこそ、三井側 原告はもとより、重大な関心をよせている多数の県民の傍聴は全く不 第二は法廷の問題です。富山地方裁判所は法廷が狭く、四二八名の 示をすることは、まさにこの点にあり、裁判の結論に対して、何ら不 ます。自治体自ら援助金を出し、訴訟の認められるべきことの意思表 まかなってはじめて対等の裁判がすすめられ、公平になるものであり に認めさせ、更に立証に要する費用を多くの人や団体の援助によって 公害裁判進行上、大きな障害になっています。﹁訴訟救助﹂を裁判所 さらに、三井金属という大財闘を相手の訴訟は莫大な費用がかかり 人命尊重のため、公益上極めて重要な問題であります。 の妨害を排し、真に公正に進められるものです。裁判所法第六九条に し、訴訟救助は当然であります。 より、地裁は最高裁の許可を得て、裁判所以外の場所に大会場を設 当な介入をするものでなく、むしろ当然のことです。 く、これは司法行政上の問題であって、自治体がこれを決議しても、 又、大法廷設置の問題も、裁判の内容に何ら影響を与えるものでな け、法廷を聞くことができます。私たちは、早期に正しい裁判を得る ために、大法廷を設けるよう、関係当局に強く要請します。 県当局の反県民的態度を追求する イ病裁判は﹁公益﹂を守る公害絶滅の闘い の予算を計上しました。地方自治体が被害者の立場にたち、訴訟支援 るイ対協に対し、イタイイタイ病訴訟支援対策費として、一 OO万円 助を要請したことに端を発し、婦中町が三月議会に原告等の団体であ 様な態度は、昨年の厚生省見解をねじまげようとした態度と相通ずる 知事として極めて不謹慎であり、その責任的責任は重大である。この 的にはイ病の元凶である三井金属を利していることになり、被害県の って、かかる県知事の発言は、高まりつつある運動に水をかけ、結果 住民の生活と権利を守ることこそ、自治体の存在意義があるのであ 司法権に対する介入にはなりません。 をきめたことは、全国でもはじめてであり、さらに、県をはじめ、全 ものがあります。 原告や弁護団、支援団体が、県下の各自治体に対し、訴訟支援、援 県下の市町村に対し、訴訟支援、大法廷設置を議決する様、要請しま 体が財政的援助をすることは、地方自治法二三二条の二項│知事は地 しかし、吉田県知事 は、﹁イ 病裁判やその運動をする団体に 、 自 治 者を救済することは出来ません。怒りをこめて、吉田県知事の姿勢を 的無責任性のあらわれであります。これでは真に公害を絶滅し、被害 を監督し、被害者を救済しなければならない任務を放棄した、反県民 企業の利潤第一主義による横暴性を自らの行政責任において、これ 方自治体が公益上必要な場合、寄附又は補助をすることが出来るーに 追求するものであり、その見解を札弾するものである。 した。 てらして疑 義がある ﹂﹁審理中の事件の 一方に加担して、 意 見 書 を 提 一九六九年四月 イ病を公害として、国が認定したのは、まさに﹁公益上有害﹂と認め イタイイタイ病対策協議会 富 山県イタイイタイ病対策会 議 出するのは、司法に対する介入になる﹂という見解を発表しました。 たからにほかならない。﹁公益﹂をふみにじって公害の企業責任を明 確にして、公害絶滅を達成するイ病裁判は、住民福祉の維持、向上と 241 運動の記録 第一章 公害病認定一周年にあたって イ病闘争早期完全勝利・公害絶滅をかちとる声明 萩野先生をはじめとする研究陣の尽力と、屈辱をおして三井金属の責 をきるこの戦いを一日も早く完全に勝利させ、独占企業による長い人 現の戦いをひとつひとつ勝ちとって行きながら、全国公害闘争の先駆 私たちは、この意義あるときに行なわれる明日からの検証を被告側 242 力強く立ち上り、被害者、支援団体、弁護団は相互の連けいと団結を 一層強めて前進を重ねてきました。 昨年一一月には、近藤弁護士が当地に常駐してイ病弁護団事務局を 開設し、戦いを強力に軌道にのせ、この急速な運動の発展に対処し、 イ病闘争完全勝利の早期実現のために、このたび島林弁護士が熱烈な 期待のなかにこの事務局に加わり、ここに体制は一段と強固となって 今日を迎えました 。さらにその問、被災地自治体は、党派を超えてこ 任を繰り返し追及してきた被災地住民の粘り強い姿勢が あ っ た こ と に、改めて感慨を深くするものであります 。 間性無視の歴史を打ち破って新しい生命の世紀を開くべく、さらに一 の戦いに対する支援を決議するに至っております。 このような認定は、三井金属の加害行為に対する企業責任を明らか 丸となって戦い抜いてまいります。 昭和四四年五月七日 イタイイタイ病訴訟弁護団 富山県イタイイタイ病対策会 議 イタイイタイ病対策協議会 一層の御理解と御支援をお願いして、この声明と致します。 の妨害を打ち砕いて必ずや成功させ、当面の訴訟救助、大法廷設置実 にし、被害者の救済と公害絶滅への抜本的施策を強力に推し進めるた みならず、日本全土から公害を絶滅するための使命に目覚めて次々と た。長い苦しみに耐えてきた被害者たちは、ひとり自己の被害救済の 服しながら、着々とイ病闘争勝利のための基盤を固めてまいりまし これにひきかえ私たちはこの一年間、多くの障害をひとつひとつ克 た 。 要望に応えるべき措置をとろうとしないまま、一年を徒過してきまし を行なったのみで、それ以上何ら、被害者や公害絶滅を願う全国民の 加えて、当局は、単に﹁公害病﹂であると言い、治療費の公 費 負担 あってもますます絞滑な妨害を繰り返しております。 姿勢を強め、訴訟においては悪質な引き延ばしをもくろみ、訴訟外に に応じると 豪語してきたにも拘わらず、厚顔にも、一 層頑迷な抵抗の しかるに、三井金属は、かつて公的な認定があれば直ちに損害賠償 めにこそ、意義があることは明らかであります。 の熱意と学問的良心に基づいて、原因究明への努力を重ねられてきた この認定がなされるまでには、さまざまな妨害のなか、被害者救済 認定してから、ちょうど一年目にあたります。 明日五月八日は、厚生省がイタイイタイ病を﹁公害による疾病﹂と 1 5 第二章 自治体の動き 富山県婦中町議会決議 決議 昨今、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下、悪臭等のいわ している﹁イタイイタイ病﹂も昭和四三年五月八日厚生省より公害病 ゆる﹁公害﹂が大きな社会問題となっている。富山県に古くから発生 り、又医学的にも立証されており、勝訴の見込みは充分である。 永年病床に苦しめられ、経済的破綻の多かった原告とこれに対す 富山県婦負郡婦中町議会 裁判を公平に進めるためにも原告に対する訴訟救助の措置は不 る被告の経済的地位との差位の大きさは公知の事実である。 可欠である。以上決議する。 昭和四四年三月一 O 日 富山県婦中町議会議長 イタイイタイ病裁判に協力方依頼について 婦議第一七O 号 昭和四四年三月五日 良R するためにも誠に重要な意義をもっ裁判であると信じます。 されないという事を本裁判によって立証すると共に公害を未然に防止 公害は企業の責任であり、正義感の上からも人間尊重の面からも許 病裁判は現在富山市、八尾、大沢野、婦中各町合せて三八七名の原告 民事訴訟法第一一八条の救助の措置をとられたい。 い状態である。この様な法廷は誠に非民主的である。 名で報道陣一一名を除くと四九名しか傍聴できず、この問題に関 さて、公害裁判として全国の注目をあつめておりますイタイイタイ から敬意を表する次第であります。 日頃地域社会の発展、住民福祉の向上にご協力されている事に対し心 次 であると認定された。永年悲惨な苦しみを続けて来た患者及びその遺 市町村議会議長 婦中町議会議長 イタイイタイ病裁判に協力方依頼について 為 が、三井金属鉱業株式会社を相手に提訴いたしている処であります。 ⑪ 族は、今、三井金属鉱業株式会社を相手として鉱業法第一 O 九条に基 いて損害賠償の提訴を行なっている。社会問題である公害が企業責任 であるという事を明確にし、公害を絶滅して地域社会の発展、住民生 活の福祉向上をはかるためにも、本裁判は重要な意義をもっている。 1 1 1 予算編成 議 会を迎えて連日ご多用のことと存じ上げます。 田 2 心をもっ県民の傍聴が著しく制限される。又原告さえ全部入れな 現在の富山地方裁判所の法廷は、せまい上に傍聴席も定員六O 裁判所法第六九条第二項の適用を認められたい。 戸 ﹄ よって本町議会は本裁判に対しては次の 2点の実現を強く要請する。 1 2 殿 1 本公害は昨年五月八日厚生省の公的機関が認められたものであ 243 自治体の動き 第二章 このために、本町議会におきまして三月定例議会において別紙(他 すでに、本町議会議員が貴議会を訪れお願いいたしていると存じま すが、何卒貴議会におかれまして、私達の意のある処をご推察下さい まして、三月議会においてご決議下さいますようお願い申し上げる次 1 の婦中町 議 会 決 議 ) の と お り 要 請 決 議 い た す 事 を 決 し て お り ま す 。 