不当な残業代請求を回避するために企業側が必ず押さえておかなけれ ばならないポイント サービス残業とは サービス残業とは、労働基準法で定められた残業代を支払わずに従業員に残 業をさせることです。 従業員から未払残業代の請求を受けた場合、賃金請求権の消滅時効は2年ですから、 2年間分遡及して支払う義務があります。 設例 従業員 A は、基本給30万8000円、毎月22日(1日の所定労働時間は7時間)出勤し、毎 日3時間のサービス残業をしていた。A が退職後、突然これまでの残業代を会社に請求して きた。(会社では就業規則において、所定労働時間を超える労働時間については労基法所 定の時間外手当を支払うことと規定されていた。) 1時間あたりの単価:30万8000円÷154=2000円 2000円×1.25割増×3時間×22日×2年=396万円 上記の例で20人の従業員が会社に対して一斉に請求した場合、396万円×20(人)=792 0万円となります。 このように、サービス残業問題は、会社が倒産しかねない大きな問題です。 また、使用者がサービス残業の実態を知りながら措置を講じなかった場合、 労働基準法に違法する行為として労働基準監督署(労基署)から是正勧告を言い渡されま す。 是正勧告とは、違法な勤務実態の是正を求める労基署からの警告書です。 この警告を無視して措置を講じなかった場合、労基法違反の疑いで検察庁へ書類送検され る可能性があります。 最悪の場合、労基法違反で法人や代表者が罰せられる可能性もあります。 1 この賃金不払残業に対する是正勧告を軽視したために、 上場企業が数億円~数十億円を支払ったケースもあります。 サービス残業への対処 では、サービス残業の問題に対して、使用者はどのような対応をとるべきなのでしょうか。 残業対策には、労働時間そのものの削減と残業代の抑制の 2 種類の方法が考えら れます。 (1)労働時間の削減 ①残業を許可制にする 業務上必要な残業に対して残業代を支払うのは当然ですが、使用者としては、 残業代を目的とした不必要な残業をしている社員の存在も気になるのではないでしょうか。 このような場合は、残業を許可制にし、使用者の許可がなければ 残業ができないようにすることが有効だと思われます。 具体的には以下のような手続きを行います。 ⅰ)残業が必要だと考えた場合、所定の用紙に残業時間・業務の内容等を記入して直属の上 司に申請させる。 この時点で、明らかに不必要と思われる残業については、残業許可を出さない。 ⅱ)残業後、時間外勤務時間数を記入した用紙を上司に提出させ、本当に必要な残業であっ たのかを 上司が判断し、承認を行う。 この手続を定着させる上で重要なことは、残業は上司の許可がなければできないというルー ルを 社内で周知・徹底し、申請なしの残業を黙認しないことです。 以上の手続を的確に運用すれば、本当に必要な残業だけを従業員が行うようになるので、 労働時間そのものの抑制、ならびにサービス残業の抑制に大きな効果が期待できます。 2 また、副次的効果として、正規の勤務時間における業務効率の向上も期待 できます。 ②ノー残業デーを設ける すでに多くの企業が実践しているかもしれませんが、1週間のうち1日(例えば毎週水曜日)を ノー残業デーとして、 一切残業を認めない日を作ることも有効です。 その場合、会社や事業所に鍵をかけて閉めてしまいましょう。 労働時間の抑制にも効果があります。 ③がんばるタイムを設ける 一定時間は、私語や電話、不要なオフィス内の歩き回りを一切禁止する 「がんばるタイム」を設けることも効果的であると思われます。 取引先にも理解を求め、その時間帯の来客や電話などはなるべく遠慮してもらうなどして、 この時間帯は徹底して個々の業務に集中させます。 (2)残業代を抑制する 残業代そのものを直接抑制する方法としては、以下のようなものが考えられます。 ①変形労働時間制の導入 ②残業代を月額賃金の中に含ませる(定額残業制) ③事業場外のみなし労働時間制の導入 ④裁量労働制(専門業務型・企画業務型)の導入 ⑤振替休日の利用 ⑥在宅勤務によるみなし労働時間制 3 【変形労働時間制】 労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められていて、これを超える時間を労働させる場合は、 時間外労働となるのが原則です。時間外労働になれば当然時間外手当の問題が生じてきます。 しかし、業態によっては、上記法定労働時間が業務にそぐわない場合があります。例えば、1ヶ月 のうち、後半は忙しいが前半はほとんど仕事がないくらい暇だとか、あるいは1年のうち夏は忙し いけど冬は暇だとかいう業種です。また、24時間をカバーする交替勤務制のところは、1日の勤 務時間が8時間を超えることが必要不可欠な場合もあります。このような場合、変形労働時間制 を採用する事で法定労働時間を超えて就業させることができます。これは使用者にとって有利な 制度ということができます。 この変形労働時間制には、1か月単位、1年単位、1週間単位のものがあります。 【1か月単位の変形労働時間制】 これは、1か月以内の一定期間(例えば、1週でも4週でも構わない)を平均し、法定労働時間(1 週間で40時間以下)に収めれば、特定の日や週について、法定労働時間を超えて労働させるこ とができる制度のことをいいます。 