第24号 - 平群里山クラブ

2011年10月 第24号
事務局;平群町緑ヶ丘6-16-4 田中 勇蔵
2011年10月 KATI-KATI山だより 第24号
0745-45-4598
http://web1.kcn.jp/katikati/ 平群里山クラブ会報
[email protected]
台風12号の被害は何を教えているのか
治山・治水。山
山を治めるものは水
めるものは水を治める。
める。吉野、紀伊の12号台風による甚大な被害は気候変動による
異常な豪雨だけではなく、衰退する林業と手入れされないスギ・ヒノキ林地がもたらしたものといってもよ
いでしょう。吉野方式
吉野方式といわれるスギの植林方式は苗を密植し成長に応じて間引き間伐をおこないながら、
吉野方式
ゆっくりと幹を太らせます。こうすることにより年輪が詰まったすぐれた木材を生産することができます。
しかし、安い外材に押されて林業は破綻寸前。人手の入らない間伐されない林地
はもやしのようなスギ・ヒノキに覆われ、保水力も乏しく大雨が降れば各地で崩落
が起こります。
間伐した
した林内放置丸太
林内放置丸太の流失と
今回、被害を大きくした原因のひとつに切
切り捨て間伐
した
林内放置丸太
深層崩壊があります。深層崩壊はやはりすべて針葉樹の植林だけで山を覆ってし
深層崩壊
まったところに原因があるのではないでしょうか。間引きでなく強度の間伐を行い
広葉樹の
広葉樹の植林を
植林を導入して保水力を高める必要があります。奈良県では年500円の
導入
森林税が徴収され、その大半が吉野の林業に費やされていると聞いていますが、林
ヒノキ林での間伐作業
業再生には追いつかないようです。
(堯舜の時代)から善政とは治山治水にすぐれた政治であったはずです。しかし、
明治以後、政治は「富国強兵」「殖産興業」の名のもとに、治山治水を怠ってきた
のではないでしょうか。
地震による津波もしかり。「想定外」という言葉は
政治のサボタージュを覆い隠す言葉でしかない。しか
し、だからこそ私たちはできることからはじめたい。
里山再生・
里山再生・保全の
保全の活動の
活動の意義を改めて考えてみようで
意義
はありませんか。
(田中勇蔵)
手入れされた明るい林
近くで大谷石をたくさんもらってき
て、石窯とカマドをつくっています。
石窯は大谷石で組んだテーブルの上に
壁土でこしらえます。
カマドが先に出来上がりました。N
式カマドと呼びます?カチカチ山頂上
の姿が少し変わってきました。
排水溝の土砂を除去
2011年10月 第24号
私とカチカチ山 NO.16
里 山 あ そ び
橋本 智之
昔から「ひと」と「自然」が共生してきた場所「里山」。そこでの資源は例えば「シバ」は畑の肥料に、
木は20年ほどで切って薪へと広く利用されていたそうです。翌年、刈り取った跡からは草が、切り株からは
新しい木の芽が再び出てぐんぐん成長していきます。それをまた人が利用し・・・と循環してゆきます。里
山にはいろいろな生き物が住み、生命の営みや四季の変化を体で感じることができました。このような里山
の風景も、石油による燃料革命や近年の都市開発によって失われ、子どもたちが自然と触れ合う機会もだん
だん少なくなってきています。
私は、昨年の夏から毎月第三土曜日に宇治白川にある里山へ京都市内の小学生数
人を連れて遊びに行くということをしています。ここはNPO法人ビオネットワー
ク京都が宇治白川里山の休耕田と雑木林を復元して、里山ビオトープづくりをして
いるところで、2004年から今年で7年目を迎えます。
到着早々子どもたちは里山探検に出かけます。でこぼこ道を抜け、雑木林に行く
とそこには池があります。里山にはいろいろな生き物がいて、四季を通じていろい
ろな変化を見つけることができます。希少生物も少なくありません。