貴 議 会 に お か れ ま し で も 、 誠 に お 手 数 で は ご ざ い ま す が 、木主旨にご 昭和四四年三月八日 自由民主党婦中支部 吉田実富山県知事はイタイイタイ病裁判やその運動をする団体に対す 支部長井上 る自治体の支援について法律的に疑義があるので県費による援助はで 夫 第でございます。 議会議長 富山県知事宛抗議文 でもなく、これが治療対策、予防対策にも多額の出費が嵩んでおりま 幸 賛同下さいまして与論喚起のためぜひとも三月定例議会において決議 要請書 下さ います よう伏して懇願いたす次第であります。 自民党婦中支部長 謹啓春寒殊のほか厳しき折柄、貴職益々ご健祥のことと存じおよろ さて、昨今新聞紙上をにぎわしております﹁イタイイタイ病﹂につ こび申し上げます。 きまして、各位にはいろいろとご関心をおよせ頂き感謝いたしており す。一面又、農産物にも及ぼす影響が杷憂され、米の自由化に伴って きないという見解をくりかえし表明している。 抗議文 広く婦中産米が敬遠される事を町民は非常に不安に思う等、大きな社 まして、本裁判が勝訴となり、その結果本町のイ病公害の要素が絶滅 なっておりますが、現時点において私達は被害をかかえる町といたし らえ、イ病裁判と交通事故の例に例えて﹁公益上必要かどうか疑義が においては寄附又は補助することができる﹂と規定されているのをと 第一に知事及び副知事は自治法第二三二条の二に﹁公益上必要な場合 題をもつものである。 されることによって、地域社会の発展と住民福祉向上のために立たざ ある﹂としているのであるがこれはイ病裁判及びこれを推進支援する 法第一一八条に基づく訴訟費用の救助の要請決議を行なうことにいた きまして、裁判所法第六九条第二項に基づく大法廷の開設、民事訴訟 それ故にこそ全国の注視をあびているのである。 明確にして公害絶滅を達成する被害地域の一大公害反対運動であり、 イ病裁判はイ病の原因を究明し、三井金属鉱業株式会社の企業責任を 運動を単に被害者の物とり事件ととらえていることを意味している。 した次第であります。 そのため、本町議会保守系議員団を中心に来る三月定例町議会にお るを得なくなった次第であります。 現在多数の町民が鉱業法第一 O 九 条 に 基 づ い て 損 害 賠 償 の 提 訴 を 行 しかし右見解は法的に誤りが あ る ば か り で な く 、政治的にも 重大な問 ます。ご承知のとおりカドミウムの被害は人命に関することは申すま 殿 会問題となっております。 4 3 2 4 4 健康が奪われ、甚大な農業被害を蒙ってきたのであり、その対策のた 三井金属のながしたカドミウムにより多年にわたり多数の県民の命と われわれは以上の諸点から県知事の前記発言とイ病に対する姿勢に対 り、その政治的責任は重大である。 利することになるのであり、被害県の知事としては全く不謹慎であ のと考えざるを得ない これは結果的にイ病の元凶である三井金属を めに県費も町費も支出されてきた。今イタイイタイ病裁判を早期に勝 し強く抗議するものである。 D 利することは被害者の損害の補償だけでなく、公害問題解決と県費の イタイイタイ病対策会議 支出による自治体の損失を将来加害者に請求するという点で重要な意 イタイイタイ病対策協議会 昭和四四年三月一五日 である。 イタイイタイ病弁護団 義をもっており、この意味で自治体にとっては公益上必要なものなの のみならず、三井金属側の発言によるとイタイイタイ病は風土病であ 富山県知事 士口 殿 るのは違法でないとされており、これを比較してもイ病に関する支出 判例上も温泉旅館業者の広告料に村が補助金を支出し一般客を誘致す たからに外ならない。 その原因究明が充分になされなかったため、その被害は放置され更に 害を与えてきました。長い間風土病とされ或いは栄養障害とされて、 し、多年にわたり神通川流域の県民の命と健康を奪い、甚大な農業被 るを得ないのである。 起を致しました。多数の県民がこれをわがことのように考え支援の活 や孫達に再びこのような苦しみを経験させてはならないとして訴訟提 昨年三月、被害者は三井金属鉱業株式会社の責任を明らかにし、嫁 第二に県知事のこの発言は、現在婦中町をはじめ県内各市町村におい 公害が県内各地で発生している今、イ病裁判をかちぬくことにより 動をはじめました。 支援に立上ろうとする動きに対して、県知事の地位を利用しこれに水 公害の企業責任を明確にすることが県民の生命と健康を守ることにな て住民の生活と健康を守るという公益的立場から自治体をあげてイ病 ば現在各自治体が支出している寄附金補助金の殆んどが違法とならざ 多くの死者を出しました。 三井金属の流したカドミウムは富山県の美しく豊かな自然をおか 弁護団公開質問状 実 り又は栄養障害であるとしてあたかも婦中町・大沢野町・八尾町・富 山市の地域又は住民に固有の欠陥があるかの如き旨をのべているが、 かかる故なき汚名をそそぐことこそ当該地区の住民は勿論、その住民 によって構成されている地方自治体が先づ第一になすべきことであっ て、このことこそ公益上の必要と言う以外にないのである。 しかも婦中町を中心とする富山県民が三井金属を相手としてその原因 と責任を明確にしようとしているときをおいてこの時はない。 田 が適法であることは明らかである。もしこれが違法であるとするなら 婦中町でイ病支援のため町費の支出をきめたことはかかる立場にたっ 5 をかけ足を引いてイ病支援運動が深く拡がるのを阻止しようとするも 245 自治体の動き 第二章 ると考えたからに外なりません。また、この裁判には全国各地から三 OO名の弁護士が参加し、常任として毎回約二O名の弁護士が東京、 公害問題解決の主要な柱はその企業責任を明確にすることにありま す。しかしイタイイタイ病のような悲惨な被害を発生させておきなが も無力なものであります。企業に公害の責任を自覚させ、公害を発生 るのです。このような社会的条件の中でいかに公害の防止をとなえて ら未だこれを否認し続けている大企業が存在し、これが放置されてい な解決に重要な影 響を もっており、それに寄与することが法律家の社 させることは企業にとっても損失であることをわからせてはじめて真 これは、イ病裁判を早期にかちぬくことが日本の公害問題の根本的 名古屋、金沢等から来県して訴訟活動に従事しています。 会的責務であると考えたからであります。 動をする団体に対して自治体が財政的援助をすることは地方自治法二 今、イ病裁判が被害者の多数を結集してすすめられておりますが、 害を絶滅することをめざしている点で全国の注目をあびております。 の公害防止が可能なのです。イ病裁判はこの企業責任を明確にし、公 三二条の二にてらし法律的に疑義がある ﹂﹁審理中の事件の一方に加 これに協力することは公害対策基本法第一条第五条等の﹁当該地域の しかるに、吉田実富山県知事ならびに県当局は﹁イ病裁判やその運 担して意見書を提出するのは司法に対する介入になる﹂、という見解 か。イ病裁判は決して個人と会社の争いではないのです。この意味で 社会的条件に応じた施策﹂という地方自治体の責務ではないでしょう イ病裁判支援はまさに﹁公益﹂なのですが、これについて疑義がある を表明してまいりました。これは県内各自治体でイ病支援の気運がも った発言として重大な影響をもっております。 り上がっている現段階に、県知事という重要な地位にあるものが行な イ病裁判の勝敗は自治体にとっても 重要な影響があるのではないでし 第二三井金属の流したカドミウムは自治体にも損害を与えており、 とされるのはどんな根拠によるものか明らかにして下さい。 は、法律家として無視し得ず、左記事項について県知事の見解を正 ょうか。 わたし達は、かかる立場にあるものが誤った法解釈を表明すること し、あわせて県民ならびに各自治体関係者の御理解を得たいと考え、 であります。このように自治体自身が三井金属に対し債権を有してい のであり、この支出分は法律的に三井金属に請求できることは明らか 三井金属の加害行為により住民の税金の使用を余儀なくされているも おり、イ病患者のため国民健康保険の赤字も増大しています。これは イ病に関し関係自治体は研究費調査費医療費その他財政支出をして 左記公開質問状を発するに至ったものであります。 戸 ﹄ 第一イ病の原因究明に協力するのは自治体の責務ではないでしょう カ は重要な意味をもっています。イ病裁判に関しては自治体は決して第 現在、日本各地で公害が多発し、富山県も多くの公害問題をかかえ ています。公害は企業の生産活動にともなう社会的災害であり、その 三者ではなく、これへの協力は自分自身の利益のためなのです。 この点について県知事はどのようにお考えでしょうか。 るとき、請求の基礎が同一であるイ病裁判に早期完全に勝利すること 被害の広範さと 刻 さ は 公 害 問 題 の 解 決 が 単 な る 個 人 の 努 力 で は な 深 、 く、国や地方自治体の積極的な施策を必要とするに至っています。 はこのことを示しています。 公害対策基本法に国や地方公共団体の 責務 が各所で明示されているの 2 4 6 とは自治体の責務ではないでしょうか。 第三地域や住民の汚名をとりのぞき、農業の経営発展に寄与するこ られるべきことの意思表示をすることはまさにこの点に関することで るかのように宣伝し、そのことが多くの悲劇を生んできました。