たぶんかフリースクールよこはま

たぶんかフリースクールよこはま
1 開校への経過
共同代表:井草まさ子 高田文芳
ME-net が 1995 年から実施している「日本
2 たぶんかフリースクールよこはま
語を母語としない人たちのための高校進学
授業は週3日、1日午後 1 時から3時間
ガイダンス」、2003 年からの「神奈川外国
(夜間中学に通学している子どものために 4
人教育相談」、そしてこれらの活動を通して、
時 20 分まで)、指導科目は日本語、国語、
近隣の中学校や学習補習教室等とも連携を
数学、英語である。指導にあたっているのは、
深めてきた。このネットワークの中で、「学
日本語は日本語学校や横浜市の非常勤日本
齢超過のために中学に入れない」「中学は卒
語指導員等の長期指導経験者、教科は中学高
業してきたが、日本語や高校受験に向けて学
校の教員免許所持者である。さらに、ME-net
ぶところがない」という声を聞くことが多く
から「教育相談員」や「通訳」として、現職
なってきた。その度に「たぶんかフリースク
の高校教員や大学職員等の援助も受けてい
ール(東京)」やボランティアが運営する「補
る。授業は、教科ごとに能力別に分けた3ク
習教室」に子どもたちを送ってきた。しかし、
ラスから4クラスで行っている。
「たぶんかフリースクール(東京)」は距離
2009 年度 2010 年度の生徒の在籍状況(国
的な点で、「補習教室」では勉強量の点で、
籍別、通学区域)は、表1の通りである。教
彼らのおかれている状況に対応しきれない
室は、浦舟複合福祉施設の10階の「みなみ
でいた。「学習塾」や「日本語学校」も選択
市民活動・多文化共生ラウンジ」「みなみコ
肢として考えられるが、今のところ「日本語
ミュニティーセンター」を始めとして、9階
を母語としない子どもたち」の指導経験を持
の「フリースペースみなみ」、8階の「福祉
ち、高校進学に対応できる学校はないと思わ
協議会」の施設(いずれも無料)を借りて活
れる。
動している。これらの施設は一般の方との利
このような状況の子ども達の高校受験に
用であり、曜日や時間によって確保できる場
対応する「学びの場」として、同時に同年代
所に限りがある。生徒たちの常時いられる場
の子どもたちの「居場所」として、2009 年
がなく、ホームルームとしての機能を持てな
9月に「たぶんかフリースクールよこはま」
い。また毎時間それぞれのクラスに合わせて
を開校し、授業を開始した。5年前に立ち上
移動するのは、煩雑で大変である。その上、
げられた「たぶんかフリースクール(東京)」
教材や教具等を置く場所も限られ、不自由で
の姉妹校としてのスタートである。
あるのが、最大のデメリットである。しかし、
2006-2010 活動報告 | ME-net
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たぶんかフリースクールよこはま
公共の場での実施は、無料でかつ快適である
先輩は、身近なロールモデルともなり、また
上、生徒たちにとっては日本社会との接点で
卒業生にとっては、発表の場の提供にもつな
もあり、ルールや挨拶を学ぶよい機会にもな
がるであろう。次に、学校行事の実施も考え
っている。また、一般の方に彼らの存在を知
ていきたい。生徒たちは、学校にいる時間が
っていただく良い機会でもある。
あまり多くなく、なかなか互いを知る機会に
授業に関しては、日本語・教科とも能力別
恵まれない。授業の時間を減らすことにはな
の3展開で行っている。日本語の力は、0ス
るが、同じ活動を通して互いを理解すること
タートの初心者から、簡単な読み書きを習得
が可能になるであろう。また、他人の状況を
している生徒まで多岐に渡っている。また、
通して自分のおかれている立場を客観的に
日本語の上達の進度も個人差が大きく、頻繁
見させるための、しかけにもなるであろう。
なクラス分けが必要である。いずれのレベル
さらに、彼らの精神年齢に応じた日本語教材
にしても、半年から1年という限られた時間
の作成と、「日本語を母語としない子ども」
内で、国語まで到達するのは、ほとんど不可
のための国語や数学、英語の教材の収集や作
能である。また数学や英語も能力差が非常に
成をする必要がある。
大きく、彼らの能力に合った授業展開を行え
課題は山積であるが、生徒たちのひたむき
ない状況である。「フリースクールで勉強し
な真面目さと明るく楽しそうな姿に、気持ち
て学力が伸びたか」というアンケートで、2
を新たにしている毎日である。2009 年度は、
割弱の生徒が「どちらとも言えない」と答え
16 名全員が公立高校に入学し、2010 年度は、
ていることから、今後の大きな課題である。
やはり全員が私立を含む高校に入学するこ
さらに生活言語が身についていない生徒へ
とができた。
の教科指導は非常に大変である。特に漢字や
英語の通じない母語話者は、至難の業であ
る。教え方の工夫や彼らに合った教材の収集
や作成の必要性に迫られている。
成果としては、①同年輩との「学びの場」
の提供 ②「居場所」の提供 ③日本の学校
文化への橋渡しの場の提供 の3点が考え
られる。入学当初堅い表情の生徒たちが、時
間の経過とともに、互いに打ち解け、言葉や
文化の違いを越えて励まし合い、学び合って
いた。生徒へのアンケートで、「入学してよ
かったか」の問いに 100%の生徒が「はい」
と答えていた。嬉しい限りである。
これからの課題としては、第1に卒業後の
見守りと連携が考えられる。在校生にとって
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ME-net| 2006-2010 活動報告
3 おわりに
「たぶんかフリースクールよこはま」は日
本語を教えるが、語学学校ではない。受験科
目の教科内容を教えるが、学習塾でもない。
教科学習や日本語学習が遅れている生徒に
は個別指導もするが、家庭教師でもない。今、
言えることは生徒それぞれの母国で培って
きた教養や価値観・思想・習慣等を大切にし
ながら異文化社会の日本にソフトランディ
ングして、学習の積み重ねを継続する「つな
ぎの学校(プレ・スクール)」を目指してい
る。具体的な有り様はフリースクールに関わ
る先生方の今後の話し合いと施設・運営資金
等の関係で決まっていくものと思う。