例えば、看護師、自動車の運転手、工場で交代制により勤務する者などの労働時間管理に適し た制度といえます。 ○1週間で法定労働時間以下に収める例 月曜日:10時間労働 火曜日:10時間労働 水曜日:10時間労働 木曜日:5時間労働 金曜日:5時間労働 土曜日:休日 日曜日:休日 (合計週40時間) この例では、月曜日、火曜日、水曜日はそれぞれ2時間の時間外労働となり、本来、残業代を支 払わなければなりませんが、変形労働時間制を採用していれば、残業代を支払わなくてよいとい うことになります。 4 ○1か月を平均して法定労働時間以下に収める例 第1週目:60時間 第2週目:20時間 第3週目:20時間 第4週目:60時間 (合計160時間、平均すれば週当たり40時間) この例では、第1週、第2週はそれぞれ20時間の時間外労働となり、本来、残業代を支払わなけ ればなりませんが、変形労働時間制を採用していれば、残業代を支払わなくてよいということにな ります。 この制度を導入するためには、就業規則に定めるか、または労使協定を締結して労働基準監督 署長に届出をしなければなりません。(労基法32条の2) 常時10人以上を使用する事業場においては、始業・終業時刻を就業規則において特定すること を義務づけられているので(労基法89条1号)、結局、就業規則において、労働時間を特定しなけ ればなりません。 また、常時10人未満の事業場であっても、労使協定による導入よりも、使用者に作成権限のある 就業規則の方が導入しやすいでしょう。 ただし、労使協定にしろ、就業規則にしろ、単位期間内のどの週ないしどの日に法定労働時間(4 0時間ないし8時間)を何時間超えるかをも特定しなければなりません(「特定の週」「特定の日」の 要件)。 裁判例では、「就業規則の変更条項は、労働者から見てどのような場合に変更が行われるかを予 測することが可能な程度に変更事由を具体的に定めることが必要である」として、就業規則の変 更を特定の要件に欠ける違法、無効なものと判断しています(東京地判平12.4.27労判782 -6)。 また、行政通達によれば、業務の実体上、就業規則または労使協定による特定が困難な場合に は、変形性の基本原則(変形の期間、上限、勤務のパターン)を就業規則または労使協定で定め たうえ、各人の各日の労働時間をたとえば1か月毎に勤務割表によって特定していくことが認めら れています(昭和63.3.14基発150号)。 このように、せっかく変形労働時間制を導入しても、この特定の要件を満たしていなければ、後日、 紛争となった場合、無効なものと判断され、法定労働時間を超えた労働時間については、残業代 の支払が命ぜられることになります。 5 【1年単位の変形労働時間制】 これは、1年以内の一定期間を平均し、1週間の労働時間を40時間以内に収めれば、特定の日 や週が法定労働時間を超えても時間外労働にならないとするものです。 この制度は、業務の性質上、季節的繁閑のある事業場、例えば、ホテルやデパート等において導 入すると大きなメリットとなるでしょう。 この1年単位の場合には、1ヶ月単位の変形労働時間制より細かく規制されています。 ・1日の上限は10時間まで ・1週の上限は52時間まで ・1週48時間を超える設定は連続3週以内(ただし、単位期間が3か月を超える場合のみ。) ・対象期間を起算日から3ヶ月ごとに区切った各期間で、週48時間を超える週は3回以内 ・連続労働日数の上限は6日まで(繁忙な特定の期間は12日) また、この1年単位の変形労働時間制を採用する場合、1か月単位の変形労働時間制を採用す る場合と異なり、必ず労使協定を締結して、労働基準監督署長に届出をしなければなりません。 さらに、常時10人以上を使用する事業場においては、始業・終業時刻を就業規則において特定 することを義務づけられているので(労基法89条1号)、結局、就業規則においても、労働時間を 特定しなければなりません。 つまり、労使協定と就業規則の両方が必要となります(1か月単位の変形労働時間制の場合は、 就業規則だけでもよい。)。 【1週間単位の非定型的変形労働時間制】 これは、業務の繁閑の激しい零細規模のサービス業、具体的には、常時30人未満の労働者を使 用する小売業、旅館、料理店、飲食店の場合のみ対象となります(労基法32条の5,労基則12 条の5)。 この変形労働時間制も労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要となります。 なお、常時10人以上を使用する事業場においては、始業・終業時刻を就業規則において特定す ることを義務づけられているので(労基法89条1号)、結局、就業規則においても、労働時間を特 定しなければなりません。 また,この変形性では、毎日の所定労働時間があらかじめ就業規則は労使協定で定める必要は 6 ありません(そのため非定型的労働時間制と呼ばれています。)。 しかし、毎日の労働時間がまったく不確定であれば、労働者の生活が不安定となるため、1週間 の各日の労働時間をあらかじめ労働者に通知しなければなりません(労基法32条の5第2項)。 