今裁 障害であるとして、あたかも被害地域又はその住民に固有の欠陥があ の内容に何ら影響を与えるものではありません。これは司法行政上の 参加の得られる法廷を実現すべきであるという意思表示であり 、 裁 判 廷しかないという現状にかんがみ 、出 廷を希望する原告全員と県民の また大法廷設置の問題も、原告そのものすら入廷出来ない小さな法 ろ当然のことであります。 あり 、 裁判の結論に対して何ら不当な介入をするものではなく、む し 判によ りイ病の原因が三井金属の流したカドミウムにあることを確定 三井金属側や一部の学者は、長い間、イ病は風土病であり又は栄養 することはかかる故なき汚名をとりのぞく上で重要な意義をもってい 問題であって自治体がこれを決議しても司法権に対する介入にはなり ません。大法廷設置という多くの県民の希望を、住民を代表する自治 ます。 また被害地域住民は従来甚大な農業被害を蒙ってきましたが今後も されてこそ民主的といえるのではないでしょうか。この点についての 県知事の見解を求めます。 体が決議することは当然のことであり、このようなことが正しく反影 すのではなく、その加害者に責任をとらせることによって解決すべき 第五工業奨励のためには特定企業に対し県費の支出が行なわれてい 米価制度との関係で米が売れなくなるのではないかという不安におそ であり、それによって被害地域ひいては県全体の農業の経営が守られ るのに、イ病被害者の公害裁判支援のためにこれを認めない理由があ われています。このようなものについてはこれにふたをしておしかく るものであります。農業被害と全く原因を同じくするイ病裁判で完全 にこそ自治体の存在意義があることを示しています。自治体が住民の こえる県費の支出がされることになっています。更に課税免除の優遇 をすることに加え、個々の企業の特定施設のために一、 めの奨励措置として、県は道路、橋、港湾、用排水路等の施設の整備 富山県工業奨励規則によれば県内の工場の新設、増設等の促進のた るのでしょうか。 ための政治をしようとする限りイ病裁判支援はむしろ当然のことであ もうけられます。工場誘致の問題についてはいろいろの見解があり、 憲法第九二条にいう地方自治の本旨は住民の生活と権利を守ること にかちぬくことは農業問題解決の上でも重要な意義をもっています。 ります。この点について県知事はどのようにお考えでしょうか。 ものであること、企業に対する前記の直接間接の援助が資本力をもっ 000万円を 第四イ病裁判支援がどうして司法に対する介入になるのでしょう それはここでは問わないことにしても、工場の進出が公害をもたらす イ病裁判に多額の費用がかかるということは、三井金属という大財 カ であります。 た営利会社への一そうの利益になっていることはだれの目にも明らか これに比較し、イ病被害地域の多数の住民は県民であること、即ち 閥を相手の公害裁判をすすめていく上で大きな障害になっています。 や団体の援助によってまかなってはじめて対等の裁判がすすめられ公 祖先伝来の土地に住んでいたというただそれだけの理由でこの病にか ﹁訴訟 救助﹂を 裁判所に認めさせ、更に立証に要する費用を多くの人 平になるものであります。自治体自ら援助金を出し、訴訟救助の認め 247 自治体の動き 第二章 が多年の苦難の歴史をのりこえ、失われたものの幾分かでもとりもど か り 、 患 者 も 家 族 も 苦 し み と 悲 し み を 味 わ せ ら れ ま し た 。 今 この人々 いておられますが、この前提は誤解がありますので、あらためて私の の二にてらし法律的に疑義がある﹂と私が発言したという前提に基づ すと同時に公害絶滅のために裁判に立ち上ったとき、住民により構成 県議会で表明しました私の見解は、第一に、イタイイタイ病の訴訟 見解をおったえし、回答にかえます。 費 用 に 直 接 県 費 を 支 出すること は、 法 的 に 疑 義 が あ る こ と 。第 二に、 される自治体がこれに協力して何故悪いのでしょうか。営利会社のた めに直接県費を支出できる自治体が自らの住民の公害裁判の支援のた イタイ病対策協議会への一般的補助であるから差し支えないこと。第 婦中町の百万円の支出は直接訴訟費用に対するものではなく、イタイ 三に、県の協 議 会 へ の 援 助 は 、 た だ い ま の 段 階 で は 考 え て お ら ず 、 医 めに支出できないという理由がわかりません。 この点について県知事の明解な説明を求めます 。 点であります。 療補助や治療方法の開発、患者へのお見舞などを行ないたいという三 以上の諸点について県知事の責任ある解答を早急に求めるものであ ります。 昭和四四年三月二二日 は、訴訟費用に地方自治体が支出することは法的に疑義があること、 一方、国会においても、この問題が論議され、その席上自治大臣ら 団長正力喜之助 イタイイタイ病訴訟弁護団 および対策協議会等への補助については、訴訟費用ではなく、公益上 の問題として調査費のようなものなら差し支えないが、それは地方自 副団長梨木作次郎 事務局長近藤忠孝 富山県知事 していることを申しそえる次第であります。 昭和四四年三月二四日 イタイイタイ病訴訟弁護団 士口 吉田県知事ならびに県当局は、三月県議会において、﹁イ病訴訟に イタイイタイ病対策会議声明 対して、自治体が財政的援助をすることは、地方自治法二三二条の二 実 三月二二日付の公開質問状は﹁イタイイタイ病裁判やその運動をす 田 最後に、私としてはこの訴訟問題が一日も早く解決されるよう熱望 この点、私の見解と根本的に一致しております。 治体の首長の判断の問題である、と答弁されたと聞いておりまして、 外二九四名 団員松波淳一 員島林樹 貴弁護団には、イタイイタイ病裁判につき、格段の御努力を払われ 団 ており、敬意を表する次第であります。 殿 富山県知事 吉実 殿 知事回答 書 田 る団体に対して自治体が財政的援助をすることは地方自治法二三二条 7 6 248 にてらし、法律的に疑義がある﹂﹁大法廷開設要求の意見書を提出す るのは、司法に対する介入になる﹂という見解をくり返し表明してき ました。これは、公害絶滅、イ病訴訟支援の議会決議や世論のもり上 りに水をかけ、結果として三井側を利する行為であり、更に、県民の 生命と健康を守る立場にある知事が、誤った法解釈の下に行政を運用 できないという事由から、イタイイタイ病訴訟弁護団は、公開質問状 することは、極めて大きな社会的問題であり、特に法律家として坐視 を去る三月二二日、吉田県知事に提出しました。 イタイイタイ病対策協議会、富山県イタイイタイ病対策会議はもと より、県民注視の中で、同月二四日、知事より回答書が寄せられまし た。しかし、その内容は、重要な問題について回答をさけ、全般に粗 雑で誠意がないといえます。 これは、被害者・支援団体及び弁護団の正論の前に、何ら反論する 余地がないことが証明されました。従って、 ω被害県の知事として、訴訟を支援し、財政的支出をすべきである。 ω訴訟救助と大法廷設置運動に協力することは、司法介入にはならな 、U ω患者と要観察者の生活保障を行なうこと。 イイタイ病対策会議・イタイイタイ病対策協議会は、知事に面会をも 以上の観点にたって、近く、イタイイタイ病訴訟弁護団・富山県イタ とめ、改めてイタイイタイ病訴訟支援に対する真意をただすことを、 富山県イタイイタイ病対策会議 本日の第十二回富山県イタイイタイ病対策会議幹事会で決定した。 一九六九、三、二五 249 自治体の動き 第二章 1 / 1 / 剖 団 団 局 局長 長長 1 穿 氏 高 水清織 山 日松波林島 近梨作 郎 次 正 木 藤 喜 力 幹則清 建夫夫義 潔 和昌淳樹 忠 孝 田 下 野 事 事務局 名 O 二 七 六 I O 七 六 二 I I O 七 六 二 l O 六 三 l O 三 四 ih O 七 六 i O 七 六 四 O l O 七 六 二 l O 六 七 l 所 電 l l % 一金山のり子一 桝i 石 原 樽 匠 司 純 子 吉 大 田 野 梅 田 石 橋 生 鳥 豊 田 宮 田 木 沢 朝 倉 康 平 満 晃 忠 佑 誠 瑛 子 進 正 幸 一 町 一 一 l 三 九│ 隆 行 一富山法律事務所 1 / 事 務 局 員 一 江川 節 雄 1 / i 一 │ 棚 通 夷 川 衣 上 法 律 事 務 所 柴 多 朝 日 O 七 四 1 / 占 八 七 五 O 九 六 │ 五 O 七 九 │ 一 一 占占 富山市桜町 一丁目六 番 一 二 号 O 二 七 六 九 i 二 六 一 │ 富山中央法律事務所 町 大 手 九 八 iー 二 九 1会 館 階 ル 四 田 ピ 三 五 七 │法 谷 律 事 務 渋 所 丘 ケ 四 町 二 八 六 l ー 七 元 町 九 三 ー │ 電話O 七六四 1 三二l O二八七 務 名簿・地図 田田 中中 第三章 事 事 務務 イタイイタイ病訴訟常任弁護団名簿 1 / JAi- ム ヱ 書 常 弁 任 O 七 O 六 一 東 法 律 事 務 所 中 二 北 所 律 法 京 事 務 東 ノ 五 一 ニ │ 二 階 五 O ハ 六 コ l O ハ 三 i 一 一 一 = 一 一 七 二 j 九 三 i 四 一 七 九 J ¥ . ! 