遊ぶ「場所」や「モノ」は工夫次第で無限大。夏は竹工作、野菜の収穫、秋に
はみんなで収穫した渋柿で干し柿も作りました。「食べて良いよ」といわれ、大喜びで食べると「しぶ~
い」!秋から冬にかけて里山の景色ががらりと茶色に変わります。生き物も少なくて、寒い。下の方では
たき火をしていて、焼きイモもしています。都会の子で火をつけた経験がある子はめったにいません。最
初はマッチと格闘し、そのあとは火を絶やさないことに奮闘し、マシュマロやパンを火にあぶって食べる
のに夢中になって・・・最初の頃はたき火だけで一日が終わることもありました。春にはおたまじゃくし
や山菜がたくさん出てきます。子どもたちは思い思いに遊んでいます。昼には料理上手の方が里山の畑で
採れた野菜でスープを振舞ってくれます。たくさん遊んだあとのごはん
は格別で、里山の野菜スープは野菜嫌いの子でも平気です。いつも食べ
るものとは全く味が違って、何か甘くてあっさりしているようです。
いっぱい遊んで、たくさんの体験をして帰りました。ところで秋に作っ
た干し柿は2週間部屋に干したあと皆で食べました。あの「しぶ~い」
柿はすごく「おいしい」柿になっていました♪
カチカチ山や上記のビオネットのように里山を復元しよう!という団
体が日本各地でできています。同時に教育の場として利用しようという
動きも少しずつ出てきています。近年北欧で「森のようちえん」という
のが注目されていますが、日本でやるならば「里山ようちえん」でしょ
うか。これを実践している場所として例えば千葉県に「木更津社会館保
育園」というのがあるそうです。「里山っ子が行く!」(2009年,斉藤道
子ほか,農文協)という本やDVDで知ることができますが、「里山」を
教育の場として利用している良い例だと思います。もう少し規模を小さ
くすると、幼稚園の園庭を里山風に改造するという取り組み
も、よく聞くようになってきました。
私は里山の一番良いところは大人から子どもまで幅広く利用できるということだと思っています。生活
の場ですから、大人から子どもまでみんなが生き生きできれば最高です。カチカチ山にはこの5年間で4
回行かせて頂きました。ここで出会う方々はみんな生き生きしていて、とても楽しい空間を演出されてい
ます。そして行くたびに新しいモノができていてびっくりします!こんな里山という素敵な空間を大人か
ら子どもまで広く利用していけないかなぁ~・・・。
いつも、カチカチ山でお世話になり、ありがとうございます。 (京都大学大学院農学研究科修士課程在籍)
●宇治白川里山
検索
白川里山
http://www.geocities.jp/sirakawa_satoyama/ または で
2011年10月 第24号
かちかち山博物誌
かちかち山博物誌(
山博物誌(23)
23)殺気
映画でも小説でも、殺陣はクライマックスのひとつ
である。監督も作者も工夫をこらして迫力のある場面
を構築する。「椿三十郎」をボストンで見た時、三船
敏郎対仲代達也の決闘場面で観客が緊張のあまり、
ワーとかオーとか、大声を上げていたのを思い出す。
小説も負けてはいない。藤沢周平氏や司馬遼太郎氏の
作品には、手を変え品を変え新種の殺陣が登場して飽
きないが、いつも不思議に思うことがひとつある。
「殺気がひたひたと迫ってきた」とか「ビリビリした
殺気が急にきえた」とか。ほんとうかい、と思うが、
侍だったら訓練をつんでいるから、常人の感じない
「殺気」を感知するのかもしれない、と納得しないで
もなかった。
殺気とは第六感のひとつとされる。第六感とは、人
の感ずる感覚、つまり視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚
の五感以外の感知能と定義される。人間中心に考える
と第六感は不思議な能力だが、最近の研究によると、
