演題 「国際物流が港湾に求めるもの」 講師 トーマス・コッホ (コッホ) 氏(ハンブルグ港コンサルティング社常務取締役) 皆様、このような機会を頂き、大変うれしく思っています。ハンブルグ港に ついて紹介させていただきます。特に、最新鋭のコンテナターミナルについて紹介致した いと思います。 ハンブルグ港のコンテナ取扱量ですが、1992 年の 2.3 百万TEUから順調に伸び続け、 昨 2002 年には 5.4 百万TEUに達しました。このような成長が可能になったのも、1989 年にベルリンの壁が崩壊し、ドイツは再統一され、そしてヨーロッパが統合されたことに よるものです。今年は、殆どロッテルダムに追いつく程の数値を示しています。 そして、今申し上げた 5.4 百万TEUの内7割をHHLA社が扱っています。HHLA というのは、私が役員を勤めるハンブルグ港コンサルティング社の親会社です。HHLA は現在、ハンブルグに4つのコンテナターミナルを持っており、ブルヒアルトカイが一番 大きなもので、取扱量は 2.5 百万TEU。トレロートは中国中心で 0.6 百万TEU、市街 地に近いユニカイが 0.3 百万TEU、2002 年にオープンしたCTAが 0.1 万TEU。この CTAが最新のターミナルで、今後 190 万TEUまで取り扱い可能です。 特にここ数年、コンテナ取扱量は加速度的に伸びてきました。ベルリンの壁が崩壊した 1989 年以来めざましい成長ぶりで、今年は昨年のロッテルダムに迫る数字となっています。 ハンブルグは、欧州北側の他港と比べ、最大の成長率を誇っているのです。昨年は特に高 い実績となりました。これには2つの要因があります。 1つは、ハンブルグがバルト海地域最大の港であること。多数のフィーダーコンテナが ハンブルグを通過し、ハンブルグ港で扱われるコンテナの内 30%はスカンジナビアと東欧 諸国間を結ぶフィーダー貨物です。そして 40%が、ハンブルグ港を中心とした半径 200 キ ロ経済圏のローカル貨物です。このローカル貨物の内、4分の3はコンテナのまま港を出 入りし、4分の1は港内でコンテナに詰められたりコンテナから出されたりしています。 残り 30%のコンテナはハンブルグの後背地に由来するもので、東欧諸国など遠隔地からの ものも多く、内 70%が鉄道で運ばれてきます。ハンブルグ港の後背地の人口は、東欧・北 欧まで含め4億 6000 万人。後背地と結ぶ交通網が充実しており、ハンブルグからのブロッ クトレインもあります。そのような鉄道で、カザフスタンあるいはロシアの南東部まで接 続されているのです。HHLAは鉄道輸送の会社も経営しています。ドイツ最大の鉄道会 社で、貨物鉄道を運行しており、ハンブルグからモスクワまでつないでいます。キエフ、 ハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキア等へもつないでいます。 2つめの要因は、先ほど申しましたバルト海の存在です。HHLAにとって、バルト海 を中心としたフィーダー貨物の比重は大きく、恐らく日本でも事情は同じでしょう。お薦 めできるビジネスです。中国がどんどん開放されますので、同じような状況になるかと思 います。ハンブルグにとって、バルト海への出入り口はリューベック。このリューベック との接続を改善し、コンテナ輸送の所要時間を短縮するよう務めています。また、フィー ダー船を利用し海から直接バルト海へコンテナを送ることも出来ます。キール運河を使う のです。なお現在、ハンブルグとリューベックの間には1週間に3回、シャトルの鉄道が 走っています。リューベックには特別に設けたコンテナターミナルがあり、貨物列車をク 1 レーンの真下へ着け、ジャストインタイムの看板方式でフィーダー船へ積み替えていきま す。バルト海の存在は、ハンブルグにとって極めて重要です。実際、今年のバルト海地域 における成長率は 27%以上でした。ハンブルグとしては 15%のプラスでした。極めて大き な成長がバルト海、そして東欧の需要によってもたらされたと言えるでしょう これと並行して、ブレーメン以西の諸港、特にロッテルダムのシェアが下がってきてい ます。皆さんご存じのように、コンテナは海上ルートを使った方が後背地へ運ぶのも速く、 またコストを下げることができるからです。ハンブルグが増えて、ブレーメン、ロッテル ダムは減っています。 ハンブルグ港の将来、そして今後の成長の可能性ですが、2010 年まで2けたの成長を見 込んでいます。2002 年には、新しいコンテナターミナルCTAをアルテンバーダーでオー プンしました。最も近代的かつ最も自動化された世界有数のコンテナターミナルで、最大 1.9 百万TEUまで取り扱い可能です。ガントリークレーンはトータルで 13 基あり、その うち7つがすでに稼動中です。何れもスーパーパナマックス型の大型船に対応する大型ガ ントリークレーンです。そして、フィーダー船用クレーンがもう1基あります。最終的に は大型船用4バースとフィーダー船用1バースの設備となります。水深 16.5 メートル、主 要なクレーンは一部自動化されています。 そして此のCTAでは、全てAGV(Automatic Guided Vehicle)を利用して荷役を行 っています。