一 一 O ニ 七 九 l 一 一 O ー O ニ 三 l O ー Q 三 = 四 l 八 九 八 l 五 六 九 七 五 七 l 一 三 五 l 四 七 l 一 六 四 i 五 O 一 九 250 章 三 第 名簿・地図 f J f l f f 主融書官完塁忠ム書 f J f J f l p f R F H f J f f E Z 霊長室手幹島竺銀一 f l f J H f J f f f J 1 1 1 1 1 1 1 / 1 1 1 1 1 1 1 / 1 1 1 1 1 1 1 1 1 J f J M f f E言 E E 川 石 1 1 1 1 1 1 1 1 富 山 郎次宣装車義扇 主 才 一 需清早事太事幸郎国市八昭早票管棄作 郎夫敏夫時子佑誠決 J 進宰正和昌夫昭二一郎陣吉夫千定男一俊明 1 1 F 1 1 1 1 1 1 / 1 1 義明郎幹則建夫義夫 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 弁護団氏名 f J 之忠淳一樹忠 孝 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 東 京 辛 島 亀井加藤藤加村岡春鋼大一大内大森大西孝小野寺利岡本屋大大竹子 紀 由榎本榎本宇津野経内稲見伊集院 石野石田池岡池田井上我妻秋田安達安藤有貧 川 荒 睦夫忠隆三雅友親宣郎ニ英雄典子子治 1 1 1 / 1 1 1 1 1 1 1 1 1 / 1 1 1 1 敦子造勇 1 1 1 1 1 1 武光行信泰親郎一友之実春隆 享 真 規 子 げ し 文男典真博康十郎寿朗功彦 昌 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 { 東 尽 塩島椎名 位阿佐藤沢口藤佐佐々佐々桜井桜井佐伯斎藤斎藤斎藤犀川小島小林林小小林古波正 偉 倉 小池小池藤工黒沢本国工藤菊池川島川口 雁 谷 節子麻校紗毅直久嘉代子義行木秀典恭木三千千恵公望仁義雄展夫暁代 千子成一健治幹治典芝 1 1 1 1 西西生中中中中中堂徳満猿鶴見津千葉高橋田田中田田中田中武武橋高高橋木壮 E 高 ノ L E 木 鈴菅原菅原鈴 木 嶋 村井村村西野津野山田 原 中 田田 洋 勝重二亀克公靖尚 玄憲孝俊 徳 峯 清 彦昭男郎雄夫夫夫志春彦達郎祐策児雄信雄登富雄正巌生一利明融 英亜信 夫隆保 柴 田 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 大 阪 加藤充 1 1 東 京 安富巌 1 1 香川公一 1 1 山根晃 1 1 金谷康夫 鏑木圭介 1 1 H 山本武一 吉成重善 1 1 1 1 畑山実 H 憲 ー 葉山水樹 1 1 1 1 原田敬三 1 1 片山善夫 1 1 1 1 鷲野忠雄 1 1 1 1 辛島宏 川浪満和 木村五郎 鬼追明夫 1 1 1 1 高橋信良 潔 1 1 1 1 床井茂 山下 1 1 H 坂東克彦 1 1 1 1 渡辺明 平山知子 兵頭進 樋渡洋三 大 新 11 埼 阪 潟 玉 木下肇 熊谷尚之 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 深道辰雄 1 1 1 1 石橋一晃 1 1 1 1 梅田満 1 1 熊野勝之 久保井一匡 1 1 1 1 1 1 藤本時義 1 1 1 1 1 1 福田拓 1 1 西岡芳樹 1 1 H 1 1 大野康平 H 1 1 淵上貫之 1 1 小林保夫 小林勤武 H 1 1 林仲豪 1 1 1 1 舟辺治朗 H 赤沢敬之 1 1 1 1 松浦基之 1 1 1 1 前川澄 1 1 児玉憲夫 1 1 1 1 阿形旨通 1 1 小牧英夫 1 1 1 1 荒木宏 1 1 1 1 1 1 松山正 1 1 佐藤哲 1 1 1 1 1 1 丸山武 1 1 坂本正寿 1 1 1 1 1 1 青木永光 沢田修 杉山彬 1 1 1 1 1 1 石川元也 H 1 / 家郷誠之 大 阪 東垣内清 徳永豪男 酉井善一 豊川 正 明 仲重信吉 徳田勝 永岡昇司 並河匡彦 中田明男 橋本敦 長野義孝 一服部素明 一花垣厚実 一花房秀吉 一浜 田 次 雄 一東中光雄 一原滋二 一平 山 芳 明 一福山孔市良 一細 見 茂 一三木一徳 一正森成二 一山 田 一 夫 一藤田一良 H 一渡 辺 孝 雄 一山 村 恒 年 1 1 1 1 井関和彦 高島照夫 H 1 1 鈴木康隆 井上祥子 伊多波重義 滝井繁男 1 1 田中征史 飯村佳夫 1 1 一松 本 品 行 宇賀神直 1 1 高谷弘子 岡村渥子 1 1 一渡 辺 義 次 1 1 M 蔚立明 1 1 H H 京都一吉田隆行 川越庸吉 稲村五男 1 1 谷五佐夫 田川和幸 谷沢忠彦 田中清和 1 1 竹内勤 表久守 太田隆徳 辻公夫 面洋 大錦義昭 岡田和義 河村武信 1 1 H 1 1 1 1 水上学 1 1 1 1 裳輪弘隆 宮川光治 1 1 1 1 宮里邦雄 村田茂 1 1 1 1 1 1 裳輸幸代 望月千世子 1 1 1 1 宮沢洋夫 本永寛昭 1 1 1 1 2 5 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 森本明信 H H 1 1 森本清一 山口邦明 山口治夫 1 1 1 1 1 1 安田叡 山田伸夫 1 1 I l 1 1 東京 橋 本 紀 徳 1 1 1 1 ー 東 尽 1 1 H 1 1 義夫通雄健三権寛明勇治紘道基巌勝 雄 1 / 1 1 1 1屋 名古香川広島 町 1 1 1 1 1 1 / 1 1 1 / 都 京 天野藤安榊原樽石村高芦よ川村渡辺吉原下山平田高谷柴田林 小 フ 末治巌匠司純子文敏 1 1 1 1 1 1 1 1 z k子ク馨稔綾子武義弘昌弦行義 和 1 1 1 1 1 1 1 1 1 / 屋名 古 雄 伊 小山藤加太田小栗橋大脇大脇大尾関志 斗 大矢井上石川伊藤伊藤藤 斉恭一博之孝夫茂美雅子保彦 1 1 1 1 1 1 / 1 / 1 1 1 徳和哲夫之康行宏泰方静 男 1 / 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1屋名 古 平野林原山原山花回野目冨島木高井白藤佐阪本桜川桜井 郷 保光佑三剛子恵啓一汎照男輝雄俊介典子貞一玄陽紀成 文 縄 沖 M 福 問 1 1 1 1 / 1 1 1 1 1 1 屋名 古 u 金城坂銅角鷲見湯木 i 岡 森田森谷喜 子 美 水松永藤 井 睦フ洋 太 郎 ロ 立身弘邦夫利輔和彦健 辰 男繁 252 被 地略図 災 (凡例) A 堆積場 ----用水路 富 口 山 被災地 県 ぃ / ' , , <, μ ・ 1 地 f if J トノ @君、.γ・ベr @ 下の本坑 岐阜県 井 川 神金 岡属 鉱鉱 山業 253 ︹解説︺ この裁判記録を 読まれる人々のために イタイイタイ病の実態 二、患者と家族の苦しみ 被害地域に二O 年ぐらいの生活歴のある婦人に多発している。 身をもだえることさえも出来ずただ、痛さを耐えなければならない 患者の苦しみは言葉に云い現わすことが出来ない。イ病弁護団は当初 調査活動の中で患者に痛さの表現をせまったが、かえってきた言葉は ただ﹁いたい、いたい﹂というだけであり、法律家の非情さというも のをあらためて思い知らされた経験がある。苦しみは患者だけにとど 一家の柱としての主婦が倒れ、主要な労働力が失われた上、さわ まらず家庭生活全体を破壊する。 ω っても痛がるむずかしい看病が家族の負担となり、しかもそれが長 、 療費が最近公費負担になるまでは月平均四J 五 000円、多い時 同じ鉱害による農作物の減収、労働力不足による減収に加え、治 年月にわたって続く。 ω には一 O 、000円をこえる。その外目に見えない出費が重み、家 悲劇の例もでている。 股関節が開かず恥骨が痛むということから夫婦生活はできず家庭 庭に暗やみがおとずれる。 ω 患者は歩行や起立のときのみならず、病床での僅かな体動にも激痛 ところにねかされ孤独と絶望のうちに死を待つ。こうした深刻な事 聞に対してこの病気をはばかり、患者は人目をはばかってうす暗い 凶長い間原因がわからなかったために﹁業病﹂と思い込まされ、世 におそわれ、日夜睡眠を妨害されて果は呼吸したり笑っただけでも局 例も枚挙に暇ない。 い﹂と絶叫しながら死亡するに至るものである。また症例には脊髄の 野町、八尾町にかけて、南北約二一キロ、東西六キロにわたる一帯で この病気の発生地域は、富山県神通川の流域、婦中町、富山市、大沢 三、被害の規模 圧迫骨折のために身長が三0 センチメートルも短縮した例もあり、肋 昭和四四年三月一日現在の認定患者一 O 二名、潜在患者数千名とされ ある。犠牲者は確認されたものだけで昭和一二年以来死者一二八名、 いる。 骨だけで二八ケ所、全身で七二ケ所の骨折という悲惨な記録も残って く、苦痛のために食慾が極度に減退し、衰弱しきって﹁いたい、いた 所に痛みを覚えるなどして、かたときも苦痛から解放されることがな なって臥床するに至り、病状は悪化の一途をたどっていく。 