そして、この通知は、原則として、当該1週間の開始する前に、書面により行わなければなりませ ん。ただし、例外として、「緊急でやむを得ない事由」がある場合には、変更しようとする日の前日 でもよいとされています(労基則12条の5第3項)。 なお、ここでいう「緊急でやむを得ない事由」とは、天候の急変(台風等)などの客観的事実により、 業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合をいいます(昭63.1.1基発1号)。 この制度を採れば、使用者は1週間40時間の枠内において、1日について10時間まで労働させ ることができます。 【定額残業制】 これは、例えば、多くの残業時間が発生しているが、毎月毎月、残業代の計算が煩雑であるので、 残業代を定額としたい場合、法所定の割増賃金に代えて、一定額の手当を支払う制度です。 この定額残業制については、裁判例上、次の要件を満たす必要があります。 ①通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別できること。 ②込みとなる時間を超えるときは、不足分を支払うこと。 (最判平6.6.13高知県観光事件、東京地63.7.14小里機材事件他) ポイント この制度を実際に導入する場合は、給与の中に残業を何時間分含めているか、そして、含められ ている残業時間を超えて働いたときは、残業代を別途支払う旨就業規則・雇入通知書に記載して おくべきです。 この点をしっかりと押さえていないと、後々残業代を請求された場合、大変な事態となります。 具体例で説明しましょう。 A さん:基本給(月給)は30万円、所定労働時間は月160時間 会社が毎月の残業代の計算が面倒だからといって、毎月残業代込みの給料として A さんに40万 円を支給していたところ、後日、A さんから残業代を請求された場合 →上記要件を満たしていなければ、残業代計算の基礎となる賃金は、30万円ではなく40万円と なる。 7 残業時間が月60時間で2年分請求された場合 残業代計算の基礎となる賃金の1時間あたりの単価:40万円÷160時間=2500円 1か月あたりの残業代(時間外手当のみ):2500円×1.25×60時間=18万7500円 2年分の残業代:18万7500円×24=450万円 このような事態を防止するために、就業規則等には次のような記載が考えられます。 「記載例」 賃金は次のとおりとする。 月給40万円(42時間分の時間外手当9万8448円を含む。) ただし、残業時間が月42時間を超えた場合、別途時間外手当を支払うものとする。 【事業場外のみなし労働時間制】 これは、従業員が事業場外で業務に従事している場合において、労働時間を算定しにくいときに、 所定労働時間だけ労働したものとみなす制度です(労基法38条の2)。 このみなし制は、取材記者、外勤営業職員などの常態的な事業場外労働だけでなく、出張等の臨 時的な事業場外労働も対象となります。 また、労働時間の全部を事業場外で労働する場合だけでなく、その一部を事業場外で労働する場 合も含みます。 事業場外労働が、1日の所定労働時間帯の一部を用いて(または一部にくいこんで)なされる限り は、1日の所定労働時間だけ労働したこととみなされます(下図参照)。 1日の所定労働時間 事業場内労働 事業場外労働(みなしの対象) () 1日の所定労働時間労働したものとみなされる。 この制度を導入するには、就業規則にその旨定める必要があります。ただし、みなし労働時間が 所定労働時間を超える場合には、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」について、労使協 8 定を締結しなければなりません。 また、この「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が法定労働時間(1日8時間)を超える場 合には、その協定届を労働基準監督署に届け出なければなりません。この場合には、いわゆる3 6協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければならないことに注意して下さい(36協定によ る届出に付記して届け出る方法でも大丈夫です。労基則24条の2第4項)。 ポイント この制度は、「労働時間を算定しがたいとき」に限定されます。 裁判例では、事業場外である展覧会での展示販売のケースについて、業務に従事する場所、時 間が限定されていること、上司である支店長等が展示場に赴いていること等から、「労働時間を算 定しがたいとき」こ該当しないと判断したものがあります(東京地判平9.8.1労判722-62) したがって、この制度を導入するには、当該事業場外労働が「会社から具体的な指揮命令を受け ていない」ことが必要となります。具体的には、携帯電話で上司から指揮命令を受けている場合な どは、該当しないと判断されます。 【裁量労働制(専門業務型・企画業務型)】 これは、一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者について、遂行の手段、時間配分の決定 等を労働者の裁量に委ね、労働時間については「みなし労働時間」を定めて労働時間を算定する 制度です。 