哺乳動物(野ネズミから家畜まで)の染色体を調査する

哺乳動物(野ネズミから家畜まで)の染色体を調査する
1.野生げっ歯類の染色体異常を指標とした環境汚染のリスク評価
野生ハツカネズミの染色体です。ハツカネズミは家屋、畑、
草地、河川敷、荒地などに生息し、穀類、野菜、花などを
採食します。ヒトの生活範囲内での環境汚染評価に利用で
きます。
マウスやラットに直接化学物質を投与し、骨
髄細胞や生殖細胞の染色体異常を観察する生体
内染色体異常試験は、環境変異原物質の遺伝的
障害を検定する方法として知られています。特
に生殖細胞に影響を及ぼす場合は、染色体に異
常を持つ精子や卵子が作り出され、これらが受
精に関与すれば、生殖障害の原因となり、また
野生アカネズミの染色体です。アカネズミは低地から高山帯
までの森林に生息し、植物の根茎、実生、種実、昆虫類を採
食します。ヒトの生活範囲外での環境汚染評価に利用できま
す。
次世代に遺伝障害を起こす可能性があります。
近年、不法投棄や土壌汚染による環境汚染の影
響は深刻です。このため当研究室では、野生げ
っ歯類(野ネズミ)の染色体異常を指標とした
環境汚染のリスク評価に取り組んでいます。野
ネズミの染色体分析法も確立しており、現在は
データの収集中です。
2.家畜・ペットの生殖障害と染色体異常との関連性
X 染色体を 3 本持つメスウシの染色体です。体型、成長は
正常ですが、性成熟後は生殖不良でした。矢印が X 染色体
です。
ロバートソン型転座と呼ばれている構造異常染色体を 1 本持
つオスウシの染色体です。生殖機能に異常はありません。矢
印が転座染色体です。
家畜やペットにおける生殖障害の原因は、環
境の影響による内分泌異常、感染症による疾病、
染色体異常などの遺伝的要因に分けらます。特
に遺伝的要因による生殖障害の場合は対処法が
確立されていないために早期の診断が重要で
す。染色体異常は数に異常がある場合(数的異
常)と形に異常がある場合(構造異常)が知られ
ているが、染色体に含まれる遺伝子の量に過不
足のない場合は正常に発育し、形態や機能にも
異常は認められません。しかし、精子や卵子な
どの配偶子の形成に異常が認められ、結果的に
生殖障害となる場合が多い。生殖機能に障害が
認められた場合は、染色体検査を受けることが
重要です。
教員名:森英紀(農学部生物生産科学科動物生産科学講師)
TEL:029-888-8654
FAX:029-888-8525
E-mail:[email protected]