年継続し遂には挫傷、捻挫のような軽い外傷によって突然歩行不能と うな特有の歩き方をするようになり、かかる状態が数年あるいは十数 覚え、やがて身体各部にリューマチに似た痔痛がおこり、アヒルのよ 症状は当初大腿部、腰、肩、背中、膝をはじめ諸関節などに刺痛を 改変層を生ずることなどを特徴とする病気である。 値が増加し、①血清無機燐が減少し、④骨の脱灰現象がおこり、⑤骨 ①糖尿、蛋白尿などの尿所見がみられ、②アルカリフォスファタ i ゼ 一般にカドミウムによる腎性骨軟化症といわれており、臨床的には 一、イタイイタイ病とは I 254 - 説 解 ている。 に同じような被害が出てからではおそい、公害と労働災害は共通の問 力者を動かして﹁神岡鉱山を守る会﹂を結成させ、﹁裁判に負けると している。一方、三井金属は訴が提起されるや、当時の町長や町の有 題であるという立場に立ち、被害者や弁護団に対して友好的姿勢を示 川一つへだてて発生地域が限定されていることから伝染性はなく、 町がつぶれる﹂と宣伝したが、現在は開庖休業状態にある。 四、原 姑嫁に発病し、他地域に嫁いだ娘に発病しないことから遺伝性はな イ病とのたたかい く、気候や栄養において隣接地域と何ら変ったことがないところか ら、他から運ばれた毒物が原因であることに着目され、萩野博士らに よって原因究明が続けられた。その苦難の歴史は広く知られていると れた。そしてこれは動物実験や病理学上の研究等によって裏づけら の水系には検出されないことから流出源は神岡鉱業所であると断定さ ミウムは神岡鉱業所附近とその下流に多く検出され、その上流及び他 う一つの歴史がある。村や部落の代表が長い道のりを徒歩で行ったと 年代より住民代表が神岡鉱山へ押しかけ鉱毒除去の要求をしてきたも つの柱があるが、鉱毒の被害が稲作減収の面にあらわれはじめた大正 イ病との斗いは萩野昇博士の半生をかけた原因究明の斗いにその一 一、住民の運動の歴史 れ、原因究明としては既に疑う余地のないものとなった。このような 戦後組織的斗いがはじまり、昭和二三年六月神通川鉱毒対策協議会 いう今日のデモの先駆的行動もあったと伝えられている。 金属神岡鉱業所から排出したカドミウムを原因として発生したもので (会長笹井清太郎)を結成して神岡鉱山と交渉をなし、農作物の被 五、加害企業 年間より鉱毒による稲作の被害が出はじめ、大正一一年にはイ病患者 こにのり出して以来、日本資本主義とともに発展してきた。既に大正 業関係者も結束して交渉に当り補償金を支払わせた。 収に対する補償﹂と自らの責任を認めた文言がある。一方、流域の漁 その協定書には、はっきりと﹁神岡鉱業所の操業による農作物の減 万円)。 り、特に戦時中の乱掘はひどかった。戦後は朝戦動乱で息をふきかえ と思われる患者が発生している。生産量は昭和に入ってどんどん高ま ここには全国金属鉱山労働組合(全鉱)に所属する神岡鉱山労働組 とも立ち上りをおくらせた原因とされている。地域青年団がこれに対 こらなかった。業病とあきらめていたこと、被害者が婦人であったこ てはその原因がわからなかったという悪条件によりなかなか斗いがお 農業被害に対する補償要求は比較的早く行なわれたが、イ病につい 合があり、組織内での討論を重ねた末、厚生省見解を支持するとの立 し昭和四二年度の半期の利益は十六億円であった。 二、イ病対策協議会の結成 神岡鉱山の歴史は古く養老年間にはじまる。三井組が明治七年にこ 害に対する補償金を毎年支払わせるようになった(現在は年額二五O ある﹂との見解を発表し、鉱毒説は国の公式見解にまでなった。 調査にもとづき昭和四三年五月八日厚生省は﹁イタイイタイ病は三井 被害地域の土壌、穀物から多量のカドミウムが検出され、そのカド ころである(萩野昇著﹁イタイイタイ病との斗い﹂参照)。 H 場を明確にし、イ病患者の見舞にも出かけてきている。自分達の仲間 2 5 5 因 するとりくみをはじめたこともあったが実を結ばないまま時がすぎ 云わなければならない。 厚生省はイ病の原因は三井であるとの見解を発表し公害認定をした い。その点を責められると﹁それは裁判の結果待ち﹂と逃げている。 けれど、患者の具体的な救済については抜本的な施策を行っていな た。萩野博士、小林教授、吉岡教授らの努力によって原因が究明され てくる中でようやく斗いの芽が出、昭和四一年一一月婦中町能小野地区 hk 山の構内に立入って検査する﹂ことを約しておきながらこれを実行し 、。 通産省は、鉱山保安局長が、﹁被害者側の代表と通産省がともに鉱 の患者と家族らが ﹁イタイイタイ病対策協議会﹂(会長小松義久氏﹀ を結或した。この組織はやがて被害地全域にわたる組織に発展し、① 原因の徹底調査と解決、②被害者への補償、患者の治療費完全補償、 動きに対しては﹁さわぐと米が売れなくなる﹂﹁嫁のきてがなくなる﹂ 活動を開始した。そして今イ病裁判の主体的組織となっている。この ヶ月のばしにのばしてやっと本年六月にこっそりと発表した。予定ど なお神岡鉱山からカドミウムが排出されていることを示すもの)を一 科学技術庁は昨年九月には発表しなければならない報告書(今日も チん、U と云って足を引く動きがあったが、次第にこれを克服し、現在では第 おりに発表されておれば被害者側は裁判上その他でこれを実に有効に ③神通川以外の水源による上水道の無償設置などの要求、をかかげて 二次、第三次の訴提起により被害者総決起というところにきている。 とする市町村のイ病への財政支出や支援決議等の積極的な動きに対し して批判をあびたことにみられる消極的な姿勢を続け、婦中町を中心 富山県当局は厚生省見解を﹁公害にかかる疾病 ﹂ と ぼ か し た 発 表 を 活用出来たものである。 が、統一的な県民の支援組織をつくる必要があるということから、昭 て﹁自治法に違反する﹂という見解をくりかえしてこれを抑えようと 従来県社保協や共産党がイ病についてのとりくみをすすめていた 三、富山県イ病対策会議 和四三年一月一九日富山県イタイイタイ病対策会 議 (森田徳政会長) した。 これらの動きの中で住民と最も密着した市町村の動きは、自治体の を結成した。この組織は県労協、社会党、共産党、全日農、医生協、 協、等の諸団体を結集した統一的支援組織であり、ただちに県知事ヘ 住民本位のあり方を積極的におしすすめたものとして高く評価せられ 社保協、主婦協、婦人会 議 、 新 日 本 婦 人 の 会 、 社 青 問 、 民 青 、 県 青 対策の申入、街頭での訴え、神岡鉱山の調査、交流等の行動をとっ るべきである。 た上、訴訟救助、大法廷設置についての決議をなし、同旨の決議を県 即ち本年三月婦中町はイ病裁判支援のため一 OO万円の支出をきめ た。その後イ病裁判を支える活動、イ病問題を県内外に広め世論を高 め財政を強化する活動をしている。 四、行政機関の態度 内全自治体によびかけ、これにこたえて県内二三の自治体(三十の 中)がイ病支援の決議をし、世論もり上げに大きな役割を果した。 このような悲惨な病気の原因究明 を萩 野博土ら個人の研究にまかせ 長い間放置してきた行政機関、特に国民の健康をあずかる厚生省、鉱 法律家がイ病の運動に参加したのは訴提起の動きが被害者の中にお 五、法律家の寄与 めるため公害問題に意識的にふたをしてきた県当局の責任は大きいと 山保安の監督にあたってきた通産省、工場誘致、新産都市政策をすす 2 5 6 説 解 きてきた昭和四二年中ごろからである。婦中町出身の島林弁護士、高 しつぶしてきた歴史と経験をもっていること。 も、強い力をもっており、従前もその力をもって鉱害反対斗争をお 法律構成(鉱業法一 O 九条による無過失責任)や立証(萩野博 土らの努力、厚生省見解等)において最も有利な条件におかれて いること。 付裁判の進行状況からみて比較的早い時期に勝訴を得られる可能 運動をとりうる条件があること。 帥加害企業が県外にあるため、被害県としての県民あげての反対 ω 日開全国の公害問題に重要な影響をもっていること。 岡在住の松波弁護士が準備段階から参加した。両弁護士のよびかけに より昭和四三年一月六日東京、大阪、名古屋、金沢、新潟、富山から 二O 名の弁護士が集まり弁護団を結成した。 多数の弁護士がこの問題のために全国から集まってきたということ 自体が被害者や支援団体をはげました。 怒りがのどもとまできているけれど、どのような形で斗っていくか についてとまどっていた被害者に対し弁護団は裁判の仕組み、法律構 成、そして勝訴のみとおしと確信をかたった。裁判には金がかかって 後記のとおり、イ病裁判はかなり早いピッチで進みはじめている。 性があること。 に果して勝てるのだろうかという不安に対し弁護団は﹁被害者が中心 にプラスになるような形でかたなければならないと考えている。 イ病弁護団としては単に勝つだけでなく、全国的公害反対運動の前進 農民の手にはおえないのではないかという疑問、天 下の大三井 を相手 のである﹂ことを訴えてまわった。 