この裁量労働制には、①専門業務型裁量労働制と②企画業務型裁量労働制とがあります(労基 法38条の3,38条の4)。 ①専門業務型裁量制 これは、以下の19の対象業務に導入できます。 (1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務 (2)情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合 わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。(7)において同じ。)の分析 又は設計の業務 (3)新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和25年法 律第132号)第2条第4号に規定する放送番組若しくは有線ラジオ放送業務の運用の規正 に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送若しくは有線テレ ビジョン放送法(昭和47年法律第114号)第2条第1項に規定する有線テレビジョン放送の 放送番組(以下「放送番組」と総称する。)の制作のための取材若しくは編集の業務 9 (4)衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務 (5)放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務 (6)広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピ ーライターの業務) (7)事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用する ための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務) (8)建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆる インテリアコーディネーターの業務) (9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務 (10)有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基 づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務) (11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務 (12)学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として 研究に従事するものに限る。) (13)公認会計士の業務 (14)弁護士の業務 (15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務 (16)不動産鑑定士の業務 (17)弁理士の業務 (18)税理士の業務 (19)中小企業診断士の業務 ○制度導入のための手続は? 制度の導入に当たっては、原則として次の事項を労使協定により定めた上で、労働基準監督署 長に届け出ることが必要です。 (1)制度の対象とする業務 (2)対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと (3)労働時間としてみなす時間 (4)対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の 具体的内容 (5)対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容 (6)協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。) (7) (4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3 年間保存すること 10 ②企画業務型裁量労働制 この制度は、事業運営に関する企画、立案等の業務を自らの裁量で行う従業員を対象とした制 度です。 専門業務型裁量労働制と同じように、対象者は実際の労働時間が何時間であろうと、あらかじ め決められた時間(たとえば7時間)労働したものとみなすことができ、残業代対策に非常に効果 があります。 ○対象業務 ホワイトカラーの業務すべてがこれに該当するものではありません。 指針によれば、次のような業務が対象となります。 (経営企画担当部署) 経営状態・経営環境について調査および分析を行い、経営に関する計画を策定する業務 現行の社内組織の問題点やそのあり方等について調査および分析を行い、新たな社内組織 を編成する業務 (人事/労務担当部署) 現行の人事制度の問題点やそのあり方等について調査および分析を行い、新たな人事制度 を策定する業務 業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査および分析を行い、社員 の教育・研修計画を策定する業務 (財務/経理担当部署) 財務状態等について調査および分析を行い、財務に関する計画を作成する業務 (広報担当部署) 効果的な広報手段等について調査および分析を行い、広報を企画・立案する業務 (営業企画担当部署) 営業成績や営業活動上の問題点等について調査および分析を行い、企業全体の営業方針 や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務 (生産企画担当部署) 生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査および分析を行い、原材料等の調 達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務 ○対象業務となり得ない業務の具体例は次のとおりです。 経営に関する会議の庶務等の業務 人事記録の作成および保管、給与の計算および支払、各種保険の加入および脱退、採用・ 研修の実施等の業務 金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成および保管、租税の申告および納付、予算・決算に 11 係る計算等の業務 広報誌の現行の校正等の業務 個別の営業活動の業務 個別の製造等の作業、物品の買い付け等の業務 ○導入のための流れ 1 対象業務が存在する事業場※ 使用者の届出・報告 労 働 2 労使委員会を組織します ・ 準備について労使で話し合う 基 ・ 労使委員会の委員を選ぶ 準 ・ 運営のルールを定める 監 督 3 企画業務型裁量労働制の実施のために労使委 届出(すみやかに) 署 員会で決議をします 4 対象となる労働者の同意を得ます 5 3の決議に従い企画業務型裁量労働制を実施し ます。 定期報告(3の決議か ら6カ月以内ごとに1 回) 6 決議の有効期間(3年以内とすることが望ましい)の満了(継続する場合は、3へ) ※ 対象となる事業場 いかなる事業場においても導入できるということではなく、「対象業務が存在する事業場」で す。 具体的には、以下の事業場が該当します。 1 本社・本店である事業場 2 1のほか、次のいずれかに掲げる事業場 (1) 当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれ る事業場 (2) 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場に係る事 業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等で ある事業場 個別の製造等の作業や当該作業に係る工程管理のみを行っている事業場や本社・本店又は 支社・支店等である事業場の具体的な指示を受けて、個別の営業活動のみを行っている事業場 は、企画業務型裁量労働制を導入することはできません。 12 【振替休日の利用】 これは、どうしても従業員に休日に働いてもらう必要が出てきた場合に有効です。 本来、休日出勤の場合、休日割増手当(法定休日の場合3割5分増し) を払わなければなりませ んが、休日の振替措置(振替休日)を行うことで、この割増賃金を支払う必要はなくなります。 ただし、以下の要件をみたす必要があります。 ① 就業規則等で休日の振替措置をとる旨を定める ② 休日を振り替える前に、あらかじめ振替日を決めておく ③ 法定休日(毎週1回以上)が確保されるように振り替えること この要件のどれかが欠ければ、それは振替休日ではなく、「代休」になってしまいますので、ご注 意ください(「休日労働」の割増賃金(35%)を支払う必要があります。)。 週休1日制の場合、休日を別の週に振替えると、法定休日が確保できないため、「休日労働」にな ってしまいます。 週休2日制の場合は、出勤日と同じ週に振替休日を取れずとも、1日の法定休日が確保されてい れば「休日労働」は発生しません。 間違っても「法定休日は○曜日とする」とは就業規則に規定しないで下さい。 【在宅勤務によるみなし労働時間制】 近年、インターネットや情報処理を中心とした技術革新により、IT(高度通信情報ネットワーク)化 が急速に進んでおり、パソコンや端末等のVDT(Visual Display Terminal)が家庭や職場を問わず 広く社会に導入され、職場環境や就業形態等についても大きく変化している状況にあります。 このような中で、情報通信機器を活用して、労働者が時間と場所を自由に選択して働くことができ る働き方であるテレワークという新たな就労形態が可能となりました。 厚生労働者は、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライ ン」をさだめ、その後改訂し、在宅勤務等の適切な導入と労務管理のあり方を示しています。 ガイドラインはこちらを参照 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/03/h0305-1.html 以上 13
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