動物界ではごく普通の感覚ということが分ってきた。
スマトラ沖地震の津波で数千人が犠牲になったが、動
物の死骸はほとんどなかった。津波襲来のずっと前に
逃げてしまったという。難破するであろう船から大量
のネズミが下船したとか、昔から動物の予知能力の記
録は多い。科学的な解析というほどでもないが、地磁
気、電磁波、赤外線、紫外線、超音波、化学物質、温
度変化などを敏感に感じ取る器官が動物には備わって
いるためであろう、と推定された。
「丸腰の時にかぎって珍品が寄ってくる」。ムシ屋
がぼやく科白である。採集道具が手元にない時にはム
シものんびりしている。捕まえるぞ、などと緊張して
捕虫網を握りしめていると、逃げてしまう。剣客風に
いえば「殺気をビリビリと感ずる」のだろうか。
*
ストックホルムは
バルト海に面してい
て、大小あわせると
24,000の島がある。
ストックホルム群島
と呼ばれる。そのな
かにウテという島
があり、7月下旬にアポロチョウ (Parnassius
apollo) が現れる。スカンディナビア半島では、こ
ことゴットランド島にしか生息していないので貴重
である。ヤマナラシ、シラカバ、トウヒなどの林床
に咲くヤグルマソウ(Centaurea)を好んで訪花、吸
密するが、見掛けによらずすばしこい。
島全体が自然保護区のうえ、絶滅危惧種なので採
集など論外なのだが、そもそも誰もそんな貴重種が
翔んでいることに気づかない。そのせいかどうか、
人なつこい。先日は観察中の私に長いことまつわっ
て離れなかった。指さきに止まったりして、どうや
らチョウのほうが私を観察したらしい。採集する気
がまったくなかったのがよかった。殺気がでなかっ
たのであろう。アポロチョウに仲良くしてもらった
のは光栄だった。
*
カチカチ山のステージでビールを飲んで駄弁って
いると、ムシがたくさん上がってくる(ように思
う)。クロアゲハがきた、などと跳びだすといなく
なる。これまではっきり意識したわけではないけれ
ど、あれは殺気を感知しているのですね。星野会長
は気づいていたようで「捕虫網を手にすると佐野さ
んの形相がかわる」と揶揄することしきりだった。
アポロチョウの友情もあることだし、これからは殺
気止めの修業をしようと思う(佐野 浩 Oct 5,
2011)。
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この木
この木なんの木
なんの木? カチカチ山
カチカチ山の木シリーズ・・・
シリーズ・・・第
・・・第24回
24回 はぎ
はぎ(
はぎ(萩)
マメ科
マメ科 ハギ属
ハギ属 落葉低木
落葉低木
暑かった夏をやっと越したと思ったら、10月に入って急に寒くなっ
てしまった。まったく気候がおかしい。一番快適な秋はどこへ行ったの
か?不平不満の今日この頃だが、季節の移り変わりを植物はちゃんと感
じて、カチカチ山のテラス下とやぎ小屋前には秋の七草―萩の花が咲い
ている。
萩の花は昔から日本人にはなじみが深かったとみえ、万葉集に出てく
る花の中では一番数が多いそうだ。
今が盛りのカチカチ山の萩は、原種に近い萩―ヤマハギ(一般に萩と
よぶ)
と思う。カチカチカメラに記載の物もヤマハギではなかろうか?「アメリカヌスビトハギ」は、やぎ小屋横
で、花が終わり種になっていた。
アメリカヌスビトハギは「ヌスビトハギ」の外来種で別名「アレチノヌスビトハギ」。ヌスビトハギのヌスビ
トとは、花の後にできる種(莢の形)が盗人の足跡のようだからとか。どちらのヌスビトハギも、種はくっつ
き虫で人や動物にくっついてどこへでも盗人のごとく侵入する。これらは「ヌスビトハギ属」とされ、木では
なくて、野草(草)に分類される。カチカチ山はまだ外来種に占領されてはいなかった。ほっと、胸をなでお
ろした次第だ。