裁判闘争 になって決起すると同時に多数の人々の支援を得れば必ず勝利するも このことが被害者が自信をもって裁判にふみ込む点で一定の役割を 果したものである。 一、裁判闘争の位置づけ また運動を裁判という舞台にのせ、斗いを全国的なものに仕立てて いった面での役割もあると云えよう。 川裁判の動きがあるということで現地に集まった弁護団の眼にうつ れない。﹁弁護士が出すぎたことをしているのではないか﹂という いないし、被害地域があげて斗いに立ち上るというふんい気もみら いう疑問であった。原告を誰にするかということが明確にきまって ったものは、被害者は本気で裁判をやろうとしているのだろうかと 六、イ病裁判の展望 イ病弁護団はこの裁判を次のように位置づけた。 けその規模と質において日本最大級のマンモス公害訴訟であるこ ル ﹂ 。 相手が日本有数の独占企業である三井金属鉱業株式会社であるこ 相手が大きいということは、政治力、経済力において圧倒的な力 が出来上ることのこつが裁判をはじめる条件であることを確認し、 政的にも組織的にも長期に世論をまきおこしながら斗っていく体制 判を斗う主体的な態勢が出来上ること。②支援組織等が確立し、財 気持を共通にいだいた。そこで弁護団としては 、①被 害 者 の 中 に 裁 をもっていることであり、それは裁判の進行上も、政府や自治体に と 。 対する影響力においても、被害者に対する切りくずし等において 257 E その旨を被害者及び支援団体につたえ、共にそのような条件をつく 力をつくした。 て弁護団の姿勢と立場を理解してもらうため短い期間であったが全 そして三月九日に第一次訴状提出のはこびとなったものである。 るために活動するようよびかけた。一方支援団体でも同様の考えで この訴提起は全国に大きく報道され、県内のイ病に対する関心を深 め、世論を大きくもり上げ、その後の第二次、第三次訴提起の基礎 被害者としては一挙にこのような弁護団が出来たことに勇気づけ あり弁護団との聞にその具体的な話し合いがすすめられた。 ω られる反面、当初の段階では警戒心もあったようである。縁もゆか 弁護団の態度に対し﹁弁護団は無料奉仕﹂という報道が大きくなさ びかけて集めようではないかと被害者の人達に訴えた。このような い。しかし裁判には金はかかるものである。金がなければ全国によ 題については、われわれは金がないからやらないということではな 滅という観点からであり、これは法律家の使命であること、金の問 いう点等で大きな成果があったと思われるが、反面これだけの弁護 が多数出てきたという点、全国的規模でこの裁判を考えていこうと 結集は現地では大きな反響をよんだ。またこの中から常任となる人 護団参加をよびかけたところ三OO名の参加を得た。この弁護団の 害問題に関心をもっ法律家の意思とも合致していると考え各地で弁 げます意味でも多くの弁護士を結集した方がよいし、それはまた公 弁護団独自の活動を支えるためにも、また被害者や支援団体をは 二、弁護団体制 となっていくのである。 のではなかろうか、あるいは金もうけのためではないだろうか、 りもない弁護士がこんなにしてくれるということは何か意図がある ω れた。弁護団の真意を伝えることのむずかしさを感じさせられた。 った。一方常任として参加した弁護士も闘定化し、各自相当の犠牲 団を維持しそのエネルギーをくみ出すということは大変なことであ │ │ こ ん な 疑問に対して弁護団はイ病にとりくむのは日本の公害絶 のは、まもなく発表が予定されていた厚生省見解の発表の時期との 問訴提起の時期について右のような体制の問題と同時に論議された 関係であった。討議の結果厚生省の発表以前に提起すべきことが決 の苦難の結果明らかにした真実であるが故に何者も否定し得ないも 見解であるが故に価値があるのではなく、金も権威もない者が多年 しうることを内外に示す必要があること。即ち厚生省見解は政府の ものすら困難になったり、被告側の切りくずし策動に乗ぜられるか その危険性があることが感ぜられこのまますすむと裁判の維持その ならないということが感ぜられ、その討議が始まった。そして現に 団体との連けいや運動との関連なしに裁判だけが進んでしまっては 常任弁護団が裁判を一回、二回と重ねていくうち、被害者や支援 を払いながら富山に足を運んでいるのである。 ω のであり、我々の確信もそこにあるのだということを示すことによ もしれないということが指摘された。これを克服するには現地に密 定された。その理由は原告側は厚生省の見解の有無に関係なく立証 り、厚生省見解が政治的圧力にねじまげられないようにすることの 年一一月には東京の地を引きはらって富山へ転居した近藤弁護士を 着した事務局をつくらなければならないということが確認され四三 凶弁護団は一日も早く被害者の聞に訴提起の条件が出来上るように 中心に現地事務局が確立された。これをうけて現地では大いに意気 諸点にあった。 なるため、諸会合に出席したり、民宿したり、調査活動をしたりし 258 きた。最近各界からの援坊が集まりはじめているが、今後恒常的な財 政活動を確立する必要がある 。 a の一そうの前進へと発展していった。 訴訟の進展 - 一/ L ¥ に感じ、歓迎体制をつくり上げた 。 これが他の諸条件と合致し運動 三、弁護団と被害者組織、支援団体との連けい 接な協力体制をつくっている。被害者である農民と、労働者を中心 とする支援組織と専門家である科学者、法律家が一体となり、統一 的に運動が進められているところにイ病斗争の有利な側面がある。 弁護団は対策会議や対策協議会に出席して、裁判の進行状況や問 一、訴訟の規模 O 川 弁 護 団 は 対 策 会議 、 対 策 協 議 会 等 と 相 互 に 独 立 性 を も ち な が ら 密 ω 題となっている法律問題の解説、運動に関する弁護団の見解などを 述べる外、イ病運動についての具体的体勢を分担している(例えば パ ン フ 販 売 活 動 、 イ 病 支 援 の 署 名 依 頼、 県 知 事 へ の 公 開 質 問 状 の 作 成等)。また三者でつくっているイ病連絡会議を聞き裁判斗争を含 む全体の運動のすすめ方等の討議を行っている。 裁判斗争及びこれに附随しておこる諸問題の多くは大衆的にとり 現場検証のための予備調査、検証への大衆の参加 五ニ ノ i ¥ -一一 請 求 額 は 慰 籍 料 の み に 限 定 し 、 患 者 四OO万 円 、 死 亡 者 現 在 第 一次 訴 訟 の み 審 理 が 進 め ら れ ている 。 第 二 次 訴 訟 五OO万円、要観察者一 OO万J 三OO万円である。 a 働労丁 目 古 ピ 丁 日 J ¥ 、 七 一 ー 一 ・ ノ ' ¥ ‘ 八二 七二 ( 6) 0 二七 喜 力 助 之 義 一 一 五四 万 円 くまれている。 ω ( 註1) ( 註2) 十 額 紙 印用 貼 請 助 申 円 万 救 訟 訴 訴 央 法 律 中 井 号 亡 二 コ 制裁判官忌避の際の署名運動 不公正な裁判をした岡村裁判官はやめるべきだという署名が一 週間という極めて短期間に一万四千余と集った。この中には町内 を軒なみにまわり、岡村裁判官の家にまで署名をとりに行ったと いう熱心な人もいる 。 付 大 法 廷 要求、訴訟救助の署名運動 各組織を通じて署名を集める外、毎月八日に﹁行動日﹂を設 け、街頭で署名とカンパを訴えている。 四、財政問題 裁 判 の進 行 に関する 費 用 は 大 部 分 従 来 弁 護 団 の 負 担 に お いてやって 259 松 九 号一 婦中 万 ブ ぃ E c コ 二コ Cコ 二 、 "、 三五 額 万 円 助 誇 申 万 ブ 円 九 L 訟 救 訴 円 プし 富 山 二桜 市 町 三五 町 青 島 富 山 事務所ル六番富山 者 福 祉 会 館 一 番 一 市 町 桜 山 富 フ三 守 五 徳 政 久 コ 。 被 者住 壬 森 1 3 3 正 J乏 丞 原 t一 一 婦 郡 県 負 億 億 / ¥ 、 ブL 日 / ' 、 訳 内 族 遺 一 八遺 族 遺 族 七 ξ三 ニ遺 族 H ロ 召 ヨ つ 年 訴 月 提 三 訴 口 ふ ' l ; . 、 昭 t 原 仁 ヒ 1 病 イ イ 病 五 者 患 ブu 要 観 察 者 交 者 患、 声 議 会 病 策すイ タ 県 訴 弁 護 訟 国 jイ タ 四 / ¥ / J L a ¥ 五 要 ロ 観 察 者 ヨ患 者 ヨ ミ 察 要 観 者 玉 患 三 者、 イタ山 富 W 訟 訴 昭 ロ 区 ヨ 田 で = 団 組 織 次 ~ 5 訴 口 、 対 策 協 議 会イ タ 四 次 次 計 Cコ 二 一 一 亡 = コ 護 支 援 組 織 弁 第 第 第 ω 説 f 拝 以下には原告に死亡等があり、若干原告数の変動があ 吋 心 。 二、審理の経過 ( 第 一次訴訟) 川昭和四三年五月二四日(第一回公判)﹀ らの基本的な主張を明らかにすることを約諾した。 裁判所は原告側の要求を入れて次回一一月一五、 場検証を実施する旨を決定した。 凶同年一一月一五、二ハ日検証(後述) 間昭和四四年一月一七日(第四回公判﹀ 一六日両日に現 被告側は準備書面陳述。その内容は第三回公判の約束を無視し、原 訴状陳述。