AGV60 台、そして 11 ある蔵置ブロックごとに2基づつ置かれた自動クレ ーンが荷役を行うのです。250 メートルの奥行を持つ蔵置ブロックと船側のガントリーク レーンをAGVが結びました。蔵置ブロックにはレールの上を平行して走る大小2機の自 動クレーンが設置され、各ブロック 10 列×4∼5段で積み上げるようデザインされていま す。外側のクレーンは幅が広く、高さも高く、内側のクレーンを包み込むように出来てい ます。AGVは此のブロックの前で止まり、自動的に荷役を行う。先ほど申し上げたよう に、ヤード全体が完全に自動化されているのです。 トラックのオペレーションだけはマニュアルで行います。ただ、トラックと貨物のハン ドリングについては、AGV荷役と同じ形で作業しています。例えばトラックが積み替え のためブロックの前に停車すると、リーダーにカードを読み込ませます。すると、内容が コントロールルームのオペレーターの元へ伝えられる。そこで彼はリモートコントロール でクレーンを操作し、そのトラックに対し荷役を行うのです。ビデオカメラを使っていま す。これはクレーンに設置されたビデオカメラです。また、スプレッダーの隅に搭載され たビデオカメラを使って、実際の荷役の様子を此のビデオカメラで見ることもできます。 こうして、トラックの荷役をコントロールしているのです。 鉄道のオペレーションでは、長方形のシャーシを使っています。レールは 280 メートル が6レーン入っており、700 メートルのブロックトレインという、ヨーロッパ最長の列車 にも対応することができます。レールクレーンは2つで、6つのレーンにまたがっていま す。何れもドライバーがいて、無人ではありません。ヨーロッパ全土、東欧を含めて鉄道 が走っており、さまざまな列車が入ってきます。列車の種類が多いため、完全に自動化す ることは現段階では不可能です。 ハンブルグの将来の競争力を高めるために、この自動化を決断しました。なによりター ミナルの性能を高めなくてはいけません。効率を上げなくてはなりません。 2 6月から8月に入港した 10 隻の中には、中国の新センから来た、現在世界最大のOOC Lのコンテナ船も含まれています。8,000TEUまで積める船で、5月6日初めてハンブル グへ寄港しました。HHLAで 4,639 個のコンテナを扱いました。寄港 48 時間で、1時間 当たり 96.6 個となっています。3基から4基のガントリークレーンを使いました。クレー ン当たり、平均扱い個数は 32 個です。そして、ピーク時の実績として1時間あたり 45∼ 50 個に対応したということです。マニュアル方式のターミナルでは、ハンブルグにおいて も、普通毎時 25 個にしか過ぎません。それと比較すると、如何に効率が良いか分かると思 います。 我々の目標は生産性を上げること、そしてパフォーマンスを上げることです。この目標 を達成すると共に、かなりのコストを削減しています。先ほど申し上げましたように、現 在極めて高い利用率を誇っており、巨大アライアンスの4つの基幹航路を支えています。 スーパーポストパナマックス型の母船が、1週間あたり4船ほど寄港します。そして、1 週間に 60 から 70 のフィーダー船も寄港します。したがって、毎月 40 千個に及ぶ母船、そ して 15 千個のフィーダー船の貨物に対応しているのです。トラックの取扱量としては1日 当たり 150 個から 900 個、鉄道は1日当たり 400 個。ターミナルが稼動を開始したのは 2002 年6月 24 日でした。3カ月間のスタートアップ期間を経て現在、第2段階に入っています。 そしてこれから第3バースも使用可能となります。ガントリークレーン8番と9番が来週 から稼働を開始し、更に蔵置のスペースも加わります。 最後、このシステムの能力ですが、我々自身にとっても驚きでした。私たちが初めて計 画した時、ピーク時に於ける利用率は最大 85%を目標としていました。修繕や清掃が出来 る、コンテナからトラックへの荷役も可能になる、そこで 85%の利用率を描いていたわけ です。しかし、ヤードでのコンテナ滞留期間が予想より長かったため、更に高い利用率が 求められました。95%以上が必要となったのですが、非常にうまくいっています。 最後にHPC(ハンブルグ港コンサルティング会社)について少し紹介させていただき たいと思います。設立は 1976 年、HHLAの子会社で、港湾部門に於けるコンサルタント として世界でも有数の会社です。600 程のプロジェクトを世界中で行い、コンテナターミ ナルのプランニングに関し素晴らしい経験を持っています。今申し上げたCTAプロジェ クトにも深く関与し、私は 99 年から此の8月までプロジェクトリーダーを務めてきました。 ただ、プロジェクトを行っていない地域が2つあります。オーストラリアと日本です。今 日のプレゼンテーションの後で、もう1つ、日本に赤い点を描くことができればと願って おります。 ご静聴ありがとうございました。それではパネルディスカッションを楽しみにしていま す。 3
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