萩にちなんで余談だが、お彼岸に作られる、春のボタ(牡丹)餅、秋のお萩(餅)―これらは作られる季節に
咲く花に因んで名前がつけられた―という風流な言い伝えがある。
しかしある本(いにしえの草木 井上俊 羽衣出版)に・・・萩類は小さな莢に1個の種子ができ、これを粉
にして(黄色なのでキナコと言った)食べ、お彼岸に食べる「お萩」はこの粉をまぶしたことに因む名
だ・・・とあった。初耳である。ちなみに私は幼い頃は石炭の町に育ったので、ボタ餅をボタ山(石炭を掘っ
たかすを捨てた)のボタにちなんだ名だとずっと思っていた。(星野 一子)
2011年10月 第24号
2011年7~10月の活動報告
親子自然体験教室
16家族45人が参加。2班に分かれて
竹水鉄砲づくりや自然観察・ヤギのエサやり体験。
昼食後はスイカ割りをして子どもたちは大満足。
7月 10(
10(日) カチカチ山
カチカチ山・周辺整備・
周辺整備・合宿 合宿 8名
13(水) カチカチ山整備 12名
21(木) カチカチ山整備、24日の準備 8名
22・23 準備 4~6名
24(
24(日) 親子自然体験教室
親子
親子45
親子45名
45名、スタッフ18
スタッフ18名
18名
26(
26(火) 馬鍬淵周辺除草(
馬鍬淵周辺除草(町職員、
町職員、
他
他のボランティア団体
ボランティア団体と
団体と) 4
) 4名
27(水) 的場竹林、雑木林整備 9名
8月 3(水) 休み
10(水) 休み
14(日) 盆休み
17(水) 的場雑木林整備 6名
(19、スズメバチ駆除 4名)
24(水) カチカチ山整備 7名
31(水) ヒノキ山草刈、周辺探索 9名
スズメ蜂退治
スズメ蜂退治
9月
7(水) カチカチ山整備、17名
11(
11(日) 森
) 森の音楽会・
音楽会・観月会 観月会 中止
14(水) カチカチ山整備 13名
21(水) ヒノキ林間伐 台風で中止
28(水) ヒノキ林間伐 12名
長い夏休みの間に、物置
の中にスズメ蜂の巣を作
られました。役場から防護
服を借りてきて、恐る恐る
10月
10月 4(火) 石窯&カマドづくり 5名
5(水) カチカチ山整備 5名
(雨で早退)
巣に近づきます。無事、
巣を撤去。疲れたア~
10月~2012年1月の活動予定
10月
10月
9(日) 東斜面整備
12(水) カチカチ山整備、焼き栗大会
14(金) 馬鍬淵清掃、草刈(竜田川整備協主催)
19(水) ヒノキ林間伐
26(水) ヒノキ林間伐
12月
12月
7(水) 鳴川竹林整備(昨年の伐採跡)
14(水) 的場竹林整備、カチカチ山整備
18(日) 忘年もちつき大会
21(水) 門松材料集め
27(火) 門松づくり、仕事納め
11月
11月
2(水) 的場竹林、雑木林整備
9(水) 東斜面整備
13(日) 自然観察会
16(水) ヒノキ林間伐
23(水) ヒノキ林間伐
30(水) カチカチ山整備
1月
8(日) カチカチ山整備、新年会
11(水) ヒノキ林間伐
18(水) 鳴川竹林孟宗竹の切り出し
(竹あかり用)
25(水) 的場竹林、雑木林整備
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編集後記
天気よし、長袖長ズボンよし、帽子汗拭きタオルよし、水筒弁当よし、虫捕りセットよ
し!ついでにカメラよし!いつものスタイルで子どもと一緒にカチカチ山へGO!夏、
猛暑にげんなりしていても、山へ行くと不思議なほど気持ちがすっと解き放たれまし
た。カチカチ初訪問から1年余り。遊びに行くたび、私と息子なりの新しい発見があり
ます。そして、今回はこの会報の編集でも、一足先に原稿を読ませていただき新しく知
ることがたくさん。好きな編集をしながら知る楽しみも得られるシアワセ…たまりませ
ん!カチカチ山も、KATI-KATI便りも!(加藤久美子)