答弁書陳述。通常の訴訟とは違って、形式的な訴状、 答弁書の陳述に留まらず原告三名が被害の悲惨さと加害企業に対す 外、みるべき事実主張がなく、第一回以来の求釈明をくりかえし 告側提出の農業補償の協定書が鉱害の存在を認めたのではなく地元 被告側の答弁書は、会社の設備、鉱業権の存在等を認めたほか因 た。この態度は原告側から厳しく批判され、被告側はこれ以上積極 る怒りを述べ弁護団は訴訟の進行についての基本的な考え方を﹁訴 果関係について全面的に否認し、イ病の損害については不知と答え かった。 否認事実及び抗弁事実については主張がない旨を約束せざるを得な 農民と友好関係を保持する必要から締結したものであると述べた た。さらに原告らの摂取した農作物、魚類飲用水の重金属類の量な 状陳述にあたっての補足意見﹂として口頭で述べた。 ど釈明要求をし、原告側はその必要なしとしてこれを拒否した。か 原告側は次回から証人調べに入ることを予定し 、 あらかじめ撮影 合議の結果、これを採用すると決定し、法廷でスライドによる検証 水状況まで﹀の検証を要求。被告側が執擁に反対したが、裁判所は しておいたカラ i スライド一五三点(神岡鉱 業所から被害地域の用 同年七月十九日(第二回公判) た 。 ムなどの重金属の由来について神岡鉱業所以外にはないと証言し 富山大教授深井三郎氏は被害地域の土壌を汚染しているカドミウ 附同年三月七日(第五回公判) を実施した。 原告側甲第一号乃至第四三号証及び一一人の証人並びに検証を申 ムが存在すること﹂を認めた。 えって被告側は原告側の追求に抗し切れず ﹁工場 廃水中にカドミウ ω 請。直ちに証拠調べに入ることを求めたが被告側はただ原告の主張 は因果関係について具体性をかくとのみいっ てこれを拒否した。結 局裁判所は、原告側に対し立証に入るに当って回目頭陳述書的な準備 書面を提出するように要請し 、 原 告 側 は こ れ を 了 承 し た 。 同年九月二O 日(第三回公判) ① 被 害 地 域 及 び 周 辺 地 区 の 地 層 構 成 は 神 通 川 の一扇状地形成による ω が土壌の汚染状況はこの地層構成には一致せず人為的に一時に流 その根拠について、深井氏は 由来と汚染経路について詳細に立証方針を明らかにした。これに対 入したものであること。 原告側、準備書面陳述、イ病の病理と原因物質及びカドミウムの に釈明を求めつづけ証拠調べに入ることを妨害した。この被告側の ②発生地区の重金属の分布状況を調査すると、神通川から取水す し被告側 は相変らず否認、不知を繰り返すばかりで、第一回と同様 でには、自 態度に非難が集中し、被告側は昭和四四年一月一七日ま・ 2 6 0 る各用水系統に一致し、地域的限局性を裏付けられていること D 汚染時期は大正ごニ年五月完工した大沢野用水による汚染状況 o との比較において、少なくとも大正十三年以降と断定できるこ と 。 を強調した 同年三月八日(第六回公判) 金沢大教授石崎有信氏は主に疫学的立場からイ病の原因がカドミ ウムであることを証言した。すなわち石崎氏は と発生には地理的限局性が認められ患者聞には伝染性、遺伝性が ① 富 山 県 特 殊 病 対 策 委 員 会 に 所 属 し 、 住 民検診の結果、イ 病患者 ないこと。 ②イ病患者の尿尿中には高濃度の重金属が含まれていること。 していること。 ③ 発 生 地 区 土 壌 の 重 金 属 の 分 布 状 況 が 患 者 の 発 生 分 布 状 況 に 一致 を強調した。 問同年五月八、九日検証(後述) 前回にひきつづき石崎教授はイ病の病因とその病理学的機序につ 倒 同 年 六 月 二O 日(第七回公判) いて証言した。すなわち前回の疫学的立場から病因を重金属にしぼ り、さらに 亜鉛は毒性が少なく動物実験でも予期した結果が出なかったこ と、イ病が鉛中毒の病状とは異なっていることなどによって、カ ドミウムに注目し始めたこと。 ハツカネズミに三OOPPMのカドミウムを投与する動物実験 の結果、骨に脱灰現象を生じ 、イ 病 と 同 様 の 骨 症 状 を つ く る こ と ここにイ病の原因がカドミウムであることが論証されたと述べ た 。 また、汚染時期について発生地区の杉の木の年輪につきカドミ O 月一六J 一八日(三日間) 右の期日によって本年中に原告側の原因関係の全立証を終了する ① 一 二 月 四 J 六日(三日間) ②一 ①昭和四四年九月四、五日(二日間) 閥次回以降予定 月一七日の取り決めに反するとして陳述を留保せしめた。 被告側は当日付準備書面を提出したが原告側はこれが昭和四四年 一 が生ずることは一致していると結んだ。 の説にたってもイ病の原因がカドミウムであること、腎臓に病変 ⑥最後に病理学的機序について現在いくつかの学説があるが、ど べ発病の要件ではないことを明確にした。 ではないが、骨症状への悪化の要件にはなっているであろうと述 ⑤一方低カルシウム、低蛋白の問題については、イ病発生の要件 言した。 状 に 至 る 経 緯 は 一種のフアンコニ l症 候 群 と し て 断 定 で き る と 証 及び腎臓の生剖検の結果を総合して認定できる。腎臓障害が骨症 であるカルシウムを脱灰せしめ骨症状を惹起することが動物実験 排出され、やがて血液中のカルシウムを奪い、さらに骨の組成分 収作用を阻害する 。 したがって体内に有用なカルシウムが次第に に入ると、肝臓、腎臓に蓄積し、その結果腎尿細管を侵して再吸 証明されたと証言した。 も汚染が激しかったことが ④イ病発現のメカニズムについては、カドミウムが経口的に身体 ウム分析を試みた結果、昭和一 O 年 以 降 同 二 七 、 八 年 項 ま で が 最 ③ ③ ① @ に成功したこと。 2 6 1 m 説 解 予定である。 三、現段階での法律上の問題点 できるであろう。 同会社の故意、重過失まで指摘して、賠償額へ反映させることが 被告側の態度は、すでに ﹁ 法律上の問題点﹂において述べたが 、 基 四、被告側の態度 鉱業法第一 O 九条によって、立法的に解決されているので法律上 本的には因果関係を可及的に細分し 、 詳細な立証を要求して 、未解明 山故意・過失の要件 とくに問題がない。しかし、本件の場合実際上、故意・過失の要件 なお 、被告側は昭和四四 年 一 O 月一六日までに自らの証拠申請をす 問題の焦点をぼかす方法によるものである。 である。因果関係を細分して未解明の分野に追い込む具体的な方策 は、 原告側の主張に対する 不必 要な求釈明と 、他 は別な証拠によって 、 訴訟引き伸しの効果を挙げることもできるから に多くの日数を要 し の分野に追い込 もうとす るように見受けられる。そのことが 一方 審理 因果関係 を充足している。 ω ①カドミウムとイ病の関係(第一次因果関係) これはイ病がカドミウムによって発現するかという問題であ る 。 被 告 側 の 態 度 は 、 カ ド ミ ウ ム の 進 入 経 路 、 摂取量等から体内 る旨約諾している。 における機序を具体的に明確に主張、立証され なければならない と主張する。これに対し原告側は発病の機序を因果関係の要件事 五、裁判所の態度 神通 川 の流水に集約し 、さ らに神通川水系の水の分析調査によっ た。本年一月一七日の公判において被告側の執搬な反対にも拘らずス 立は却下こそされたが裁判所の姿勢を正すうえで大きな役割を果し したが、原告側はついに裁判長忌避申立に踏み切った。原告側のこの つよい姿勢は 、 公害防止に立ち上る世論に熱烈に支持された。忌避申 裁判所の この態度は 、昭和四三 年 一一月検 証現場において益々悪化 もすると被告側に引きずられているような様相をみせていた。 とくに公害訴訟の審理につき裁判所のとるべき態度を明確にして 、 つ よく要請したにも拘らず 、当初は全くこれを配慮しようとせず 、 やや 裁判所は 、弁護団が﹁訴状陳述にあたっての補足意見﹂と題して 、 実 と し て 扱 う こ と は 誤 り で あ る 、 因果関係の存否は客観的事実の 認識ではなくて責任の主体、範囲を決定するファクターであるか らその発現の機序を因果関係の要件として固定的にとらえるのは 誤りであると主張する。 ②カドミウムと被告との関係(第二次因果関係) 原 告 側 の 立 証 方 向 は 、厚 生 省 調 査 班 の 報 告 に 沿 っ て 被 害 地 域 の て被告を特定する方法にもとづく。これに対し 、被告側は 、 過去 ライドの検証を採用した裁判所の態度は 、こ れを裏付けるものといえ 土壌、農作物 、 飲料水などのカドミウムなどの汚染状況を遡って の証拠を出来るだけ隠ぺいし、比較的完備した現在の廃水処理施 よう。その後、 深井 、 石崎両証人の証拠調も順調にすすみ 、と り わ け、本年五月の検証にさいしては裁判所は極めて意欲的に採証した。 いる。 したがって、今後この点については、原告側が被告会社の過去 さらに六月の公判において本年中に八回迄の期日を指定し 、こ の裁判 設を基準にして 、 カドミウムの汚染源である筈がないと否認して の廃水管理の杜撰さを立証することによって容易にくつがえし 、 2 6 2 を早期に終結させる態度を明確にした。 