総論 ~環境配慮方針~ 生態系への配慮 農業水路に対する、環境配慮方針は、 「生 態系への配慮」 「景観への配慮」 「水質の向 上」 「底泥対策」 「地域の水循環」の 5 項目 です。 景観への配慮 水質の向上 底泥対策 地域の水循環 ※どうして、それぞれの配慮方針が必要なのかは、次頁より示しています。 10 総論 ⑨ どうして生態系への配慮が必要ですか? 農村地域は豊かな生物種の生息する質の高い生態系を維持してきましたが、「人間活動および開発 がもたらしたもの」「自然に対する人間の働きかけの縮小によるもの」「外来種によるもの」「化学物 質によるもの」の要因から、生物の生息、生育環境が減少し、生物多様性などが低下してきています。 人間活動および開発がもたらしたもの ・コンクリート化によってすき間の多い水路が減ったこと ・水路側面の垂直化に伴って動物が移動できないこと ・水田と水路の水位差が広がり魚類等が移動できないこと ・農業の近代化に伴う水質汚濁 ・非かんがい期の水量の減少 ・捕獲・採取による個体数の減少 自然に対する人間の働きかけの縮小によるもの ・農家の担い手不足から水路が放置され 環境が悪化したこと ・伝統的な維持管理の近代化 外来種によるもの ・在来種が食べられること ・在来種の食物や生息環境が奪われること ・大型動物が在来の植物を食べ、土壌を踏み付けること ・繁殖によって遺伝子が乱されること 化学物質によるもの ・農薬、除草剤などによる生態系への影響 ・化学肥料の影響 ・内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の影響 生物多様性(遺伝子・種・生態系レベル)の低下、子供たちが生き物と触れ合える場の喪失 11 総論 <コラム> ◆生態系とは・・・ 生態系とは、太陽光・大気・野生生物・土壌・水の5つの要素によって構成された有機的な自 然のシステムのことであり、エコシステムとも呼ばれます。 特に、野生生物については、生産者(緑色植物)、消費者(動物)、分解者(土壌微生物)によ って成り立っています。 太陽光 生態系(エコシステム) 大気 生産者(緑色植物) 野生生物 (食物連鎖) 土壌 分解者(土壌微生物) 消費者(動物) 水 生産者 ・・・樹木や草本類といった緑色植物は光合成によって有機物を生 産するため、 「生産者」と呼ばれます。 消費者 ・・・生産者を食べる昆虫などの小動物や、小動物を食べる動物は 「消費者」と呼ばれます。 分解者 ・・・生産者や消費者の死がいや排泄物は、土の中の微生物や小動 物に食べられることによって、無機物へと分解されます。こ れらの土の中の微生物や小動物は「分解者」と呼ばれます。 食物連鎖 ・・・分解者によって生じた無機物は、生産者(緑色植物)によっ て栄養素として吸収され、光合成によって有機物に変えら れ、それを消費者(動物)が食べます。このように食物エネ ルギーが、捕食、被食を繰り返しながら移行する生物のつな がりを食物連鎖と呼びます。 12
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