ω ただここで従来の解釈によって裁判所が個々の申立人の経済条件 してとらえる方向で理論構成する試みが必要ではなかろうか。集団 を把 握する のではなく、公害訴訟にあっては被害者全体を 単 一体と 昭和四三年一二月二四日富山地方裁判所は岡村裁判官に対する忌 現象として の被害者を、市 民法的な訴訟形態の中でいかに 適 合きせ ︹裁判長の忌避の申立︺ 避申立 を却下した 。 しかし、同 裁判官 が原告側が熱望した鹿間堆積 るかが今後の課題であろう 。 の一方では裁判にふさわしい法廷を強調して裁判所以外の場所で行な 第六九条第二項)のであるが、最高裁の態度は、善処するというもの の許可を得て裁判所以外の場所で法廷を開くことが出来る(裁判所法 自 治 体 の 支 援 の 下 に す す め ら れ て き た 。も と よ り 、 法 律 的 に は 最 高 裁 にこれが全部参加できる大きな法廷を設置するよう、支援団体、及び 昨年一 O 月第二次訴訟提起以後、原告数が数百名にのぼり、必然的 七、大法廷設置要求 場の検証を無視して予定変更したことについて、 行上からも適切要素であったと思われる﹂と判断し、また ①﹁当日可能な範囲内で鹿間堆積場の検証を続行した方が訴訟進 ②﹁一般に公害訴訟などの長期裁判が経済的弱者である当事者に 多大の損害と苦痛を与えることは無視しえない問題だ。﹂ と指摘したことは大きな成果であった。 第二、三次の原告全部が現在、訴訟上の救助を申請している。そこ うことに蕗賭している。 六、訴訟上の救助 で、民訴第一一八条の解釈上の問題点について触れると、 に、生活保護世帯であるような証明をもって絶対的貧困を疏明する ﹁訴訟費 用 ヲ 支 払 フ 資 力 ナ キ 者 ﹂ の 要 件 に つ い て は 従 前 の よ う 必要であるので実現させなければならない。具体的には訴訟救助の決 あり、かつ公害訴訟は大勢の人達の生活経験に支えられた立証活動が しかしながら、原告が法廷に出頭するのは憲法上保障された権利で ω のではなくて、加害企業の経済力と被害者の資力の対比において相 定ともからみ、この問題に対する判断はまだない。 ω 前予防)の検討、第三には市民運動に与える影 響 である。 第一には、本訴における立証上の効果、第二には今後の対策(事 評価されるように思われる。 一般に公害訴訟における検証の意義を考える場合、次の三点から 八、検証 対的貧困を疏明し、この要件を充足させている。何故なら、訴訟遂 行費用はまさに相手方の応訴態度によって増長をきたすものであ り、かつての鉱害訴訟の敗因はこの点にあるからである。したがっ て被告会社が半期に一八億円余の純益を上げる独占資本であるのに 反し、他方は年収六O 万J 九O 万円の農民たちであることを十分に 疏明し、さらに訴訟遂行費用の予見的概 算 額を例示した。 公害にあっては、加害企業が原因追及を怖れて、事業内部の状況 を出来るだけ隠ぺいし、また極めて専門的な分野に属するために、 ﹁勝訴見込﹂の要件については、本訴訟において厚生省見解があ るかぎり十分である 。 予備的には、前の経済的要件との相関々係に 加害企業の内部事情は容易に明らかにならない。 そこで公害訴訟における加害企業の検証は、すでに原告側が調査 おいて﹁勝訴の見込﹂が一 OOパーセントであるならば、申立人の 無資力の要件を緩和して差し支えないことを強調した。 2 6 3 ω 説 解 した内容を具体的に裁判官に知らしめるだけではなく、採証活動を っている人々のたたかいに、少しでも役に立てば幸甚の至りです。ひ 氏に心から御礼申しあげたい。 昭和四四年九月 イタイイタイ病訴訟弁護団 最後に、この裁判記録発行に尽力くださった労働旬報社の川崎忠文 とりでも多くの人々に読まれることを念願してやみません。 それによって次に第二の事前予防対策の意義が求められるであろ も目指した極めて広い意味をもっている。 う。第三の市民運動に与える影響は加害企業に直接メスを入れる機 み)同四四年五月八・九日の四日間にわたって行われた。その趣旨 イ病訴訟の検証は昭和四三年一一月一五・六日(一六日午前の 会として、その意義が大きいことは云うまでもない。 ω は、立証活動の前段階として、全体の外観を把握することにあっ た。もともと本訴における特長は、鉱業法一 O 九条の無過失賠償責 した重金属の分布状況を神通川上流に遡り、いくつかの仮説を実証 任に依拠し、かっ、責任の主体の立証方法として、被害地域を汚染 的に除去したのちに被告会社を特定しているので前記第一の意義と して検証によって加害企業の内部を詳細に裁判官に植えつけなけれ ばならない必要性は乏しい。 しかしながら、原告側は唯単に被害者保護を鉱業法の規定にのみ たよるのではなく、加害企業廃水廃津管理の杜撰さを積極的に立証 し、さらに企業責任を明確にして賠償額を挙げることに主眼を置 き、検証にさいして、この点の採証活動をつづけた。その結果、現 の有利な採証を得、事前予防の観点(第二の意義)からも現段階に 在も高原川の川原に堆積放任してあるカラミの堆積場を始め、多く おいて必ずしも完全でないことを指摘できた。 問神岡鉱業所から被害地域までの流水の経路及び被害地域の生活と 用水の結びつきは、原告側が十分裁判官を納得せしめ、被告側は途 中で検証立会を事実上放棄する場面もあった。 解説をおえるにあたり、この裁判記録が、全国各地で﹁公害﹂と闘 264 イタイイタイ病裁判記録第一集 定価上 8 0 0円 発 行 昭 和4 4年 1 1月 30日 編 者イタイイタイ病訴訟弁護団 発 行 所 労 働 旬 報 社 代夫者木檎哲 夫 東京都港区芝西久保巴町 3 2 0 3( 4 3 4 )3681~5 J 辰 符 東 京 180374 電話 印刷所奥村印刷株式会社 裁判記録の発刊にあたって 宣 口 之 助 イタイイタイ病訴訟弁護団長 力 神岡鉱業所の長年に亘つての鉛、亜鉛等の選鉱製煉によって神通川の上流高原川へ放出した廃水、汚水に含まれた重 全く罪も答もない数多くの農婦をしてこのような苛酷な被害を加えた者は三井金属鉱業株式会社であり、同会社の うして無惨なイタイイタイ病として連日連夜激痛と苦悶の果て死亡した憐れな被害者の最後の姿である。 このことは恐るべき重金属カドミウムの害毒に犯され、体内のカルシウムの極度の消耗は遂に骨軟化症となり、そ ない。衆生済度のため白骨の御文を作った蓮如上人の全く予想しなかったところである 。 ところがイタイイタイ病で死んだ被害者は僅かに頭蓋骨の一部を残すのみであって五体の面影を示す遺骨が見当ら この御文の中に、﹁ただ白骨のみぞ残れり、あわれと言うも、なかなかおろかなり﹂とつづられている。 しめる。 身にこたえるような名文で、読み上げられ、参列する六身春属はもとより、友人、知己をして一入哀愁の念を深から ﹁それ、人間の浮生なる相をつらつら観するに:::﹂と生者必滅のことわりと、人生朝 露の如き、 はかなさを切々骨 おごそかに白骨の御文﹁御文章﹂が読まれる。 私共の宗派では人が逝くなると火葬に付し、自宅の仏前で骨揚げの法要が営まれ、お手次の住職によって、 いルアも の門徒の一人である。 富山県百万県民の過半数は浄土真宗の門徒であって、壱千弐百以上の寺院を数える程である。私も大谷派東本願寺 正 金属カドミウムに基因する慢性中毒症であることが明々白々であるにも拘らず極力責任の所在を否定し、加えで昨年 一一月八日、﹁現代の映像﹂と題するテレビ放送に於いて、イタイイタイ病は神通川水域の婦中町熊野地区を中心とし た特有の風土病であって、神岡鉱業所の事業活動によるカドミウムとは全く無関係のものとして、何等解決の誠意が 見受けられないのみか、鉱毒による農業被害に対し毎年弐百五拾万円宛を賠償し、殊に和佐保堆積場の損壊による農 作物の災害については別に協議することを明確に定めた約定書まで無視して、前記の賠償金なることを否定して単に 富山県との友好関係を保持する為の政治的配慮に基くものであると故意に事実を曲げて責任転嫁を企図せんとするに 至つては、厚顔無恥も甚しく、底知れぬ悪意と策謀の外何者でもないことを暴露しておるところである。 私達弁護団は青法協の少壮気鋭の弁護士を主軸として弐九九名を以ってイ病訴訟弁護団を結成し、昭和四三年三月 九日遂に三井金属鉱業株式会社を被告と相手取って、企業責任の追及と被害者救済のため富山地方裁判所ヘ損害賠償 の訴を提起した。 そうして同年五月二四日の第一回の弁論開始より本年六月二十日の第七回の口頭弁論に至るまで、この間二回に豆 り現場の検証、現地一帯のスライド写真の検証(百五拾六枚﹀、甲六八号証に及ぶ書証の提出、深井三郎、石崎有信両 大学教授の専門的分野の証言等、着々因果関係の立証に専心努力して来たものであるが、今や歴史的公害訴訟事件の 一つとして天下の重大なる関心と注目を寄せられておる本件裁判の記録を集録して、裁判闘争の実体を明らかにすべ く設に第一集を発刊したものである。 (昭和四四、七、七)
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